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宣伝の本
2018/05/26 10:00
8人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:t - この投稿者のレビュー一覧を見る
1,2章で長々と記載があるが、シギュラリティが来ない理由は、以下の3つと主張している。
・学習データが簡単に作れない
・モデルが作れない
・ハードが変わると学習データを変えないといけない(カメラの解像度が上がるetc)
この3つの理由でシギュラリティを否定することはとても飛躍があるように思う。
というよりも途中から「近年中シギュラリティが来ない」に変更されるので、はじめの方はあおり文句となっている。
また、AIを人間と同じ能力を持つものという意味にまで持ち上げ、ハードルを意図的に高くし、どうしても、シギュラリティが来ないことを否定したい構図になっている。
また意味を理解することを高く評価しているが、将棋にはうといが、羽生永世七冠を前にこの話を展開することは躊躇してしまう。
3,4章は、よく言われている若年者の学力低下の話で、読む価値はない。また、さいごには女性能力優位説まででてくる。
全体的に著者が作ったプログラムの宣伝になっており、何かのためになるような本ではない。いわゆるベストセラー本。
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AI技術の冷静な現状報告と、その研究過程で顕在化してきた中高生の基礎読解能力の低さについて問題提起する。教育関係者はまず3章から読まれたし。
教科書がちゃんと読めて、読めば書いてあることがわかるはず、という前提が壊れているというのだ。
係り受けや推論を伴う、やや込み入った文ではあれ、分かる人には分かるに決まっているように、読める。読めてしまう人には、この何がわからないのかわからないという類の問題。だからこそ根が深い。
RSTをわたしも受けて、学生達にも受けさせてみたいと思う。
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前半では東ロボプロジェクトの経験談を中心に、AIの真の実力を知ることができ(近年のブームでの煽りも冷静に切って捨て)、後半は意味を理解していない東ロボよりも「読めてない」受験生が多数派であるという気付きからスタートしたリーディングスキル(読解力)測定についての経過報告と、AIと競合していくこれからの教育はどうあるべきかという見通し。
これから世の中に出ていく子どもに関わるすべての人が読むべきだし、文章は平易で読みやすいので中高生なら自分で読んでみてほしい。AIにできることできないこと、得意なこと苦手なことをちゃんと知ることは、AIと共存して仕事を分け合っていく未来を生きる自分が、これから学校で何を学べばいいのか、人間の能力の何にAIにはない価値があるのか、考えるよすがになるから。
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筆者は怒っている、と思う。
AIがさも人間に代わって困難を解決してくれるかのように考えたり、そうなったとしても人間にしかできないことはあるから大丈夫だと考えたりしているAI楽観論者にだ。AIは計算機でしかなく、人間ができることしかAIはできない。人間ができないことはAIにもできない。にもかかわらず、近未来にAIが夢のような世界を実現すると(メディアも専門家ですら)期待しており、冷静さを欠いている。それは(第5世代コンピュータープロジェクトなどの)失敗に学んでいないからであり、結果として予算や投資の方向性の間違いにつながっている。そこに筆者のいら立ちがある。
コンピューターは「意味」が理解できない。だから真の意味でのAIが実現できないという事を筆者は丁寧に教えてくれる。それでいて、そんなAIと同以下(サイコロ並み)しか「読めていない」中高生が多数いる。にもかかわらず、教育行政が躍起になっていることと現場の危機感には乖離がある。RSTは中高生の基礎読解力の現実をあからさまにしたが、その処方箋を安易に示していないのは筆者の科学者としての姿勢によるものなのだろう。そこは現場の教員として検証を重ねて行く必要もあるだろうし、なにより「大人の読解力」が試されているように思えてならない。
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教育とAI、どちらかでも関心がある人は読んで損なし。両方に関心がある人は必ず読むべき。よくある独善的な教育論ではなく、緻密な調査によって子供の学力の実態を明らかにしている。良書。
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AI論議が喧しい昨今、AI楽観論者に警鐘を鳴らす。
AIはソフトウェアであり、人間と同等の知能を得るには、私たちの脳が、意識無意識を問わず認識していることをすべて計算可能な数式に置き換えることができることを意味するが、現在数学が説明できるのは①論理②確率③統計の3種類のみで、人間の知的活動のすべてが数式で表現できない現状では、AIが人間に取って代わることはない。
また「意味」を記述する方法がないため、AIにとって言語は「意味がわからない」のが現状。
だから、シンギュラリティは来ないし、すべての仕事を奪うこともない。
しかし、AIは人間の強力なライバルになる実力がすでにあり、現にMARCHや関関同立に合格できるレベルである。
そこで、AIにできない仕事が人間にできるのか?と問う。
コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事や、介護や畦の草抜きのような柔軟な判断力が求められる肉体労働など、AIが発展してきても、一を聞いて十を知る能力や応用力、柔軟性、フレームに囚われない発想力などを備えていれば、職を失うことはない。
それでは、私達がAIには肩代わりできない種類の仕事をできるだけの読解力や常識、あるいは柔軟性や発想力を十分備えているのか。
結論は危機的。人間の基礎的読解力を判定するために開発したテストがRST(Reading Skill Test)を用いて2万5千人対象に試験をしたところ、危機的状況と判明。
中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできないし、学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない
AIには不可能と思われる「推論」「イメージ同定」「具体例同定」の能力で全中高校生の平均で7割程度の正答率となるような、教育方法の確立が求められる。
しかし現時点での処方箋はなく筆者は多読ではなく、精読深読がヒントかもとあるが、今後の課題である。
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フレームを決めざるを得ないデジタル教材で「当てようと」する偏った最も効率の良い(理解していない)解き方は、AIのもっとも得意とするところで、そんなスキルは真っ先にAIに代替されてしまうということか。
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<目次>
はじめに
第1章 MARCHに合格~AIはライバル
第2章 桜散る~シンギュラリティはSF
第3章 教科書が読めない~全国読解力調査
第4章 最悪のシナリオ
<内容>
AIは万能ではない。なぜならその基のコンピュータは計算機なのだから。法学部を出て、数学者となった著者は言う。AIができるのは、計算可能な数式に置き換えられること、つまり論理・統計・確率に還元できることだけ。人間の無意識にできている「認識」の多くは、AIが不得意とすること。
ここまでは納得した。問題はこの後だ。著者はAIの「東ロボ」(東京大学をAIで受験するプロジェクト)を立ち上げた。それは、AIの可能性を高めるため、というよりも限界を知らしめるところにあったようだ。が、それよりも、現在の日本の中高大学生に「RST(リーディング・スキル・テスト)」をやらせたところ、大変な結果が出てしまった。それは、「読解力」がないことだ。成績が高いのは、AIもできるレベルのパターン(係り受け・照応)。「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体例同定」はサイコロの確率並みの正答率。
著者は、ここから今後AIがもうちょっと進化した後、現在あるホワイトカラーの仕事がAIに取って代わられると予想する(と言うかかなり説得力のある説明)。読解力のないものが社会人となって、AIを不得意なジャンルの仕事につけるかというと、かなり難しいのではないか?という。じゃあ、という部分は読んでもらうとして、中高の教員はぜひこの本を読んでほしい。そして、「読解力」を上げる(=教科書を読んで理解できるようにする)力を中高校生につける努力の手段を考えてほしい。
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マスコミを含む多数の人が混同しがちな「AI」と「AI技術」の違い、からスタートするという比較的親切仕様。
AIについてイマイチ理解がない、もしくは、情報がない人にもわかりやすく理解できるように展開されている。
現在、AIにできることは何か?そしてできないことは何か?を「東ロボ君プロジェクト」を通して語っているのでイメージしやすい。
これらを踏まえて、「では現在の中高生(場合によっては大人も含む)はどうなんだ?」と話が進んでいくのだが、こちらは驚愕のひと言。
自己や次世代について深く考える機会をもたらした一冊だった。
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論理的で読みやすい文章で、AIに対する誤解を解くという意味ではすごくいい本だと思う。ただ、期待してたリーディングテストの内容については報道以上の詳しい情報があまり無く残念だった。
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これは、かなりヤバイ本。
知っている人はしっているリーディングスキルテスト、東ロボくんプロジェクトの背景と、そこからでてきたリーディングスキルテストの表すものを説明した本なわけだが、これをよむと、中堅大学クラスのが雨声の読解力が、いまのレベルのAI(モドキ)の能力にすでに劣っているということが書かれている。だから、読解力をつけないければ、というのが本の後半にでてくるわけ。
なんだけど、つまりこの本は絶対的な能力主義の世界を前提としている。それは何を意味しているかといえば、たとえばDDであるとかディスクレシアについては、今以上に行き所がなくなるだろうってこと。
もちろん、この本はそんな意図で書かれた物ではないし、そんな問題設定しているわけでもないので、そんなこと言われても新井先生も困るというのは重々分かっているのだけど、それでもこの本の描き出している世界は、そうとしか解釈できないのね。
そこがこの本の恐ろしいところだと思うのですよ。
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「AI◯◯」などというハッタリっぽいことを堂々主張されている先生も実際居られるわけですが、それをバッサリ切り捨てて頂けると大変良いのではないかと。子供がいると、将来を考えさせられる点も多かったです。
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AIの専門家が語る
AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たなければならないか
AIは神になったり人類を滅ぼしたりしませんが
本書はAIの限界からスタートしてAIが人間に追いつくことは当面できないことを詳細に述べています。
でも仕事は奪います。
言葉は悪いですけど事実です。
すでにその兆候は始まっています。
好景気なのに給料が上がらない
それは
「企業の内部留保が高くなってる」
という結果が問題なのではなくて
「イノベーションによって人の代替としてコンピュータが仕事できるようになった」
ことにより労働価値が著しく下がっていることが原因なんやと僕も思います。
「AIの手に負えない仕事」を大多数の人間が引き受けられるのか?
就業訓練でその壁を超えられるのか?
その現実をつけつけられると途端に否定的な未来が見えてきます。
AIにできないコミュニケーション能力や理解力を前提とした「肉体労働」か「高度な管理職」
をどうやって身につけるか。
読解能力がカギを握りそうです。
AIの苦手な読解能力
でも貧困は読解能力にマイナスの影響を与えるそうです。
やっぱり最後は貧困に行き着くんですね。
AIに仕事が奪われる前に…
中学生までになんとか教科書を読めるようにしな間に合いません。
英語とかプログラミング以前の話です。
今なんとかせな…
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前半でAIの技術的限界が示され、後半では中高生の読解力の低さと、AIに職を奪われることによる悲観的な未来予想が示されている。人間の知的活動を全て数学的に表現することができない限りAIは「意味」を理解するには至らず、シンギュラリティが来ることはあり得ない。一方で、AIの苦手とする意味理解を伴う読解のできる中高生は半数にも満たず、このままではAIにできない職を人間が担うことができなくなってしまうとのこと。AI技術の行く先を現実的に、論理的に、かつわかりやすく解説した書籍は多くなく、貴重な1冊ではなかろうかと思う。
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立ち読みです。
二部構成で、前半が東ロボくんの開発話、後半が読解能力テストの開発について。
この本の要点は後半だと思うのでそちらについて書いていきます。ただし立ち読みで私の脳内に付着した内容なので誤解が含まれているおそれがあります。
この日本は、日本語だけ使えれば(いちおう)生きていける単一言語国家であるので、中学生卒業程度の一通りの日本語教育を受ければ社会に出てからの指示受け応え・指示書読解は行えるはず、という前提で構成されている。しかし、新井先生の開発したテストは、その前提条件が崩れていることを明らかにした。
そして、読解能力不足つまりはAIよりも読解能力が足りない人たちは、未来においてAIにより職が少なくなった社会で仕事を得ることが難しくなる、というディストピアが予言される。
更に、残念なことに私立進学校の教育は読解能力の向上につながっていない、とのこと。私立進学校が進学校たり得るのは、入試により読解能力を持つ子どもたちがフィルタされるためである。読解能力さえあれば、高校二年生まで遊んでいても高校三年生での独習で偏差値上位の大学に合格できる、そのような能力者たちを集めているために私立進学校は進学校としてやっていけている、らしい。
新井先生には、どのようにすれば読解能力を向上させることが出来るのか、その研究に着手してほしい。既に断念しているようだが、再考してもらい、初等教育にフィードバックしていただかなくては。人口減によりただでさえ人が少ない日本で、マトモに仕事で稼げる人数が限られてしまい、日本が完全に潰えてしまうようになると思われる。
中年の私がその頃まで生きているのか、とも思うが、寿命が長いために意外と生きているのではないか。
ひとまず、子どもたちの未来が暗いのは、あまりうれしいことではない。明るくするのが、いま大人である者たちの使命だと思うが、何か出来るのかと言われれば、なにもないのであった。残念。
読解能力向上対策がなかったので☆4つです。