紙の本
学問による実利面での効用
2017/09/30 21:32
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は東京女子大の竹内教授が、一般の人が分かるように経済学の「機会費用」について解説したものである。機会費用とはあまり聞かない用語である。しかし、経済学で社会で生じている現象を説明するためには、あるいは政策立案に活用するためには、便利な理屈である。これを使えばきわめて合理的に分析を行うことができそうである。
学者の仕事の範囲は実はかなり多様である。多くは先端分野のみに関心が集中しがちだが、先端分野はえてしてきわめてわかりにくく、一般の人の理解を得にくいものである。一般の人の理解を得られない学問分野は社会の関心を集めることは困難である。つまり、協力が得られないので、役に立てる段階まで行かないのである。
そこで支持者を集めるために、自分の学問分野についての一般向き解説を行うのである。社会の役に立たない学問は不要であるとの行き過ぎた風潮はまさにこれである。遅まきながら各学問分野も実利につながる応用の道を探し出す方向に動き出した。
その応用分野がニュースや紙面を賑わすようになった。社会に生じる様々な問題は、これまでの単独の学問分野だけでは解決ができなかった。多様な学問分野の成果を応用、組み合わせて社会問題を中心としたソリューション指向になってきた。
機会費用も本書での説明の通り、明快に説明できる。面白い学問分野だと皆が考えるようになるとしめたものである。ある問題には機会費用で説明できるが、似て非なる問題には適用ができない。こういうこともあるのだろう。しかし、これからの学問は実用的な価値があるのだろうか。また、まだその学問分野を志す若い人々は、相変わらずの旧態依然とした教育制度に縛られている。
アカデミックな分野にはまだまだやらねばならないことが山ほどあるのである。改革の歩みは速くはないのである。
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「機会費用」とは何?ということを恋愛から身近な事、経済のことまで、分かりやすく解説している本。
つっこまずにはいられないところも多数あるけど、あくまでこれは機会費用の観点から社会をみた本だからということで、疲れる部分もありました。
結局、機会費用とは、ざっくり言うと、選ばなかった選択肢の価値です。多分。
一番共感したのは行列について書かれているところ。行列解消しない店側の理由。でも、その待っている間に何が出来るか。タダ飯だけど、タダとは言いずらい。そこが一番面白かったです。
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機会損失と機会費用について。
機会損失だけでなく機会費用についても費用として考える。
機会費用は、金銭だけでなく精神的な費用も含まれる。
無電柱化には、交通事故を電柱が防ぐという機会費用が含まれる可能性がある。
失恋で何も手がつかなくなる状態は、その時間を使えば得られる勉強や仕事の機会費用を含む。
交通事故の逸失利益を計算するのは、機会損失を計算しているだけ。仮想的市場法(CVM)などで計測した逸失利益以外の機会費用も計算に含めるべき。
トラベルコスト法で、TDRの価値を計測できる。その方法で屋久島の生態系保存の価値を計測できる。環境省のHPでみられる。
医療費を年寄りに使うべきか、貧しい海外の子供たちに使うべきか。倫理的な問題を含む。
行動を起こしにくいことを企てるときは、あらかじめ機会費用を発生させてしまい、行動を起こさなければ無駄になるようにして行動へのインセンティブにする。
タクシーの渋滞料金とJRの特急料金の払い戻しでは、機会費用の発生原因が逆になっている。タクシーでは乗客に、特急料金ではJRにある。
イールドマネジメント=格安航空券のもと。
路線バスや通勤電車では自由席が存在するので、機会費用が発生しない。その場合、イールドマネジメントで収益を上げることはできない。
JR東海のIC早得、ホテルのデイユース、はイールドマネジメント戦略。
JRAのはずれ馬券が経費になるのは、ギャンブルとしてではなく投資として競馬をしているから。単に楽しんでいるだけではならない。
SUICAとPITAPAの違い=PITAPAは後払い方式。機会費用は発行会社に発生する。
ポイントカードやマイレージを公費で使うのは悪いことで、ポイントを捨てることになる。それは、税金で航空会社や家電量販店に利益を供与していることと同じ。
イスラム金融は、利息は禁止だが利益を上げることは否定されていない。「ムラーパパ」という方法は、銀行が企業に代わって設備を買って、手数料を乗せて企業に請求する。企業は分割で返済する。
公共料金の「適正な利潤」は、資産の額に公正報酬率を掛け合わせたもの。公正報酬率は機会費用そのもの。
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著者の個人的な体験談や日常生活でありがちな行動を経済学の概念である「機会費用」を用いて、判り易く解説されている本です。難しい計算式等は一切出てきませんのでスラスラ読めちゃいますよ♪
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本文中にも何度も書かれていましたが、
「経済学は、お金儲けの学問」
と言われることがよくあります。
いいえ、経済学は、心理学に近いです。
人間がよりよく、便利に生きるための学問です。
私たちは、日々、選択をしながら生きています。真剣に時間をかけて考える大きな選択もあれば、無意識に選んだり、直感で選んだりしている小さな選択もあり、その積み重ねで生きているのです。
「これとあれ、どちらが良いか」
考える時に、冷静に正しく見極める力を養いたいものです。
なお、
本書は「機会費用」と「機会損失」の違いをとても分かりやすく説明されていると感じました。
また、
巻末の読書案内は、さらに勉強を深めるのに役立つ目録だと思います。
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機会費用の考え方について書かれた本。
実例をふんだんに散らし、耳だこになるほど、機会損失の考え方を叩き込まれる内容。