オール神様大進撃
2009/04/12 23:10
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
食事シーンが多い作品である。ただし、豪華な食事は出てこない。質より量のファストフード、もしくは素朴な家庭料理ばかり。ピザ、チリ、パンケーキ、パスティ(これは美味そう!)、マカロニチーズ、デビルドエッグ、ポテトサラダ、リンゴ酒、蜂蜜酒、手作りのビール、アイスクリームサンデー、キャンディバー、特大のチョコレートクリームパイ、KFCのフライドチキン、焦げたフレンチフライ、ぱさぱさの七面鳥、冷めたハンバーガー、米入りのロールキャベツ、ミートボール入りのスパゲティ、酸っぱいボルシチ、薪のストーブで煮込んだシチューなどなど。ダイエット中の方は読まないほうがいい。
移民国家アメリカが舞台となっているので、いくつかの料理に含まれている民族色は作り手のそれと一致している。たとえば、第二部でスパゲティを作る女性の先祖はコルシカ島の出身だし、第一部でボルシチを振舞う老女はスラヴ神話の女神だ。
この「女神」というのは比喩ではない。正真正銘の神である。
そう、『アメリカン・ゴッズ』は神々の物語。
アメリカには無数の神がいる。多種多様な人種が海を越えて新大陸にやってきた(あるいは強制的に連れてこられた)時、彼らが崇める神々もまたアメリカの住人となったのだ。ヨーロッパの神、インドの神、中国の神、エジプトの神……。
もっとも、神が神として生きていたのは昔の話。今では力を失い、人間社会に寄生する日陰者になっている。人々の心が新たな神々を生み出してしまったために。インターネットの神、メディアの神、自動車の神、ドラッグの神……。
古き神々の多くはそんな現実を受け入れているが、北欧から来た隻眼の神だけは違う。
彼は主張する。
新しき神々は我らを滅ぼそうとしている、と。
殺られる前に殺れ、と。
そして、彼は古き神々を糾合し、新しき神々に戦いを挑んでいく。
これが少年漫画やライトノベルの類なら、新旧の神々が各々の特性を活かしてバトルを繰り広げるところだが(それはそれで面白そう)、書き手がニール・ゲイマンとなれば、そうはいかない。現代の「神々の黄昏」は読者の予想を裏切る形で進行する。しかし、期待までもが裏切られることはない。ゲイマンが紡ぎ出した神話に読者は困惑しながらも魅了され、憑かれたようにページをめくり続け、クライマックスを経て人心地がついたところで長めのエピローグにとどめを刺されるだろう。その後、すぐに息を吹き返し、再読を始めるはずだ。見逃していた伏線を再確認するために。
それにしても、カバーの折り返しや帯にある「今世紀最大の問題作」という惹句はいかがなものか? 本書が問題作/名作であることは間違いないが、今世紀が始まってからまだ十年も経っていないのに「今世紀最大」と決め付けるのは早計に過ぎるだろう。
次世紀が来る前に『アメリカン・ゴッズ』という作品が人々に忘れ去られる可能性がないとは言えない。この物語を最後まで読み通した人なら知ってるはずだ。どんなものもいつかは忘れ去られ、輝きを失ってしまうことを。
もちろん、いつか失われるからといって今の輝きが無価値というわけではないことも。
投稿元:
レビューを見る
訳がいいんでしょうか、読みやすいですね。女神転生シリーズでお馴染みの仲魔たちが出てきて何かうれしい。神々たちの挿話も興味深い。下巻ではどういう展開になるかな。
投稿元:
レビューを見る
★かっ、感動したっ!
旧大陸から人間とともにアメリカに渡ってきたいろんな国々の神々が没落して、タクシー運転手・葬儀社経営・詐欺師・売春婦…いろんな生業で生計をたてている。そんなマジック・リアリズムの世界。
日本のラノベとかにありがちな設定。というよりも、ベタ過ぎてもはや、今のラノベではできないかも…。
★このベタ設定に真正面から取り組み、“新旧神々の大戦”というワーグナーのオペラみたいな大芝居を『スターウォーズ』ばりの大メロドラマとして完成させたニール・ゲイマン。あんた偉いっ!。
★…とはいえ、「“神々の黄昏”みたいなスケールの大きな話を日常的な舞台で」というそれだけなら、日本のラノベ界の得意技でもあるのであんまり驚かない。『涼宮ハルヒ』とかね。
この小説が感動的だったのは、物語がまんま、現代アメリカ文明へのラディカルな批判になってるところ。
…って『涼宮ハルヒ』もそうか?ラディカルな現代日本文明批判?
…すごいぞ谷川流!
★…ニール・ゲイマンはアメリカの谷川流である(あるいはその逆)、という珍妙な結論を導きだしたいわけではありません。(それもちょっと思ったけど)
★誰一人神々を信じないアメリカで、惨めな暮らしを送る神々、という設定も魅力的だけど、その争いに巻き込まれる主人公の、神話のオルフェウスの“地獄巡り”さながらの旅の、暗いこと孤独なこと。
★ここにあるのは「現代アメリカに生きるということは、こかくも過酷な体験なのだ」というメッセージ。
「アメリカがいちば~ん」ってのを聞きたがるアメリカ人に、こんなキツイメッセージを投げかけて、売れるのか?と思わず心配に。勇気あるなあ、ゲイマン。
★主人公を陰ながら支えるゾンビの嫁さんとか、つかの間の安息の地になるアメリカの田舎町とか、そういう“ほっとする”エピソードもいい。効いてます。
★映画化しないかな~(作者あとがきには映画会社スタッフへの謝辞もあったが…)
『アメリカバンザイ!』って映画ばっかりの、今のハリウッドでは難しいでしょうね。
日本のアニメ界が手を出さないでしょうかね?プロダクションI.Gとか?あるいは、ネタづまりのスタジオジブリでも押井守でも、こういうの映画化すればいいと思います。赤丸でオススメ!
投稿元:
レビューを見る
新大陸「アメリカ」に渡って来た、
いまは忘れ去られつつある旧世界の神々と、
今現在の神々が戦いを繰り広げるという、
荒唐無稽とも思えるカルト・ダークファンタジー。
ものすごく面白い。
メインストーリーの合間の挿話が、
これまた楽しい。
世界にはこんなに妖精・神々が。
何せ巻末に、登場した神・妖精のアイウエオ順一覧があるし。
2002 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品。
2002 年 ローカス賞ファンタジイ長篇部門受賞作品。
2002 年 ネビュラ賞長篇小説部門受賞作品。
2002 年 ブラム・ストーカー賞最優秀長編賞受賞作品。
投稿元:
レビューを見る
舞台は現代アメリカ。
かつての移民たちは、故郷の神々をアメリカの地に連れて来た。神々は今、信仰を失いかけた古き神として、人間に紛れ細々と暮らしている。
シャドウの前に現れた男ウェンズデイは、そうした神様の一人として、“新たな神々”に立ち向かおうとしていた。
個人的に、ゲイマン作品は明るいユーモアとブラックユーモアが絶妙に織り交ざっていると言うか、無糖コーヒーで作ったカフェオレを飲むような感じだと思っている。
本作もそんな感じだった。
「聖☆おにいさん」なんかもそうだが、神様が人間社会に溶け込んで生活してる設定が好きだ。
アメリカには人種の数だけ神様が居て、信仰を勝ち取ろうと躍起になっている。神様だって生きるのに必死。
その姿は痛ましくもあり、ユーモラスでもあり、愛おしくも思える。
神話好きな人は思わずニヤリとしてしまう描写ばかり。
平凡な人間のシャドウを取り巻くのは、北欧神話やエジプト神話、ヒンドゥー教の神様、レプラコーンやピクシーといった超自然の存在。
こういうひとたちが普通に暮らしてても不思議じゃないと思わせるあたり、アメリカって面白い国だよなあ。
日本も似たようなものだけど。
うれしいのは、『アナンシの血脈』に出てきたアナンシが、この本にも登場すること。
(日本では出版順が逆だが、本書に登場するミスター・ナンシーをピックアップしたのが『アナンシ~』)
アナンシ、あいかわらず陽気なオッサンで素敵だ。
投稿元:
レビューを見る
【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」
ゲイマンです。ロウファンタジー書きです。世界の神話シリーズが好きな人は好きだと思う。あと、初代メガテン。スーパー神様大戦2009みたいなノリですね。アメリカに移民してきた人達の口伝で一緒にひっついてきた神様たちが、現代の神話(ネット、ファストフード、金融、癌)の神様と戦うお話。所所に挿入される、今を生きる神様達の姿が滑稽で物悲しい。「アナンシの血脈」という子供向けのポップなのもあるのでそちらもおすすめ。ゾニャーかわいいよゾニャー。
なんでこれ読んでおきたかったかっていうと、僕のしたい事がだいたいやられていたからである。新入生の皆さんはやっぱり、読んだ本があってこそ、何か書きたい、俺でも書けるくらいの気分で来るわけだし、延長線上にある大きな壁、みたいなものは味わっとくといいと思うのです。「何が壁か分からない!」「俺の小説(ジャンル)には壁なんていないんじゃないか」って思う人はその辺のその筋の先輩に聞いてみよう。伊達に長生きしてないと思う!【S.O.】
投稿元:
レビューを見る
なぜか読んでなかった。ドラマは見てたけど、S2が始まるのでじゃあ読んでおこうと。ドラマが結構構成違うんだね~って再確認しながら読んでた。
上巻のうちはまだ、振り回されてるようなシャドウとウェンズデーの謎が積んでく感じ(ドラマS1はハウスオンザロック前まで)
神様たくさん知ってる方が楽しいだろうなぁと思いながら読んだ。北欧神話の神様はVikingsで何となく聞いてたけども。
投稿元:
レビューを見る
以前、グッドオーメンズを読んだことがあり、その時に文章があまり自分に合わなかったから苦手意識があったけど、今回読んでみたら面白くて引き込まれた。
読むのが遅いと自認してるけど、この本は先が気になってあっという間に下巻まで読み進めてしまった。