紙の本
日本人の枠をはみ出したコーヒーのプロフェッショナル
2008/02/23 18:55
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばっちん - この投稿者のレビュー一覧を見る
たとえコーヒー好きであっても、コーヒーの品種の話となればお手上げだろう。アラビカ種までは知っていても、アラビカ種の原種がティピカで、そのまた突然変異種がブルボン・ロンドで、となるともうチンプンカンプンだ。この本は、コーヒーハンターと呼ばれる日本の一青年が、幻の品種とされたブルボン・ポワントゥをインド洋上の島で再発見するという話である。 コーヒーに興味のない人間には面白くもなんともない話だろうが、少しでもコーヒーについて知識教養のある人間にとっては、まさに血湧き肉躍る冒険談となる。このコーヒーは、フランスのルイ15世が愛したコーヒーといわれ、忽然と消えてから150年の歳月が流れた。再発見されたのは、マダガスカル島の東に浮かぶレユニオン島。かつてはブルボン島と呼ばれていた島である。その島に、幻のコーヒーの樹があるという噂を聞きつけ、筆者は勇躍乗り込むのである。
まるで運命のめぐり合わせのように、幻のコーヒーは眠りから覚める。このコーヒー、形状は小粒で硬質、長粒米のように細長いのが特徴だ。どうやら気難しいコーヒーのようで、焙煎は相当手こずるという。しかしその味は、香気高く、甘やかで、上品な酸味があるという。おまけにカフェインが通常のアラビカの半分しかない。
筆者は静岡の焙煎業者の息子で、高卒後エルサルバドルへ単身留学。名のあるコーヒー研究機関で、農事技師として働く。しかしほどなく内戦が勃発。目の前で警官が撃たれたり、友人が暗殺されたり、文字どおり弾雨の中をかいくぐる。平和な日本から見ると、まるでウソのような世界だが、筆者はそんな非日常的な世界で青春期を送る。
ブルボン・ポワントゥ再発見のニュースは世界中を駆けめぐり、日本でもひときわ新聞紙上をにぎわせた。たかがコーヒーだが、コーヒーは石油と並ぶ戦略物資でもある。時に南北問題も絡めば、地球環境問題も絡む。されどコーヒーなのである。日本の快男児が繰り広げる冒険アドベンチャーとして読んでも面白いし、コーヒーというフィルターを通した文明論、環境論として読んでも面白い。
電子書籍
勇気と情熱に心揺さぶられる本
2020/07/25 02:46
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投稿者:さゆり - この投稿者のレビュー一覧を見る
元々コーヒーが大好きで、ふと手に取った本ですが、想像以上に面白くて大満足です。
著者の川島さんが本当に美味しいコーヒーを求めて色んな国で冒険されている話がとっても面白くてあっという間に読んでしまうのですが、何よりそれ以上に川島さんの幼い頃からのコーヒーへの情熱と、その情熱があれば何でも出来るという勇気を与えてくれる素晴らしい本です。
甘えた環境で育っている中で、自分の力で好きな物を追っかける力が弱くなっていると感じていますが、この本で奮起させられた気がします。すっかりファンになってしまいました。
紙の本
コーヒー
2018/08/02 02:56
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投稿者:ひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コーヒーハンターというのがおもしろかった。コーヒーが好きな人なら、この種類についてしらなくても楽しめます。
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現代のコーヒーハンター川島良彰氏(UCC珈琲)のレユニオン島でのブルボン種の原種の復活の物語。珈琲ファンには必読。
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本当に幻のコーヒーを発掘し世に復活させた日本人がいたというのが驚愕。
コーヒーハンターという言葉にふさわしいロマンあふれる物語に浸れます。
これを読んだ後はコーヒーがうまい。
ブルボン・ポワントゥ飲んでみたい。
来年こそは!
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おいしいコーヒーは、アラビカ種のティピカだと相場が決まってると思っていたけど、世界には未開のコーヒーがまだまだあるんだなぁ。
川島さんのコーヒーへのこだわりは、半端ない。
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2009年のグアテマラ旅行後、テレビでたまたま見かけて、その後この本を手に取った。
グアテマラ旅行前にこの人とこの本を知っていれば、グアテマラ旅行でのコーヒー工場見学をもっと楽しめたんだろうなぁ、と思った。
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著者の川島氏は、コーヒー農事技師で、コーヒー農園の開発、生産国の栽培技術や栽培種、コーヒー豆の精選方法の調査、農薬の使用状況を調べる仕事をしている人。
この本は、著者が、高校卒業後、エルサルバドルの大学へ留学、エルサルバドル国立コーヒー研究所に移ってコーヒーの栽培を学び、その後、ジャマイカ、ハワイ、スマトラなどでのコーヒー園の開発を経て、絶滅したと言われていたコーヒーの希少品種ブルボン・ポワントゥを旧ブルボン島(現レユニオン島)で探し当ててよみがえらせるまでの手記である。
「コーヒーハンター」とは、最高級のコーヒー豆を目指し、失われた品種、”まだ誰もその価値を見出していないコーヒーを探して世界のコーヒー産地を巡る人のこと。
ブルボン・ポワントゥとは、旧ブルボン島で18世紀にアラビカ種ティピカから起きた突然変異種2種の一つ。著者はエルサルバドルでコーヒーの品種について学んでいるときに、ブルボン・ポワントゥがあまりにも生産性が低いため絶滅したこと、非常に香り高く素晴らしい品質だったことを知る。
よみがえったブルボン・ポワントゥは、日本で100グラム税込7,350円で発売される。何故この値段かはこの本を読むと分かる。価格設定の背景には、希少性、栽培の難しさ、工場製品ではなく農産物であるところからくる天候によるリスクなどがある。コーヒー豆の品質は正当に判断されねばならないという川島氏の考えがあるように思う。
どのワイナリーで作られたものかが評価されるワインのように、コーヒーも生産された農園で評価されるべきだ、普段飲みのワインとは別に特別の日のための高級ワインがあるように、コーヒーにもハレの日のためのコーヒーがあってもよいという考え方だ。
この本を読んでいると、良いコーヒーを目指す著者の情熱が伝わってくる。が、ただ闇雲に夢を追いかけるのではなく、調査に出かける前に徹底的に資料や文献を研究するというところ、また、生産国での持続可能なコーヒー栽培を目指しているところに好感が持てた。
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著者はコーヒーに全てを賭ける人でした。父はコーヒー豆の焙煎をする仕事で、小さい頃からその影響を受けて自然とコーヒー屋さんになるという想いがあったようですが、単なる店舗運営ではなく、コーヒーそのものを学びたいと思うようになり、当時、コーヒー研究の最先端だったエクアドルにある研究所の長に勉強をさせてくれと単身で何度も直談判し、それが認められて研修生にしてもらうという行動力。
勉強中にブルボン・ポワントゥというインド洋のブルボン島にしか確認されていない品種のコーヒーのことを知り、島の場所も名前もしらなかったところからそれを探し当て、蘇らせるまでの体験談です。
今ほど海外旅行が手軽でもなく、政情不安定な国が多い中、この復活に情熱を燃やす姿は自分と重ねて読んでみるとなんだか自分もできそうな気がしてきました(いや、重ねることなんて到底できないんですが)。私の場合はコーヒーでなくガラスで、世界中のガラス工房を調査したいというのが夢ですが。
彼を受け入れたエクアドルの研究所、それから彼の復興プロジェクトを支えた上島珈琲の社長、彼を支えた内外の協力者と現地農民、全てが同じ方向を向いて実現していく様は、強い信念を持ったものが最後に報われることを伝えてくれます。
これ程のプロジェクトを動かすこと自体大変なのに著者にとってはコーヒー道の道中にすぎませんでした。今は上島珈琲を退職し新たなコーヒー道を走っているそうです。
ブルボン・ポワントゥは高品質で他にはない独特の甘みがするコーヒーでカフェインも少ないことが特徴だそうです。高いそうですが一度飲んでみたい。