紙の本
色々とハイレベルな中短編集
2019/10/06 10:40
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投稿者:モフモフモフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんの前情報もいれずに読みはじめ、かなり特殊な構成だと知って驚いた。
最初と最後の物語は(私にはうまく表現できないが)論文的な要素を持っていて、ドイル&チェスタトン、クリスティーの作品に新たな解釈を提起する内容になっている。
残念ながら海外古典ミステリの読み手ではないので、上記の部分は理解しきれなかったが、物語としてはとても楽しめた。
…とはいえ、仮にドイル&チェスタトンとクリスティーの作品を読破したところで、記憶力の悪い私には、作中の登場人物たちの繰りひろげる高度な議論に加わることはできそうにもないが。
紙の本
のりりん、名探偵としてよりも生存確認的短編集
2020/02/24 14:15
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
単行本ですが特に厚いわけでもなく・・・中は四つの短編。うち二つは法月警視が困った事件に遭遇したのを綸太郎くんが話し合いでとりあえず解決の途を示す、いわゆる“安楽椅子探偵もの”。残りの二編はシャーロック・ホームズ譚とポワロ譚から導き出される<新しい仮定>について。
ミステリ黄金時代に思いをはせる、ほっこり系短編集。
シャーロック・ホームズの視点で描かれた二作の短編『白面の兵士』と『ライオンのたてがみ』に秘められた作者サー・アー・サー・コナン・ドイルの意図を読み込む『白面のたてがみ』。エルキュール・ポアロ最後の事件とされる『カーテン』に仕込まれた作者アガサ・クリスティーの大胆すぎるたくらみを読み解こうとする『カーテンコール』。
作者法月綸太郎によるちょっとしたコナン・ドイルとアガサ・クリスティーの作家論でもあり、シャーロキアン的「原典の内容を深読みして違う世界を導く知的遊戯」。
うーむ、またクリスティを読み返したくなってきちゃうじゃないか。
読み返すのはむしろ西村京太郎『名探偵に乾杯』四部作のほうだろうか。売ってないかもしれないけど・・・。
『あべこべの遺書』・『殺さぬ先の自首』は都筑道夫的というか泡坂妻夫的というか。
法月警視の奥さんのことがさらりと書かれていて(綸太郎の母がそんなことになっていたとは・・・『雪密室』読んでいるのですがきれいさっぱり忘れていた・・・)、ドキドキした。つくづく私はキャラ重視、今が比較的安定していればその人の過去は関係ないと考えてしまいがち。
紙の本
マニアは歓喜、未読本はネタバレの嵐
2019/11/19 22:10
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投稿者:つきたまご - この投稿者のレビュー一覧を見る
凄く面白かったです!
真ん中2つの短編は、法月親子の会話で推理するタイプで、かなり好きでした。親父さんの哀愁漂う感じも良かったです。「あべこべの遺書」はアンソロ集で読んでいましたが、再度楽しめました。
「白面のたてがみ」と「カーテンコール」は、もの凄く楽しめました。論文的な要素もある話でしたが、好きな作家の本を読み解いていく感じが、「そういう理解もあるのか!」と意外性もあり、楽しめました。
ちょうど犯罪ホロスコープを読んだ直後だったこともあり、そこからの登場人物が再登場したのも嬉しかったです。
しかし、「白面のたてがみ」と「カーテンコール」は、かなりの要注意でもありました。色々なミステリ小説のネタバレのオンパレードです!
表題になっている小説はもちろんですが、後ろについている参考文献たちも、モノによっては、読んでいないとネタバレされて痛い目を見ます。特に、ブラウン神父シリーズ、アガサ・クリスティの書いた本、西村京太郎「名探偵に乾杯」は必読です。作中でのネタバレが止まりません。
ネタバレされているのは、長年のミステリマニアなら絶対読んでいそうな本です。しかし、この本の素敵な表紙に釣られて、初めてミステリー小説に手を出したみたいな方には、要注意です。
逆に、これらの作品を読んだことがある人たちには、とても面白い話だと思います!
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おもしろかった
2019/10/12 15:50
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投稿者:ムギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホームズ、ポアロ大好きな者としては帯に惹かれて久しぶりに単行本を購入した。ホームズに関する考察はもちろんだが、ポアロ作品に関する議論では、もう一度作品を読み返したくなった。また、お父さんと倫太郎の会話のみで事件を解決する話では、2人のやりとりのテンポがよく、謎が明らかにされる流れが良かった。
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久しぶりの法月綸太郎(のりりん)。計4篇が収録されているが、うち2編はホームズとクリスティの研究もの。残り2編も集中して読めず、あまり楽しめなかった。残念。
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法月綸太郎シリーズの中短編集。
「白面のたてがみ」シャーロックホームズ作品2作に関わる謎をコナン・ドイル、チェスタトン、フーディと絡めて。
「カーテンコール」エルキュール・ポワロに双子の兄アシルはいたのか、綸太郎他登場人物達が語り合う話。
「あべこべの遺書」別々の場所で死んだ二人がお互いの遺書を違えて持っていた。
「殺さぬ先の自首」殺す前に自首してきた男がいて、その後実際にその殺人が起きてしまう。
評論2作品はホームズ、ポワロを読んでいなかったら楽しめない。事前予告されているがネタバレしている。読んでいるはずなのにすっかり忘れていて、私には関係なかったのですが。
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ミステリはよく読む(読んでた?)けど
誰が好きと聞かれたらあげる一人が法月綸太郎だった。
最初に読んだのは密閉教室
わくわくしながら一気読み
他の本も読みながら印象に残ったのは
誰彼でくらくらしながら心地よさを味わい
最終的に法月綸太郎の功績を読んで
きもちい~~~
となった
そんなわけで、期待して読んだけど……
内容的にはミステリ作家に関する話が二話
違うのが二話だったかな?
功績の時のような気持ちよさは味わえず
足元が定まっていないというか、
何かをやろうとしてるんだけど、
それがうまくいくまでいかず、なんとか形になったレベルで終わっているような
そういう意味では、この先どうなるのかは気になる
功績の時のように戻るのか
摩耶ユタカみたいにぶっ飛ぶのか
多分どちらにもいかずに、悩み続けそうなきもしるけど
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2019年78冊目。久しぶりの新作は法月綸太郎シリーズ。「あべこべの遺書」アンソロジーで読んだときはややこしさが目立ってしまっていたけど、改稿されてすっきりした読み心地に。「殺さぬ先の自首」と合わせてやはりこのスタイルは面白い。「白面のたてがみ」「カーテンコール」ホームズとポアロはほとんど読んでいないけど、これだけの考察には舌を巻く。法月さんの評論にも興味が湧いてきた。あとがきで謙遜されてたけど、ゴリゴリのコテコテの長編も期待してます。
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法月綸太郎シリーズの中短編集。4作収録。
ホームズ物の中の異色の2作を取り上げ、そこから作者ドイルの企みを綸太郎が推理する巻頭作。
ポワロ最後の事件の『カーテン』を中心に、クリスティーの長編の秘められた謎を解読する巻末作。
この2作は小説仕立てにはなっているけど、内容的には評論で、原作の犯人や真相も書かれているので注意が必要。著者の恐ろしいまでの研究熱心さが分かる。
残りの2作は都築道夫氏の『退職刑事』の法月版で、こちらは本来の法月綸太郎シリーズに近くて面白かった。
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なんの前情報もいれずに読みはじめ、かなり特殊な構成だと知って驚いた。
最初と最後の物語は(私にはうまく表現できないが)論文的な要素を持っていて、ドイル&チェスタトン、クリスティーの作品に新たな解釈を提起する内容になっている。
残念ながら海外古典ミステリの読み手ではないので、上記の部分は理解しきれなかったが、物語としてはとても楽しめた。
…とはいえ、仮にドイル&チェスタトンとクリスティーの作品を読破したところで、記憶力の悪い私には、作中の登場人物たちの繰りひろげる高度な議論に加わることはできそうにもないが。
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法月氏はすでに作家であるよりも、研究者の道を進んでおられるという認識だったが、今回はその感を一層強く持つことになった。
長年のファンしかついていけない本。(長年のファンです笑
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クリスティやドイルの知識がそれほどないので面白さがわからなかったが、研究者ってこんなこと考えるんだ、という点では面白かった。
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法月綸太郎シリーズの中短編4編収録。
そのうち2編はかなり文学評論的な内容だった。
「白面のたてがみ」はドイルとチェスタトンについて、「カーテンコール」はクリスティについてよく知らない人が読むのはちょっと辛いかもしれない。特に後者はクリスティ作品のネタバレがけっこうある。(各章の冒頭に但し書きがあるので、いきなり食らうことはない)
ここ数年、著者は本格ミステリ古典に親しんでいる読者を想定した作品をけっこう書いているように思うが、個人的には好みである。今回もドイルとチェスタトンの関係、作品の類似点についてはとても面白かった。
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+++
名探偵が挑む、名探偵たちの謎。
法月綸太郎 VS ホームズ、そしてポアロ。
名作に隠された驚愕の「真実」が今、明かされる!
躍動するロジック! これぞ本格ミステリの純粋結晶。
待望のシリーズ最新作!!
☆☆☆
ホームズ探偵譚の異色作「白面の兵士」と「ライオンのたてがみ」。
この2作の裏に隠された、作者コナン・ドイルをめぐる意外なトラップを突き止める「白面のたてがみ」。
ポアロ最後の事件として名高い『カーテン』に仕組まれた、
作者アガサ・クリスティーの入念な企みとは?
物語の背後(バックステージ)が息を呑むほど鮮やかに解読される「カーテンコール」。
父・法月警視が持ち出す不可解な謎を、息子・綸太郎が純粋な論理を駆使して真相に迫る、
都筑道夫『退職刑事』シリーズの後継というべき2編「あべこべの遺書」「殺さぬ先の自首」。
+++
タイトルから想像したのとはいささか趣が違ったが、名探偵が出てくる物語に隠された謎を解き明かす、という趣向はなかなか興味深かった。名探偵の性格、別の作品中で語られたひとこと、作者の企み。そんなあれこれを示しては議論し、新事実を導き出す過程にわくわくさせられる。ラスト近くの種明かしにはクスリと笑ってしまったが、愉しめる一冊だった。
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『あべこべの遺書』『殺さぬ先の自首』は、「あとがき」に言及されているように都筑道夫『退職刑事』シリーズを意識したもので、父・法月警視が持ち出す不可解な謎を、息子・綸太郎が純粋な論理を駆使して真相に迫るという安楽椅子探偵モノ。
二作品とも奇っ怪な事件であり、挑戦しがいのある謎という設定が印象的。安楽椅子探偵スタイルを踏まえつつ、小さな伏線を拾って隙のない推理を組み立てるハイレベルな謎解きには感服するが、やはりどうしても特異な事件設定の印象が強すぎて、そこに合わせて着地させたような強引さを感じてしまった。
『白面のたてがみ』『カーテンコール』の二作品は、「名探偵の晩年」というテーマのメタミステリ。偉大なる先人の作品に目を向け、議論されつくした正面からではなく、意外な角度から意外な解釈を導き出す妙味が面白いが、引用作品の多さと作者のこだわりという胃もたれ感から、結果的に読み手を選んでしまう不本意な流れに陥っているような。作者が出した結論について評価できるほど経験値の高い読者は少ないのではないかな。
本格ファンにはウェルカムなラインナップではあるけれど、悲しいかな私には行間に遊びがなくて堅苦しく映り、その圧迫感から、読んでると血の巡りが悪くなるような気になってしまった。読みたいのはシンプルな本格であって論文じゃないのよね。