電子書籍
独特の世界
2020/07/12 22:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hoyoyo - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名と表紙に魅せられて、読んでみた。小川洋子さんの短編集で、狭い世界で暮らす人の、「著名な誰かの○○」への執着を描いた作品が多い。ホテルのスイートルーム担当の客室係は映画スターの落とした髪の毛を拾い集め、彼がホテルから持ち去った本の内容と彼の映画をリンクさせて空想する。病院の案内係は、故ダイアナ妃の着ていたドレスを自己流で再現し、孫娘との外出時に着る趣味を持つ。著名人の秘密を知った気分で陶酔している主観性が薄気味悪くもあり、その静謐で美しい文体はとても文学的でもある。違和感と心地良さのバランスが独特だ。
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短編6作。
スポットの当たらないひっそりとした日陰を、眉を下げてじっと見入ってしまうこの気持ちは、蔑みなのか憐れみなのか。
最近の作品はへばりつく。
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小川洋子の最新作。
立て続けに新刊が出たのは嬉しい。そして、この表題作の、ゾクゾクするような雰囲気はどうだろう。やっぱり小川洋子の短編は好きだなぁ……。
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短編集。
主人公はいずれも、市井の人たち。
ちょっと変わった人たち?
いいえ、きっと私も他人から見たら、ちょっと変わった人なんだ。
そんな人達を、冷静に淡々と描く小川洋子さん。余計な感情が入ってないから、自分(読者)の感情で読めるのかも。でも、冷たいという訳ではないんだな。そこに私は惹かれるのかも。
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約束された移動
著作者:小川洋子
今日こそプロポーズをしようと出掛けた先きで見知らぬ老女に右腕をつかまれ占領されたまま移動する羽目に懐かしく恋しい人生を描く小川小説の新境地。
タイムライン
https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
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出版社のHPより:静謐な筆致で哀しくも愛おしい人の人生を描く6つの傑作短編集
感想:久々に読んだ小川洋子さんの本。
海外小説を読んでいるような感じがします。
各章に、人物や仕事などの何かに強いこだわりをもった人物が登場しますが、その人達の奇妙な様子ばかりに目がいってしまい、私にとっては読み解くのが難しい本でした。出版社のHPに載っている、小川洋子さんの解題を読んで、やっとわかった部分が多かったです。各章にロマンティックな部分があったことに気付きました。ストーリーや結末は(ひとつの章を除き)そんなに奇妙では無かったので、読みやすかったです。
ラストの”巨人の接待”が好き。
小鳥を愛する心優しい巨人と、見守る翻訳家の視点が優しくて、素敵な物語でした。
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小川洋子さんの独特な世界。
静寂の中、確固たる芯と危うさの狭間に流れていく時間。
読後、どうしようもない寂しさと愛しさを感じてしまう。
そんな中、「寄生」のラストには心がポッと暖かくなった。
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ここに出てくる人々は哀しいくらい寂しい。
その寂しさを理解してくれるものもいるが、それは枠の外側だ。
だから、小川洋子の作品は切なくて哀しくて、愛しい。
彼らにとって、孤独も大事に抱きしめているべきものだから、誰もその世界に入ることはできない。
だから、読み終えた時に寂しいと思うのだろう。
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テレビで特集されていたので購入。
テレビでは第1章だけ紹介されていて、ミステリーなのかなと思っていたんですが、そういうわけでもなく、どのジャンルにも属さない不思議な世界観がありました。
様々な「移動」をめぐる6つの短編集です。対象するものが「移動」されることにより、翻弄されていく人達が描かれています。連作短編集ではないのですが、各章、異常な雰囲気がありました。その状況下では、当たり前のような感覚や本能的に行動していると思うのですが、第三者からみると、ちょっと異常な印象をもちました。
ある特定の人に夢中になることは、誰しもあるかと思います。その行動が、もしかしたら共感する人もいるかもしれませんが、「何事も程々に」が大切なのかなと感じてしまいました。
また、現代的な言葉ばかりなのに読んでいる世界観は、どこかパラレルワールドのような、ちょっとポワーンとしたような雰囲気があって、終始独特な感じがしました。個人的には、なかなか世界観に溶け込みにくい印象がありました。異常な行動ばかりなのに文章は正常かのごとく、捉えたのごとく、不思議な感覚を味わいました。
この本を読んで、異常と正常は、紙一重なのかなと思わせてくれました。
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短編集。良かった。
共通項は、誰かと心を通わせている。なんとなく、読後寂しい気持ちになる。ちょっと奇妙ないつもの小川ワールド。
[約束された移動]
俳優Bが宿泊したら、本棚から1冊なくなる。
客室係はいろいろ想像する。
抜き取られた本の意味、メッセージ、次はどの本になるのかという予測。
複雑な形で星座のポーズのヨガをする主任さんが印象的。
[ダイアナとバーバラ]
ダイアナ妃のファッションを真似て作るハンドメイドの洋服。
それを着るバーバラ(本名じゃない、おばあさん)
バーバラと一緒に行動する孫娘。
バーバラの仕事は若い頃はエスカレーターの補助員、最近は病院の案内役。目立たない控えめな仕事をしているのに人々が振り返るようなダイアナ妃のファッションを真似た格好をする。
[元迷子係の黒目]
略して末の妹は斜視である。
仕事ではデパートで迷子を探すことが上手だった。
斜視の雰囲気をまるでカメレオンのように表現している。
見える範囲が広く、他の人より探したり見えるものが多い。
[寄生]
恋人にプロポーズするために予約していたレストランに行こうとバス停で座っていると、おばあさんがしがみついてきた。
抱っこちゃん人形みたいに。
あんたは、私の息子だと。
離れないので、警察署に行く。
警官もなんとか説得したり、電話をして迷子のおばあさんがいないか確認する。
その間は、あんたは私の父親だと。
おばあさんは離れない。
介護施設の人が迎えにきたとたん、あっさり離れる。
[巨人の接待]
ある村から作家の巨人がくる。巨人といいつつ、小柄なおじいさん。
インタビューや人前ではボソボソとしか話さないおじいさん。
通訳の女性はでまかせの通訳をする。
村の言語は希少で通訳の女性しかわからないので、それでも大丈夫。だいたいで通訳し、場が和んでいたら良し。
インタビューなどの仕事以外では、通訳の女性がわかるような声で話すおじいさん。
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「約束された移動」「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」「寄生」「黒子羊はどこへ」「巨人の接待」の6編。
読み始めてすぐに「アレッ?」、結局最後まで引っかかる事無く読了。
突飛だけどどこかノスタルジックな設定。静謐感。そこは確かに小川さんなのですが、その中で進められる物語は、どこか私の感性とズレているようです。
出版社の内容紹介の最後に「小川文学の新境地! 」とあります。
私なんかよりもっとコアなファン向けなのかもしれません。
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現代のファンタジー、静かでノスタルジックな雰囲気で安定感はあるものの、帯の煽りにあるような「小川文学の新境地」なポイントはちょっとわからなかった…
全体的にいつも通りの雰囲気で小川洋子さんファンなら十分に堪能できるものの少し物足りない感じもするかな。
収録作の中では「寄生」が良かったかな。
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自分自身は前に出ることなく、無名のまま静かに控えめに、誰かを世話する仕事につく女たちの物語。
ホテルの客室係、病院の案内係、デパートの迷子係、託児所の園長、通訳。「寄生」だけはちょっと遠回りで、保母。
狭い、閉じた空間が用意されていて、それぞれに孤独を育てている。その殻を少し破ってやってくる人があり、ささやかな交通が起きる。独特の肌触り。
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ハリウッド俳優Bの泊まった部屋からは、決まって1冊の本が抜き取られていた。Bからの無言の合図を受け取る客室係。こうして書棚の秘密はふたりだけのものになった…。6篇を収録した短篇集。
物語を紡ぐ力は相変わらずさすがだと思う一方で、何が言いたかったのか私にはよくわからない短編ばかりだった。すみません。
(D)
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表題作はもちろん、なんらかの形で「移動する」ことを盛り込んだ6編の短編集。読みにくくはないのだが、これを読んでなにを感じればいいのか悩む。寓話ではないし、取り立てておもしろいという話でもない。物語の中の語り部ができごとを淡々と描写しているだけだ。版元は「作者の新境地」と謳っているので、これまでの作風とは異なるのだろう。