紙の本
東日本大震災から5年が過ぎて・・・読むべき一冊。
2016/04/13 12:31
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災を題材にした小説はたくさんあるが、
立ち入り禁止地域の海から思い出の品を収集するダイバーを
主人公にするストーリーに、天童さんの力にあらためて驚かされます。
ダイバーは何故潜るのか、
自分は何故生き残ったのか、
生き残った人たちを救えるのは何か、
それぞれが答えを求め何かに縋り付こうとする。
自分だけが幸せになってはいけないと思う人。
幸せになるために大切な人の死を確かめようとする人。
家族が助かった事を神様に感謝する主人公の妻。
自分がいる場所を見失い、他の何かに縋り付きたい気持ちとの葛藤。
海の底から浮かび上がった主人公が、自分の立っている場所の大切さに気づき大切なものを自分で選んだ姿に、
読者は前に歩む力と明日への勇気を与えられるだろう。
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ダイバーは必読(?)。そう軽はずみに(善意であっても)あの海で潜りたいなんて言えないなあと反省。本文はよかったけど,出版社のサイトの「作品紹介」および「担当編集者より」の文章で「フクシマ」って書き方がされてるのをみつけて萎えてしまった。ちなみに本文にはその地名自体明示されていない。それはやっぱり何かしら思うところあってのことだと思うんだけどなー。サイトを見たのが読了あとでよかった。
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震災から数年経過しても深い傷を負ったままの人たち。
行方不明の家族の消息を求め続けている人たち。
それぞれの想いが、彼を深夜の海に潜らせる。
大切な人の痕跡を求めて。
大きな災害によって無慈悲に奪われた人々の未来。
遺された人たちの絶望と苦悩。
実に重いものを背負ってこの物語は在る。
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震災について様々な人達が描いているが
天童さんはどんな風に描くのだろうとずっと心待ちにしていた。
タイトルそのまま夜の深い海の底に漂うような
静かな深い哀しみがあった。
【図書館・初読・2/6読了】
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3・11から5年目となるフクシマ。非合法のダイバーは人と町をさらった立入禁止の海に潜降する。慟哭の夜から圧倒的救済の光さす海へ。鎮魂と生への祈りをこめた作品。
海に流された命と思い出。
沢山の偶然や運命があったあの日。
いつまでも、切れない思い出。
親戚の人達に聞いた、
あの日の事を思い出す作品です。
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震災から5年。
昔山だったところが海に沈み
海だったところが山となる
人は何をもって生を感じるのか
生きているという実感を得られるのか
未来を見るためには
過去をあきらめることが必要だ。
では何を基準に諦めればよいのか。
答えは出ない
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2016年17冊目。
天童荒太さんの小説を手に取るときはいつも、「読むのが楽しみ」という気持ちとは違う。
でも、生きることを考える上で読むべきものばかり。
5年が経った被災地で(本文では明言されず帯のみだが、福島のよう)、汚染の危険がある海に潜り、亡くなった方々の遺品を遺族のために拾い集める主人公・瀬奈舟作。
彼と、彼の周囲の人々は、悩み続けている。
遺された者は、幸せになってはいけないのか。
限られた月明かりの元でしか行えない非合法のダイブ。
明る過ぎる日の元では詮索できないことがある。
一度に見え過ぎてしまうのは怖い。
彼らの心の探り方も、限られた明かりの中での手探り。
ゆっくりでいい。でも潜らなければいけない。
そして、帰ってこなければいけない。
そう思う。
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報道でもあまり取り上げられることもなく
想像もしたことのない
あの海の中がこんなことになっているのかと
初めて知りました。
様々な危険を冒してでも
その海に潜り、どうしても取り返したい
大切な人の手がかりが欲しい
そう感じておられる被災者の方も多いのでは?
どうにかできないものか、もどかしい気持ちになった。
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熊本地震からちょうど1年。
熊本の2度の揺れはすごかったし、夜中でなければもっとたくさんの被害があったと思われる。
でも、東日本とはやはり比べるものではないけど、大きく違う。
津波、放射線、、
亡くなった多くの人、残され生きる人に思いをはせた。
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メディアを通して被災した地域の状況などは目にしてきましたが、活字となってこのような状況を知るというのは目で見る時よりもまた印象が違い風景も被災した人達の心の中などあらゆるものが暗く今までとは到底想像の出来ないものへと変化しているのが伝わります。
とかく被災をしてから復興へと叫ばれていましたが、
物が徐々に動くようになり、風景も少しづつ前のようにと移ろっていきます。被災した人達の心も一見すると前を向いて歩いているようにも思えましたが、
実は心の奥底ではあの日のままで忘れることの出来なくて辛くてどうしようもない心情でいるということが切々と伝わり涙に誘われます。
舟作の秘密の仕事である立ち入り禁止地域での引き上げ作業はメディアでも見たことがありますが、
想像以上に危険な仕事であるけれど、
何もかも一瞬で奪われてしまった物を少しでも良いから
あの日の前に戻して欲しいという思いや
何か形ある物を欲しいという思いもあるので、
自分の危険を晒してでも作業に打ち込んでしまうのかと思いました。
海中の風景の描写はダイバーの資格を取っただけあって、暗黒の世界が不気味でいて、時には不思議な魔力を満ちたりして独特な雰囲気が漂っているのが目の前で映っているかのようでした。
依頼会社からのルートではなく直接コンタクトを取ってきた透子は行方不明者である夫の指輪を探さないで欲しいという要望には初めは理解できなかったですが、ストーリーが進んでいくうちに彼女の内心が分かってきてこうゆう愛情もあるのだと思えました。
ここまでの愛情に繋がるにはこのような特別な事態だったからこそだとも思いました。
天童さんの作品は以前『悼む人』を読んで理解するのが
やや難しいなと思っていましたが、
この作品はテーマがははっきりとしているの分かりやすかったです。
けれど鎮魂の祈りを込めて書かれたと思うのですが、
途中で透子との接触の仕方や奥さんとの情事などは
少しこの風景とは似つかわしくないようにも思えました。
でもこれを書き入れることで殺風景だった景色に色が入ったように、これまでの舟作とは思えない生きるということへの欲求を際立たせるためにも
これが必要なのかと考えることが出来ました。
この本を通してまた改めて被災した人達へ今後どうしていったら良いのかと考えを突きつけられたように思いました。
一体真の復興とはなんなのか?
そしてこの作品を通して3.11を風化させることが無いように祈りを込めたいと思います。
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東北の海。思い出捜しに夜だけ潜るダイバー。これだけで何をモチーフにしているか想像できてしまうが、それが大衆の願いとして否定できないからついはまってしまう。ムーンナイト・ダイバーが最後に漏らした望みが忘れられない。
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ムーンナイト・ダイバー 天童荒太著 死者の記憶とどう向き合うか
2016/2/28付日本経済新聞 朝刊
津波に襲われ、放射能に汚染され、5年目を迎えてもなお立入り禁止の地域の海。月の夜、煌々(こうこう)たる照明が「建屋」を照らす〈光のエリア〉の近く、闇に紛れて、その禁忌の海に小さなボートがひっそり浮かび、ひとりのダイバーが海中に潜る。海底には、いまは「瓦礫(がれき)」や「ゴミ」と目されているが本来は人々のかけがえのない生活の断片であった大量の物たちが沈んでいる。ダイバーは秘密の組織の依頼を請け負って、小さな物を少しずつ回収しているのだ。
大震災と原発事故に触発された小説は多いようだが、この設定にはドキッとする。
私は、タルコフスキー監督の映画『ストーカー』を、その原作となったストルガツキー兄弟のSF小説『路傍のピクニック』を、思い出した。1970年代前半に発表され、後のチェルノブイリ原発事故を「予言」したかのように喧伝(けんでん)されたこともあるあの小説も、立入り禁止の「ゾーン」に侵入して高度な科学文明の残した危険な「ゴミ」を、しかし人間にとっては貴重な「宝」でもありうる物を、持ち帰るという設定だった。
だが、『ムーンナイト・ダイバー』はSFではない。悲惨な現実を踏まえているがゆえに、作者は細部まで徹底的にリアリティにこだわっている。
海に潜る主人公も被災して肉親を亡くした漁師なのだし、依頼する秘密の組織も10人ほどの遺族たちの会であり、会を立ち上げたのもやはり肉親を亡くした平凡な公務員だ。彼らは皆、思い出の品や死者の「遺品」や行方不明者の運命を知る手がかりが回収されることを願って集まった。
ただ、禁を犯した行為として処罰されかねないので、会は厳格なルールを作って秘密を守らなければならない。このルールは、子ども用の安価なティアラさえも、貴金属目当ての盗み目的だと誤解されないために、持ち帰ることを禁じている。
しかし、納得し合ったはずの非情なルールは、彼らを突き動かしている切実きわまりない願いと時に矛盾する。会員に関わる何かが発見された時にこそ、その矛盾は噴出するのである。会員はダイバーとの接触を禁じられているのだが、とうとう、主人公の前に会員の女性が現れ、ドラマが動き始める。ドラマはなにより、当事者たちの心のドラマだ。
生者は生者だけで生きているのか、生者は死者の記憶とどう向き合い、どう折り合えば前に進めるのか。小説の問いは読者にも突きつけられる。
(文芸春秋・1500円)
てんどう・あらた 60年愛媛県生まれ。作家。著書に『永遠の仔』(日本推理作家協会賞)、『悼む人』(直木賞)など。
《評》文芸評論家
井口 時男
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311から5年後の福島で、立ち入り禁止海域に潜って「想い出の品」を引き上げて依頼者グループの会に渡しているダイバーが主人公のフクシマ物語。俺には少し重たすぎるテーマで持て余してしまいました。
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図書館で借りた本。震災から数年経った福島の海で遺体発見できなかった遺族達の為にダイバーインストラクター資格を持つ漁師がこっそり海に潜り遺品等を持ち帰る仕事の話。何かあったら問題になるので全て秘密裏の仕事とし、遺族達は口外しない事を条件に会員になり漁師に会費と言う形でお金を払うシステム。震災の内容も出てくるのだが三分の一は主人公の漁師が海に潜るようになって性的欲求爆発しちゃった話なので、しんみりとは来ない流れになってしまっている。
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3.11から5年の歳月が経とうとしている。そんな今だからこそ、この作品は読む意義があるように思える。
立ち入りの出来ないフクシマの海に潜り、犠牲になった人々の遺品を探すダイバーに纏わりつくシガラミ。本人も両親と兄を失っている。
暗く不気味な海に潜っていくダイバーの精神を巧みに描く。自分もダイバーの一人としてこの作品に描かれるダイビングは少し後ずさる。