紙の本
文字に、書籍にしてくれてありがとう
2019/03/10 23:10
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投稿者:ぽんたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、NHKスペシャルの取材をもとにしたものだと言います。再放送もあったそうですが、私は残念ながらこの放送を見ていませんでした。だからこそ、このように書籍化してくださったことに感謝しています。
PKO活動に日本が取り組むことになったとき、現地に出向く人とその家族の感情のことを考えると何とも言えないものがありました。ただ、日本という国、国家という単位として、ようやく国際貢献に目が向くようになったのかとちょっとほっとしたところもありました。ただし、いつの世もそうですが、国の方針を決める人たちが最前線に立つことはなく、現場のことを把握しないままに、机上の理想論を振りかざして方針を決め、準備が進められることに、常にやるせなさを感じます。
紛争が起こっていた場所・国を、落ち着いた状態にするためには、第三者の冷静な目と判断を必要とする場合はあるでしょう。利害関係が生じてしまう人間社会では、紛争・戦争が起こってしまうことは避けること、止めることができない残念な性(さが)です。だからこそ、落ち着いた、健全な社会にする手助けをするために出向く人たちには、いざというときのための自営装備が必要なのだと思います。身を守るための装備だけでなく、精神的な支えも含めて。そして、報道に携わっている人たちは、こういう事実を精査し、公にし続けてほしいと思います。
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どうにも救いのない話… 国内政治や外交において、語られれ国際貢献と現場の落差。完璧に安全であることはあり得ないにしても、あまりにも体制が整っていない中に大した装備もなく投入されてしまう。官僚組織同士の妥協の中で一番犠牲になってしまったのは、未経験ゆえなのだろうか。日本政府の手には負えないものではなかろうかとも思ったりする。
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初めて日本が自衛隊を海外派兵したカンボジアPKO。あのとき、文民警察官75名もまた派遣されて、そして一名が殺された。
派遣のための条件である「停戦合意」が事実上破綻していたのは明白にもかかわらず、政府は都合のいい解釈を続け、国民世論を欺き、したがって撤収することをせず、一名を見殺しにした。現場の隊員からは、実態は内戦状態にあること、具体的な命の危機にさらされていること、そして実際に多くの「事件」(ほんとうは「戦闘」)が起こっていることが報告されているにもかかわらず、「面子」にこだわり、何もしなかった。ほんとうに何もしなかった。そしてそれは、UNTACも同様だった。
生きて帰ってきた隊員たちは、組織によって声を上げることを封じられた。そして、政府は何の検証もしなかった。なぜ一人の隊員は殺されなければならなかったのか、本来ならば派遣の意思決定ないたる経過も含めて、徹底的に検証されてしかるべきだった。結局そうしなかったことが、今日の例えば南スーダンのPKO問題(現実を直視せず「戦闘状態にない」と、カンボジアのときと同様に強弁を続ける)ことにつながる。犠牲を強いられるのは、いつでも最先端のものたちてある。
23年の沈黙を破って、元隊員たちが真実を語った。日本の政府、官僚組織がこの悲劇を受けても何も変わらなかった、それが悲しい。
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1993年、日本が初めて国連のPKOに人員を派遣したカンボジアで文民警察官の高田氏が殉職されるという悲劇を覚えておられる方は少ないのではないでしょうか。
政府は自衛隊を初めて国外に派遣することになったこの機会に万が一戦闘に巻き込まれる様な事態を恐れていました。自衛隊が配置されたのは治安も良い地域に全員が1か所に派遣されるという恵まれた状況であったのに対し、文民警察官の方は政府の関心も自衛隊ほどではなく、事前の根回し不足もあって数人ずつの小グループで各地に分散し、タイ国境付近の治安の悪化した地域にも配置されました。彼らが派遣されたのはポル・ポト派が支配するまさに「戦場」だったのです。「支給された防弾チョッキは拳銃にしか対応しておらず、そんな装備で普通の農民がAK47という自動小銃を携帯している所に放り込まれた」、「夜には遠くで迫撃砲の着弾音がひっきりなしに鳴り響き、塹壕の中で身をかがめていた」、「自動小銃の乾いた発射音。銃弾が車体をこする高い金属音。車体に銃弾がめりこむ鈍い金属音。窓ガラスが割れる粉砕音。頭上でロケット弾の炸裂音。弾丸が顔の肌を舐めていく。その弾丸の風圧が顔の皮膚に伝わる。」等の証言があります。襲撃を受けた際に殉職された高田氏と同じ車両に乗っておられた方の証言は、もはや戦闘の最前線としか言いようのない激しいものです。
派遣の前提である「紛争地域には派遣しない=派遣先に危険はない」という建前論のために十分な装備も準備されない中で起こった悲劇であったのです。
当時のカンボジアの政治状況から、PKO活動の実態、そして驚くべきことには襲撃した加害者側であるポル・ポト派の元司令官にまで取材をして証言を得ています。現地に派遣された警察官の方々の信じられないほどの責任感、派遣された文民警察官の現地指揮官が部下の安全を案じる苦悩と、建前論に徹する政治家の議論がここまで対照的に、かつしっかりとした裏付けで描かれている本書はハードカバーで400ページ近い大作ですが、是非一読をお勧めします。ここ数年で読んだノンフィクションの中で間違いなくベスト3に入ると思います。
政治家の答弁が「停戦合意は成立している」等の建前論に終始する様は南スーダンPKOの時と全く同じじゃないか、と改めて憤りを感じます。
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特殊な訓練を受けず、街のおまわりさんが文民警察としてカンボジアに派遣された。
カンボジアも含め、PKOへの理解が圧倒的に低い日本。
いつまでそのままでいるのか。
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NHKにも立派な仕事をしている人々がいることを知った.関係者から聞きにくい話を聞き,資料を提供してもらい,現地にも足を運び,過去の扉をこじ開けた.TVを見なかったことが悔やまれます.でも文章に本にしてくださって読めて良かった.安倍内閣のきれいごとに惑わされないで,過去を現在に生かしていきたいです.政治はメンツのためのゲームではないということを政治家は知るべきです.
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読んで良かった。1992年、PKOとしてカンボジアに自衛隊が派遣された時、同時に75人の警察官が「文民警察官」として派遣された。自衛隊は安全な場所に基地が置かれたが、文民警察官は危険な場所に分散して配置され、毎日銃声が鳴り響くような中過ごしていた。文民警察官がいくら現状を訴えても、政府は停戦合意が成立しているとの姿勢を崩さず、薄い防弾チョッキしか用意もさせず、結果、日本人が一人殺され、何人もが重軽傷を負う。人民警察官について他国は検証を行っているが、日本は検証を行っていない。日本は隠す国家なのだと思った。
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こんなことがあったなんで全然知らなかった。
それ自体が今後もふつうの「おまわりさん」や戦場に行く予定のない人が、戦場に行かされてしまう可能性を高めているのではないかと思った。
多くの人に読んでほしい本。
文章としても読みやすいし、死に至るまでの経緯も分かりやすきまとめられている。
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NHKはたまに残しておかなければならない隠された真実を、ドキュメンタリーとして放送することがある。
本書に書かれているのは、日本が初めてPKOに人を出したカンボジア選挙のこと。
そして、その活動中に命を落とした文民警察官の事。
政府、警察組織、そしてそれらに阿るマスコミ達は、カンボジアPKOで何があったかを覆い隠し真実を語らない。
それは、本書の元となったドキュメンタリーが制作された時点でも変わらない。だから本書には現役警察官の証言は語られていない。
本書に書かれているのは、組織の一員として、現場でないがあったかを隠し続けてきた元警察官、他国の軍人、そして当のカンボジア武装勢力たちの言葉で綴られた、何が為され、何が起こったかと言うストーリー。
それはおそらく、政府の公式報告書には書かれない事。
紛争地域に人を派遣するということはどういうことか、こちらが武装しているとかしていないとか、文民だとか軍隊だとかには関係なく、相手はどう接してくるのか、よく考えた方が良い。
日本は戦争を放棄すると同時に、国際協力を行い、平和を維持する国際社会において名誉ある地位を占めたいと思うと宣言した。
これは、国際協力である国連の活動に積極的に参加するということ。そして、国連は今まさに戦闘が行われている地域に殴り込んで力づくで双方を引き剥がすような活動をも行なっているということ。
その現場に、明後日の方角の議論で無理を押し付けるぐらいなら、名誉ある地位なんか放っぽり出して、撤退したろうが良い。
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内容についてほとんど知らなかった自分を恥じたい。国際平和活動や政治、組織について考えさせられる。ぜひ番組も見てみたい。
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中田厚仁さんがカンボジアで襲撃されて亡くなったのは知っていた。でも、文民警察として派遣されていた男性がなくなったことは知らなかった。その無知を、いや無関心を恥じた。
この本を読んで憤りを感じるのは私だけではないと思う。「国益のため」「平和に貢献するため」と言いながら、自分は安全地帯から一歩も出ず、丸腰の警察官を派遣する。しかし、まともな情報収集も事前準備もせず、まともな防弾チョッキも支給しない。「ここは戦闘区域」という現地の声に耳を貸さず、「平和条約は守られている」と平和ボケした議員に官僚。人の命をなんと思っているのか。
国益、国際貢献、人、命、国ということについて考えさせられた一冊。
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とにかく、こんなにカンボジアの為に尽くしてくれた日本の警察の方がいたこと、知らなかったことがはずかしかった
そもそも、警察官がカンボジアに派遣されていたなんてニュースになっていたのだろうか
何ごとも初めに関わる人間は大変な思いをするが、これは、日本の官僚の能天気さによる苦労がほとんどだった
語ることすら許されなかった方々の証言が生々しく苦しかった
23年も胸に抱えてきたなんて、どんな日々だったのか
読むのが苦しかった
でも、日本人として知るべきことだと思った
現在も活動中のPKOは、本当に必要なのだろうか
意識もバラバラで、寄せ集めのチームが、本当に平和を促すことができるのだろうか
私なら、自国の争いに外国人がやってきたら、恐怖を覚える
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PKOで邦人に死人が出ていたこと自体知らなかった。カンボジアPKOだけでボランティア1名、文民警察官1名。
建設業者でなく各国軍隊の工兵部隊、自衛隊の施設科部隊を送っているあたり、派遣先が安全なわけがなかろうとは常々予想していた。
PKO法制や安保法制は、先進各国のやり方が現代社会の「多数派」とみなされているのだから、やるべきと思うならそりゃやれば良いんだけど、そもそも前提データ、知識が無いとか、あっても隠すとか、そんな状態で法整備をして最後は現場に責任丸投げ、というのは勘弁してやれやと思う。
そのあたり、文民警察官も似たような状態だったようだ。護身の品はたとえ防具であっても武器に該当するので日本から派遣先に輸送不可、そもそもPKO法制整備時は自衛隊の話ばかりで文民警察官の話は殆どしなかった、とある。
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日本が初めて参加したPKO、UNTAC、明石代表。
断片は覚えていたが、文民警察官の死については
完全に忘れていた。
カンボジア復興を旗印に、海を渡った文民警察官を題材にしたNHK 特集の書籍化。
日本特有の臭い物にはフタ。現場とトップとの意識の乖離。その中で頑張っていた警察官たち。
トップにはトップの行動、考え方があるのは理解するものの、現場の警察官たちのことを考えると涙が出てくる。
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この本を読んで初めて知ったことがたくさんあった
ただこれ以上書くと硬直した縦割りな仕組みへの罵詈雑言だらけになるのでやめることにする
知れて良かったと心から思う