紙の本
もう一度調査して
2018/05/10 22:49
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Ottoさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史教科書の知識レベルでは軟弱外交のイメージだった幣原喜重郎が強いリーダーシップで戦後すぐに立ち上げた「戦争調査会」の存在を本書で初めて知った。
本書の読者は、「戦争調査会」の目的と同じように、なぜ無謀な戦争に突き進んでしまったのか、どこで間違ったのかを知りたくてこの本を手に取ると思う。「戦争調査会」が結果報告を出せないまま解散させられたように、本書においても結論は明快になっていない。
なお、地図や年表が掲載されていないので、簡単なものを手元に置いて読むといいだろう。
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戦後すぐの時点で日本がなぜ無謀な戦争に突入してしまったのか,その原因究明のために組織された「戦争調査会」。本書第一部はその戦争調査会成立の経緯と解散させられるまでを描く。第二部は実際に戦争調査会が収集した資料(2015年にゆまに書房から全15巻で復刻刊行されている)をもとに日本がどこで道を誤ったと考えられていたのかを分析していく。まさに著者によるこの未完の国家プロジェクトの再構成となっている。
非常に興味深い論点が多々提示されており,勉強になった。
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戦後直後の日本、敗北の原因を探ろうとした人々とその挫折を丁寧に追っていった本。
戦争開始に至る原因を探る当時の人々の考察を追う。
結論としては大日本帝国憲法の運用に齟齬が生じたのが原因だと結論づけている。
そこだけは気に入らない。
大日本帝国憲法の手本となったプロイセン憲法と帷幄上奏権の関係を無視している。プロイセンにおいては帷幄上奏権は軍事関係について皇帝に上奏することができると限定されていた。しかしながら大日本帝国憲法は帷幄上奏権は軍が政治全般に介入する余地を作った、いわば劣化コピーであることは言及されていない。
第二次世界大戦に日本が突入し、敗北する原因はやはり明治維新まで遡るべきだというのがレビュアーの意見である。
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淡々と読み解かれてゆく。
それは過不足なく、とても頭に入ってゆきやすい。
敗戦後、日本政府が独自にあの戦争のことを調査しようとしていた、
そのことにまず驚かざるをえない。
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戦争調査会という存在を全く知らなかった 幣原・吉田両氏の努力の賜 さすが外交官
失敗の本質は幾つかあるが
改選のタイミング
満州事変
日華事変
近衛首相 蒋介石国民党を相手にせず
三国同盟
南仏印侵攻
そして終戦のタイミング 最期の一年の犠牲の多さ
決断できず サイパン島玉砕 大空襲
ソ連へ和平仲介期待
日本は戦略決断ができない
戦争のような大きな事案も、ミクロを積み重ねて合成の誤謬
GHQに本調査会を止められた後、誰もフォローしていなかったのは?
著者は一橋大学細谷ゼミ 親近感を感じる
もう少しスッキリを期待
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ブロック経済下にあっても、日本の輸出はそんなにダメージを受けていない、戦時中は農業の機械化が進んだ、という論が面白い。三国同盟がアメリカとの対立を生むvsアメリカへの圧力なる、など、様々な考えや要因が戦争につながっていった…しかし、誰も決断しないのが日本的かも。
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東京裁判史観とは違った趣があるのは確かなのだが、敗戦直後のインタビューなので当然当事者達は自己弁護的だし、語っている内容が史実かどうかは相当疑わしい。でも、それはそれとして、この調査そのものは史実であり、それをどう料理するかが歴史家の腕の見せどころなわけだが、概ね井上先生のこれまでの研究内容に嵌め込むような解釈で終わってしまった印象。
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太平洋戦争は避けられなかったのか、これまでの通説とは異なる終戦当時の生々しい証言が多く、非常におもしろかった。
人口膨張も、ブロック経済も満州獲得には関係がなかったという説や、天皇大権の運用がまずかったという話、かなり興味深い。
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毎日新聞20171210掲載 評者: 五百旗頭真(熊本県立大学理事長・日本政治外交史)
毎日新聞201817掲載
日経新聞2018120掲載 評者: 小菅信子(山梨学院大学教授)
朝日新聞2018121掲載 評者: 保阪正康(ノンフィクション作家)
東京新聞201834掲載 評者: 藤沢周(作家)
日経新聞20211127掲載 評者: 五百旗頭薫(東京大学教授)
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大きな出来事の原因調査をうやむやにする傾向がある日本人だが、あの戦争はあまりにも反省材料が多いこともあり、戦争調査会が精力的に戦争の原因を多くの当事者からの証言をもとに解き明かしている.このような文書の存在は知らなかったが、またこれも我国の悪い癖だが、公開して議論することを回避してきた.満州事変後の展開の中で幾度も全面戦争回避のチャンスがあったことが明記されているが、これらの事実を現在の政治家が肝に銘じて日頃の活動の糧としてほしい.まずはこの文書に目を通すことがスタートだと感じた.