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「力なき者たちの力」とハヴェルのことを全く知らない状態で読んだが面白かった。不条理な世界の変え方が読んでいて参考になった。読んで勇気がもらえた本だった。1970年代のチェコスロバキアはジョージ・オーウェルの「1984」みたいな世界だと思った。
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チェコのプラハに初めて訪れたのは、1995年の冬でした。まだビロード革命がそう遠い過去の話ではなく、素朴ではあるものの歴史の積み重なりを感じさせる街の雰囲気を感じながら歩いたことを思い出します。
その当時チェコの大統領を務めていたのが、本書のハヴェルです。プラハを案内してくれたチェコ人の友人が、彼が大変尊敬を集めている存在だと、教えてくれました。
今までその人となりや思想を知る機会がありませんでしたが、この本を読んで彼がなぜチェコで尊敬を集めているのか、どのようにして共産主義の崩壊の後に元首の座についたのか、よく分かりました。
ハヴェルは、共産主義や全体主義という体制の中では、個人が匿名化されて主体性を失ってしまうため、真実の生を生きることができないと考えます。本著ではこの考え方を、15世紀の宗教改革者で処刑されたヤン・フスの「すべてにおいて、真実は勝つ」という言葉から連なるチェコにおける思想の流れの中に位置づけています。
ハヴェルが体制崩壊後に国の行く末を委ねられたのは、こうしたチェコの人たちの魂に訴えかける正統性を体現していたからなのでしょうか。期せずしてチェコの思想の流れにも触れることができる一読でした。
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100分de名著シリーズは初めて読んだ。テレビの方も昔に1 回見た程度。本が薄いので、内容もそこまでかと思った。しかし、時代背景や他の著作からの引用でかなり分かりやすく、重厚感あるものに仕上がっている。
内容としては、戯曲家であり政治家であるハヴェルによる「言葉」の機能が説かれたもの。そうした戯曲に縁が無くノンポリの自分でも、現在の日本、主に政治の現状について多くリンクしている部分を発見し、ハッとすることがあった。本を読んだり、疑問を持ったり、今までやったことが無いことをやる、はたまた今までやっていたことを止めてみる、という小さなことの積み重ねが、自分のような力なき者でも社会を覆うヴェールにヒビを入れる力を与えてくれる。
文章が長い割に内容が無い、というのは…耳が痛い話。
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「ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』」阿部賢一著、NHK出版、2020.02.01
117p ¥576 C9498 (2020.03.08読了)(2020.02.03購入)
【目次】
【はじめに】ハヴェルの言葉に秘められた「力」
第1回 「嘘の生」からなる全体主義
第2回 「真実の生」を求めて
第3回 並行文化の可能性
第4回 言葉の力
☆関連図書(既読)
「プラハの憂鬱」左能典代著、講談社現代新書、1979.10.20
「粛清の嵐とプラハの春」林忠行著、岩波ブックレット、1991.06.13
「ドヴォルジャーク―わが祖国チェコの大地よ」黒沼ユリ子著、リブリオ出版、1982.11.10
「スメタナ、ドヴォルジャーク」渡鏡子著、音楽之友社、1966.01.31
「長い長いお医者さんの話」カレル・チャペック著、岩波少年文庫、1952.09.15
「変身・他一篇」カフカ著・山下肇訳、岩波文庫、1958.01.07
「カフカ『変身』」川島隆著、NHK出版、2012.05.01
「となりのカフカ」池内紀著、光文社新書、2004.08.20
「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ著・千野栄一訳、集英社文庫、1998.11.25
「兵士シュベイクの冒険(一)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
「兵士シュベイクの冒険(二)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
「兵士シュベイクの冒険(三)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
「兵士シュベイクの冒険(四)」ハシェク著・栗栖継訳、岩波版ほるぷ図書館文庫、1975.09.01
内容紹介(amazon)
「今、ここ」を起点に生きよ
チェコスロヴァキアの民主化運動「ビロード革命」を導き、大統領となったハヴェル。劇作家である彼が弾圧に屈せず真実の生の意義を説いたこのエッセイは、今日でも多くの示唆に富む。全体主義に絡めとられない生き方とは? 多種多様な人々が連帯し立ちあがる時とは? 「今、ここ」で何をすべきか?──壁を突き破る言葉の力を信じ、無血革命を成し遂げたチェコが誇る哲人大統領ハヴェルのメッセージを、日本の現状に重ねて読み解く。
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体制の掲げるイデオロギーに盲従することによって「理性、良心、責任」を手放すこととなってしまう。
消費社会においては、多様な選択肢が用意されて複雑になっていく中で知らず知らずのうちに自らの選択を先導されている可能性がある。
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ヴァーツラフ・ハヴェルのように、「言葉」の持つ力とその影響を信じている国のリーダーもいれば、何も国民に訴えることがない言葉を使うわが国のようなリーダーもいる。どちらが国のリーダーとして相応しいのかは言を俟たない。
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コロナが収束したらチェコに行きたいと読書仲間に伝えたところ、「力なき者たちの力」を紹介され、まずは100分DE名著のテキストから読むことに。
既存の体制に対して、何かおかしいという疑問すら感じず、盲目的に従っていること。自分の力では、体制やルールを変えられないと思い込んでしまうこと。そして、重要だけれども緊急度の低い問題を先伸ばしにしてしまうこと。これは現代を生きる自分によく当てはまることである。
ビロード革命は短期間で成し遂げられたのではなく、地下出版という形で、ゆっくりと何年もかけて民衆の良心に語りかけ、同志を増やしてきたことを理解した。「真実の生」に目覚め、小さいことだけれども変化を起こすことで、志を同じくする他人にも影響を与えることができる。一見目立たないけれども地道に取り組んでいくことで、小さな力が大きな動きになる。
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「力なき者たちの力」、ヴァーツラフ・ハヴェルによって書かれたのは1978年のチェコスロヴァキア社会主義共和国として全体主義が暗く覆っていた時代だ。1968年、文化開放政策が進められた「プラハの春」、その矢先、ソ連のブレジネフの軍事介入によって阻止された。それから10年後に執筆され地下出版された。全体主義の「嘘の生」に対し、「真実の生」の体制の大切さ、普通の市民の「慎ましい仕事」の尊さを滔々と説いている。その後、1993年に氏がチェコ共和国初代大統領に就任した。
この「100分de名著」シリーズ、よく纏まっていて侮りがたし!