紙の本
これがSFと思えた時代があった
2007/05/29 00:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
何がどうとうまく言えないのですが、ここに収められている「幽霊時代」「時計台」「ケンタウロスの子守唄」「水の中の微笑」「エンゼル・ゴーホーム」を読むと、「ああこれがSFだよなあ」と思ってしまいます。今ではSFというもの自体が非常に拡散してしまって、あれもSF、これもSFとなってしまっているので、「SFって何だ」ということまで考えなくてはならなくなってしまいますが、私たちの世代が思うSFはきっとこの『幽霊時代』のようなものだと誰もが思うのではないでしょうか。
個人的には「幽霊時代」はSFに違いないのですが、離人症を思わせる話で非常に面白かったです。
「時計台」や「ケンタウロスの子守唄」「水の中の微笑」は、どこかで読んだことがある雰囲気をもったものでした。そして、「エンゼル・ゴーホーム」はどこかで読んだことがあるどころではなく、しっかりパロディになっています。
しかし、実は一番面白かったのは巻末にある「解説」ですね。栗本薫のご主人である今岡清氏が書いているのですが、これがまたパロディと言うか何と言うか。ネタバレになってしまうので書きませんが(絶版になっているのなら書いても構わないのかもしれませんが)、この「解説」のためだけに単行本でなく文庫版を読む価値があると思いますし、お勧めします。
投稿元:
レビューを見る
栗本薫の時計台を収蔵している。
初出が『オール讀物』1980年2月号で、
文庫は「幽霊時代」(講談社文庫)に収蔵している。
2人が時計台で見つめ合いながら、
ある日に言葉をかけ、
永久に出会えなくなる。
SFと半ばホラーのような話。
短編小説群
幽霊時代
時計台
ケンタウロスの子守唄
水の中の微笑
エンゼルゴーホーム
エンゼルゴーホームの後書き
からなる。
ps.
栗本薫がSF(science fiction:科学小説)作家だったことが分かる作品。
SFマガジンの編集者とご結婚されたためか,SF愛好者の間での人気はいま一歩なのかもしれない。
伊集院大介が登場する推理小説や,
グインサーガのような幻想小説(ファンタジー)や,
本人が書きたいときに書いているBL(boys love)などに比べると、
力がないような気もする。
それでも,「時計台」の最期は
B.G.M. "The Sad Cafe" by Eagles.
と音楽愛好家で,音楽や音楽劇(ミュージカル)を製作、演奏しているだけのおもむきがある。
「ケンタウロスの子守唄」は,作詞:筒井康隆、作曲:山下洋輔の曲の歌詞を最初に掲載している。
素人にはできない業だし,
個々の作品には,深い思いを感じる。
誰かの解説が付いていないと、読飛ばしてしまうかもしれない。
「水の中の微笑」は,広島の原爆投下に対する伝言である。
人の思いに対する伝言でもある。
それぞれ重い思いをもっている。
それぞれの作品を通してみると、やや後ろ向きのものを感じてしまうかもしれない。
読んで、前向きになろうとすると,「幽霊時代」のように時代に淘汰されるのかもしれない。
全体を通じて,いろいろな罠をしかけている。
エンゼルゴーホームは,ブラウンの「火星人ゴーホーム」のパロディで,火星人ゴーホームは,「ヤンキーゴーホーム」のもじりとのこと。
著者が読む事を勧めている。
投稿元:
レビューを見る
「幽霊時代」というタイトルですが、全編SFです。
「幽霊時代」「時計台」「ケンタウロスの子守唄」「水の中の微笑」「エンゼル・ゴーホーム」の短編5本収録。
栗本薫というと、私にとってはグインサーガだったり伊集院大介ですが、これ読むと、SF作家だなぁと思わせます。やはりこの人多才ですね。
収録5本とも、とても面白いですが、「古き良き」SFという雰囲気。書かれたのが1985年なので、さもありなん。でもこういう話しも良いものです。
あと、巻末の「解説」が夫婦共作というわけのわからない(^_^;)解説です。しかも自分の作品を自分で解説するとか、もう何でもアリ。笑わせてくれます。
投稿元:
レビューを見る
幽霊時代、時計台、ケンタウロスの子守唄、水の中の微笑、エンゼル・ゴーホームの5篇。いずれもSF作品。エンゼル・ゴーホームは他の本で読んだ記憶ありで、コメディー風の作品で楽しい。それ以外は暗めの話。ただ短編だと骨組みがきっちりしているのがわかっておもしろい。