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著者の藻谷浩介(1964年~)は、日本政策投資銀行勤務を経て、日本総合研究所調査部主席研究員を務める、地域エコノミスト。2010年発表の『デフレの正体』は2011年新書大賞第2位となり、販売部数は50万部を超え、また、2013年のNHK広島取材班との共著『里山資本主義』もベストセラーとなっている。
本書は、著者がこれまでに訪れた世界90ヶ国での見聞・考察を、2017年4月から毎日新聞社のインターネットサイト「経済プレミア」に週刊連載している、「藻谷浩介の世界『来た・見た・考えた』」を書籍化したもの。
取り上げられた国・地域は、ロシアのカリーニングラード、アイルランドと英国(北アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イングランド)、コーカサス3国(アゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア)、スリランカとミャンマー、台湾と韓国と中国(の高速鉄道)、アンカレジ、パナマ、ラパスと、実にマイナーな場所であるが、それは著者の旅が「自分の目で見た「二十一世紀地政学」を書く」という明確な意図を持ったものであることによる。
そして、そのアプローチの方法は、「観光都市よりも先に首都、博物館や史跡よりも駅や広場や商店街」、「何を見るべきかなどの予習はせずに、歩いて行く方向を直感で決め、歩きながら見たままを感じる」というものであり、それにより「ガイドブック通りに名所を巡るよりも、より多くのことに気付」くという。
私は著者と同年代の会社員で、これまで公私併せて40ほどの国を訪れる機会があったが、もちろん美しい自然や歴史的な建造物を見る楽しみはあるものの、一方で、歳を重ねるごとに、著者が「多くの人は聞いたこともないような国の話も書いてきました。ですがどの国も、日本と同じく二十一世紀に存在する人間社会です」という、“世界各地の人間社会”がどのように存在し、そこで人々はどのような生活を送り、更に、それを我々はどのように捉え、考えるべきなのか、に強く関心を抱くようになっており、「まずは現地をみて考え、現地に身を置いて議論しないことには始まらない」という著者のポリシーには強く共感を覚える。
旅行者向けの観光ガイドとも、物書きの紀行エッセイとも、ジャーナリストのルポルタージュとも異なるアプローチで、今知るべき世界の一部を垣間見ることのできる面白い一冊と思う。ぜひ続編も出版して欲しい。
(2018年3月了)
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ベルファスト 20世紀初頭 タイタニック造船
造船や航空機産業の拠点
暗記勉強ばかりしていた日本の知識人に不足しているのは、知識というテキスト情報ではなく、類推を通じて情報の縱橫に串を指し、全体の構造を把握する訓練です
歴史は繰り返すと言うのは、まったく同じことが繰り返されるということではなく、同じ構造がくり返し再現されるということです。過去の出来事から構造を理解すれば、未来の出来事も予測できるわけです
文化は辺境に残ると言われる
台湾新幹線 2時間弱 5500 ビジネス 8100
新幹線なら10,000 15,000
NY-DC 3時間以上かかって二等でも3万
日本人が、日本の優れた新幹線システムと力めば利組むほど外国人は買わないだろう。言えば言うほど、あのマメでクソ真面目な日本人でしか運用できないシステムと聞こえてしまう、というのである。その点中国で広汎に定時運行しているシステムと聞けば、自分たちにも使えるかもしれないという印象を与えやすい
商売は客の側から考えなくてもは、売れるものも売れなくなることは自覚しておいていいだろう
日本人は人口集積は産業集積の結果だと、思い違いをし、仕事があるからと称して高いに集まりたがる。そうではなくて21世紀の地球では、人口集積は個人の消費の結果としても形成されるものなのだ
ヘロドトスがいったとおり、地理と歴史は表裏一体なのだ
パナマ運河の競争相手 米国に4本、カナダに1本ある大陸横断鉄道
地政学 歴史に照らし、ある地理条件の場所ではどういう人間活動のパターンが繰り返さえる傾向にあるかを発見する学問です
アナロジー類推を用いて、表層的な事象に縦横に駆使を指し、背後にある構造を把握するのです
歴史は繰り返すというのは、まったく同じことが繰り返されるということではなく、同じ構造がくり返し再現されるということです。過去の出来事から類推し、地政学的な構造を理解することで、今起きていることがより本質的に理解できますし、未来の出来事も予測できます
日本の地政学的位置 良くも悪くも(多くの場合には圧倒的に良い意味で)他の世界から放置されやすい場所です
核の傘論ろは、米国が原爆を落とした現在を正当化するために無理に作っている議論、現実主義的な考え方の対局にあるイデオロギーだと言う面が多分にあります。
戦争が得でなくなった今の時代に戦争をするのは、経済的にな損得で行動しない人たち 3種類 1 宗教的熱狂で動く人 2 多民族混沌の場所において、自民族以外の暴力的な追い出しを目指す民族主義者 3 自己の権力の維持強化のために経済的な損も辞さずに紛争を仕掛ける権力者
ちなみに日本はその中国(+香港)から3兆円の経常収支黒字を稼いだ勝者の上にたつ勝者
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日本の地方問題の論客は世界の辺境の国の首都を飛び回る旅客でもありました。『「成田空港で国際線から国際線に乗り換えた際に、二時間だけ入国して成田山新勝寺に立ち寄った外国人が、それだけの経験から日本を語る」というような覚悟と気合で、足と頭をフル回転して、本を味読するように町を読み取っているのです。』という、観光でもビジネスでもない体感旅。本書に登場するのは、うっすら国名、首都名知っていたとしてもどこにあるか?どんな国か?まったく知らなかった未知の国々、都市たちです。カリーニングラードなんて、すいません、全然知りませんでした。でも、カリーニングラードを知らずしてロシアとの北方領土交渉、語るなかれ、とか、なるほど!です。そうなんです。まったくイメージのない国の実情が日本のこれからに繋がっていることにびっくりと納得の連続です。最近、鳥の目で世界を見たり歴史を語ったりする読書が続いていますが、今回は虫の目で見る気分になりました。当然、複眼の世界観。いやー、世界は広く多様で、そして自分の中での日本の居場所もかなり相対化されました。
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実際に訪問したからこそ分かる世界各地域の特徴を述べている本。徒歩が好き、乗り物が好き、街に行ってみるのが好き、など観光地ではなく各地の日常生活を知ることが著者の旅の目的であるようで、非常に共感できる。昨今の世界情勢をふまえた考察も大変興味深い。続編も大いに期待したい。
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エディンバラ城の城壁まで登って、旧市街のかなた東方にある丘を眺めたときに、はたと気付いた。「離婚したいのだろうな。でも厳しいだろうな」と。草地と岩が連なり、木一本生えていないその姿は、日本でいえば宗谷岬周辺と同種の風景だった。当地の気候的な条件不利、地味の貧しさと人口支持力の低さが、風景から歴然と見て取れたのである。
この北米そっくりの自然条件が、自由競争を好むイングランドとは異なった社会民主主義的気風を生み、他方で人口と生産力で圧倒するイングランドへの経済的依存を必然にしてきたのだろう。(p.66)
多くの人は聞いたこともないような国の話にも書いてきました。ですがどの国も、日本と同じく21世紀に存在する人間社会です。日本とはどのような国なのか、これからどうなるのか、未知の外国はその予言書のような、あるいは反面教師のようなもの。異国の街歩きは、「あれっ?」という驚きに満ちた、どんな読書よりもエキサイティングな学びの宝庫なのです。(p.131)
日本でも新幹線の新駅の周囲で、歩いてみたくなるような魅力のあるまちづくりに成功した事例は、古くは新大阪や岐阜羽島から、最近の上越妙高、新高岡、新青森、新函館北斗に至るまで皆無ではないか。在来線に乗り入れない新幹線方式は、都心駅への直接乗り入れとセットでこそ真価を発揮する方式であると、台湾高鐵は改めて教えてくれる。(p.185)
中国政府が、この高速鉄道システムを「中国製」と称して世界各地に売り込んでいることは、日本で強く批判されている。だが、これはある外国人が以前から指摘していたことだが、日本人が「日本の優れた新幹線システム」と力めば力むほど、外国人は買わないだろうというのだ。言えば言うほど、「あのマメでクソまじめな日本人でなくては運用できないシステム」と聞こえてしまう、というのである。その点(中国人には失礼だが)「中国で広汎に定時運航しているシステム」と聞けば、「自分たちにも使えるかもしれない」という印象を与えやすい。だからといって、他国から導入した技術を組み合わせて、「中国製」と売って歩くのはいかがなものかとは思うが、商売は客の側から考えなくては、売れるものも売れなくなるということは自覚しておいた方がいいだろう。(pp.202-203)
なぜアンカレジに40万人近い都市圏人口があるのか、ようやく理解できたような気がする。「山と海が何より好きで絶景に囲まれた暮らしをしたいし、アウトドアも楽しみたいが、ある程度の都市機能と外国への足もほしい。そのぶん冬が酷寒でも平気だ」という人には、ここはおあつらえ向きの居住地だろう。引退した年代の人はもちろん、アウトドアマニアの若者でも、年金なり相続なり、何かの理由で得たお金を糧に、ここに住み着く人がいるのだ。(p.218)
そういうことをあれこれ考えると、富山県の氷見あたりで富山湾越しに北アルプスを眺めながら、世界一の寿司ネタやうまい酒を堪能して暮らすのが、世界的に見ても一番素晴らしい暮らしなのかもしれない。公共交通もアメリカに比べれば格段に充実しているし、街並みもシックだし、里山の恵みも豊富だし、東京にだってすぐ出��来られる。残念ながらその自覚なく、氷見市の人口は減る一方だが。(p.219)
戦争が徳ではなくなった今の時代に戦争をするのは、経済的な損得では行動しない人たちだけです。これにも三種類あって、①宗教的狂熱で動く人と、②他民族混淆の場所において、自民族以外の暴力的な追い出し(いわゆる民族浄化)を目指す民族主義者と、③自己の権力の維持強化のために経済的な損も辞さずに紛争を仕掛ける権力者がいます。(p.264)
火遊びばかりに目を向けず、むしろ中国の21世紀の覇権主義の本体に気付かねばなりません。それは、経済力(よりストレートに言えば金刀)というソフトパワーの行使です。(p.269)
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本島唯一のサンゴの辺野古に基地を造るとか、北方領土問題は、現時点で返還は、ないだろうとか、北朝鮮、中国は、侵略の意図はないとか、論理的に説明してくれて有難い。本当は、著者のような何の下調べもなく、外国を訪れたいのだが、そう何度も行く機会がないセコイ私は、しっかり下調べをして、行く。でも、下調べは、有益な場合が多い、感動は、減っているのかもしれないが。
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モノの見方が流石という感じと思いつつこういう高い視座の人はやっぱ遠い人で凄いねえで終わりそう。好きなジャンルだがサラリーマンにとって政治経済ってどう活かせばええねんとは思う
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【ぶらりと観察】時に一風変わった歩き方で世界各地を巡りに巡った著者が,訪れたいくつかの国・地域に関してまとめた旅行記。本作においては,コーカサス地方やカリーニングラード等,あまり多くの邦人が訪れない国・地域を取り上げています。著者は,大ヒットを記録した『デフレの正体』等で知られる藻谷浩介。
さらりと読めると同時にじっくりと考える上でのヒントを提供してくれる作品。著者が地域再生等の問題に興味を置いていることもあり,日本と比較すると一風変わった地域の問題をさらに一風変わった眺め方で切り取っているように感じました。
〜常に双方からの目,さらには第三者の目を持たなければ,物事の全体像は見えない。そしてそのためには,国外に出ていろんなことに気づき,現地の視点から日本と世界を眺め直してみることが必要だ。〜
ネットで連載もされているようです☆5つ
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「まちあるきの達人」による旅行記だ。バルト海沿いのロシアの飛び地、イギリス、コーカサス三国、南米、インド周辺…、観光でもない従来の覇権主義的な地政学的観点でもないこの作者さんさんならではの見方で観察した世界とは?読み応えあり!
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人間が、どんな場所で、どのように生きているのかということを、実際にその場所へ行って肌で感じることで、今自分たちが生きている場所の「来し方行く末」を展望することができる。この本は、そんな視点や考え方を持つことの大切さを教えてくれる。
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日本が地政学的に恵まれていることがわかった。
島国だし資源に乏しいし人口が無駄に多いから攻められづらい。
=単一民族国家を長年保てた。
=多民族/多宗教であることが引き起こす種々の問題に惑わされづらい。
=ひたすら「合理」を追求できる環境
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なかなか鋭い視点で、目からうろこ、実際に見ての洞察力に敬服。ただ、写真がカラーを白黒にしたための調整がなく、みな夕暮れ夜景の写真になっていて、惜しい。
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教養と経験を自由自在に結びつけた知的好奇心をくすぐる素晴らしい旅行記。
知識が本当の意味で自分の地肉になっていないと、ここまで縦横無尽な文章を書くことは不可能だと思う。
また、なんていうか考え方が柔軟で凝り固まっていない感じがする。押し付けられていない感じがする。
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地政学と聞くと何だか固そうに聞こえますが、ほぼ旅行記に筆者の歴史や地政学的な補足が入った内容です。旅行記として読むのであれば、あまり日本人になじみのない国を訪れたりしているので面白いですが、地政学として読むとやや物足りないかもしれません。
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「二時間だけ入国して成田山新勝寺に立ち寄った外国人が、それだけの経験から日本を語る」というような覚悟と気合
人は知識だけで頭でっかちになりがち。
それを強く理解させてくれる旅行ノンフィクション。
旅は「地理」と「歴史」の味わい方で、大きく跳ねる。
というよりも、地理と歴史を感じれなければ、薄い時間と経験だけに。
人類の歴史そのものが、国境を複雑怪奇にしている。
歴史の闇が、いまだに各地で残りまくっている。
人が見ただけで解ったフリをするのが理解できた気がする。
ちゃんと国境を知れば知るほど、解決出来ない問題が心に入って来るからだ。
旅をする時に用意や準備をしていく。
だけど。
行きたいとこ・知りたいことを、ただなぞるだけの旅だけの、何と多いコトか。
行き当たりばったりがイイとは言わないけど、感動や思い出に残る旅の時間にするヒントが、たくさん隠されていて、面白かった!
「世界は行かなきゃわからない」