紙の本
「発信」するスキルを高めるということ
2020/06/11 13:54
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投稿者:ny - この投稿者のレビュー一覧を見る
「発信する」スキルは、何も職業的なことではなくて、この社会を構成する市民全員必須のスキルであること。そのためには、SNSなどからの情報を慢性的に受け取るばかりでなく、自身も発信するスキルを高めること。つまり、ある情報の背景にある文脈を読み取る力をつけることで、断片的で不確かな情報に惑わされないようになる。
昨今、政治や行政、そして教育など、あらゆる現場では、メディアを意識した「改革」というパフォーマンスが顕著にみられる。特に問題の本質をみないで、スピード感ある「発信」が目的となってしまい、結局現場が疲弊する傾向がある。
本書は、物事の本質を見定める力をつけるという点で、大変示唆に富む内容であったと思います。
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私が無知なだけということもありますが、正直に言ってなかなか読みにくい本です。
戦後以降の日本全体の流れが、時代の思想家の主張も交えて宇野さんの解説のもと来たる東京五輪まで書かれています。
聞き慣れない言葉や言い回しが難しいですが、だいたい何度も言い換えられていたり後半で繋がったりするので、さーっと読んで流れを把握し、もう一度読み返す方が良いかと思いました。
読んだ感想は著者の宇野さん自体が自分自身のマニュフェストと仰っていたのがピッタリだと感じました。まるで長い演説を聞いているような感覚で、「だから今、日本にはこれが必要だ」と自身が進めていらっしゃる【遅いインターネット】という活動を解説する形になっています。
本自体は前述の通り【遅いインターネット】の宣伝のように感じましたが、冒頭で書かれている通り、この本を読んだからと言って終わりではなく、だから自分はどう考えるか・一個人としてどう発信していくか
昨今の社会情勢も自分なりに勉強し、考えることが大切だと思い、そういうきっかけという意味でとても良い本だと思いましたので、星4にさせて頂きました。
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ネット発信者への挑戦状!宇野&箕輪の最強タッグ『遅いインターネット』感想
http://colorfree-map.com/slow-internet-review
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SNS等で見られる深く考えられていない発信やデマに対して、webマガジン等のしっかりと考察・検証された発信のことを遅いインターネットと言っていた。今必要なのは、そういう遅いインターネットだ、と著者は実践をされているようだ。本を読むのが好きな自分にとっては、納得するところも多い。
twitterのトレンドを見れば、速いインターネットが全然ダメだということがすぐにわかる。
仕事で、自分は「なるほど〜」とか言っているだけなので、あまり人のことは言えないが。かと言って、新しい問いを増やして、めんどくさくすることも自分は嫌いだからな〜。時間と金がないと良い議論できないみたいに思って逃げてしまう。
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私も書き手として、他者×日常としての物語提供から自分×日常への転換をどうすれば読み手に届けられるのか考えているところある。そのために塾開いたり、非日常の現場個別の勉強会が日常になるよう働きかけ(押しかけ)たりしている。まだ、筋道を見つけられていない。
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日常と非日常、自分と他人 という4象限に分類して、
今までのメディアと、これからのメディアのあり方を
伝えてくれた一冊。
自分の日常という象限にアプローチすること。
自己幻想からの自立。
早すぎる情報に振り回されるのではなく、自ら問いをたて、
自分の目で見て、確かめ、自分で答えを導く。
考えなくても情報が流れてくるからこそ、
一人ひとりが自分で考える力をもち、自分で意見を言える世界を作ること。
価値観を人にゆだねちゃいかんな、と考えさせられる、自問するための一冊でした。
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昨今のインターネット、特にFacebookやTwitterに代表されるSNSを取り巻く状況や空気感にモヤっとした何かを感じている人に向けて処方箋となり得る一冊。インターネットが世の中を変え世界を一つに繋げると信じられていた黎明期の期待は脆くも崩れ去り、結果として分断と過激さを加速させただけではないかという主張に同意。そんな状況に対して新たなムーブメントを仕掛け、インターネットへの向き合い方を見直していこうと呼びかける決意と心意気に共感できた。芽はまだ小さいが、いずれこの活動が評価される日が来ることを祈る。
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- 自論やイデオロギーをサポートしてくれそうな情報にノータイムで食いつかないこと・自分の言葉に落とし込み、自分の思考を練り込んで発信することを強く支持してくれる本
- 氷河のように流れていくTL上で上手くスケートするような昨今のSNSライフから一線を引き、自分の思考ペースで丁寧に一本一本杭を打ち込み、地下に潜むインサイトを暴き、集合知の前身に寄与する価値を思い出させてくれる一冊
情報に触れたら一歩踏み止まって解釈せよ、付加思考を乗せて発信せよ、難しいけど日々意識し実践しよう
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「遅いインターネット」
インターネットの強みを否定したそのタイトルに目を引かれ、「序章 オリンピック破壊計画」という穏やかではない始まりに興味をもって購入した本。
正直あまりに過激で相容れずに最初の30ページ程度読んで古本屋行きの可能性も覚悟して購入した。
結果を言うと、買って正解だった。本書はインターネットによるポピュリズムが蔓延し、コト消費も行き詰り始めている現代に、インターネットをどう用いるかを述べている。
やや難解ではあるが、説得力を持って語りかけてくるため読後の納得感は高い。
熟慮して発信することの重要性を認識できた一冊。
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東浩紀さんが「一般意志2.0(書籍)」で進化続けるテクノロジーに合わせて「熟議のあり方」のアップデートが必要と説いた。その具体案としてルソーの「一般意志」を持ち出し「テクノロジーを活用する市民らで一般意志を可視化することが現代の政治のあり方」と提示した。
本書の論点も「政治的な熟議のあり方」。宇野さんはインターネットが言論の場を醸成するにはあまりに早すぎて、さらに困ったことに人々に熟議に参加している感覚、達成感、満足感を手軽かつ十分すぎるほどに与えしまうので、なおのこと強い懸念を表している。宇野さんは本書では熟議の有り方について「遅いインターネット計画」という言論の場を設けてともに継続的に語り合おう、モヤモヤを吐き出すために走り続けよう!と呼びかける。
個人的には宇野さんによる「吉本隆明論」「無責任の体系」「ほぼ日の成功と失敗」「平成というプロジェクトの失敗」「ジャーナリズム論(映像の世紀からSNSの10年代にかけて)」の解説がとても読み応えがあった。★★★★★の太鼓判。
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200304*読了
Twitterで話題の本だったのと、タイトルが気になったので購入しました。表紙のデザインもシンプルで素敵。
遅いインターネットって何?インターネットは速いからいいのでは?と読む前は思っていましたが、今では宇野さんの考えにすっかり染められています。
タイムラインもネットニュースもとにかく情報が早くて、特にTwitterだと有識者でもない一般人の信憑性のないコメント、誹謗中傷なんかも流れてくるので辟易していました。自分はそういう人物になるもんか、と。
一方で今、ツイート量は実験的に多くしているので、無駄な情報を流していることも多々。
政治でもなんでも世の中の出来事に対して、侵入角度と距離感をはかる。そのためには自分で考えること。スピーディーに答えを出すのではなく、時間をかけて考えて答えや新たな問いを見つけ出し、書くこと。
PLANETSCLUBに入って、この能力が鍛えられるとしたらすばらしい。講演もおもしろそうなものだらけだし、惹かれています。
タイムラインの空気を読んで、周りに合わせて意見を発することはやめたい。
そして、自分の中で新たな視座となったのは物事に接した時に、これは他人の物語か自分の物語か、非日常か日常かで考えてみる、ということ。これがなかなかおもしろい。
今は、自分の物語や日常に人々は魅了されているので、その観点から何かを作り出してみたい。
サピエンス全史を最近読み終えたので、ますます共感したのが、自己幻想、対幻想、共同幻想の部分。この社会自体が幻想であることはサピエンス全史でも語られていておもしろく感じていました。
今は自己幻想が誇大してしまっているし、共同幻想に埋もれてしまいそうになる時代。この時代を、遅いインターネットで切り抜け、インターネットそのものを変えていく、という宇野さんのお気持ちに同意。考える習慣をつけ、自分の問いを見つけ出したいです。
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サブカル批評があったからこその社会批評が爆誕。面白過ぎた!という前提の上で、考えたい問いは以下。
Q1.運動としての「遅いインターネット」は、880円もする高級タオルを買えないsomeにも届き得るのか?
もちろん、880円の高級タオルが買えない、若くて、カルチャー批評が好きな学生さんは、「遅いインターネット」を享受すると思う。でもきっと、こういう回答じゃいけない。なぜなら、それは別に、プラネット自体が既に達成できる領域だと思うので。本書で展開された、「糸井の批判の上にたつ、もっとsomeに届く運動」という論理見解の結論としては、乏しいと言わざるを得ないからだ。宇野さんの運動論は、もっとスケールの大きな話であるに違いない。だからこそ、この問いを、自分で考えるとともに、いつか宇野さんにも直接伺ってみたい。
※既にウェブマガジン「遅いインターネット」は拝読していて、とても楽しく読んでいる。でもだからこそ、ゲンロンなどのコミュニティのコンテンツが大好物な、もともと批評楽しいと感じる私だからこそ、これがどれほどの射程距離かは気になる。
ヒントは、本書でも扱っている「語り口」か?だとしたら、やはり、フォーマットから考えるという方法もあるのかも。
「その最大の特徴は形式ではなくあくまでその内容にある」とP191に記載があるが、これはある種、「語り口」が大事だとする主張との矛盾も孕んでいるのかも。
someに届きやすいフォーマットの開発、も注意深く探り得るのか?とはいえ、その沼にはまると、肝心かなめの内容が置き去りにされがちになることは何となく想像できる。うーむ。やはり即答はできなそうだ。考えよう。考え続けよう。
Q2.(これはQ1.の言い換え的な側面も多分に含む問いになるけれど)ランニングやタイムライン等の生活シーン引用から、自らはanywhere側にいることを表明したことになる(と思われる)宇野さん。と同時、本書の人称は「僕たち」となっている。someとanyとは全く別の見方をしている、とその深い断絶を訴えながら、なぜ、「僕たち」という語り口を採用したのか?それはもしかして、まさに「それじゃsomeには届かない」と批評してみせた「施しを与えるという筋書き」になってはいないか?なっていないとして(おそらく相当な覚悟で「僕たち」とチョイスされているはずなので)、なぜなっていないのか?その真意を、ご教示いただきたい。
自分だったらどう書くだろう?
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戦後が共同幻想(革命運動)、80年代に対幻想(家庭を守る夫)、そして現代が自己幻想。常に人間は幻想に埋没してきたことを指摘し、これから必要なのは自らの頭で考え、そして良質な発信を行うことが重要だと説く。そしてそのために必要なのは遅いインターネットなのだと。とても示唆に満ちた良書です。
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表層だけを舐めて発信し、全て分かった気でいるような人が多いということ?
インターネットをよりクリエイティブに使うための遅いインターネットという手段
ネットの記事に対してYES/NOではなく、ある態度で臨むことで他との化学反応を起こす能力が必要となる
ってのがすごい納得。結局「ある態度」がなければ、頭を通過するだけの情報になってしまう気がする。
89
93
ポケモンGOの快楽の中心はレアモンスターを捕まえることではなく、友人と夜に代々木公園に出向くことや、普段と違う通勤経路をとおってオフィスに赴くこと
あくまで自分の物語を追求している
97
もはやネットサーフィンは死語で、Wikipediaと食べログのインデックスにしか頼っていない
105
ネットワークの世紀とは拡張現実のここではない、どこかに脱出するのではなく、ここに深く潜ることでこの現実を拡張し変えていくための想像力が批判力のある虚構として機能する
ハンケは日常の中に、自然/歴史への接続回路を埋め込むゲーミフィケーションを試みた
124
日常ー非日常、自分ー他人の2軸で
自分×非日常を求めてる。
自分×日常は手付かずのフロンティアとして取り残されている。アプローチすべきはここ?
128
なぜ遅いインターネットなのか
→非日常に動員するのではなく、日常に着地したまま個人が世界に接続すること。外部に越境することなく内部に潜ること
158
モノに回帰することで、ことに対する気持ちの良い進入角度と程よい距離感を提示するメディア。ほぼ日が売っているのはものだけではなく、その商品の背景に存在する物語(コト)
184
遅いインターネット
現在のインターネットは考えるためではなく、考えないために用いられている
→遅いインターネット計画
考えるための情報に接することができる場を作ること
195
モノではなくコトによるアプローチで情報社会に対する距離感と進入角度を提示する
200
YES/NOだけではなく、他の何かと関連づけて化学反応を起こす能力が必要となる
その記事から着想して自分の手で改めて新しく問いを設定し、世界に存在する視点を増やす。
新たな問いを生むこと!
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SEO汚染が拡がり、タイムラインはミームと炎上にまみれ、SNSは自己承認欲求の充足装置を通り越しビジネスツールに成り下がっている。
その現状をある種の敗北と位置づけながら、旧来の媒体に退行するのではなく「考える」余白をとるための「遅いインターネット」という戦略を取る。それが本書の骨子だと理解した。
自己幻想、対幻想、共同幻想の境界が溶け合っているという指摘、
若い世代では「読む→書く」ではなくまず「書く」が来ているのだという指摘には驚きつつも、納得感があった。
考える力を取り戻すための「遅いインターネット」という考え方自体には共感する。
しかし、この考え方を、宇野常寛さんが届けたいという射程にまで広げるにはどういうアプローチがよいのだろうか。
よくある「勉強会は、本当にそれを勉強してほしい人はこない」問題。意識が高く自己研鑽に(時間的にも金銭的にも)投資する/できる層は「遅いインターネット」という装置がなくとも自己幻想の過剰な肥大とは自覚的に向き合えるのではないか。
目の前のタイムラインに流れた情報をとりあえずRTする、マスクを買うために朝からドラッグストアに行列をつくる。そういった層に届けるにはどうしたらよいのか。
NewsPicksの書籍として本書のような硬質な内容が出版されたのは、もしかしたらそういう端緒につながるのかもしれない。