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私が読んだのは、単行本で「エドウィン・マルハウス―あるアメリカ作家の生と死」(2003/8)だったけど、文庫化にあたってタイトルが短くなったのが、エレンディラ同様に寂しい。
岸本佐知子は悪くない。
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子供の感性で克明に書かれ、明るいできごとも暗いできごともそこにあるかのように描写される。しかし書き手の言明を素直に受け入れ難い部分もあり、想像の余地が多分にある。おもしろい。
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スティーヴン・ミルハウザーの処女作を読了。
これまでに読んだミルハウザーの小説『マーティン・ドレスラーの夢』『ナイフ投げ師』では、いずれも際限のない人間の欲望、狂気とも言える欲望が重くのしかかっていた。一方、本作は、11歳で夭折した天才作家エドウィン・マルハウスの伝記を、同い年の少年ジェフリーが書くというストーリー。だから、そこまでの重さは感じることはないだろう、しかも処女作だし、と高を括っていた。確かに前半は子供たちの世界を綿密に描き切っていて、子供の頃の自分にも覚えがあるような逸話も満載だ。しかし、エドウィンが恋に落ちるあたりからは、もうほとんど修羅場。とても子供とは思えない、熱病を患ったかのような重くて暗い展開が待ち受けている。
本来、このような展開なら(しかも主人公は子供なので)、エドウィンに感情移入ができそうなものなのだが、この小説ではそれがまったくできない。その理由はジェフリーの視点だ。エドウィンが大切な友人であることは間違いないのだが、彼の伝記を書くことを決めた時点で、ジェフリーは常に一歩引いたところからエドウィンを見ている、いや、より正確に言えば、エドウィンを観察している。さらに、その観察中に、作家本人よりも、その作家を世に知らしめる伝記作家の方が上の存在だ、とまで言い切ってしまう境地に達する。この少し突き放したような視点が本作の肝であり、やっぱりミルハウザーだった、と思える瞬間なのである。
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おもちゃ箱と宝箱をひっくり返したような物語。その、ひっくり返して出てきたもの一つ一つに、まんべんなく焦点が当たるような。全部読み終わって、どこからがフィクションなんだっけ?としばらく考えてしまった。
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翻訳家の岸本佐知子さんは自分が翻訳した本はすべて「傑作だ!」と思いながら訳すそうだが、中でもイチ押しがこの本だとか。さもありなん‼︎こども時代、怖がりで移り気で(時に意地悪だった)自分自身の様々な遠い記憶が容赦なく掘り起こされたようで…今ここに居るのがふしぎに思える。
忘れられない一冊になりそうです。
(岸本佐知子さんの訳が素晴らしい‼︎)
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時系列で書かれているが乱雑な印象。文章は面白いのですが、盛り上がりどころに欠け、読んでいてやや苦痛。一般人の人生なんて実際はそんなものなのでしょうね。
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かなり長いお話なので、少しだらけてしまった。最後がインパクト強くて驚いた記憶がある。
年譜や手と足の絵が載ってたりとよりリアリティを感じた。
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描写力がすごい。キャッチャー・イン・ザ・ライみたいな多くの人がぶち当たるある時期の感情のもつれとかとは違ってターニングポイントにすらならずに忘れ去られた子供時代をよくあそこまで表現できるなと思った。
----ここからネタバレ----
エドウィンが撃つフリして目を開けたことによって安堵するよりも伝記を書くためのプロットを完成させることを厭わなかったジェフかなりやばい
あと表向きには多くの人が忘れ去ってしまった子供時代の感性を忘れることなく保ち続けたエドウィンの人生と作品話なんだろうけど、ジェフがそこから外れることを許さなかったという感じがするんだよなぁ
ローズ・ドーンやアーノルドからの影響を危惧してたり、恋に落ちたとなれば相手が誰かと気にしたり…
ジェフが、エドウィンがこの世を去ったあとも揶揄われ続けてるような気がするの、自分が書いた伝記をエドウィンにほらみろって見せられないからじゃないのか
途中途中に出てきたエドウィンが伝記を嘲笑する描写に本人の前じゃなくて作品のなかで反論してたからずっとモヤってるんやろ?
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子供時代の描写の緻密さと瑞々しさと主人公の観察眼(狂気)
グリーンとブルーの八月、オレンジとブルーの十月、白、ブルーの十二月とかの表現が美しい
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子ども目線の細かい描写が凄かった。物語も読み進めるうちに、なんか気になる登場人物が多くてゆっくりゆっくり読み進めていけた。
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子どもが子どもの伝記を書く。生まれた時から観察される者であるエドウィンと6カ月年長の観察する者であるジェフリー。純粋な子どもらしい興味や不思議や無邪気な残酷さに満ちた幼年期、悪魔に魅入られたような恋や友情の壮年期、そして作家としての苦悩と言っても9才から10才の事象だ。次第に伝記作家としてのジェフリーの存在が不気味に全体を侵食してくるかのようで怖かった。
リアリティーのある描写が目に見えるようでした。
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一回挫折して返却。幼年期を読んだ。
読みにくいわけではなく、一体この話はどうなっているのか、自分は今何を読んでいるのか、わからなくなってきた・・。いつかまた。
「11歳で夭逝した天才作家の評伝を親友が描く。
子供部屋、夜の遊園地、アニメ映画など、濃密な子供の世界が展開され、驚きの結末を迎えるダークな物語。」
[小説の面白さとおそろしさがたっぷりと詰まっている。
控えめに言って、僕が今まで読んできた小説の中で
最上のもののひとつだ。
無邪気なようでいて、イマジネーションと邪悪さに満ちた、実は恐ろしい物語。作中で、エドウィンの作ったアニメ映画の内容が描かれるが、その、「アニメ作品の内容を、小説で表現する」描写の豊かさに、僕はめまいを感じるほど打ちのめされた。そして今も、依然として、打ちのめされ中。]
(『3652』伊坂幸太郎エッセイ集 p.138より)
切実で、キュートで、少し悲しくて、絶対に美しい。
少年時代のすべてが描かれている小説です。
──西加奈子氏