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紙の本
音楽とは何かを考える
2019/08/14 20:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にゃころ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻を読んでワクワクし、下巻をとても楽しみに読みました。
上巻は「才能とは何か?」「自分の音楽とは何か」「他者と自身の違い」「コンテスタントとしての葛藤」等、登場人物について作者が外面的に語って物語が進んでいるように感じました。
下巻に於いては、
”風間塵”、”栄伝亜夜”、”マサル”を中心に「音楽とは何か?」が彼らの感情が爆発しながらスピード感をもって描かれていました。コンサートそのものに意味があるのではなく、コンサート自体は箱に過ぎず、そこに参加した彼らの中に音楽の意味を感じました。
私がこの物語で、個人的に好きな人物は”高島明石”です。
彼の「春と修羅」のカデンツァを、すべてを聴きたい。この身に感じたいと思いました。
己自身が他のコンテスタントとは異なる普通の生活者でありながら、自分の中に才能を見出したいと葛藤する彼に、凡人である私自身をふと重ねて読んでいました。
この作品で本当に才能を開花させたのは、彼ではないかと思います。
「生活の中の音楽」を探し求める風間塵と、彼に共鳴した亜夜、マサルによって、下巻では音楽が違うものに見えてきました。彼らの音楽に触れた審査員、すべての観客の視点を通して「音楽とは何か」を読中、読後にずっと考えていました。
終わり方はさっぱりした印象を受けますが、作者がその後を言及せずにラストを描いたことで、爽やかな彼らに続く未来に期待を抱きました。
音楽の可能性を、実際には音のない本の中に音を聴き、感じることがあるなんて思いもしませんでした。素晴らしい作品です。
恩田陸先生の作品は、読むのはこれが初めてでした。
他の作品も読んでみたいと思います。
紙の本
結局、風間塵って何者?
2019/05/14 14:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:touch - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻の勢いを保ったまま読み始めた。
でも、正直、途中で少し飽きてきた部分もあった。
音楽を文学的に表現する巧みさには、素直に素晴らしいと感じるが、さすがにそれが続くと・・・。
いかに巧みに表現されているとはいえ、結局のところ、音が本当に聴こえてくるわけではない。
だから、もっと話に他の要素も組み込んで欲しかった。
例えば、テレビでよくやっているグルメリポートなどでも、ずっと食べている感想を言うだけだったら面白くない(見ているこちら側は食べられないのだから)。
マスターがどんな人だとか、繁盛店になるまでにどんな苦労があったとか、様々なエッセンスを入れた方が、番組に膨らみが出てくる。
なんか、それと似た構図をこの本に感じた。
そう言う意味では、風間塵の生い立ちをもっと詳細に描いて欲しかった。
何故、彼は養蜂家の息子なのに、天性の音楽の才能があったのか?
最後まで謎のままだったのは残念。
タイトルに堂々と「蜜蜂」とつけているにも関わらず、そういう設定にした必然性が全くわからなかった。
ひとつ良かったのは、ステージマネージャー・田久保の存在。
彼の目から見たコンクールの風景は、非常に興味深かった。
紙の本
音楽がわからなくても読んで、聴こえる
2020/02/13 23:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うれい - この投稿者のレビュー一覧を見る
風間塵シフトを敷いてくれる浅野さんやコールしてくれる田久保さん。コンテスタント以外の内面も描写されていてそこが好きだなあ。風間塵はワンピースのルフィに少し似ている。突然現れた風来坊は周りをどんどん巻き込んで、ひとつの渦にしてしまう。第三次予選で風間塵が「ああ、ピアノが買ってもらえなくなる」と呟いた時、風間塵はどこまで行っても風間塵なんだ、凡人と違う尺度で生きている、それに畏怖を抱くと共にいつの間にかこのギフトを好きになっている。「無我の笑み」とか「重力の軛を逃れるための」とか、細かい言い回しも好き。
紙の本
淡々と描かれているのに
2023/05/15 16:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアノコンクールの様子が淡々と描かれているだけなのに、
それだけではない。
4人の若き(10代から20代。この世界では20代後半は歳らしいが、
私から見たらまだまだ!)コンテスタントたちが何を思うか。
すがすがしいラスト。
紙の本
聴きたくなる演奏シーン
2023/05/01 19:47
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
この下巻、三次予選のところは、正直ちょっと間延び感がありました。特にマサルの演奏の表現シーンは、正直よくわかりませんでした。でも最後のトリの亜夜の演奏は文字ですが、すごかった。こんな演奏を聴いてみたいと思わず、思いました。でも残念なのは本選の章。三次予選に比べ、すごく尻すぼみに感じました。これがいいという人もいるかもしれませんが、亜夜の曲シーンも読みたいと思いましたし、何よりも結果発表や受賞のシーンとかもあった方が良かったと思い、最後はすごく残念でした。とは言いながらも、満足できました^_^
紙の本
蜜蜂と遠雷 下
2021/05/10 09:57
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投稿者:yukko - この投稿者のレビュー一覧を見る
ラヴェルが描いた風景を、
ピアノごと風景の中に移動し、観客をも景色の中に連れ込む。
その場にいたら、自分だったら、、
いったいどんな景色が見えるのだろうか
実際に体験してみたくなりました。
巻末の解説によると執筆前に5年かかり、執筆始めてから7年の連載
その間コンクール4回も取材してようやく完成した小説とのこと。
それを知ったらもう一度じっくり読み返したくなりました。
電子書籍
音楽を言葉で表現
2020/01/15 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
音楽を言葉で表現するのは難しいが、この小説では独特で魅力的な表現が随所にあって良く書けたなと感心する。例えばリストのピアノソナタを広大でいくつもの部屋を持った屋敷になぞらえたり、曲の展開をひとつの物語として表現するのにも感心した。登場人物の選曲も、例えば本戦では、栄伝亜夜がプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番(3番じゃなくて)、風間塵がバルトークで1,2番ではなくて3番と、一般的なポピュラリティとは微妙にうずらしていてちょっとマニアックなところも心憎い。ピアノに賭ける主人公たちの真摯な情熱だけでなく、苦しさ、葛藤も丹念に書いていて群像劇としても読ませるし、亜夜の演奏が直接に描かない結末も良かった。音楽小説として良質。