紙の本
こんな美術館があればいいのに
2018/10/30 18:30
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投稿者:ゆずしば - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しいドレスやレースなどを収集する私設美術館が舞台の物語。
実際にあれば絶対に行きたい!
個人的には、芳くんがコルセットを締められる場面がツボにはまりました。
紙の本
ぬおおぅ、なんともったいない、、、
2018/11/15 23:30
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作が妙に存在感のある作家さんです。
表紙がホラーテイストなのでパスしていますが、
気になるので最近の作品を読んでいます。
この作品で三冊目の読了です。
率直な感想ですが、設定や雰囲気はとても好きなのに、
章単位での視点を交互に変えたダブル主人公と、
偶然の重なりすぎた展開に、もったいないと叫ばずには
いられませんでした。
いまのところ知る人ぞ知るという作家さんだと思いますが、
大化けの可能性を感じます。他作をもう少し読み進めようと
思います。
クローゼット。ただの洋服の整理ダンスではなく、
きれいなものを集めた魅惑の空間なのです。
白峰纏子(まきこ)、服の修復士。関係者限定の
服飾美術館に勤め、服の向こうの世界が見える人です。
下赤塚芳(かおる)、デパートのカフェのアルバイト。
きれいな服が好きで、女性ものも着こなすやせ型の男子です。
少女漫画から抜け出たような人です。
物語は、纏子と芳の視点を入れ替えながら進んでいきます。
>------------------------<
むかし、むかしの話。
クローゼットの中は秘密の隠れ家だった。
────────
扉を閉めると、音はふっつりと消えた。扉の隙間から
差し込む光の筋で、埃が雪の結晶のように輝いた。
そこは、静かで、よそゆきの夜のにおいがした。
────────
クローゼットの中は自由だった。そこではなりたい自分になれた。
ひとつの閉じた完全な世界があった。
けれど、クローゼットから一歩出ると、現実の自分がいて、
ガラスの靴は粉々になった。
>------------------------<
冒頭の二ページの抜粋です。
そして、この物語のすべてが凝縮されています。
どきりとして、その勢いを燃料にして読了しました。
ダブル主人公なので、展開の裏心理が
ぜんぶ読めてしまったのが残念です。
出だしはよかったのですが、途中から一人の視点に絞ったほうが
謎めいてよかったように思います。
偶然の重なりすぎは、ひょっとしたら途中から筆が
すすみにくくなったからかもしれません。
マイナス部分はあるものの、二人のわだかまりは充分すぎるほど
推進力になっていました。
きれいなもの、どきどきするものに対する感情に共鳴するものがあります。
服の話ですが、奥行きを感じる作品でした。
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あー、本当に千早さんの書く物語が大好きだ。
読んでいて心が落ち着く。
この話以外にも主人公が男性に乱暴されたという設定が多い気がしないでもないけど、本作はその設定が生きていて物語を際立たせていた。
最後は物語が綺麗にたたまれ、すっとしてほっと出来た。
読んでる最中も読んだ後も、とてもステキな物語を読んでいるのだなという感覚が常にあり、出でくる登場人物がみな愛おしかった。
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(2018/11/9読了)
終盤がなぁ〜面白かっただけにもったいないなぁ。
急に刺青の男を出しちゃダメでしょ。それも、余命わずかだなんて。
文章とは関係ないけど、芳の章にはハンガーが、まき子の章にはコルセット(?)の絵が付いているのが、伊坂作品みたいで好き。楽しい。
久々にキャストを考えながら読みました。でも、映像化するとしたら凄くお金がかかりそう。観てみたいな。
(内容)
秘密と傷みに縛られ、男性が苦手なまま大人になった洋服補修士の女。要領よく演技するのが得意。だけどほんとうに好きな事から逃げてばかりいるフリーターの男。洋服を愛している。それだけがふたりの共通点のはずだった。18世紀から現代まで、1万点以上の洋服が眠る美術館で、出会うまでは―。誰にも覗かれたくない場所。
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強さと儚さを同時に持った繊細で美しいレースのような物語だった。
クローゼットの扉を開いて、洋服の歴史、思い出、期待と不安を感じながらお気に入りを見つける。
それは本の世界の扉と似ている。
纏子の優しくて強い台詞にしびれた。
綺麗なもの、触れたら壊してしまうかもしれないと思うとこわい、自分の知らない価値観はこわい。けどだからこそ大切に、丁寧に。
それにもしほつれても、きっと纏子が直してくれる。かっこいいな修復士さん。
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ボーイmeetsガールな話。
凝ってるはずがなんだか底が透けて見えそうな感じ。
服飾の歴史を知るにはまあ~なのでしたが。
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表紙に惹かれて手にした本、
引き込まれて一気読みしました。
こんなお仕事があるんだな。
お仕事小説としても楽しめました。
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初出 2016〜17年「小説新潮」掲載の「硝子のコルセット」
きれいな服を着たい美形のデパート勤務男子芳(かおる)は、服飾美術館を知り、昔のドレスと巨大なクローゼット(収蔵庫)に圧倒され魅了される。美術館の補修士纏子(まきこ)は母親のクローゼットで遊ぶのが好きな子供だったが、母親が連れ込んだ男に暴行されて男性恐怖症と閉所恐怖症となっている。この二人からみた服飾の歴史を残そうとする美術館の仕事と、それを取り巻く人々の真摯な仕事ぶりと出来事が交互に語られる。
二人が子供の頃遊んでいて、事件の時も一緒にいたこと、館長も子供の頃ドレスを着ていたことなどがわかってゆき、纏子は自分の人生を取り戻そうと決意する。
男性の方が美しい服を着ていた時代があり、美しい服を着たいと思う男が美術館では自然に受け入れられていく一方で、男のために生きづらさを抱える女性がいて、好きな服にかかわることで生きる場所を得て、回復させられていくことも丁寧に描かれていて、救いの場があることにほっとする。でも、それは現実の社会が生きづらいからなんだよなあ。
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刺繍大好きだけどそこまで服に興味がなかった私にも、スタッフみんなの服に対する愛情、尊敬、 仕事への情熱が伝わってきました。
本文に書かれていた 「コルセットがあった時代、刺繍はむしろ男性のためにあった」 「コルセットは貞淑な女性としての義務。男性たちの理想の妻のウエストは18インチ(45㎝)」 このウエストの細さって、昔の異常にくびれたイラストがそうなのかな?モデルさん並のウエストじゃないか…
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美術館の洋服の修復士の纏子、
子ども頃の哀しい経験から
彼女の心はクローゼットの中から出られないでいる。
美術館の学芸員で纏子の友人の晶、そして美しい洋服が大好きな芳、男性。
3人が出会うことによって、纏子だけでなく、二人にも新しい風が吹く。
繊細な素敵なお話だった。
いろんな印象に残ったシーンがあった。
纏子が修復をするときの様子に
「決して修復士の気配を残してはいけない」というところが
プロらしくて素晴らしい。
いつの時代も「性を超越するものに世間は厳しい」
というのもリアリティがある。
館長が芳にかつての自分を見たのかしら。
周防さんみたいなおばあちゃんになりたいけれど、
無理だろうねぇ。
もう、ハイヒールを履く元気はない。
だけど、素敵なおばあちゃんになりたい。
そして、最後のところ、纏子は強いなぁ。
私なら芳を止めないだろう。
作業観察好きの私。
きっと何時間でも修復の作業を見ていられる。
もちろん、できないけれど。
久しぶりにファッション美術館に行ってみようかなぁ。
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こんな美術館やお仕事ってあるんだっていうのが第一の感想。
登場人物一人一人が個性的で実写映画化したら面白そうだと思いました。
2人の視点が入れ替わって物語は進みますがその中で主要な三人がそれぞれ変わっていく姿が丁寧に描かれていました。
途中までは星5つつけてもいいかなってくらい引き込まれたのですが、最後がちょっとお粗末な感じがしたので1つ減で。
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綺麗なものが好きで、女性の服も着こなすカフェ店員芳、子供の頃の体験から心を閉ざし、ひたすら古い衣服を修復し続ける修復師纏子、纏子を守ることに一生懸命な学芸員晶。
古いドレス衣服が集められた美術館で3人は出会った。
不思議な世界観のある話。
登場する美術館はとても魅力的だし、綺麗な服の並ぶクローゼットには興味をそそられます。
纏子と芳の過去が交差した瞬間に、背筋にゾクゾクとしたものを感じました。
纏子の未来が明るいもののになるような終わり方で良かったです。
装丁が素敵な本でした。
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少女時代、母の華やかなドレスが並ぶクローゼットで恐ろしい体験をした洋服の修復士、纏子。少年時代、綺麗なワンピースに憧れ、友達から酷い言葉を浴びせられたフリーターの芳。貴重な2〜300年前からの煌びやかなドレスが収められた施設美術館が舞台。纏子を異常なまでに気遣う学芸員の晶や奇抜な服で固める高木などを絡め、過去のトラウマ、性別、コンプレックスなど、様々な問題を孕ませた繊細なイメージのストーリー。明るい未来を少し見せてくれるラストが良かった。
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幻想的な描写が光る魅力的なお仕事小説でした。 服を保存している博物館を舞台に、男性が苦手な洋服補修士とフリーターの主人公の交流譚です。衣服を修復するように心の傷を少しずつ埋めていくような繊細で美しい物語は儚く、美しさまでありました。そして直接的に描かれませんが、明るい未来が示唆されるラストにはうるっと着てしまいました。
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専門的な事があり最初の100ページほど読むのが辛かった。
しかし、芳と白峰がつながると、最後には感動が・・・