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やや進歩史観的というか、過去の思想を「乗り越える」という形で単純化して書かれすぎているきらいはあるが、その点を踏まえても本書の試みが、その魅力が損なわれるということはない。
行政という観点に着目して読み直される政治哲学史は、掛け値なしに新鮮なものだった。
著者の『来るべき民主主義』と併読されることを強く勧める。ほとんど姉妹のような本だ。
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我々のこの民主主義・民主制は、ある種の欺瞞のもと、何か別のものが民主的と呼ばれているにすぎないのではないかーー。そのような疑問から出発し、政治哲学の大家たちの論を紐解きつつ、彼らの「自然権」「主権」「立法」「行政」などの用語法の細かな異同に目を配りながら、何百年も前に提起された諸問題が今もなお熟慮に値することを明らかにしてゆく。
初めて書店で見かけた時は硬くストレートな題名には好感を抱きつつもこれで本当に売れるのかと心配になったが、数ページ読んでそれが杞憂であることを確信した。とにかく解り易い。変に奇を衒った所は全くなく、極めて簡潔な文体で淡々と論が進められてゆく。あまりに噛み砕かれると却って頭に残りにくいこともあるが、手軽さが重視される新書というメディアにおいてはこのシンプルネスは重要だろう。
立法権から行政権への秘密裏の権限移譲をジョン・ロックの建前主義に求めるくだりは舌鋒鋭く読み応えあり。ここがこの本の肝と思われ、立法権と行政権の遠近に関わるテーマはその後も繰り返し現れている。
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行政と立法の関係からホッブズ、ルソーなどの思想を解説?した本。著者はロックを批判しながら、立法府に立法の権限があるとされるものの、実際は行政が大きな役割を果たすという「建前」を批判している。
その主張自体は面白いとしても、この本でやるべきことだったかは謎。「近代」というよりは「國分流」と言った方が良い。題名の割に範囲が狭い。それだったら、もっと「國分流」を詳らかにしてもいいと思うのだが、その部分はほとんどない。
著者独特の民主主義論を前提とした解釈になっているため、知識のない人が読んだら誤解を受けそうなのが難。ホッブズあたりのある程度の知識を持っているなら、より直接的に著者の別著を読めば良い気もする。
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西洋の政治思想について、主権と行政の概念を中心に追ったもの。
うまくまとめられており、わかりやすい。また、筆者の行政の概念について、あまり視座が及んでいなかったことの指摘については、盲点だと感じた。
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なぜ私の考えは行政に反映されないのかという疑問をもつ人の為の本。私と主権がどうリンクしているのか、そして主権の在りかは行政にどう働きかけるのか。主権概念の来歴を追うことで、現在の政治のあり方や主権国家システムを相対化することができる内容になっている。
あまり古典の解説で聞かない内容があっていい。ホッブスの社会契約には二種類あることや、ルソーの一般意志は少数意見に容赦無いことなど。ただカントまでで章が終わっており、少なくともヘーゲルまで読みたかった。ヘーゲルには著者の持論を援用できる内容は少なかったということだろうか。
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結局4ヶ月くらいかかって読んだ。しばらく、頭が働かなくて読めなかったけれど、なんとかカントにたどり着いた。そして、覚えているのはカントの最後の部分だけ。私の理解が間違っていたらごめんなさい。でも、何となくこういうことなのだろう。厳密なことばづかいはお許しを。カントによると民主的ということは原理的に成り立たない。民主的にみんなでいろいろなことを決めることはできる。多数決になるかもしれないけれど、決まりをつくることはできる(国会による立法)。しかし、それを実際に行っていくのは一部の人間による(内閣による行政)。そして、法律をどう解釈して、どう行動に移していくかは、実行していく部分に関わる人によって決まる。「みんなで決めてみんなでやりましょう」というのは学校のクラスくらいならできるのかもしれないが(それもあやうい)、ひとつの自治体とか、国家とかでは無理というものだろう。ちょっと理解があやふやだけれど、いま、日々新聞やテレビなどで議論されていて、問題になっているのは、こういうところに起因しているのかもしれない。ホッブスとかルソーとかも、わかる~と思って読んだのだけれど、いまや全く記憶にない。
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緩い封建社会と宗教戦争から主権や自然状態といった概念が生まれ、磨かれ、近代政治哲学が構築されてきたんだけど、それからはみ出たところにある強大な権力を有する行政をどうしていくのか、それが現代の課題であり、近代政治哲学をさらに発展させていく必要性もそこにあるのかな。
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ボダン,ホッブス,スピノザ,ロック,ルソー,ヒューム,カントの思想を概括して,自然権に関する論考を延々と述べている.でも,理解しきれない.哲学者の読書量がすごいことが分かった.
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ボダン、ホッブズ、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カントの政治哲学について考察している本です。
単なる概説ではなく、哲学史的な叙述を通して著者自身の政治哲学上の問題意識を明瞭に浮かびあがらせるというスタイルになっています。著者自身の問題意識が最初に見えてくるのは、ロックの章です。ここで著者は、ロックの「自然権」理解があいまいだと批判し、彼が「自然権」という概念のうちに、ほんらいそれにもとづいて説明されなければならないはずの規範性が密輸入されていることを指摘しています。
さらに著者自身の問題意識が明瞭になるのは、ルソーの章です。ここで著者は、多くの論者たちを悩ませてきた「一般意志」についてあらためて考察をおこない、一般意志とは、そこから個別的具体的な政策が導き出されるようなものとしてあらかじめ確定することはできず、むしろ立法権に基づく法律の成立をもって一般意志が行使されたとして、遡及的に一般意志が見いだされるという解釈を示しています。
ここまでくれば、ヒュームの経験論を経て、カントの規範的倫理学に基づく法哲学までは一直線です。この先がおもしろくなるのに……という思いにさせられてしまいますが、「近代政治哲学」という書名のためか、著者自身の政治哲学上の立場を明瞭にすることは控えられています。ただしその方向性は本書の叙述からも十分にうかがえますし、行政権をめぐる議論など、興味深い切り口がいくつも示されていて、読者自身が本書につづく考察を試みることをさそっています。
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たまたま目に入って、気になったので読んでみる。
フランスのポスト構造主義のドゥルーズの訳者による政治哲学入門と思ったら、実は、こっちのほうが本業らしい。ほ〜。
かくいうわたしも、実は、政治学のM.A.だったりするので、メジャーな関心に近かったりする。
といっても、政治哲学をちゃんと勉強したわけでない。が、一応、ホッブス、スピノザ、ロック、ルソー、ヒューム、カント、程度はいろいろだが、読みかじったことはある本たちである。こうした古典を読んでいて、なんだかな〜?と思いつつ、明確に言語化できなかった疑問が、本当にクリアにされていて、すごいスッキリです。目から鱗がたくさんありました。
他の人が読んでどうなのかは全く分からないけど、個人的にはすごい知的エンターティメントでした。
ちなみに、読んでいて共感度が高かった哲学者は、スピノザとヒュームかな。このへんは、実は、ドゥルーズとも関連性の強い哲学者だと思うので、ある意味、最初に戻って、やっぱりね、でした。
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・近代国家(←宗教戦争)←封建国家
P15〜27
筆者は封建国家の政治的側面、宗教的側面を近代国家と比較しながら説明し、宗教戦争が封建的秩序の崩壊をもたらすきっかけとなったと語る。
P27〜33
ジャン・ボダンは極端な絶対主義擁護論を主張し、そこからは主権という概念が生み出された。それは対外的には戦争による自立性、対内的には立法による超越性によって実現し、その概念はボダンが生み出してから疑われることがなかった。また領土の概念も生まれる。
P41
1章のまとめ
・自然状態の理論→自然権→社会契約論
P47前半
P42〜46のまとめ(自然状態の理論)
P47〜53
ホッブズは自然状態を脱却するための理論を説明するため、自然権という概念を生み、それを規制することで国家が創設されるとした。自然権とは自分の力を自分のために好き勝手に用いる自由のことであり、前述のようにそれを皆が行使すれば、戦争状態になる。そこで、その自由をある程度放棄・主権へ譲渡することで(社会契約論)、その契約が国家を生むのである。
P54〜62
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近代政治思想といえば、社会契約説がすぐに頭に浮かぶが、ボダン、スピノザ、ヒューム、そしてカントの政治論をそこに並べてみれば、ホッブズやロックの思想がまた違って見えてくる。
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いい本だったので、ブログで簡単に内容紹介しました
http://highjamp.hatenablog.com/entry/2017/12/21/095142
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タイトル通り近代政治哲学の主要な人物における理論、主張の概説なのだが、紹介されている7人の考え方にどのような差異があり、またどのように変遷を辿ってきたのか、そしてなおも解決されていない課題には何があるのか、という点に言及がある。結論といえるものはなく、最後はこちらへ投げる形で終えているのは、その先は我々が、あるいは読者自身が考えるもの、ということだろう。平易な文章で読みやすかった。
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政治思想・哲学の書でスピノザを入れているのは著者の専門性ならではだろう。特徴的なのはロック批判か。P147の社会契約論3者の自然状態・社会状態・国家状態の整理は面白い。他方、自然法や自然権については整理されていないように思えるが、そもそも著者は自然法や自然権について懐疑的なようなので、整理する気もないのかもしれないが。カントで締め括り、立法・行政の観点から民主主義(民主政)への問いをしているのも著者独特の信条の表れに思える。
結論としては従来、立法≒主権としてきだが、法の運用者である行政の判断によって統治がなされるという今日的課題に政治哲学がもっとアプローチしていくべきとなっている。
講義内容がベースとの事だが、内容的にはスタンダードではない印象。が、このような解釈もあるのだなと勉強にはなるので読んで損はない。