紙の本
これまで知らなかった事実が満載です!
2018/11/07 08:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、標題の通り「真説」で満載の我が国のビジネス・経済・経営について書かれた画期的な書です。これまで私たちは米国の経営・企業論に学べばよくなると信じてきましたが、本書に著者はそれとは全く逆の「米国に学んではいけない」と強調します。その理由として、注目を浴びるシリンコンバレーの成功は米国の軍需産業のおかげであるとか、ベンチャー・キャピタルはイノベーションの役に立たないなど、目からウロコとも思える事実が挙げられています。ぜひ、多くの方々に読んでいただきたい興味深い書です。
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ベンチャー企業とイノベーション
2020/01/19 09:56
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
積読本消化。
日本人の米国信仰の愚かさを企業統治の観点で警告する好著でした。具体的には、新自由主義と金融化が引き起こす短期業績主義により、米国はイノベーションが起きない国家となってしまったことを理路整然に解説。そんな米国に留学した米国かぶれの官僚たちによって、日本も急速に米国化が進んでいて、イノベーションを起こす能力が枯渇しつつあることに警鐘を鳴らしています。また、流行り物には裏があるので、慎重を期すべきだと思いました。大変平易に書かれていますので、ベンチャー企業等に関心のある方にはお勧めします。
企業の短期業績主義による弊害が、将来どのように跳ね返ってくるのか心配ですが、加えて、大学における研究体制の劣化を是正するようにとのノーベル賞受賞者の訴えをガン無視する安倍の姿に、まさに自分の政権の時だけ良ければ良いという国のスタンスが反映されています。一方でモリカケや桜にしか情熱を傾けない野党は絶望的です。時代は早いので、この今のツケが顕在化するのは、そんなに後の話ではないような気がします。
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組織学会主流派の考えに基づいて、著者独特の論理展開で、一見、一般的と思える主張に批判を試みる刺激的な良書。
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「真説・企業論」中野剛志
1980年代以降の米国はベンチャー開業率が下がり続け、2009年以降では1997年の半分しかない。
アメリカの若者が起業する比率は下がり続け、2013年には1989年の三分の一に。
2015年の「Top100グローバルイノベーター」は日本企業は世界最多の40社。2年連続で米国を上回った。
米国の高卒以上比率は先進国中11位。25-34歳までの高卒以上率が55-64歳までのそれより低い唯一の国。
15歳を対象にした国際学力テストPISAでは、2012年の米国の順位は、読解力が24位、科学が28位、数学が36位。日本は、読解力が4位、科学が4位、数学が7位。
アメリカは過去40年、低い生産性を記録し続けている。
社会で全体ではベンチャー企業こそが非効率部門。
政府が支援すべきでない企業
・ライバル企業から市場を奪って成長しただけで、市場全体を大きくしたわけではない企業。
・海外ばかり工場を建て、国内に雇用を生み出さないで成長した企業。
・市場シェアや利益は世界トップクラスではあるが、一握りの経営層と高度な専門技術者だけで構成されており、雇用をたくさん創出しない企業。
1980年代のシリコンバレーはミサイル、衛星、軍事関連及び宇宙関連の電子技術に関わる企業が多数立地していた。彼らは収入の多くを防衛関連の政府契約に依存していた。
アメリカ初のVCは、その創設の目的は軍事的なものであった。
アメリカがITベンチャー大国でシリコンバレーにハイテクベンチャーが集積している理由は米国が世界最大の軍事大国だから。
ハイテクベンチャー企業の7割が最後に資金供給を受けてから2年以内に倒産している。
ハイテクベンチャー企業の半分以上が100万ドル以下の資金調達で倒産している。倒産したハイテクベンチャー企業が調達した資金額の中間値は130万ドル。
ベンチャーキャピタルはイノベーション全体ではなく、その後半であるハイテクの事業化に対して投資している。
技術が革新的なものである場合は、2年で結果を出すのは難しい。
イノベーションとは、事前にはその結果を知る事ができないような活動を言う。結果の見えない不確実な将来に向かって投資や開発といった行動を起こさなければイノベーションは実現しない。
イノベーションが直面する不確実性とは、本質的に「事前には結果を計算できないような将来」を意味する。
全ての成功は直観にかかっている。直観とはその時は分かっていなくても、事後的に正しいと判明することを見通す事のできる能力であり、原理を説明できないにも関わらず、本質的事実を掴み取り、本質的ではないものは捨て去る事のできる能力。
ベンチャーキャピタルのトップ5社が2011年〜2013年前半に出資したシリコンバレー88社のうち、70社の創業者は、「大手IT企業での幹部職経験者や、影響力を持つ人物と関係のある会社に勤めていた人か、すでに起業の経験がある人か、スタンフォード大、ハーバード大、MITのいずれかで学んだ人」であった。
荻生徂徠は、人をただ見ただけでその器量を見抜く事は誰にもできない、名将は一目で人材を見抜くなどと言うのは愚か者が信じている事であると言い、人材を評価するには実際に使ってみる事であり、あれこれ指示せずに好きになようにやらせてみるのがよいと言う。
イノベーションの推進者が、所属する組織内で共有された価値観を理由とする事ができれば、期待される利益の計算において多少劣っていたとしても社内を説得する事ができる。
「イノベーションの理由」が調査対象にしたイノベーションの事例は23件。商品、技術シーズの開発に着想してから事業化に成功するまでに要した期間は平均9.2年。5年以上かかった事例は17件、その中で10年以上かかった事例は9件、さらに15年以上かかった事例が5件であった。2年以内に成功したのは2件のみ。すぐに始めて3ヶ月で潰す意思決定をしていては事業化に成功するものは一つも出ない。
大企業では人的ネットワークをさらに広く、深く、長期間に渡るものにする事。
世界を一変させるような画期的なイノベーションのリスクを担う事ができる最大最強の組織は国家である。
同じ人員、同じ戦略上でビジネスを進めている限り、連続的な改良改善はできてもイノベーションは生まれない。
イノベーションは、単にばらばらのデータや情報をつなぎ合わせるだけではない。それは人間一人ひとりに深く関わる個人と組織の自己変革である。社員の会社とその目的への一体化とコミットメントが必要不可欠。この意味で、イノベーションとしての新たな知識の創造はアイデアと同じくらいアイデアル(理想)を創る事。
イノベーションの本質とは、ある理想やビジョンに従って世界を創り変える事。
新しい知を創る事は、社員一人一人と会社を絶え間ない個人的・組織的自己革新によって創り変える事。
日本に限らず、長期の競争力のある企業は長期雇用を重視する。
長期の競争力とは、持続的に改良改善あるいは革新を生み出し続ける能力の高さの事。
共同体的な企業とは、限定的で長期的な雇用関係や取引関係を持つ企業のこと。
イノベーションを生み出したければ、企業を本当の意味で共同体的な集団へと変えること。
イノベーションの理由は、単純な営利目的ではなく、むしろ利益計算では示すことのできない非経済的な価値観であった。営利中心の発想は、この価値観を殺す。
米国経済における、金融部門が保有する資産は1980年にはGDP比で55%だったのが、2000年には95%にまで膨らんでいる。金融機関の支配力が強くなった事で株価の最大化や短期的利益の追求への圧力が格段に強くなった。
20カ国30年のデータを分析すると、金融部門が成長すると、生産性は低下するという結果が出ている。株主主権論と効率市場仮説から導き出される金融化がイノベーションを促進するものになる事はありえない。
自社株買いこそが米国企業の短期主義を助長し、アメリカのイノベーションを削いできた元凶。コーポレートガバナンス改革の結果、2016年の1-9月までの上場企業による自社株買いの実施額は、4.35兆円と過去最高であり、これが本来ではイノベーションに向かうべき資金。
アメリカ出羽守(でわのかみ)、、、アメリカでは〜、シリコンバレーでは〜と、すぐに海外の手法を真似たがる途上国メンタリティ。
アメリカ出羽守が提唱する経営手法や制度は、日本には馴染まないだけでなく、アメリカでも上手くいっていない。
日本経済は米国を模倣した構造改革が足りないからではなく、構造改革をしたからダメになった。
アメリカはベンチャー企業天国ではない
・開業率はこの30年で半減している。
・1990年代は、IT革命にも関わらず30歳以下の起業家の比率は低下ないし停滞し、特に2010年以降は激減している。
・先進国より途上国の方が起業家率が高い。ペルー、ウガンダ、エクアドル、ヴェネズエラは米国の二倍以上。日本の開業率も高度成長期には現在よりもはるかに高かった。
・アメリカの典型的なベンチャーはイノベーティブなハイテクではなく、パフォーマンスも悪い。
日本は1990年代以降、アメリカを模範としたコーポレートガバナンス改革を続けた結果、米国経済と同様に長期停滞に陥っている。
・日本のコーポレートガバナンス改革は、アメリカのビジネススクールで洗脳された官僚達が主導している。
・日本のコーポレートガバナンス改革は、金融化やグローバル化を推進し、日本企業を短期主義的にする結果を招いている。
・コーポレートガバナンス改革によって、日本はイノベーションが起きない国へと転落する。
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早速、内容ですが
第1章 日本でベンチャー企業を増やすには
あるコンサルタントの提言
アメリカの国家戦略?
自分の頭で考える
①ベンチャー企業を増やしたいのか、イノベーションを
促進したいのか
②なぜ、シリコンバレーだけなのか
③なぜ、外国人の企業を優遇するのか
④なぜ、「英語実践力の抜本的強化」(企業の)英語
公用語化」が必要なのか
第2章 起業大国アメリカの真実
第3章 ベンチャー・キャピタルの目利き術
第4章 最強の起業家は誰か
第5章 オープン・イノベーションの本質
第6章 なぜイノベーティブな企業の方が負けるのか
第7章 なぜ日本経済は、いつまでも停滞から抜け出せない
のか
というないようです。
この本の筋立ては、第1章であるコンサルタントの御説が、日本経済、アメリカの実態の上っ面だけみた論説であるあをひとつひとつ丁寧に化けの皮をはがしていくということになっている。
著者の、いままでからの考え方は一貫していて、日本人社会が培ってきた経済運営のあり方のすばらしさ、重要性をもういちど原点から紐解き、如何にコンサルタントが言っている内容が、今のアメリカ、日本の実体経済からかけ離れたものでるかを立証しながら、各章が進んでいく。
日本社会の閉鎖性が米国のスタイルから遅れをとっているという戦後の丸山節の同根の考え方で、そういう思考の延長線に現在の日本経済もあるという認識で、まるっきり進歩がないと断罪する。
最後に真のイノベーションとは、安定的な長期雇用、安定的な社内風土、外部企業との信頼の中でしか生まれない、ましてやオープン・イノベーションなんぞやは、真逆の結果しか生まないだろう。
日本の所謂停滞は、いつに金融政策の失敗が原因であり、企業活動が原因ではないのである。
久々に中野剛志さんの本を読んだが、言っていることに首尾一貫性があり、すっと読めました(笑)。
また、引用された本をこれからまたボツボツ読んでいきます。
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漠然と「なんで世の中こんな状況になってしまったんだろう?」と疑問に思っていたことが、クリアになった気がする。
①なぜイノベーションが起こらなくなったのか?
②なぜ短期で成長し続けることが求められるようになったのか?
③なぜM&Aが盛んに行われるのか?
④なぜシリコンバレーだけ最先端を行く企業が生まれるのか?
たくさんの文献から数値や背景を明確にして、鋭く分析されている。
本当の部分も多いと思うけど、これが最先端の実態だとするとやってられない。
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経営に関する本で久しぶりに良い!と思った本
通説に対する事実からの示唆、イノベーションの本質、組織論な視点等々
目から鱗(自分がコレって本当?って目で物事を見られていない証左汗)でした
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★7つくらいつけたいくらいに面白かった!
現在のオープンイノベーションが短期的な成果を上げるのには効果的でも長期的にはイノベーションを失っていくこと、アメリカのハイテクベンチャーは国家が育てたこと等、新しい学びが多い。
また文中に参考文献も多く紹介されるため、次の学びもしやすくなっている。
オープンな関係性とクローズドな関係性の良し悪しを把握することが大事だと気付かされた。
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富山氏、赤羽氏を一刀両断していて痛快
オープンイノベーションは個人的にお遊びだと思っていましたけど、やはりそうなのですね
データ、ロジックで完膚なきまでに通説をひっくり返すロジックに舌を巻きます
ただし、じゃあどうすれば?
という提言がないのが残念なところ
言いたいことはわかるけどもう昔には戻れないじゃん
将来について考えようぜ、と
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シリコンバレーは軍事政策の産物、米国のベンチャーキャピタルは金融業、オープンイノベーションは短期利益の追求など日本で蔓延する米国礼賛を否定しドナルド・ドーアが絶賛した日本的経営の復活を啓蒙する書。米国は四半期資本主義だと糾弾し、それに追従する日本政府の経済政策である構造改革こそが現在の低迷を招いている元凶と批判する。締めは例によって新自由主義とグローバリズムの否定になります。レーガン、サッチャーで新自由主義の先駆者であった、アングロサクソン国家が、トランプ大統領を誕生させ、ブレグジットに向かったのは決して一般大衆が愚かだった訳ではないのだな。
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視点が面白かった。
メディアや書籍でよく出てくる経営コンサル出身の冨山氏や赤羽氏の記事を引用し、
それをガシガシ否定していく。
自分もやや盲目的に彼らの意見には同意・納得していただけに、グサグサ切られながら読んだ、笑。
一方、否定された方々からすると、怒り心頭だろう。
自分の短い記事だけを引用され、一方的に否定されているのだから、感じは悪い。
どうせなら、本の中で思い切って対談して、議論してもよかったと思う。
また、よくよく本を読んでいると、著者側に一方的につくのもどうかと思ってくる。
例えば、著者と否定された方々で使っている「ベンチャー」という言葉一つとっても、
両社で定義が違っているように思えてくる。
著者は、個人(or少数)として独立した人や中小企業を立ち上げた人も含めて、ベンチャーと言っているような気がするのに対して、
否定された方々の言うベンチャーはいわゆる「スタートアップ」のことだろう。
といった感じで、あらゆるところにビッグワードの定義の統一がなされていないまま、議論が進んでいるように見えるので、
著者の意見に納得するところと「??」と思ってしまうところがある。
また、(本を読む限りは)記事だけから相手の意見を拾ってきているので、
冨山さんの他の本なども読むと、「そういう意図ではなさそうだ」というところも、やっぱり出てきてしまう。
面白い投げかけだっただけに、その点がちょっと残念だ。
やはり著者には否定した相手とディベートしてもらいたい、笑。
この本は、「どちらが正しいか?」という視点で読むより、
「一方的にどちらかの視点を信じるのではなく、
批判的に物事を見れるようになりましょう」という視点で
読み進めるのが良いのかもしれない。
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■ひとことで言うと
日本的大企業の価値観こそ、イノベーションの源泉
■キーワード
・アメリカ経済は40年以上停滞
→アメリカはもはや企業大国ではない
・イノベーション=不確実=計算不可能
→イノベーションへの投資=不確実性への資源動員
→矛盾の正当化が必要
・イノベーションへの投資には強い権限、営利目的の超越、価値観の共有が必要
→日本的大企業で育まれやすい価値観
・オープン・イノベーション=標準化⇔差別化
→競争力の低下
→クローズド・オープン・イノベーション(限定された関係の中でのオープン・イノベーション)を目指せ
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■メインテーマ
アメリカのベンチャー企業やいのへに関する恐るべき実態と根の深い問題とは?
■著者の主張
共同体的な組織や長期的な人間関係からイノベーションが生まれるのだが、ベンチャー企業などの短期的で流動化した市場環境を推奨する動きが日本にはある。
■学び
何百年も生き残っている老舗企業のサバイバル力に目を向けるべきだが、日本企業は地味で保守的な印象を生む。だから多くの人は、突然現れた勢いがあるベンチャー企業に目がいってしまいそのイメージにより、イノベーションは日本では生まれにくいとなったのだろう。
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自分は大企業側の人間なのだが、確かに入社した90年代から少しづつ研究開発が近視眼的になってきて、成功確率だとかリスク評価だとか訳の分からない算数を駆使して不確実なことを避けるようになってきた。こんなことでイノベーションなんか起こるわけがないのだが、その変化と経営陣がコーポレートガバナンスを叫び始めたり、業績評価にROAを取り入れたりしだした時期が重なる。著者の分析は概ね正しいと思われる。
でも日本人は何か手本がないと何もできないのですよ。太古の昔から。「発展途上国メンタリティ」、まさにその通り。であるからして、バブル崩壊後に自信を失ったリーダー層がアメリカを手本にするのは必然だし、それに味をしめた特権階級層が益々その路線を突き進んだのも必然のように思われる。当時進むべき道が他にあったのか。仮にあったとしても日本人には見つけられなかっただろう。残念だけど。
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失われた平成の30年が、どれだけ間違った方向へ進められていたのか・・・中野先生の視点は「鋭い!」と感じさせられます。
失われた30年を取り戻す「令和」に時代を作れるのか?
早々に世代交代を望みたいと思います。