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鉄道オタクではないので、ダイヤの細かい話はよくわからなかったが、競馬場と鉄道がいかにして発展してきたか、そしてその両者の関連性は読んでいて面白かったし、一大行事としての競馬開催に合わせた鉄道会社の工夫も興味深かった。資料もふんだんに使われていて、視覚的にも楽しめる。
普段は京都、阪神、園田の各競馬場に電車で行くので、各競馬場の最寄りアクセス駅の歴史を書いた章は非常に楽しく読めた。競馬場駅に行ったときに、本書の内容を思い出し、歴史に思いを馳せる…かも。
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資料を丹念に調べた跡が伺え、また双方の歴史もひもとかれていて、とても勉強になりました。
筆者の推察が多い気もしましたが、そこはロマンといえる範ちゅうだと思います。
近代競馬が起こり始めた明治~昭和の、競馬に対する熱狂が猛烈に伝わってきました。
「中原競馬大会」「鶴見の大競馬」…、掲載されている新聞広告を見ただけでもワクワクしてきます。
さらに「競馬に向かう客を乗せた路面電車が、先をゆく車両に軽く追突(当たる)。「当たるなんて縁起がいい」と大喜び」などというエピソードも紹介されていて、馬好きの懲りない面々はいつの時代も同じだね…とニヤリとしてしまいました。
全国あちらこちらで競馬が行われていたことも驚きでした。
例えば神奈川県なら(移転重複含む)、秦野・大船・松田・小田原・厚木・横須賀・鶴見・登戸・藤沢…、痕跡を探すのもおもしろそうです。
競馬と鉄道、それぞれに少しでも興味がある方に、是非オススメしたいです。
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船橋競馬名物かしわ記念が柏競馬場の記念レースだって恥ずかしながら初めて知りました。ゴールデンウィークにやるから、柏餅とかと関係あるのかと思ってました(汗)。
そう、柏だけでなく、(沖縄を除く)全国各地に競馬場があって、大量の人を集めた時代それを支えた鉄道の話。
インターネット投票できるようになって来場者は半減、競馬場が廃止されることはあっても、増えることはない時代に生きる我々にとっては羨ましい話(もちろん、ギャンブルには胡散臭い闇もたくさんついてて、そう単純に楽しいばかりではないのでしょうが。)。
名鉄杯の中京競馬場には、ちょっと行ってみたいかも。
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2018年度 JRA賞馬事文化賞 受賞作
※JRA賞馬事文化賞
前年の11月から該当年の10月までの1年間に出版・企画・開催された馬に関する文化作品について、文化賞選考委員会において選考される。日本中央競馬会(JRA)が、文学・評論・美術・映画・音楽などの文化活動を通じて、馬事文化の発展に顕著な功績のあった個人・団体を表彰する目的で1987年に創設した賞である。
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近代化を成し遂げる上で鉄道の輸送力は欠くことのできないものであり、鉄道を経営する上で競馬の集客力もまた欠くことのできないものであった。という歴史を理解させてくれる新書。著者は土曜競馬中継でおなじみの矢野アナウンサー。氏のレース実況とおなじく、軽妙でユーモラスな一冊でおすすめ。
馬券が合法になった際に、競馬場が全国に雨後の竹の子のように乱立した時期、それと戦後に「闇競馬」として行われた時期の話がたいへん面白い。
競馬をキーにして語られる分、本格的な鉄オタには物足りないかもしれないが、私のように鉄道は門外漢の方には、ほどよい鉄分で飽きさせない。
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競馬場とそこに乗り入れる鉄道がテーマではあるが、そのテーマを通じて明治以来の歴史・風俗を知ることができる良書。お召し列車、戦争、馬券、経済……競馬を取り巻く状況と、鉄道各社の対策ダイヤや集客作戦が面白い。
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2018年のJRA賞馬事文化賞。
競馬が好きで鉄道も好きで読みたいと思っていたのだが、「交通新聞社新書」って近くの本屋には置いてなく、そのままになっていた。ようやく中古本屋に出て来て手にすることが出来た。
ウイニング競馬でお馴染みの矢野アナウンサーの手になるが、競馬ファン鉄道ファンの域を超えて、よくぞここまで調べたという感じで資料的価値は高いと思う。一方、読み物としてはちょっと読み辛く、特に前半戦は苦労した。
中盤、今でも使っている淀駅や仁川駅、昔通っていた府中本町駅や船橋法典駅の話は、駅と鉄路の変遷も含めて懐かしくもあり面白く、最近岸和田に行くことも多いので、春木競馬を巡る南海vs阪和線の話も興味を惹いた(つい昨日も阪和線に乗ったけど、昭和5年に天王寺~久米田が20分って凄すぎる)。
それにしても昔は色んな所で競馬をやっていたのだなぁ、楽しくって仕方がなかったろうな。
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著者は競馬ファンには有名なフリーアナウンサーださうです。不勉強にしてわたくしは存じ上げませんで、ご無礼いたしました。この方は「野球」と「鉄道」、そして「競馬」が好きで、「競馬と鉄道」をテエマに一冊出せないかと知り合ひの出版関係者に打診したさうです。しかし「そんなマニアックな本は出せない」と断られたとか。まあさもありなむ。ところが救ふ神ありで、交通新聞社からオファーが来て、執筆・出版を快諾したとの事。流石に交通新聞社です。
で、一読すると中中面白いのです。わたくし、競馬については殆ど知るところは無いのですが、そんな人間でも愉しめる内容となつてゐます。競馬場駅といつても、単に競馬場が近くにあるから「〇〇競馬場前」などと名乗つてゐるだけで、それ以上でも以下でもないのではないかと思つてゐたのですが、大袈裟に言へば、競馬と鉄道の関係は、もう一つの鉄道史そのものであるなあと思案した次第です。
鉄道の創成期から競馬は絡み、日本初の競馬観戦列車は、明治天皇の乗るお召列車であつたといふから由緒正しいものです。明治大帝自身が競馬ファンだつたとか。共に幕末に欧州から伝はり、共に横浜が発祥の地になり、共に明治天皇が協力に後押ししたなど、競馬と鉄道には色色共通点があるのでした。
戦雲漂ふ時期も、競馬は黙許されたとか。その背景には富国強兵を焦る国家の思惑が絡んでゐたさうです。即ち従来の国産馬は戦争に於いて輸送力に劣り、戦力にならなかつたので、国産馬の増強にも一役買ふと競馬は例外視されたのでした。
第2章では、各競馬場駅の誕生から発展、さらに現況を詳細に解説します。詳細過ぎてわたくしは少し斜め読みしてしまつた。続く第3章は競馬場へのアクセスを巡り、観客輸送のライヴァル物語を綴ります。そして第4章は鉄道会社と競馬の関係を述べる。「名鉄杯」なんてのがあつたのですね。
第5章に至つては、海外の競馬場駅にまで言及してゐます。メイニアック過ぎます。本人も記述するやうに、態々オーストラリアまで行つて、廃線となつた競馬場線と駅の遺構を訪ねる人は中中ゐませんね。
巻末の「日本の“競馬場駅”一覧」リストは、これまた詳細なデエタが。良く調べたものです。しかしこの表を活用できる人とはどんな人でせうか。そちらの方に興味が湧きます。
といふ感じですが、鉄道・競馬・歴史のいづれかに興味がある人なら面白い一冊だと存じます。ところで、わたくしは名古屋の入国管理局によく行きますが、最寄り駅が「名古屋競馬場前」(あおなみ線)であります。しかしここは弥富のトレーニングセンターに移転してしまふさうです。駅名はどうなるのでせうか。
(丁度今日の新聞に、新駅名は「港北」(みなときた)駅に改称されると報道がありました。何だかつまらない名前です。「土古」(どんこ)でいいのに)