電子書籍
SF古典名作の誕生の背景
2018/06/03 00:36
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
レムの生い立ちなど知らずに触れていた“ソラリス”。ソ連文学の本流だと思っていました。しかし、ソ連から奪われた国家、ポーランド出身のレムだからこそ、SFの埒外を越えた作品として著せた、不条理な世界観なのではないでしょうか。
紙の本
古びない、訳の分からなさ
2018/06/03 00:25
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリーは何となく知っていましたが、難解そうな故に敬遠していました。テレビ番組と共に読むと面白く読み進めました。いい意味で相変わらず訳は分かりませんでしたけど。
紙の本
レトロフューチャーに留まらないSF古典の紹介
2017/12/31 21:28
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投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
不明にして『ソラリス』といえば、ソ連映画『惑星ソラリス』のイメージからロシア文学だと思っていました。レムがポーランド人であるということが、『ソラリス』の背景になっていることを認識させてくれるテキストでした。
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https://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/71_solaris/index.html
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ポーランド語原著からの日本語訳、
スタニスワフ・レム『ソラリス』を
翻訳者の解説によって読み解く『100分de名著』の
テキスト。
小説読了後に、このテキストを読み、
録画した番組を視聴しての
双方の感想が入り混じっています。
よって、若干のネタバレ臭は否めないのでご注意を。
ⅰ.未知なるものとのコンタクト
作者スタニスワフ・レムの来歴、
出身地ポーランドの特異な歴史。
物事の不確実性を実感して育った秀才は
医学から科学・哲学、文学の道へ。
社会主義リアリズムからの脱却。
『ソラリス』は人間以外の理性との
接触の物語であること。
ⅱ.心の奥底にうごめくもの
ソラリス観測ステーションに現れた「お客」とは、
各人の内部で抑圧された記憶が実体化したもの。
それこそが異文明とのコンタクトである。
ソラリスはヒトの脳をスキャンして、
当人が意識の底に封じ込めておきたい思い出に
まつわる人物を
3Dプリンタで実体化している風だが、
それは「おもてなし」か、はたまた「嫌がらせ」か。
主人公クリス・ケルヴィンの前に、
自殺した妻あるいは同棲相手であった女性ハリーが
登場するが、
彼女の衣服にボタンもファスナーもなく、
着替えの際に鋏で生地を切らなければ脱げない
という描写には、
彼が身近な女性といえども、
着ている服のデザインには注意を払っておらず、
細部のデータが抽出されなかったことを示している。
また、人間は未知なるものとの出会いを求めて
宇宙に出ても、
見つけたいのは自身の理想化された姿であって、
人間以外との接触を望んでいないから、
異なる様態の知性に出くわすと
恐れおののいてしまう由。
※テキストに掲載された各国語訳『ソラリス』の
表紙に、不気味なイラストが多い点に驚いたが、
それは主人公たちの「恐れ」と「おののき」の
源泉=インナーコズミックホラーとでも呼ぶべき
イメージを画像化したからでは……と、
合点が行った。
ⅲ.人間とは何か 自己とは何か
著者の構想の枠を超えて
キャラクターが生き生きと動き出したためか、
恋愛小説の趣もある『ソラリス』。
ハリーはケルヴィンに寄り添ううちに、
人間らしさを学習し、しかも、
雛型であるケルヴィンの亡妻と自分とは
別々の個体だと理解する。
そして、彼女ではなく「わたし」を愛してくれと
ケルヴィンに訴える。
コピーロボットに独立した自我が芽生えたかのように。
しかし「幽体F」のハリーは
生前のハリー本人の複製ではなく、
ケルヴィンの心に生き続けた、
言わば理想化されたハリーの
3Dプリンティングのようなものなので、
二人の心理的な距離がどんどん縮まって
愛が深まっていく点が興味深い――という、
伊集院光氏の“読み”は鋭い!
ⅳ.不完全な神々のたわむれ
「神の赤子の揺り籠」としてのソラリスの海。
不可解さ、違和感に背を向けず、
自分を絶対化しないというケルヴィンの決意。
「懐かしさ」と「違和感」は相容れないものであり、
懐かしいと感じる(ノスタルジーに溺れる)のは
対象が自分にとって最早「他人事」と化している証拠
――という、ゲスト瀬名秀明氏の指摘に膝を打つ。
『ソラリス』はSFというジャンルだからこそ古びず、
普遍性を保ち、
時代や国を超えて読み継がれる名作となった。
コンピュータについては、
作品成立当時と現代ではスペックに雲泥の差があるので、
どことなくチープでアナログな印象を受けるが、
それ以外は細部まで古さを感じさせず、
今後もずっと多くの愛読者を獲得し続けるだろうと思った。
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新刊情報をチェックしていた時に発見。『NHK出版出版からソラリス? 一体何のこっちゃ??』と思っていたが、Eテレで『100分de名著』という番組が放映されており、本書はその教本というか、副読本に相当するものらしい。生まれて初めてNHKテキスト買っちゃったよ……。
『ソラリス』とは一体どういう小説で、如何に読むか、ということが、すっきり纏まっている。テレビって凄いなぁ……。
読み返そうかと思って国書刊行会の『スタニスワフ・レム・コレクション』を探していたが、『ソラリス』だけが見当たらない。あれ?
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「スタニスワフ・レム『ソラリス』」沼野充義著、NHK出版、2017.12.01
97p ¥566 C9497 (2018.01.02読了)(2017.11.27購入)
『ソラリス』との最初の出会いは、映画『惑星ソラリス』でした。多分題名にひかれて見に行ったのだと思います。見た印象は、内容がよくわからず、眠かった!です。
相手はソラリスの海なので、最初は何が起こっているのかわかりませんでした。知性を持っている海などということは、想像もしてみたことがありませんし、今でも想像不能です。
ソラリスの海が、観測している人間の考えていることを読み取って、その人間の記憶に残っている人物に形を与えて宇宙ステーションに送り込んでくる、等、いったいどうやって思いついたのでしょうか?
映画を見てだいぶたってから原作の『ソラリスの陽のもとに』を読みました。映画の予備知識があったせいか、映画を見た時よりはわかりやすかったかな、と思います。
SF小説とは言いながら、想像を絶する内容の本で、驚きます。
今回読んだこの本は、『ソラリス』の内容をわかりやすく紹介してくれています。『ソラリスの陽のもとに』は、原典のポーランド語からロシア語に翻訳した本から日本語に訳したものだそうです。ロシア語に訳すときに検閲を恐れて、内容がいくつかの個所で削除されているそうです。現在は、ポーランド語から直接翻訳した本が出ているそうです。
レムが、地球外の知性との遭遇を扱った三大長編は、『エデン』『ソラリス』『砂漠の惑星』だそうです。『ソラリス』『砂漠の惑星』は読んだので、『エデン』を読みたいところですが、現在、入手困難のようです。
【目次】
【はじめに】二十世紀世界文学の古典となったSF小説
第1回 未知なるものとのコンタクト
第2回 心の奥底にうごめくもの
第3回 人間とは何か 自己とは何か
第4回 不完全な神々のたわむれ
●理解できない他者(93頁)
相対主義者であるレムは、人間の理性では理解できない他者が宇宙にある、という認識に立っています。
☆関連図書(既読)
「ソラリスの陽のもとに」スタニスワム・レム著・飯田規和訳、ハヤカワ文庫、1977.04.30
「砂漠の惑星」スタニスワフ・レム著・飯田規和訳、ハヤカワ文庫、2006.06.15
「チェーホフ『かもめ』」沼野充義著、NHK出版、2012.09.01
「かもめ」チェーホフ著・沼野允義訳、集英社文庫、2012.08.25
(2018年1月4日・記)
内容紹介(amazon)
圧倒的な“他者"に、人間は何ができるのか
惑星ソラリスに降り立った心理学者クリスが見たものは…。ポーランド語から約40の言語に翻訳され世界中で読まれ続ける『ソラリス』。SF史に輝く傑作を〈世界文学〉として読み解く。
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『ソラリス』については、私もタルコフスキー映画を通じて知ることとなり、タルコフスキー映画の独特な世界観に強い印象を受けた。
しかし、この本を読むと、タルコフスキーの作った世界と原作者であるレムの小説世界はかなりの違いがあることがわかる。タルコフスキーは信仰や家族への回帰を終着点としたわけだが、レムは、わからないものをそのままに受け止めるというスタイルを選んだ。
解釈はいくらでもありうるわけで、決してタルコフスキーの世界が否定されるべきものとも思われないが、この本でレム作品の解釈を読みながら、ハリーの自我の目覚めと不安は『ブレードランナー』におけるレイチェルのそれを想起させるものだと思われた。
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番組を観て面白かったので読んだ本。面白かった。番組やこの本を読んで、「ソラリス」がSFとして完成度の高い作品だということがわかった。
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NHK100分De名著のソラリスのテキスト。
テレビでは4回の放送だったが、見ることができたのが2回分だったので、テキストで補完しようと思い、読みました。
私はソラリスはタルコフスキーの「惑星ソラリス」を見たことあるだけなので、小説は読んだことはないけれど、TVとこのテキストを読んで、小説は20世紀の代表的な世界的小説と呼んでよい、すごい作品だなと思った。
海とお客様という設定、タルコフスキーの映画の魅力も十分その設定から生じるものがあった。タルコフスキーはやはり映像美が圧倒的で、その雰囲気に感電しまくりな体験だったが、ストーリー的にはあまり理解できたとは言い難い感触があった。(因みに、私はタルコフスキー映画で、一番理解できたと思ったのは「アンドレイ・ルブリョフ」で、一番ストーリーが追えなかったのは「鏡」なんですが、脱線。)
このテキストに記載のあるように、この物語への捉え方がレフとタルコフスキーでは大きく違ったんですね。
やはり、小説をきちんと読まねばと心に誓いました。
「人の記憶、後悔の念などの感情」と「人が自分としてあるべき依るべき何か、アイデンティティ」はいずれも人と人との関係に依存しており、その内容が大きく揺らぐこと、その関係性が揺らぐことで、自分自身の存在意義も大きく揺さぶられる。
その中で、主人公クリスともと恋愛相手のお客様(幽体F)であるハリーとのラブロマンスが絡むというのは、物語としてかなり高いレベルにあると思う。
また、このテキストにも記述があったけれども、歴史小説などは意外とその国独自の歴史小説は世界で受け入れられない傾向があるという。
その中でSFであり、ある意味どの国にも属さない抽象的な設定であるからこそ、このような抽象的であり、ある意味観念的なテーマをエンターテイメント要素も含め扱えるのだなと、感じた。
(これは、ジョージ・オーウェルの1984年でも感じたが)
筆者が記載してるように、原作には難解な記載箇所(ソラリス学など)が多々あるようだ(カラマーゾフの兄弟のイワンが語る「大審問官」のようなものに当たるのかな?大事な内容だけど、難解で飛ばしたくなるというような。)
なので、このテキストで概要、原作の魅力を把握した上で原作に当たるのは、挫折しないで読み切る方法として、意外とよい方法なのではないかと思いました。
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タルコフスキーの「惑星ソラリス」を見た。
次は、原著「ソラリス」を読む番だ。
そのための、ガイドとしては、ちょうどよいテキストだった。
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ソラリスは、元来の社会主義ユートピア的SFが宇宙人を人間と同じようなものとして描いたこと(アントロポモフォリズム)への批判(パロディ)として描かれている一面がある41
「海」が作り出す造形の描写はとても読みづらい。メタ学問の「ソラリス学」では様々な新造語を使って表される。これは人間が人知を越えるものを人間(作者のレム)が描写することの不可能性を演出している。未知のコトを「自分の知っている描写」で表すことでは絶対的他社とは出会えない(理解しあえない)と42
世間がこれ程ソラリスを評価する大きな要因は、ただのSFではなく、ここに今までにない素晴らしい恋愛物語が入っているから。しかし作者はこれを気に入っておらず、恋愛部分をメインに制作されたソダーバーグの映画をレムは批判した。ここには芸術にしばしば起こる「名作は作者の意図を越えて愛される」ことのヒントがある。まさにソラリスはレムの意図を越えた「化学反応」が起きて名作となった51
世界文学(普遍的な芸術)とは その国固有の歴史に根差した文学は、その国の人にとっては素晴らしい芸術になる。しかし他国ではめったに普及しない。SFというものは好き嫌いがあるにせよ、科学(未来)や人間存在など、全人類に普遍的なテーマを扱っている故に世界文学になる可能性が高い95
また、普遍的芸術になるポイントとして、必ずしも広い「世界」を舞台にするものではなく、むしろ超ローカルな場所の物語が普遍性(世界性)を生み出す構造が持てる不思議がある。このポーランドで生まれたレムを含め、カフカ(プラハ)、大江健三郎(四国の森を舞台にした)、中上健次(紀州の路上を舞台にした)など96
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もしかしたらコロナの時代は、人類にとって残酷な奇跡の時代なのか?等、哲学的な内容も考えさせられるSF小説です。