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紙の本
村上春樹の仕掛け?
2005/01/27 02:36
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Straight No Chaser - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹は、読者たちがムラカミハルキ的な小説世界にはまりすぎてしまうことに危機感をもち(なんとか責任をとらなければまずいのかもしれない)、自らの小説世界を総括するようなかたちで『アフターダーク』を書いてくれたのかもしれない、とか思う。
『回転木馬のデッド・ヒート』という短篇集は、「小説」ではなく「スケッチ」であるという。『使いみちのない風景』(村上春樹・文、稲越功一・写真)というエッセイ集のなかに、こんな文章がある。
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村上春樹にシンパシーを感じる人のなかには、人の話を聞くことが好きな人が少なくないように思う。「自分は人の話を面白く聞くことが、もしかすると、他の人にくらべて少しばかり得手な人間なのかもしれない、これといって人に誇れるようなところなどない人間だけれど……」、なにかの拍子にふとそんなふうに自分を定義してしまって、あとで後悔する。恥ずかしい。
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(BGMは、たとえばGuns N’RosesのPatience)
我慢強さだけではどこにも行けないけれど、そもそもどこにも行けないのが人間なのかもしれない、回転木馬のように、ということにドンキホーテのように挑戦しようとしたりして。
「突撃板に体当たりする俳優は血を流し骨を折った」と評されるような肉体派的なアングラ芝居で70年代に一世を風靡した劇作&演出家・金杉忠男は1993年、村上春樹の『プールサイド』(本書所収)と『ダンス・ダンス・ダンス』にインスパイアされて書いた『プールサイド』という芝居を下北沢ザ・スズナリで上演。男は言う、「耳の奥の方で誰かがぼくのために涙を流して、ぼくを求めているんだよ」。イルカは答える、「それはたぶん、誰かが君のために涙を流しているんだ。誰かが君を求めているんだよきっと。君がそう感じるなら、そのとおりなんだよ。いいかい。それがどんなにみすぼらしい行為に思えても音楽の鳴りつづく限りベストを尽くすんだよ」。(『グッバイ原っぱ』より)
村上春樹が敬愛する作家のひとりレイモンド・チャンドラーの『プレイバック』(清水俊二・訳)の最後の一文はこう。「部屋のなかに音楽がみちみちていた」
『アフターダーク』で、音楽青年・高橋は不思議少女・マリに自らのモットーを語る。「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」
『アフターダーク』(2004)によく似た手触りの『回転木馬のデッド・ヒート』(1985)という都市に生きる人々のスケッチ集を読み返しながら、そういえば(ふたつの中間点のように)阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件があったのだな、と思い出す。
紙の本
短編の方が好きかも
2023/06/27 15:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:a - この投稿者のレビュー一覧を見る
本は絶対に読むべきだし、旅行に行けずどこにも行かず、閉じこもるなら本の世界にいくべきと自戒を込めて、 久しぶりに読んでよかった。
紙の本
手練れの見事さ
2021/07/28 23:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
この短篇集をどこまで真面目に考えるべきなのだろうか。さらっと軽く書き流したように読めなくもない。しかしやはりそこには村上春樹のシリアスな面も見え隠れしているのである。