紙の本
医師だからこそ書ける医師の視点
2018/08/12 10:49
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投稿者:光太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
扇情的なニュースばかりが記憶に残る和歌山カレー事件が舞台の、ノンフィクションのような小説。報道で断片的に見ていた事件が、立体的に描かれている
ノンフィクション風小説にありがちな、生い立ち・人物像・動機など「野次馬的に見たい」側面がほとんどなく、医師である著者だからこそ書ける距離をおいた視点が印象に残った
この淡々とした描き方も含めて個人的には面白いと思ったが、途中で挫折する人もいるのではないだろうか
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警察への供述調書、検察への供述調書、公判での証言、弁護人からの反対尋問。犯人が逮捕されてからも大変な役割がある。結審しても被害にあわれた方や残された方の身体や心の傷が完全に癒えることはない。
どうか少しでもお元気で、少しでも笑顔をと祈るばかり
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和歌山毒物カレー事件を題材にした、ノンフィクション的小説。
精神科のクリニックを開く作家・帚木蓬生氏が、地元の医師仲間でカレー事件やサリン事件にも捜査協力した井上尚英九州大学名誉教授から鑑定資料一式を託され、「知られていない事実があまりに多すぎる」ことに驚いた著者が、井上氏をモデルにした〈沢井直尚〉を主人公に、同事件や裁判の経緯を克明に再現した小説とのこと。
過去の砒素関連の歴史的事件や、サリン事件などにも言及していて、非常に興味深い。
それにつけても、金に取りつかれることの恐ろしさよ。。。
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下巻に入って、上巻ほどのハラハラ感が無くなってしまったかな。それでも光山刑事の手紙はグッときましたね。
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下巻で漸くフィクションと感じられる部分が見えます。
非常にリアリティのある小説。
主人公はヒ素。
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和歌山毒カレー事件はもう20年前のことになるのですね。
ちょうど今頃でした・・・。
今でもそうですが、マスコミは熱していましたからいろいろ情報が錯綜して
この小説を読んでいると、わたしでも昨日のことのように思い出します。
この本の前半、カレー事件とは別の彼女が起こしたとおもわれる保険金詐欺が
次々と明るみに出てくる描写には、今でもそくそくとしたおぞけがきます。
現在は死刑囚女性の心の暗闇に一歩でも近づきたいと思う著者の執念迫力を感じます
この本の語り手は、ひ素はもちろんいろいろの毒物の研究をしている、臨床医でもある教授、
難しい医学的専門用語、毒物の種類、過去の事例を引いてリアルそのもの。
実際に事件を下敷きにしてのそうさくは「彼女がなぜ毒カレー事件を起こしたのか?」
グイグイ迫るエンタテインメントで、一気読み請け合いです。
わたくしの見るところ、あのカポーティの『冷血』に迫ってます
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事件の真相究明がどのように行われていたか初めて知りました。
専門的な難しい語句が臨場感のある展開となり一気読みでした。
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事件発生時はまだ幼く、事件のことも詳しくは知りませんでした。
この年になってこの事件の大きさ、恐ろしさを知ることになるとは。
隠れていた何年も昔の被害者、砒素と断定された理由、他の薬物との違い、他の薬物の症状、警察の頑張り、被害者達の心身への後遺症など。
専門用語が多く、著者特有の淡々とした進みであるので読みづらいし小説として面白いかはわかりませんが、興味深く読めました。
(読み飛ばした箇所もいくらかあります)
砒素は症例数が少なく、診察をしたことのある医者も少ないと語られています。
この小説が表に出たことで今後このような事件や事故があった場合、砒素による被害であると判明しやすくなったのではないでしょうか。
医者としても作家としても偉大です。
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毒物学を基軸としたミステリーだと思ってはいたが、ここまでゴリゴリに毒物学押しだとは思いませんでした。
もう、これ以上の毒物学のペダンチックな小説はかけないでしょう。
ペダンチックでありながら、ひけらかし感が強くなかったのは、主人公の紳士的なキャラクターのおかげでしょう。
犯人にとって砒素はデスノートみたいなものだったのかもしれません。
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和歌山毒カレー事件の取材がベース。
捜査に協力した中毒学が専門の大学教授の目線で書かれており、容疑者を逮捕・起訴するにあたっての綿密な調査の過程が描かれている。
が、医学の専門用語が多く、被害者全員が砒素中毒だったことから病状の説明も同じことの繰り返しになり、小説として物語を楽しむ感じではない。ルポとかドキュメンタリーな感じ。
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面白かった。和歌山毒物カレー事件の捜査に取材した小説で、実在した衛生学教授を主人公にしている。
何度も同じような記載が出てきて、ちょっとしつこく感じる所も多々あるが、非常に読ませる。最後の刑事からの手紙の下では思わず目頭が熱くなり、非情な事件を扱っていながらも読後感は良い。著者の他の作品も読みたくなった。
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実際の事件の裏側。
毒物研究者として捜査に協力し、犯人の非道な行いに戦慄する。
カレー事件以前には、身近な人たちに多額の保険を掛け、それで裕福な生活を送っている。
実際の事件には冤罪も囁かれていると聞くが、とてもそんな風には思えないほどに周到というか、人の命を金に変えることに躊躇していない部分が多く窺える。
いずれにしても、恐ろしい人がいるものだと思わずにはいられない。
2022.7.5
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和歌山カレー事件に関与して、現在までの十七年間、私はカレーを食べていない。おそらく今後も口にすることはあるまい。(394ページ)
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和歌山カレー事件の、ほぼノンフィクションのようなフィクション。
報道などで物的証拠、直接的証拠は無いが、圧倒的な状況証拠で判決を導いた、という印象を持っていた。素人からすると「そういうこともあるのかな」という感じではあるのだけれど、本書を読むと各種証拠から、犯人が囲い込まれ・浮かび上がってくるという状況はよくわかる。
もちろん「疑わしきは罰せず」点がある、という原則を裁判所が一種のプライドを持って守るのも、それはそれで納得ができる。(本書はそれを「誤謬」というけれど)
もちろん、本書は追及サイドの資料をもとに描いたものだろうから、そこは差し引いて考える必要はあるのだけれど。
あと、「和歌山カレー事件」の本筋の話だけだと、本書の分量は半分にまとめることができそう。砒素の歴史の話。過去の毒物の話、オウム真理教の話、などなど。直接は関係しない、要素の解説が非常に豊富です。これを冗長と考えるか、重厚と考えるかは人それぞれな気がします。