紙の本
若手作家、町屋良平氏の代表作です!
2020/05/19 09:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、文藝賞を受賞し、また三島由紀夫賞候補にもなった若手作家・町田良平氏の代表作です。内容は、主人公は、ある日、友人のハルオから彼の恋人・とう子の見舞いにいってほしいと頼まれます。そして、見舞いにいく日々が続く中、だんだんととう子との距離がちじまっていきます。その一方で、夫や子どもがいる不倫相手の夏澄とのすれ違いが多くなっていきます。果たして、主人公ととう子、主人公と夏澄、主人公と友人ハルオの関係はどう展開していくのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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ずっと空を見上げていたような、そんな小説。そして、青が破れて、涙がこぼれて、今生きている自分の足元に目を落とす、そんな小説。
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あなたたちにも健康がどうでもよくなった人間の
すがすがしさと生きやすさをわけてあげたいわ
この言葉が残ってる。
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前から少し気になっていた作家さん。
好き嫌いが分かれる作品だな、と読んでみて思った。独特とも言えないが少し癖のある文体と平仮名と漢字の絶妙な使い分け。そのせいで読みづらいな、と最初は感じるけれど、私は読み進めていくうちに慣れていった。どっぷりハマったという感覚はなかったけどこういう本もあるんだ、というような、新しい音楽のジャンルを発見したときのような喜びがあって、それがこの本への抵抗感を薄めてくれた。文章自体も小難しさがなくて分かりやすいから物語もすんなり流れ込んできて、いつの間にか読み終わっていた。
ボクサー志望の秋吉、友達のハルオ、ハルオの彼女のとう子、ボクシング仲間の梅生、そして夫子のいる恋人の夏澄。5人の人物が織りなす日常には劇的なドラマはないが、ただ流れる日々が気持ちよく描かれている。
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『青が破れる』
斉藤壮馬さんのおすすめということで読んでみた。
平仮名多めだったのにはどういう意図があったのか掴めなかったのが哀しい…
他の短編たちも独特の雰囲気を感じれて、読後には爽快感を感じました。
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『青が破れる』
不倫してるボクサー(仮)の男の子とその周りの人たちの話。
考えすぎちゃう男の子。
周りの人たちが三人も亡くなる。
『脱皮ボーイ』
電車のホームから落ちた脱皮する男の子と、
電車のホームから男の子を落とした女の子の話。
脱皮とは…
『読書』
別れた男女が電車で隣同士になる話。
会話は無し。
男は気づいてるけど、女は読書に集中して気づかない。
これは素敵だった。
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「1R1分34秒」と同じくボクサー志望者が語り手。
なかなかよい中編。
ピザデリバリーを喰っちゃう有閑マダムとか、悪い意味で漫画的。
「serial experiments lain」を連想。奥さん米屋ですとかも。
また村上春樹も連想。つまり男性作家の悪い意味での女性幻想。
そして難病美女がタバコを吸って、というのも、また。
なのに、いいんだなあ。やはり、文体だなあ。
そして「人が関連するという事象」が、この小説においては、なんだか、いいんだなあ。
語り方が好きになるから、作者が好きになって可愛く見えてくる。この作風、得だなあ。
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感覚と哲学的なものがうまく混じり合ったみたいな文章が、不思議で心地よかった。
「青が破れる」ではコーラでうがいをするシーンが印象的で、夏澄さんの存在がめちゃくちゃスパイシーだった。上手く言えないけれど、とにかくスパイシー。
「脱皮ボーイ」では、「なんてカワイイのかしら!」と場違いな感想に思わず笑ってしまった。全体的になんとなく綺麗だとは思えなかったが、それが愛おしく感じた。
「読書」が3作品のうち最後にあったことで読み終わった時の爽やかさが最高だった。
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独特な文章。
私は少し読みにくかったけれど、読んでいくと慣れていく感じ。
現実の一コマをのぞかせてもらったみたいな本でした
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最初なにを書いてるのかわからなかった。あまりに何の変哲もない出来事が続く。しかし終わった後にその何の変哲もない日常こそがこの筆者の表現したかったものだと思った。視点が急に変わり、今これは今誰視点で物語が進んでいるのか最初は良くわからなかったが、後半慣れてきた。読書初心者には少し難しかった。でも表現はとても素敵だなと思った。
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“何かをかんじそうになったら、走るしかない”
衝動、動機はいろいろあるけど誰しも頭の中がぐちゃぐちゃになって、それでも何かしないといけない。
そんな瞬間があるなーということを読んでいて強く感じました。
主人公にあたる秋吉は些細なことまで”思考”してしまう、いわゆる考えすぎてしまう節があって行動できない、そんな自分が嫌になる。程度は違うけど自分にもたまにそんなことがあるなーと感情移入してしまいました。
対照ににするべきことを、するべきタイミングで行動に移せるハルオや梅生が秋吉と同じく羨ましい気持ちで眺めていたけど、小説のラストそんな2人にも抱えているものがあって、当たり前だけど誰しも大小の悩みや苦しみを持っていることに気付かされました。
ひらがなが多く使われていたりしていて、少し読みづらい印象もあったけど、それが敢えて人の心の難しさを小説という文章から伝えてくれていたのかなと読み終わってから思いました。
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読書開始日:2022年2月16日
読書終了日:2022年2月18日
所感
【青が破れる】
秋吉は、自分にしか矢印が向かない。自分が1番可愛いと思っている。
だから夏澄のSOSも、ハルオの状況も、とう子の心理も分からない。そしてそのわからないという状況により茫洋する。浸る。
そんな秋吉と関わろうとする人間は、恐らく自分に関心を向けられないことにどこか安らぎを覚えている。自らも無駄な関心を向けなくていいからだ。
関心は嫌でも向いてしまう。とう子とハルオの関係がそうだ。とう子は確率で死ぬため他の関心ごとは捨てきれても、ハルオへの関心だけは捨て去らなかった。他を切り捨てただけに、その関心は強固になる。だから疑心暗鬼にもなる。ハルオも同じ。
この二人は秋吉をクッションとして利用した。クッションは安らぐしね。
湖のほとりで疑心暗鬼から解放された2人を見て、秋吉も自分自身への矢印から解放されはじめたが、つけが回る。
夏澄が死ぬ。
ハルオが鬱による荒れた生活の果てに死ぬ。
とう子が昏睡の中死ぬ。
傾向に気づかない秋吉。
夏澄を浴びる夏澄の息子陽に勃起する秋吉。
そんな秋吉には、梅生が持つ統制されたブルーな情は訪れない。
破れるどころか元から持たざる者。
【脱皮ボーイ】
強烈な安堵。
架空の利益。
アイスクリームのシーン、脱皮を母にしか伝えていないシーン。
かのじょは母性のみでそこに恋情はなかった
【読書】
こういう考え方本当に好み。
無意識の部分でなにかを感じ取っていたり。
身体の部位や細胞レベルで何かに反応していたり。
そういう可能性を考えると楽しくなる。
読書中に急に文字を追えなくなることがある。こんなことも、上記のような考え方をすると途端にドラマチックになる。
最後のシーンの不意に出る涙に、感覚の鋭い赤ん坊だけが気づいているシーンがとても良かった。こんな短いのに季節を鮮やかに感じた。
好きな作品。
【青が破れる】
とう滑稽でなければひとといっしょにいられないとだもおもっているような性癖が、とても嫌だった
スタミナとは勇気、そして試合が終わるまでは終わらないという意思という名のシステム
もはや性欲で恋情を二乗していくような振る舞いはできない
だれしも嘘はいやがるのに、ほんとうのことを伝えないことはやさしいことだとおもっている
あいにいったら、それはおれの欲情であり、香澄さんの孤独であ。、それは情熱を装うけど、こんじつは空しい
人間は、季節の違いを気温なんかでは把握していない
茫洋
居場所が用意されすぎている感じ
梅生が単純な物質には満足し足りないことは分かっていた
そんなたまじゃないでしゃ
ボクシングと夏澄は同じ
痺れた思考が、この世をおうか
統制された感情はどこまでもブルー
他人に関心のあるひとのかなしみを、他人に関心のない人のかなしみを、秋吉さんはどっちもわからない
【脱皮ボーイ】
セックスの合間に、いっぱいいこう
瑣末
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他人には無関心、それはたぶん嘘。
自分が選ばない生き方を批評してしまう思考は内向的な人ほどきっとある。
痛みを声高に訴えられたら楽だろうに、それは僕のズレた思い違い。
ぼんやりした日々がどうしようもなく自分を生かす。
ぼんやり生きていたらあっという間に今の自分。
人生の特定の一時期だけにしか得られない経験...みたいなものかと思って読み始めたけど、確かにそれもあるけど、だけどここで描かれたようなものが今後の人生でまだ待ってるように思えて苦味。
上手く大人になれませんでした。
町屋さんもここから1R1分34秒に繋げていったの素敵だなあ。
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ボクサー志望の「おれ」(秋吉)、友人のハルオ、その彼女で難病のとう子、秋吉の不倫相手の夏澄、ボクサー仲間の梅生・・・。徐々に死に向かっていくのだけれど、独特なひらがなと漢字の混じり合いの文体に、柔らかさも感じました。そこが救いかも。
彼らのギリギリのところで生きている緊張感や精神の危うさを感じながら、こういう気持ちって身体的な経験でなくても精神的な経験として誰もが通っていく過程なのかもしれない。
とう子の「空たっかー」という一言が忘れられない。こういう作品好きです。
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表題作の「青が破れる」に「脱皮ボーイ」「読書」の短編、さらに「青が破れる」のマンガ、尾崎世界観との対談も併録された短編集。
何はともあれ、「青が破れる」である。文庫の紹介文に文藝賞の際の評価なんだろうけど、藤沢周、保坂和志、町田康が絶賛したこともわかる佳作。
文章の長短、リズムの変化、淡々とした描写など、作者が小説を使って新たな表現というか体験を描こうと模索していることがよくわかる。それは例えば次のような文章に表れていると思う。
「ハルオの彼女は、「ボクシングやってるの?」とはいわなかった。/「はー、空がたっかー」/といった。」
「夏澄さんに/・・・・・・ きて/とまたいわれ、夏澄さんちにいく。午前十時。/着いた瞬間に、「よかった。はやくきてくれて、ありがとう。留守番お願い」といわれた。鍵を摑んだまま、玄関の前に立ち塞がるように待っていた。/夏澄さんに「ありがとう」なんていわれるのは、初めてのようなきがした。」
ひとつ目は表紙にも引用されているので印象的だけど、二つ目は適当にページを開いて目についたものの引用だ。まあ、全体的にこんな感じで終始文章を味わいながら読ませてもらった。
短編「脱皮ボーイ」「読書」は「青が破れる」とはまた少し文章のテイストが異なる。「読書」は古井由吉や松浦寿輝を思い出させた。
芥川賞受賞作も読んでみたいと思った。