紙の本
パズルの完成する快感
2017/04/25 15:06
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投稿者:obandegans - この投稿者のレビュー一覧を見る
佐藤正午の新刊「月の満ち欠け」を読んだ。傑作です。初め奇妙な話の連続に読み進むのが怖く、それでも複雑な構造にグイグイ引き込まれ、リアリティのある描写に怪奇譚が息付き、破綻無しに全ての伏線が回収された時に大いなる感動。一気読みで涙しました。
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螺旋階段の踊り場で
2017/08/04 11:20
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投稿者:高橋波子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ごくごく平凡な男が平凡な生活の中でときおり垣間見る不自然現象は人間の心の奥底に広がる草むらのような山林のような場所を歩く中で体験したり感じたりするものであろう。一つ一つを全身で受け止めることもせずに、仕事やそれがらみの野暮にかまけて家族を受け流すこともしばしばで、それが取り返しのつかないことになったりもする。そうして人は老いていくのだろう。楽しみも悲しみも繰り返し訪れ、中島みゆきが歌う時代のように笑って話せる日はなかなか来ないものである。僕がこの「月の満ち欠け」を支持する理由はやはり愛の物語だからだろう。主人公の小山内堅(つよし)と妻の梢のラブストリーが全編を結果的に支えており、小山内の娘である瑠璃の既視感のような現実をそれぞれのるりと哲彦(あきひこ)が螺旋階段を登ったり降りたりする。いくつかの踊り場で一息つく余裕がそこに与えられていて、例えば僕は涙する。いい小説を読ませてもらったと、閉じた本に頬ずりするのである。
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直木賞の性格を揺るがす事件のような作品
2023/03/29 16:00
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第157回直木賞受賞作。(2017年)
佐藤正午さんが受賞されて、正直驚いた人も多かったのではないだろうか。
何しろ佐藤さんといえば、『永遠の1/2』でデビューしたのが1983年。この作品で「すばる文学賞」を受賞した当時気鋭の新人作家だった。
あれから30年以上経つ。その間も作品を書いてこなかった訳ではない作家だから、選考委員の一人浅田次郎委員のいう通り「熟練の作品」であり、「他の候補作とのちがいは相当に歴然」なのも、至極当然だろう。
だからといって、何故この時に佐藤さんが受賞するのか、これは直木賞という文学賞の性格を余計に曖昧にした事件のように感じた。
作品は「生まれかわり」をテーマにしているが、作品の長さを気にしなければ、内容的には芥川賞向きのような思えた。
さらにいえば、これは多分一読者の偏りといっていいだろうが、村上春樹さんの初期の頃の文体にとてもよく似ていた。
村上春樹さんが『風の歌を聴け』で「群像新人賞」を受賞したのが1979年だから、佐藤さんはほぼ同世代の作家といえる。
時代の匂い、時代の風がよく似ているということだろう。
選考委員の中には「後味が悪い」とか「不気味な作品」と選評に書く人もいたが、決してそんなことはなかった。
ただ、2016年公開された新海誠監督の『君の名は。』に、あれは時空を超えた「入れ替り」だが、とてもよく似ていた。
つまり、「生まれかわり」であろうが、「入れ替り」であろうが、愛する人とはどこかでつながっているということだろう。
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うまい!
2021/05/26 19:22
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投稿者:マロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
どんどん先を読みたくなり、後半になると「えっ、もしかして…」とバラバラの話の繋がりが浮かんできて、そして終わり近くなると読み終わるのがとても残念になるタイプの本です。
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愛する人に合う為に。
2017/10/14 19:21
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「瑠璃」と言う名前で繋がる少女たち。彼女たちの目的は一つ「愛した人に再び会うため」。
娘の変化に戸惑う親、受け入れる親、巻き込まれる周辺の人々など、読み進めるにしたがって関係が複雑になって行くのか面白かったです。
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物語にのめりこんでしまう小説ーー。そういう観点だと、私にとっては、作家くくりだとやっぱりこの方の小説なんだろう。登場人物に作家の想いがみえるのがいい。やさしい、せつない、すこし可笑しい、すこし哀しい。ページの数だけ満たされていく、幸せ。
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「天国からきたチャンピオン」は大好きな映画だった。作中にも登場するが、いわば「天チャン」へのオマージュでもあるよね。
最初の恋愛がもっと強烈な切なさでもいいのでは、と思いました。
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面白かったぁ、一気読み。
よみがえりものって多々あるけど
佐藤正午さんが描くと
さらっとドライで読んでいて気持ちいい。
なんだか、人生のおかしみや切なさが
バランスよくて大好きだ。
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先が気になって、久々、一気読みした小説でした。
輪廻転生をテーマにした物語で、より強い感動を得られたという点では、鈴木光司の「楽園」の方が好みです。若い頃に読んだこともあるでしょうが…
強い想いのゆえに出会ったとしても、さすがに一方が小学生では、この後どういう展開になるのかと思いますし、小山内の亡くなった妻の生まれ変わりが、今交際している女性の娘という設定も、側にいられるのなら、それでいいのかだろうか、それはかえって辛くないのか、とあれこれ思いを巡らせてしまい、読後感がスッキリとはいえませんでした。
ただ、そういうほろ苦い余韻が残るという点が、単に生まれ変わった主人公たちが、めでたく出会い、結ばれるというラストとは一足違う、この作品の魅力なのかもしれません。
ラストも確かにぐっときましたが、私は、同郷の者として偶然出会ったと思っていた小山内と小山内の妻が、実は妻が高校の憧れの先輩であった小山内を追いかけて、東京の大学に進学したとの事実を、ずっと後に小山内が知ることになるエピソードにより感銘を受けました。
著者のお名前は、本好きの人の間でよくうかがってはいましたが、読んだのはこの作品が初めてでした。
釈然としない部分を残しつつも、読み応えのある小説であることには間違いありません。
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生まれ変わりの話。
自分の愛した人や子供の生まれ変わりだと確信したからといって、それで素直にうれしいか? と疑問に思いますけどねぇ
でも、この方の本、初めて読みましたが、この世界にちょっと興味をひかれました。
また、別の本読んでみたいです。
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新たな代表作の誕生! 20年ぶりの書き下ろし
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる──目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
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月が満ちては欠け、欠けてはまた満ちるように、魂も何度でも生まれ変わることができるかもしれないという「一理」を核に物語は進む。強すぎる思いを残して、思いがけず命を落とすことになった瑠璃は、何度でも生まれ変わってアキヒコと出会おうとする。そのたびに、そのときどきの周りの人たちを巻き込み、惑わせ、心の平静を失わせるのだが、そんなことに頓着しないところに、思いの強さが表れているとも言えるのかもしれない。現実問題、巻き込まれた人たちにとってはいい迷惑とも言えるのだが……。起きていること自体は、恐ろしくもあるのだが、ホラーテイストを感じさせない物語の運びになっていて、ラストの場面に向かってひたすら進んでいく印象である。瑠璃とアキヒコにとっては、めでたしめでたしだと言えよう。前世の記憶、というところに興味をひかれる一冊ではある。
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著者の作品は初めてだが、読書中はワクワク感に満たされていた。意外感のある展開と登場人物の心情の模写が素晴らしい。
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今日ディーラーに車の点検に行って来た。
待ち時間に読みかけのこの本を読む。
物語もいよいよ終盤。
参った、涙で視界が滲んでくる。
そんな時に「お待たせしました」って営業さん。
涙止まらないし、鼻水すすってるし、ちょっとおかしなおばさんて思われたかも。
いやー、今年読んだ中で(大した数読んでないけど)間違いなくダントツ一番。
ミステリーと恋愛がどちらも破綻せずに融合していて、この面白さ。
佐藤正午の本は好きな本いっぱいあるけど、これ一番好きかなぁ。
時間軸を行ったり来たりする展開や、すれ違う男女、SF要素が入っているいるところ、どれもこれもまさに佐藤正午なんだけれど、まったく使い古されてないしマンネリ感もない。
純粋にその世界にはまって、どうしようもない心のありようにただただ途方に暮れてしまった。
こんな恋したいよねー(笑)
読みたい本もさほどなく、読んでも熱中せず、ブクログからは遠ざかり…
ご無沙汰しております、フォロワーのみなさま。
こんな私ですが、この本のレビューだけは書きたかった。
一人でもいいからこの本を読む気になってくれると嬉しいなぁ〜
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どんな内容か知らずに読んだがライトノベルの様な
甘い展開では勿論なく、不倫から始まったほろ苦い恋
を転生して何度も生まれ変わり過去の恋人を追い求めるストーリー。女性の孤独が深い分相手に残る思いが純愛
ではなく執念に近い感じがしてちょっと怖い感じもした。
輪廻転生は私はあると信じたい。
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月が満ちて欠けるみたいに生と死を繰り返し生まれ変われるとしたら、そして、愛する人と再会できたら?言葉だけでみると美しいと思う。前世という概念も否定しない。でも、この作品を読むと人間の場合は美しいだけじゃないことに気付かされた。だって、最愛の人の時間は進んでいるんだもの。相手の男性が40歳過ぎで、女性側が小学生で再会した場合、本人達にとっては美談でも世間的にみたら犯罪ですよね。綺麗に終わったし、面白かったけど、感想が難しい作品でした。