紙の本
ワン・オブ・ゼムよりはオンリー・ワン
2002/06/16 12:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうも、小説でも他の媒体のもでも、創作物をなんらかのジャンル、カテゴリーに押し込めてレッテルを貼らねばならない風潮というものが、わたしは気にいらない。作品それぞれには、独立した面白さと特徴があってしかるべき。
それがなんらかのジャンルに属さなければ安心して売ったり買ったりできない──オンリー・ワンよりはワン・オブ・ゼムであることを良しとする現状というのは、その作品が本来もっているはずの独自の面白さを十全にアピールできないという、一種の敗北宣言ではないのだろうか。
だから、というわけでもないが、ことさら最近ではジャンルわけの不可能な、境界線上に強く惹かれる傾向があるようだ。
この作品も、「ワン・オブ・ゼムよりはオンリー・ワン」、いわゆるジャンルの枠に収まることを拒む類の作品だ。まあ、この作者の作品はたいがいそいいったタイプに属するのだが。
前世の記憶、超常能力、犯人探し、近親への愛憎、緻密な日常生活の描写……それら、一見関連性のみえないような要素が複雑に絡み合い、撚り合わさって、ひとつの特異な物語を提示していく。
プロローグとエピローグを除き、若い女性の一人称で通した語り口のやわらかさが、この物語のかなり強い「アク」を打ち消す働きをしているのも、好感がもてた。
電子書籍
盛りだくさん
2018/02/02 06:19
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずエピローグで女流画家・高槻倫子が海辺のアトリエで自分の死を予感しながら憑りつかれたように絵を描き、自分が生まれ変わって戻ってくることを宣言します。
本編は彼女の死から25年後経ち、彼女の遺作展が開催され、そこへ向かう「私」が嫌な予感にとらわれ、どんどん気分が悪くなっていくところから始まります。「私」古里万由子は初めて見るはずの絵にデジャヴュを覚え、一番大きな海の絵を見た時に「鋏が」と言いながら悲鳴を上げて気絶してしまいます。後日彼女の(仮の)勤め先である大学教授・浦田泰山の自宅にその画家の息子・高槻秒が訪ねてきて、万由子が母の生まれ変わりではないか、と突拍子もないことを言い出します。彼の母親は海辺でハサミで刺されて殺されたのだと。母の遺言の通りに絵を渡したい人たちがいるのでそれに万由子も同行して欲しいと頼み込みます。万由子は気乗りしなかったものの、泰山の方が「生まれ変わり」説に興味を示したので、その流れで秒が絵を渡しに行くのに付き合うことになるのですが、すると次々と事件が起こります。
こうして見ると、25年前の殺人事件の真相を探るミステリーで、最後に判明する意外な犯人も含めて面白い推理小説だと言えます。でもそこに至るまでに起こる悪意ある脅迫電話や脅迫状、展示会場の放火、万由子の家の前にぶちまけられた魚のアラと赤いペンキ、最初に絵を渡しに行った画廊主の失踪、3番目に絵を渡しに行った女性が万由子と電話中に襲われる等、ホラーサスペンスに近いものを感じます。
そこに万由子の前世の記憶と思われるもののフラッシュバックや特殊能力ー倫子も失せ物を見つけたり、予知能力的な特殊な能力を持っていたーという恩田スパイスが加わり、どこのジャンルにも収まり切らない独自性が発揮され、「盛りだくさん」で贅沢な印象を与えます。
万由子が本当に高槻倫子の生まれ変わりだったのかどうかについては、本編ではかっちり説明がついて決着がついたような印象でしたが、エピローグで「いや、やっぱりそれは違うのでは」というような余韻が残り、どこか結論が曖昧になるのはやはり恩田作品らしいと言えるのではないでしょうか。
文章も読みやすく、一度読み出したら最後まで一気に読んでしまいました。
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この作者との出逢いはまさに「偶然」だった。たまたまコンビニに本を買いにいった。たまたま本棚にあったタイトルに惹かれた。たまたま冒頭が面白かった。たまたま手持ちがあった。それだけ。 その偶然のおかげで、今では大ファンというわけである。 天才画家の息子に主人公は突然「あなたは母の生まれ変わりです」と告げられる。タイトルにふさわしく、読めば読むほど「不安」になる本だ。
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「あなたは母の生まれ変わりです」大学教授秘書の古橋万由子は、二十五年前に変死した天才画家高槻倫子の遺子にそう告げられた。発端は彼女の遺作展会場で、万由子が強烈な既視感に襲われ、「鋏が…」と叫んで失神したことだった。実は、倫子は鋏で首を刺されて殺されたのだ。万由子は本当に倫子の記憶を持つのか?真相を探る彼女に、奇怪な事件が襲いかかる。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200407240000/
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各章につけられた 副題を眺めるだけで そこはかとない不安定さを感じさせる。
こんな具合。
|【第一章】遠い海への道のりは、ある日、突然に始まる
|【第二章】海に向かう道は、長くねじれている
|【第三章】すべての道が、海につながっているように見える
|【第四章】中には、海を見ずに終わるものもいる
|【第五章】海に続く道
一世を風靡し 刺殺という理由で 瞬く間に消え去った 美貌の画家にまるわる物語。
ある特殊な能力を持つ女性が 美人画家の生まれ変わりではないかと疑われる所から物語は始まる。
人の向こう側に 実際には見えないものを見てしまう不安をはじめとして
この作品には 読むものの不安を掻き立てる何かがある。
思い出しそうで思い出せないこと。そしてそれは なんとなく嫌な予感のすることなのだ。
スッキリしたいと思わせながら どんどん不安に引きずり込まれてしまう。
記憶・潜在意識・刷り込み
キーワードは そんなところだろうか。
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輪廻転生や読心といったオカルト要素をもりこみつつも、一応(?)本格ミステリー。
クライマックスで2転3転、最後まで引っ張りまわされました。
余韻の残る終わり方は恩田さんならでは。
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今まで読んだ中では一番どんでんがえしがここちええはなしだとおもえました。
どこで この世に不思議はなんもないってやってくれるんだろうなあとおもっておりました。
うまい
恩田さん ちょっと ここだけは やばい設定かなあと思ったけれども うまい
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恩田陸の本を片っ端から読もうと思って手に取った本その1。
雰囲気は恩田陸だったけどなんか違う感じ。
ストーリーがあまり記憶に残ってないってことは…。
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表紙は新潮文庫版のほうが好み。登場人物があまり魅力的ではないが、文面は相変わらずどこかで読んだようなノスタルジックな印象。
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27日初見。
『球状の季節』にも似た暗さ。恩田陸って大体暗いけども。
なんでお姉ちゃんが鋏を恐がったの?現場を見たから?ん?
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新規購入ではなく、積読状態のもの。
2009/4/29〜5/3
恩田さんの作品は、メフィストの連載で読んでいたが、まとまった形で読むのは初めて。この本も10年くらい前に買ってあったのをようやく読めた。
大学教授秘書の古橋万由子は、訪れた絵画の個展で、今は亡き高槻倫子の遺児、秒から母の生まれ変わりである、と告げられる。万由子は、他人の記憶がフラッシュバックのように見えたが、倫子もそういう体質であったらしい。秒は、万由子に母親を殺した犯人を一緒に探して欲しい、といわれる。個展の際に見つかった倫子の遺言にある絵を渡して欲しい、とあった4人が怪しいと思われたが。その4人と順番に会ううちに万由子に奇怪な事件が次々と起こる。
恩田さんに特有の不思議な独特の世界がこの初期の作品から広がっている。10年積読本にしていたのがもったいないくらいの作品であった。残りの手持ち作品も順次予定本リストに入れて、未購入本も買っていかなければ。
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なんだかなぁ。
え、そんな落ち?みたいな。
かなり不満が残る。
始めが面白かったからが残念。
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25年前に殺された女流画家、高槻倫子の遺作展で、倒れた主人公万由子はその息子高槻秒から、母の生まれ変わりだと告げられます。万由子はよみがえる記憶と共に、高槻倫子の遺言にしたがって、遺作を四人の人物に送ることに付き合わされることになって・・・
万由子はやや特殊な能力を持っていて、人の心の引き出しを見ることができるのです。そのテーマを使ってもSFとして成り立ちそうな設定ですが、あくまでさらっと自然に使われています。また、生まれ変わりというテーマももっと、突き詰めていけそうだし、犯人探しも推理物として、メインテーマにあげられそうです。
どれも、興味をひくのだけど、一番の読みどころはやはり心理劇でしょうか。高槻倫子の軌跡を追うにつれて彼女が生涯が、鮮やかに浮かんできます。
高槻倫子の視点からの小説を読んでみたいです。恩田陸なら書いてくれそうだな。
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超能力系の話。劫尽童女よりは読みやすい。
ミステリーなんだけど、途中で犯人に見当が付いてしまう。
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【目次】
プロローグ
【第一章】遠い海への道のりは,ある日,突然に始まる
【第二章】海に向かう道は,長くねじれている
【第三章】すべての道が,海につながっているように見える
【第四章】中には,海を水に終わる者もいる
【第五章】海に続く道
エピローグ
解説(小池真理子)