紙の本
1枚の写真が、異なる時代と場所に起きる男たちの人生を繋ぐ物語です!
2020/06/08 10:18
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカの作家リチャード・パワーズ氏のデビュー作にして物凄い作品です。同書の表紙となっている写真は、ドイツの写真家アウグスト・サンダー氏によって札餌れたものですが、この写真を媒介にして、異なる時代と場所に生きる男たちの人生をつないでいくという独特のストーリーが展開されます。一般的に、媒介でつながれるのは「情報の送り手」(写真家ザンダー)と「情報の受け手」(写真を見る者)なのですが、著者であるパワーズがつなごうとするのは「見られる者(農夫たち)」と「写真を見る者(読者を含む登場人物たち)」なのです。ぜひ、読んでみたい一冊です!
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上下巻纏めて。
まさか文庫で出るとは思わなかった。単行本が出たのは何年前だろう……。
『米文学』は肌に合わないことが多いのだが、これは好き。
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パワーズが、誰も読まないだろう、小説なんか書くのはこれが最初で最後と思ってとことん自由に書いた云々っていう(柴田氏あとがきより)のが、とても納得だなー。もりだくさんに書きたいこと書いたって感じ。その勢いがこの作品のおもしろさなんだとおもう。多くの伏線が、回収されていくように見せてすこしずつずれているんだけど、でも回収されていくのがおもしろかった。二つの像の視差から生まれる立体像。
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下巻でようやく内容が掴めてきて、楽しめた。
「写真」とはというところから、掘り下げられた、壮大な話になっていた。
しかし、魅力的な写真だ。
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題名と表紙に釣られてジャケ買い。
1914年に撮影された一枚の写真を元に、往時と現在(しかも現在の登場人物は二人)を話が錯綜する。
話の終着点が見えず、手探りで読み進める感覚は久しぶりであった。
作者のある種衒学的なところが多分に含まれているが、語られる、人から人へ伝えられる「物語」とはどのようにして成り立つのかを考えさせられる作品。
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作者が書きたい放題書いたというだけあって、とびぬけている。本国の出版が1985年という古さがどこにも感じられない。もっと早く読めば良かった。
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現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描かれていくのが本作である。あまりにもスリリングなストーリーテリングと同時に、歴史という流れの中において極めて微小に思えるたった3人の農夫というミクロな存在から、マクロな歴史の流れを逆照射するとも言える文学的冒険が楽しめる。
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下巻に入り、読み方をつかんできたこともあってだいぶ物語を楽しめるスキーマが頭の中にできる。
展開的にも、結末へ向けてぐっと動いていくところなのでどの章にも躍動感が出てくる。
ただ、それでもやっぱりものすごい読み応え。この物語は、この写真を偶然デトロイトで見かけた「私」、写真の中に写る農夫たち、理系の雑誌編集者であるメイズの視点でそれぞれ語られつつ、彼らの物語が一つの場所で交差し、そしてそのときに解説で論じられるところの「20世紀全体」の輪郭がくっきりと浮かび上がるという形式になっている。
とりわけ「私」が語る認識論にも似た写真論は、少なくとも私には再読必至。一度読んだだけではその半分も理解できていないと思う。
とにかく圧倒的な思索。思索の中に光る、エスプリのきいたアイロニー。
読み終わって、ああやれやれ、と思うと同時に、いい文章を読んだなあという満足感。
これ、原文で読んだら半年くらいかかるんだろうなあと思うと、こんな素敵な翻訳に仕立てた柴田先生に感謝。
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はーー面白かった
わたしのなかの伊坂幸太郎が好きな脳の部分が反応していた気がする。
あと言語の七番目の機能。
読んだきっかけは『大豆田とわ子と三人の元夫』のタイトルの本歌取り(?)の本歌の方を読みたくて。
しばらく積んでいる間に観たヴィム・ヴェンダースのベルリン・天使の詩でザンダーの写真集が登場して表紙の写真が出てきて映画館で興奮した。
解説でロラン・バルトについて言及されていて、わたしの読む作品になぜこんなにも登場するんだ??と不思議に思った。面白い。