紙の本
短編なのに、この奥深さ
2018/08/02 16:14
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年(2017年)没後50年を迎えた山本周五郎だが、その人気は衰えない。
人気が衰えないということは、新しい読者が没後も次々を生まれているということだ。川端康成のようにノーベル文学賞を受賞した作家もいるが、山本周五郎の場合、たとえ無冠であっても(直木賞を受賞したが辞退)いつまでも愛される作家というのも稀有であろう。
その生涯、300篇近い短編小説を書いたという山本周五郎であるが、その中から一人の編者で文庫本にして全4冊の短編集がこの春から刊行されている。
編者が沢木耕太郎さんというのがなんといっても、いい。
沢木さんが山本周五郎さんのどんな短編を選び、どんな評価をするのか。
読者にとってこんな楽しみはない。
その1巻めとなるこの作品集では、掲載順に「あだこ」「晩秋」「おたふく」「菊千代抄」「その木戸を通って」「ちゃん」「松の花」「おさん」「雨あがる」といった9篇が収録されている。
しかも巻末には、文庫本解説としては少し長めの沢木耕太郎さんの「解説エッセイ」が載っていて、沢木さんの愛読者にとってもうれしい編集になっている。
沢木さんの解説は一つひとつの作品で書かれているから、解説としても丁寧だ。
この9篇の短編でいえば、『日本婦道記』の1篇である「松の花」がやはりいいが、藩の改革のために自らを殺して冷酷に生きた側用人と、彼に恨みを持つ娘の交流を描いた「晩秋」がよかった。
昨年亡くなった葉室麟さんが好きそうなそんな世界観であるが、ぐっと胸深くきた、短編であった。
紙の本
山本周五郎の世界に浸れました。
2019/02/03 13:54
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投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
長編小説も良いですが、読んでいて疲れてしまうこともあります。
短編もので、もう少し続きを読みたかったなというところで終わっているものも魅力的です。
私は「あだこ」が好きです。
二人が幸せになるといいなと余韻に浸っています。
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【没後五十年、今なお輝きを放つ短編傑作選。全四巻の決定版!】膨大な山本周五郎の短編群の中から選びに選ばれた名品――「あだこ」「晩秋」「菊千代抄」「ちゃん」「松の花」「おさん」等全九篇。
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今月の月刊文春で、編者の沢木耕太郎さんが、
山本周五郎を絶賛していました。
思わず、この文庫を買って読み始めました。
第1話の「あとご」から周五郎ワールド全開です(笑)
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沢木耕太郎/編の山本周五郎作品集というのを見た途端、手に取ってレジに直行していました。山本周五郎は交友関係それほど広くなかったそうだけど人を描くのが本当に上手い。登場人物は強いわけでも才能に秀でているわけでもないのに、読み進めるほどに引き込まれて人情味あるラストに感極まる。作品集ではそれを何度も味わうことができる。
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山本周五郎の名作短編9篇が、沢木耕太郎によって選ばれている。江戸期の武家や商人達とその妻や女性が温かい人情を示す。短編の中にその情を浮き立たせてくれる。昔の人はこんなに情が深かったのか、と半分疑いながらも楽しく読める。でも、人情は貧しいところに集まるのか?衣食足りて礼節を知る、という言葉もあるが、人情とは、礼節と次元の異なるものなのだろう。
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「山本周五郎名品館Ⅰ おたふく」山本周五郎 (編・沢木耕太郎)
「わざとらしい」とか「くさい」とか「センチメンタルすぎる」とか「できすぎ」とか「ダサい」とか「ベタ」とか。そういう批判を受けることは大いにあると思いますが、だから嫌われたり、食わず嫌いされたりすることもあると思いますが、そんなことよりも、そんな批判を超えて余りあるパワーとクオリティ。「小説界の中島みゆき」だと思います。
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10歳~15歳くらいにかけてか、山本周五郎さんの本をよく読んでいました。司馬遼太郎さんとか藤沢周平さんとかもその頃に大抵読んだのですが、周五郎さんは独特の美味しさがある本というか。
「樅の木は残った」「さぶ」「青べか物語」「季節のない街」「赤ひげ診療譚」などの、長編もしくは連作短編ももちろん素晴らしいのですが、でも周五郎さんと言えばなんと言っても短編です。戦後の文芸娯楽雑誌の時代、という背景が大きいですが、至極の短編作家。
山本周五郎さんの短編を、沢木耕太郎さんが選んで並べた、という「売り」の作品集。その一。正直どれも面白かったです。
特に、ベタといえばベタの極みとも言える短編「ちゃん」。職人の父親と家族のお話なんですが、こういうことでこういう短編を書ける人ってすごいなあ、と、改めて。
ただ、この歳になって読み返すと,山本周五郎さんって意外と言葉使いや言葉の選び方については、無造作に現代語も放り込んでくるなあ、という発見が面白かったです。なんというか、「時代考証」という意味で言うと、けっこう、間違っています。
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ホッコリだなあと最初思ったけど、「あだご」も「おたふく」も、甲斐甲斐しく世話する女にヘタレな男がほだされる…って構造は同じやん。一方で、同じ武家の女でも「晩秋」と「松の花」は全く別向き。キーワードは江戸の女かと思えば、とりかえばやな「菊千代抄」、SFな「その木戸を通って」、ファムファタールな「おさん」の3篇は現代的だし、ホームドラマな「ちゃん」と一幕物っぽい「雨あがる」は群像劇…って、百花繚乱な山周ワールドを堪能。
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沢木耕太郎セレクションの山本周五郎短編集.帯に「周五郎短編はこれを読め」とあるが,まさにその文句にふさわしい,女性に焦点をあてた9編が収めてある.半数近くは他の短編集(新潮文庫)で既に読んだことのある話だったが,この短編集は山本周五郎入門として最適だろう.
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名人は名人を知る。紀行文、ノンフィクション作家が選ぶ文豪山本周五郎の珠玉の短編小説。
本シリーズはあの沢木耕太郎の選んだ山本周五郎の短編小説。
沢木は全集で全38巻、300編の小説から名作と呼ぶにふさわしい36編を選び4巻の名品館にまとめている。
本書はその第1巻。あだこ、晩秋、おたふく、菊千代抄、その木戸を通って、ちゃん、松の花、おさん、雨上がる。の9編。
半分ぐらいは一度は読んだことのあるものだったが、映画になった雨上がるを除き詳し筋は忘れてしまっていた。今回あらためて読み、新たな発見と感動が多数。
山本周五郎の描く女性。そして貧しくとも懸命に生きる市井の人々。人それぞれの哀しみをかかえながらも、あくまで周五郎の目は優しい。
本書の中では、個人的には、父の敵の世話を命じられる娘を描いた「晩秋」が一番。葉室麟の「蜩ノ記」とよく似た作品。もちろん他の作品もいずれ劣らず素晴らしい。
名作家だからこそ、分かる名作の真髄に触れることができます。
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価値観の旧いところと今に通じるところといろいろあるものの、名もない人たちの日々の努力は泣ける。文豪は、夏目や谷崎だけではありません。
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「山本周五郎」の短篇時代小説集『山本周五郎名品館Ⅰ おたふく』を読みました。
久し振りに時代小説を読みたくなったんですよね。
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生涯、膨大な数の短編を遺した「山本周五郎」。
没後五十年を経た今なお、読み継がれる作品群の中から、選びに選ばれた名品。
短編傑作選の決定版!(全四巻)
第一巻に収録するのは、「周五郎」が日本女性の最も美しく貴い姿を集約させたともいえる『松の花』、その対極にある自らの性に翻弄される女『おさん』、酔っ払いだが腕のいい職人の父親を描く人情ものの傑作『ちゃん』、ほか『あだこ』、『晩秋』、『おたふく』、『菊千代抄』、『その木戸を通って』、『雨あがる』の全九篇。
巻末に「沢木耕太郎氏」による解説エッセイ『一丁目一番地のひと』を収録。
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「山本周五郎」作品に深く傾倒する「沢木耕太郎」が、300篇にも達しようかという膨大な作品群を読み返して独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆したアンソロジー作品の第1巻で、以下の9篇が収録されています。
■あだこ
■晩秋
■おたふく
■菊千代抄
■その木戸を通って
■ちゃん
■松の花
■おさん
■雨あがる
■解説エッセイ「一丁目一番地のひと」 沢木耕太郎
「沢木耕太郎」が選び抜いた巨匠「山本周五郎」名品… 面白くないわけないですよねー
9篇とも愉しめました… 「山本周五郎」作品の入門書としてもオススメですね。
そんな中で特に心に残ったのは、
絶望した若い武士を立ち直らせるけなげな娘を描いた『あだこ』、
自刃した父の恨みを果たすため、冷酷な奸臣と言われた老臣を狙う娘を描き、最後の二人の縁側での対決は清々しい『晩秋』、
男として育てられた君主の哀しみ、痛ましい半生を描いた『菊千代抄』、
ずば抜けた武芸の力があるが、人の良さで浪人暮らしを脱せられない浪人とその妻を描いた『雨あがる』、
ですかね… でも、他の作品も面白かったからなー 味わい深い作品ばかりで、甲乙つけがたいですね、、、
市井に生きる庶民の哀歓、弱き者の意地、男と女の不思議な関係等々… 描かれているのは、現代にも通じるテーマだと思いますね。
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【あだこ】
山本周五郎作品の一位が塗り変わった。
あだこ。
人は不幸や苦しみからしか学べないというけれど、ここまでの人柄になるまでにはどれ程の事があったのか。
誠実に仕事をする。
誠意を持って人と接する。
日々の中で出来るようでつい疎かになってしまう時、怠けてしまいそうになった時、あだこを思い出したいと思ってしまう。
荒れた庭の草むらの中からひょっこり立ち上がったあだこを思うと涙が出てしまう。
福の神。あだこは福の神だ。
どれも後味の良い爽快な物語だけれどコレは刺さった。
山本周五郎を知って本当に良かったと思う作品だった。
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山本周五郎名品館Ⅰ(沢木耕太郎編)
「あだこ」
婚約が破談になりすさんだ生活をしていた小林半三郎の家にあだこと名乗る女が突然現れ半三郎のために精を尽くす。すさんだ心がほどけ素直な気持ちになれる人情噺。(231117 読了)
「晩秋」
冷酷な性格で圧政を進めていたが私曲の疑いで取り調べを受けることになった用人進藤主計と、圧政を見かね主計の視察を図ったが失敗し無念の切腹させられた父の恨みを果たそうと機会を図る娘津留。最後に双方の積年の恨みが晴れる。(231118 読了)
「おたふく」
既読「おたふく物語」三部作のうちの一作。無邪気で正直な姉妹、姉のおしずと妹のおたか。おしずが彫金師の貞二郎と夫婦になり人情が絡む心温まる話。(231120 読了)
「菊千代抄」
短編。少し怪しい話かなと思わせるはじまり。
嫡男として育てられた菊千代があるときから違和感を覚え、またある時に真実を知って苦悩する。ラストはやはり周五郎らしい結末。良かった。8231121 読了)
「その木戸を通って」
背中がぞくっとするようなインパクトのある不思議な話。武士物。
ある日、城代の娘との婚約が調っている平松正四郎の家に記憶を失った見知らぬ女が訪れる。そのことが理由で過去を疑われ破談となり、結局その女と夫婦になるが、記憶が戻した女はある日、庭の木戸を通って出ていく。(231124 読了)
「ちゃん」
腕は立が稼ぎの少ない火鉢職人、重吉。家族に申し訳なく思いながらも、愚直に正直に働く重吉を暖かく受け入れ生活する家族の物語。心温まる。(231125 読了)
「松の花」
武士物。紀州徳川藩の年寄役として勤めあげてきた佐野藤右衛門は長年連れ添った妻の死に際し、武士の作法に則って淡々と通夜を迎えるが、家族・家士・しもべに至るまで深い悲しみに包まれるのを知るとともに、これまで夫を支えてきた妻のつましい生活を知ることとなり始めて自分の愚かさに気づく。身につまされる話。(231126 読了)
「おさん」
特異な体質を持ち男を渡り歩く女おさんと、そんなおさんに見切りをつけながらも哀れに思う男参太の男と女の物語。(231127 読了)
「雨あがる」
腕は立つが他人を押しのけず奥ゆかしい性分が仇となり仕官に結びつかない不運な浪人、三沢伊兵衛。旅の宿に泊まり合わせた貧しい人々を喜ばせるために行った賭け試合が原因でせっかくつかんだ仕官の道も失敗する。そんな夫伊兵衛をさせる妻おとよとの夫婦の物語。8231128 読了)