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昨年6月9日に「骨太の方針」が閣議決定された。そこには小泉新次郎を中心とした若手自民党議員が議論してまとめ上げた提言である「人生100年時代の社会保障へ」、「こども保険」などが自民党の政策決定プロセスに乗って取り入れられている。
本書ではそこに至るまでの議論が詳細に綴られている。リンダ・グラットンの著書「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」をベースにしていても日本人の国民性や様々な立場の人を配慮(まぁ、選挙対策もあるのだろうけど)しての議論はとても熱い内容で読み応え十分です。
とはいえ、100年時代の人生戦略は政府に頼っていて全て解決できる問題ではない、我々一人一人が日本のために何ができるのかを考えて行動する必要があることを改めて認識させられる好著です。
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小泉進次郎が中心となった小泉小委員会「2020年以降の経済財政構想小委員会」について、その始まりから500日間の活動を追いかけたもの。著者は一般社団法人RCFというNPOを立ち上げて東北復興支援に取り組む中で、復興大臣政務官であった小泉進次郎との知己を得た。小委員会でもオブザーバーとして参加することとなり、小泉進次郎を中心とした活動をかなり近い位置から見ることとなった。当然、その立場は小泉進次郎寄りであるため、辛辣な批判的視座には欠けるかもしれないが、内容的には十分読者が判断できるだけの材料を提示されている。
小委員会は、人生100年時代となって、政府の在り方も変わらなければならないのではないかという危機感から立ち上げられている。「2020年以降」とされているのは、そこまではすでにロードマップが策定されており、その後の骨太の方針の提言を取り纏めるものであるからである。今の政策に物申して余計な波風を立てるものではなく、その先にまだ決まっていないところに対しての意見を具申するという建付けになっている。
その中心は小泉新次郎、小林史明、村井英樹、鈴木憲和という4人の若手議員である。きっかけは2016年に行われた1,250万人に対して配布された3万円のばら撒き給付金施策だという。これはおかしいと。このまま全体のビジョンなく個別の政策を行っていると日本の将来はないと。
日本社会の大きな問題は人口問題であることはもはや論を待たない。議論を始めて間もなく出てきた、これまでは65歳を高齢者と定めて現役引退を想定していたものを75歳以上とするというものは論理的には当然の帰着と言える。元気でやる気のある高齢者を増加させて、75歳まで働いて税金を納めてもらわないといけない。それは必要であるとともに、100歳まで生きることを前提とすると個人としても必要なことであるかもしれない。『未来の年表』などでも指摘をされていたものだ。一方、そこでは世代間の不公平感を解消することが必要である。それを仕組みにまで持っていくのが政治の仕事だと。
当初改革の基本理念は、次のようにまとめられた。
①自助を基本に共助・公助を適切に組み合わせた持続可能な国民皆保険
②経済成長と両立する社会保障制度
③人口減少社会に合った公平で効率的な医療等の提供
④健康で生きがいのある社会
⑤公平な負担で支えあう制度
彼らの意気込みは、2020年以降を戦後復興を第1創業期とする「第2創業期」とし、「レールからの解放」を謳った中間報告では、現役世代の定義を変えるという部分にも注目が当たった。
最初の提言の枠組みは以下のようなものだった。ある程度その後の議論が網羅されていると思うので、メモとしても書き写しておく。
1. 社是:
1) 「有権者のための政治」から「国民のための政治」へ
2) 「安心と健康」の「人生100年時代」へ
3) 「再チャレンジできる社会」から「何度でもチャレンジできる社会」へ
2. 現状:
1) 人生100年時代
2) 非連続な技術革新 (AIやロボットなど)
3) 多様な働き方・生き方を許容する社会の広がり (終身雇用が常識ではなくなる)
3. 今後の方向性
1) 技術革��で人口減少を強みにする経済
2) 多様で自律した幸福な地方へ
3) 働けるうちは何歳でも働く社会へ
4) いつでも学び直しできる教育へ
4. 持続可能な全世代に対する安心の基盤
1) 真に困っている方を助ける社会保障
2) 長生きがリスクとならない長寿社会
3) 自助努力へのインセンティブの重視
ここから公にも出された「レールからの解放」という方針提言が生まれる。
その後、厚生労働省の改革、「勤労者会社会保険制度」「健康ゴールド免許」「人生100年型年金」といった社会保障制度改革、こども保険、などを次々に提言していく。
中心人物の一人の村井さんも「政治が逃げてはならない。やるべきことはある程度見えている。あとは覚悟が必要。戦うことが重要だ」と熱く語る。
小泉進次郎は、楽観的に考えること、人口減でも大丈夫というメッセージを出すことが政治として需要だと言う。「悲観から楽観へ」。それは、本当につぶれるかもしれない私企業においては一度危機感を認識することによってしか変化は生まれないと考えると甘い考えなのかもしれないが、メッセージを届かせるということにおいては必要なことかもしれない。それでも、IoTやAIを導入しても労働力不足が心配される日本では雇用削減への懸念が低いので、かえって導入に有利ではないかというのは、少々単なる希望の実現に期待しすぎで、楽観的にすぎるのではと思うが。
特に社会保障の問題は大きな問題になる。「年金を貯蓄ではなく保険と考えるべき」リスクが予想外の長寿や就労能力の喪失だとすれば、年金はそういった人に給付をするべきだという。そのためには年金制度は「長く働くほど得をする仕組み」に変わらなければならない。年金受給開始年齢は柔軟に選択できるようにしなくてはならないだろうし、働くと年金が減額されるような仕組みは廃止されないといけない。小泉も「医療費の問題では、制度を変えて人びとの行動を変える必要がある」という。「市販で1,500円の湿布薬が、保険給付が受けられる病院処方約になると200円。医療費の中で伸びが著しいのは胃腸薬。モラルの問題ではなく制度の問題だ」というのはその通り。
大きな政府か小さな政府なのかという問題があるが、そこにはあまり触れない。具体的な施策と実行が大事であり、そこへの道筋が立っているのかも重要。子育て政策については財源という実際的な課題が出てきた。子育てに関する所轄官庁の統合も課題のひとつ。社会保障の議論においては、ベーシックインカムについてはあまり論点にはなっていないようだが、必ず出てくる議論だと思っている。
小委員会の活動は、最終的に2017年6月に「骨太の方針」とされる「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」として閣議決定される。
巻末に「レールからの開放」「2020年以降の『第二創業期』に向けた議論の経過」「人生100年時代の社会保障へ」「「子ども保険」の導入 ~世代間康平のための新しいフレームワークの構築~」「「人生100年時代の制度設計特命委員会」中間とりまとめ」がまとめられている。包括的に問題を見るという点でもよい資料だと思う。
当然ではあるが、政治としても高齢化��会における社会保障や雇用問題について真剣に議論されているということを知ることはできた。その中心に小泉進次郎がいるということも。
そういえば、小泉進次郎の新聞軽減税率に対して繰り返していた発言はどういう効果を持ったのだろう。新聞の低減税率は、その実効性からもメディアとしての矜持からも新聞社の側から絶対に断るべきだと思うのだけれども、どうなのだろうか。
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『人生100年時代の国家戦略』読んだ。小泉進次郎氏ら若手議員により結成された小委員会が、22世紀を見据えた社会保障制度を練り上げ、実際に政策として昇華させていく500日間をオブザーバーがまとめたもの。喧喧諤諤の議論から緊張感伝わってくる。
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手国会議員による日本国の国家戦略論
直面する「人口減少」を悲観的に捉えるのではなく、前向きのチャンスとしようとするもの
若さでダイナミックなリードを期待し、お願いしたい
キーワードは「米百俵」だと思う
我々は現世利益ではなく、未来への投資を第一義として取組みたいもの
入り口で議論が活発なのは是とするもの
社会保障を高齢者のものではなく、全層に渡るミニマムの社会制度とするのは新たな切り口
しかしプラスオンだけでは国民は疲弊するばかり
誰かが言っていたとおり「社会主義国家」への道である
既得権の社会保障を減らすことが政治のリーダーシップと判ってはいるが
選挙を考えると易きに流れる
ドイツの「シュレーダー改革」のようなリーダーシップを生み出せるのか
「多様性」企業の短命化 職業期間の長期化 働き方のバリエーション
ただし最期は「こども保険」一色になってしまった
「小さなリスクは自分で、大きなリスクは公が」(159)(159)
税か保険か 負担という点では同じ
国債発行をポジティブに捉えている考えには驚いた
累積していくことの国家リスクの考えはない