紙の本
愛ってなんだろう。
2008/08/19 15:33
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間誰しも、何度かは激しい恋心に胸を痛めた事があるもの。そんな時に考えるのが、恋と愛の違い。これは一体愛なのか恋なのか、などいきなり哲学的になって考え始めたりする。そんな時、概して愛は恋しい気持ちの上位として取られがちだけど、必ずしもそうではないように思う。激しさから言えば恋の方が上であって、愛とはもっと滋味な物ではなかろうか。愛、の感情に一番近いのは、親が子を思う気持ちじゃないかと思う。好き、というのとは違う。いうなれば「何よりも大事」だろうか。だから子供はみな親の愛情、「何よりも大事」という気持ちにくるまれて、成長していくのだ。そして大人になり辛い体験・日々を繰り返す中で、その愛情の記憶が、また新しい愛情を与えてくれる相手を、パートナーとして求めていくのではなかろか。
本作品は男女の愛情にスポットを当てた、女性視線の10の短編集である。石田さんはこれまでにもいくつか同じようなテーマで作品を書かれているけれど、読み口は全く違うと言って良いかも。色々な形で愛情を育む男女を描き、どこか爽やかで暖かみのあったこれまでの作品に比べ、本作品は非常にドライなのである。
愛情がある、はずだった恋人や夫、子供との生活。いつの間に愛情は悲しみに変わってしまったのか。心は揺れ涙を流し、もがき苦しんで。それでも女達は、自分の気持ちになんとか整理をつけ、また明日からの毎日に向かって歩き出す。そんな物語達。
全編を通して、子供の姿が薄いのも特徴ではなかろうか。10の作品に出てくる子供はたった3人。それもほんの脇役でしかない。それに格別違和感を覚えないのは、少子化が問われる現代世相を良く現していると思う。
恋をするのは得意でも、もしかしたら愛を理解するのは、難しい時代なのかもしれない。現代日本を見渡せば、「愛のいない部屋」は決して少なくないのでは、なかろうか。
紙の本
にゃんこかわいい(表紙)
2018/05/22 11:46
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投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
※猫は出てきません(確か)
石田さんの作品とは思えないようなバッサリラストな作品がいくつかあって驚きます。
もちろん従来の石田さんらしい温かい作品がメインではありますが。
『いばらの城』『ホームシアター』は好きですね。温か系です。
『本のある部屋』はテイストが違いますが面白いです。
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石田の恋愛短編集3冊目…前作と違って、ほぼ全編含みのあるお話(早い話がアンハッピーエンド)になっているぶん、やはり読後ちょっと素直にふわんとなりにくい面はある。いくつも恋バナを続けて読んで、どれも若干不幸、というのはヤッパ乙女として悲しいと思うよ(笑)しかししゃれた雰囲気作りやセリフ回しは、さすがにテクニシャンだなあ…と思うがちょっとこの頃、飽きが来はじめているのかもしれないと、そこはかとなく感じてしまった。
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同じマンションに住むいろいろな人たちの短編集。特にそれぞれ関わりがあるわけではなく、いろんな年齢の人たちがいて、いろんな物語がある。。。でも、同じマンションというつながりがあると、全体にまとまりができる感じでいいですね
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今回はビターだ・・・恋愛の苦みもあり人生の苦みもあり。
窓際族の中年サラリーマンも、初めての子育てに悩む母親も、リアルに書けるのがすごい。
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さらっと読める1冊。
高層マンションに住む、それが共通点の人たちのお話。
1つだけ、読んだことがあったのだけど、それはどこでだったんだろう。
愛ってなんなんだろうね、って思う。
不倫とか浮気とかそういうものってこんなにありふれているのだろうか。
結婚ってそんなに夢のないものなんだろうか。
でもそれでも悪くないような気がするのはどうしてなんだろうか。
お話とはあんまり関係ないけど、そんなことを考えたり。
(08/07/13)
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同じマンションに住む人々を登場人物に描いたさまざまなショートストーリー。
たくさんの人が住むマンションには、それぞれのストーリーが。
DV、不倫。
小説のような話は、自分のすぐそこにも溢れているんだ。
大げさでなく、前向きな終わりがステキな短編集でした。
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主人公たちは、「自分は愛されているのだろうか、自分は愛しているのだろうか」と悩み、自分の人生を生きていないという強烈な後ろめたさに苦しんでいる。
実際には形のない曖昧なものであっても、名前を付けた瞬間に自分の形を持とうとする。
誰かを「愛しい」と思う気持ちに形なんてない。
それなのに人は、その気持ちに「愛」と名付けたがる。
そしてその気持ちを「愛」と名付けた瞬間に、「愛に飢えている」と錯覚を覚え、渇望感に苛まれる。
形のないものに言葉を当て、求める行為は苦しくないだろうか。
だって、それを手に入れることができたのかどうか、分からないだろうから...
もしかしたら、手に入れていることに気づかないことだってあるはず。
気づけなければ、ずっと求めて走り続けなければならないのかもしれない。
それって辛くないだろうか。
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必ずしも恋愛小説ばかりではない。必ずしもハッピーエンドばかりではない。この本はむしろ、どちらかといえば「失敗」したストーリーが多いのかもしれない。自責の念。後悔。不安。そんなちょっとネガティブな感情が多い短編集だが、そのストーリーたちがひとつのマンションで生きているというところに、穏やかな気持ちが生まれてくる気がする。
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神楽坂の高層マンションを舞台にした短編集。
婚約破棄をされ、ルームシェアを決めた女性、夫婦間にもやもやを抱えた専業主婦、DVに悩む主婦…etcと皆、大証の問題を抱え悩んでいる。
―どうして愛はいつも、悲しみに変わるんだろう。
帯のキャッチコピーにあるとおり、どの話も愛についての話でありながら悲しい。
愛が深ければ深いほど、そのバランスが崩れた時の悲しさは深いのだということを一つ一つの作品から感じます。
愛ってなんだろう、と苦い気持ちの残るお話でした。
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やはり話の構成、起承転結でいう「結」が詐欺師のように上手いと思う。今回は全ての物語にこれといって解決策や大きな変化があったわけではなかった。それなのに色々と考えさせられ、心がほっこりとしてくる。生きる人間は様々な十字架を背負っている。ところで『愛がいない部屋』は胸が痛くなる程良かった。石田氏は本当に子供の話が上手いと思う。
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神楽坂の「メゾン・リベルテ」という高層マンションに住む、それぞれの住人のお話。
表題の通り、ハッピーエンドな話は少ない。
愛とセックスは似てるものなんだろうか?結婚って何?
そんなネガティブな日常の中にほんの少しの光を見出す。
そんな短編集。
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短編いろいろ、です。
染みるなぁ。
最近、恋もなくって心潤ってないわ、な文学少女におすすめしたい。
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人生は決してハッピーエンドばかりじゃない。
そう言われているような気がしました。
人生、いい時も悪い時も永遠には続かない。
結局は上がったり下がったりの繰り返しってこと。
中には後味の良くないものもあるけれど。
後ろ向きじゃないところに救われました。
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誰もが憧れる高層マンション。そこに住む愛子は、幸せな結婚生活を送るはずだった。しかし、ある日「愛」は暴力に変わり―(表題作)。セックスレスの夫婦生活に疲れた、うらら。彼女はマッサージ店で働く15歳年下の青年に想いを寄せるようになる。だが、突然彼にホテルへ誘われて…(「指の楽園」)。切なくて苦しい恋に悩みながらも、前を向いて歩いていく女性の姿を描いた10のラブストーリー。