紙の本
マジックリアリズムSFとして◎
2021/03/28 17:18
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和20年の風景と現代の風景が重なり合うようになった東京で暮らす家族の葛藤を描く表題作を含んだ中篇集。若き日の曾祖母が空襲で亡くなると分かっていながら同じ空間で生活し、曾祖母が死の間際に守りたかったものの真相を知った時、主人公は何を思うのか。
近年の宮内作品といえば、純文学にシフトしつつあるけど、家族を物語の核に据えたハードSF「ヨハネスブルグの天使たち」を思わせる、すごく良い作品だった。舞台装置としての東京に「ディレイ」を加えることで、マジックリアリズムSFとしてきちんと家族の脆さとかすれ違いを描き出していて面白かった。
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とてもレベルの高い文学よりの短編集。過去と重なり合う世界の中で、家族を描く表題作もいいけど、個人的には解散したバンドを追う、若干ミステリー風味の空蝉が好み。長いバンド名が連呼されて笑える。この調子なら、どこかで芥川賞を取れるかな?
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【制御不能……衝撃の芥川賞候補作品!】戦時下の日常が二〇二〇年の現在と重なって見える。大混乱の東京に昭和二十年の空襲が迫る。いま最も注目の作家による衝撃の短篇集。
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純文の香り漂う三つの短編集。
宮内悠介が純文学だなぁ~と感じるのは、中高時代の三学期に駆け足で名称だけ学び、読んでみなきゃ判らんじゃないかと思った安倍公房とかと似た感想を持ったから。
シュールな純文はSFやオカルト好きでも楽しめちゃうし、文学の分野の垣根なんて低いもんだ
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宮内悠介『ディレイ・エフェクト』読了。芥川賞候補の表題作は現代日本の日常に戦時中の景色が重なるというSFチックな作品。"幻視"の設定を物語の中で二重三重に効かせる構成は流石だなと。「空蝉」はカリスマ的ベーシストの死を関係者へのインタビュー形式で追う。ミステリと一纏めにできない味わい。
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表題作は「午後の恐竜」を思わせながら、SFに音楽と技術と寂寥と哀悼で味付けをする作者らしさ。
「空蝉」栗本薫を思わせる破滅的青春群像。
「阿呆神社」大塚を舞台にしたノベルゲー「街」のような。
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内容(「BOOK」データベースより)
茶の間と重なりあったリビングの、ソファと重なりあった半透明のチャブ台に、曾祖父がいる―。戦時下の日常の光景が、二〇二〇年の現在と重なっている!大混乱に陥った東京で、静かに暮らしている男に、昭和二十年三月十日の下町空襲が迫っている。曾祖母は、もうすぐ焼け死ぬのだ。わたしたちは幻の吹雪に包まれたオフィスで仕事をしながら、静かにそのときを待った―。
何故このアイディアで短編を書いたかという事が最も疑問に思った所です。大長編ではなくていいので短めで1冊にまとめ上げたらいい作品になった可能性もある。過去の出来事がホログラムのように現代に重なって未来から見えているというアイディアは秀逸だし、群像劇にするに足るテーマだと思いました。夫婦の葛藤や子供とのやり取りが希薄なのはやはり尺の問題なのではないかと。有機的なつながりの無い中で、過去との邂逅をさらりと済ませてしまっているのが残念な気がしました。アイディア勝負でいる段階は過ぎた作家さんだと思っています。
小さくまとめてしまうにはもったいない題材だし、そもそもこの表題作はなかなか良かった。これだけなら星3あげてもいいと思いました。しかし他の短編がだめ、独りよがりな独白のようなものと、おちゃらけ切れないコメディーブラックユーモア。この2編については吉田修一と筒井康隆を読んで出直せと言いたいです。
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漂う諦念と傍観がなんとなく好ましい、という理由だけでついまた宮内作品に手を出してしまったが、やはりまたこっぴどく裏切られた。
相変わらずの独りよがりな進行で、どこまでいってもちょっと何言ってるかわからない。
物の例えと比較の対象が極端で、一般人の感覚とはズレている。
なんで毎回直木賞とか芥川賞に推されるのか、僕には理解できない。
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ミステリではなく、文学でもない。これがSFかぁ、と感心した。面白かったね。芥川賞の候補にもなったそうな。三篇が収められていた。どの話も良かった。表題作はディレイというSF的な現象を扱っているんだけど、読後感はむしろ家族とか夫婦間の心の交流が残ったと思う。俺としては。真ん中の『空蝉』が一番ひきこまれたかな。しばらく小説の熱心な読者ではなく、新しい作家さんって手に取っていなかった。伊坂幸太郎や恩田陸といった、学生時代から読んでいる作家さんは今でも好きだけど、こういう今まで読んでいなかった作家さんにも、もっと触れるべきだと思った。この人の本はまた読みたいね。
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盤上の夜のネタが面白かったので、今回も期待したが、驚愕ネタはディレイエフェクトのみ。。ディレイ・エフェクトは昭和の町が見えるのであれば、戦時よりも復興期を書いてほしかったかな。空蝉は、バンドやってなかったし、それほど共感できず。阿呆神社は結構よかった。人間は自己中心的なようで利己的にすらなれない人が多いのだろう。ちょっと嬉しかった。
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わざとそうしているようですが、話がわかり辛い。結末まで行っても、もやっとする感じです。他にも2つ話がありましたが、バンドの話が好きなのでしょうか。
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色々なアイデアのある短編集。表題のディレイ・エフェクトが一番印象に残った。戦時中の過去が現実に同時進行しているという設定が面白い。バンドの話も風変わりで面白いが多少わかりづらい気もした。やっぱり独特な感性の作家さんなのだろうか。
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ある日突然太平洋戦争時代の風景が現代に重なるなんてSF的な設定が、自分の家だったらといった想像力を刺激する。物語はその過去の風景がメインではなくエッセンスとして主人公の夫婦生活や日常の出来事に添えてある。少しミステリ的な部分もあり楽しめる。
他2作品があるが、どちらも過去を振り返る事で今を解決している。
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芥川賞候補になった表題作を含めた短編集。 戦時中の景色が重なった現代の東京を描いた『ディレイ・エフェクト』。大きな主張に繋がりそうな設定ですが、あくまでそこに生きる人々の生活と心情にスポットを当てていて好印象。それにしても私は特殊設定によって浮かび上がるものがあまりにも好きなのだと自覚させられた。 かつて活躍していたバンドの取材からバンドマンが浮かび上がる『空蝉』。神社への相談が繋がり大きな物語が浮かび上がる『阿呆神社』。どの短編も物語が進む中で浮かび上がるものに心動かされる傑作集でした。
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3作から成る短編集。
評価の星を3にしたが、3作通しての評価だ。1作目の「ディレイ・エフェクト」のみだったら、迷わず星5をつけるのに。