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読了直後、とても落ち着かない気持ちになったのですが…。その『直後』の感じを、文章にしておけばよかったな…とも思いつつ。
後藤又兵衛さんは、有名かつ人気の武将だけに、虚実入り交じった逸話がたくさんあって、それがために全貌が掴みにくい印象がありました。
ことに、黒田家関連の書籍を読めば読むほど、『キャラ』がわからなくなる…という感じで。
思えば、又さん(以下『又さん』呼びでご無礼を)のみで一冊にまとまっているような書籍は未読だったな…と、(小説仕立てで歴史書ではないものの)この本を選んでみました。
史実云々の前に、その武将の人生を俯瞰で眺めたい時など、やはりこの小説スタイルが有り難いな♪と思います。(その先、興味が出たら研究書へ…という流れのタナベ)
こういったシリーズ、本によっては史料からの情報を淡々と伝えるだけ…という、至極冷静に書かれたものもありますが、時折、作家さんの情熱がほとばしっているような『文学作品』になっているものもあり、この黒部亨さんの「後藤又兵衛」も、まさにその雰囲気でありました♪
何より!又さんと黒田長政さんの、お互いを意識し合う気持ちと葛藤がかなり突っ込んで描かれていて、それがとても『切ない』のです。
骨太で粗っぽく、全体的にドライな印象ではあるのですが、それだけに、二人が抱く『友情』でもなく『親近感』でもなく『主従愛』でもない(主従愛、一番ナイ)、けれど、変に生涯こだわり合ってしまう厄介な感情に、独特のリアルさがありました。
大坂の陣で、最後まで長政さんの姿を戦場に求める又さん…。
切ない…。切ないですよ…。
終盤は長政さん側からの描写は無いのですが、又さん討死にの報に接したときの反応、読みたかったです…。(描写が無いだけに、膨らむ妄想☆)
序盤、あいさつ代わりの取っ組み合いをした二人が、お互いの体臭を脳裏に刻み付け、折に触れて思い出すところがありまして…。(まだ関係がこじれる前の長政さんが、又さんの体臭を懐かしむ描写も☆)
感情とはまた別のレベルの『絆』が描写されているようで、イイな~~と思いました♪
そして!特筆すべきは、明石掃部様の描写が(多くは無いですが)かなり印象的だったことです!!♪
関ヶ原での、長政さんと明石様のやりとりが、私の妄想とはまた違うツボな感じで描かれていて、それだけでもう、大歓喜にて候で♪♪
あと、細かい(けど大事な)ことですが、この本の又さん、長政さんのことをずっと「吉兵衛」呼ばわりだったところに「おお♪」となりました♪
某ドラマ、官兵衛はずっと「官兵衛」呼びなのに、「吉兵衛」はスルーだけに。(拙作もそうですが☆)
この本では、又さんの、吉兵衛さんへの感情以上に、吉兵衛さんが又さんに抱く複雑な愛憎が印象深く描かれていて、随所で「又さん…もっと『大人』になってよ…」と思う瞬間が…。(又さん自身も、吉兵衛さんに対して、つい意固地になってしまうことに悩んでたりするのですが☆)
サラッと感想で終わろうと思いましたが、書きはじめたら、書き留めたいことが次々と…。
この勢いで、又さんのことや朝鮮の陣での黒田軍のことなど、もっと勉強したいな…と思いつつ、当面はムリなことに、切ない気持ちを募らせております…。