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あの歌もこの歌も、古関裕而の歌ばかり
2020/06/04 15:59
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年上半期のNHKの朝の連続テレビ小説(通称朝ドラ)「エール」のモデルということで話題となったている作曲家古関裕而の生涯を昭和史に添って描いたこの作品の「あとがき」の書き出しはいささか刺激的だ。
「古関裕而は、今日かならずしも有名な作曲家ではない。」
しかし、この印象は少なからずある。
国民栄誉賞を授賞した古賀政男や服部良一はその名前が先に来るが、古関の場合、彼の名前よりも彼が作曲した歌の方が先に来る。
早稲田大学の応援歌「紺碧の空」、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」、怪獣映画「モスラ」で歌われた「モスラの歌」など。
古関が作った楽曲は5000曲を超えるそうだ。そのうち、どれだけ古関が作った歌だとわかって私たちは歌っているだろうか。
古関は1909年8月福島県福島市に生まれた。
東北人の特長でもあるが、福島の人もあまり自分を表立って表現しない。
古関と彼が作った歌との関係を見ていると、福島の人の気質を見ているようで面白い。
それでいて、彼には「なりたい、なりたいと希望し続けること」、そんな強い意志も持っていたと著者は書く。
そんな強さも福島の人の良さのような気がする。
そして、この評伝が「昭和史」と付けられているように、古関の作曲家人生が実に昭和とリンクする。
軍歌で国民と寄り添い、社歌や校歌で国民を鼓舞し、それらをたどると見事に昭和の年表と重なるような思える。
まさに著者が最後に綴った、「昭和は古関裕而の時代であった」のは間違いない。
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福島に住んでいたこともあるので、地元で敬愛されていることは知っていたものの、今どき必ずしも知名度のある作曲者とはいえないし、『六甲颪』の作曲者程度のイメージだったが、ここまで広汎な業績を残した音楽家だったことを初めて知った。大衆音楽を通した昭和史。
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独学で作曲を学び、昭和を代表する作曲家になった古関裕而の生涯。
第1章 好きになったら一直線(1909~1930年)
第2章 ヒットを求めて四苦八苦(1930~1936年)
第3章 急転直下、軍歌の覇王に(1937~1941年)
第4章 戦時下最大のヒットメーカー(1941~1945年)
第5章 花咲く大衆音楽のよろず屋(1945~1973年)
第6章 経済大国の大門を叩く(1952~1989年)
主要参考文献有り。本書で引用した歌詞一覧有り。
NHK朝ドラ「エール」のモデルとなった作曲家、古関裕而。
激動の昭和という時代を音楽で生き抜き、
人々の想いに添ったメロディーを生み出したその生涯を、
様々な資料を駆使して紹介しています。
生活のためもあったり、依頼されたら断れなかったり、
1年も悩んで作曲する作品もあれば、即興で名曲を生み出したり・・・
いろいろあるけど、作曲が好きだったことに尽きる生涯です。
なんとその作品数は5000曲!
応援歌、軍歌、昭和歌謡、ドラマや映画の音楽、社歌と、
ジャンルも多様多彩・・・「モスラの歌」も彼の作品とは!
妻金子や戦時中の軍歌、菊田一夫、オリンピックとの関わり等の
エピソードも豊富で、読み易い内容でした。
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令和2年上半期のNHK連続テレビ小説「エール」のモデル、作曲家の古関裕而の評伝。事実と活き活きとした描写が楽しめる。
さすがNHK、古関裕而に関する書籍が多く出版されている。その中から選んで見たのが本書。軍歌であったり日本軍全般と昭和史に関して多くの著作がある作家。古関裕而を語るには若いがその分冷静で学術的な記述。
古関裕而の4千曲に渡る幅広いジャンル。「六甲おろし」「闘魂こめて」や「紺碧の空」など。どうなるか分からないが東京2020大会関連でオリンピックマーチの関係が、古関ブームにつながっているのだろう。
本書を読むとドラマが史実にかなり忠実であることが分かる。
史実に即している割には堅苦しくなく小説的に気楽に読める作品でした。
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朝ドラ「エール」主人公のモデルということで
興味を持ったので
ネタバレ承知で読み始めたところ、一気読み
古関裕而さんのことはよく知らなくても
この方ののこした曲の数々を我々は知っている訳で
「栄光は君に輝く」しかり
「スポーツショー行進曲」しかり
しかも、地元の近くの学校校歌も書いてらっしゃる!
さらには、私が子供のころに放送していた番組で
審査員もしていらした
ああ、あの番組! と思うわけです
戦中のエピソードを読んでいても
いやあ、よく生き延びられたなあ……強運の持ち主だったのかなあと
まさに昭和史です
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朝ドラ「エール」がおもしろくて古関裕而?知らないなあと思いちょっと検索してみると、早稲田の応援歌「紺碧の空」「東京オリンピックマーチ」高校野球甲子園の「栄冠は君に輝く」はては「モスラの歌」おうおうみんな知ってるなあ、はてさて「イヨマンテの夜」メロディは思い出せないけど昭和40年代あたりNHKのど自慢でよく出場者が歌っていたなあ、さらに調べるとNHKのスポーツ番組の導入歌、「ひるのいこい」の開始の歌ときた。さらに「露営の歌」「若鷲の歌」示された歌詞をみると、”勝ってくるぞと勇ましく”、”若き血潮の予科練の” 戦争映画などでよく歌われている。俄然興味がわきこの本を読んでみた。
「イヨマンテの夜」をyoutubeで聴いてみると、なるほど歌自慢の人が歌いたがる歌かもと思った。伊藤久男という歌手はかなりな声量がある。伴奏はそのまま「モスラ」を歌ってもいけるか、とも感じた。
著者の辻田真佐憲氏、1984年生まれながら軍歌の研究者らしい。軍歌にかたよった内容なのかと危惧したが、題名のとおり、古関裕而の一生と曲が、昭和史の流れと共に分かるようになっていた。分かる、というより、平易な文章で小説的な手法で古関氏の曲と一生が流れ込んできた。そして巻末の参考文献をみると新聞、会報、など細かい多くの資料を参考にし、もちろん遺族やコロムビアなどへのインタビューもしたようで、真実性もあると見た。4時間で一気に読み終えた。
1909年(明治42年)生まれ。1929(昭和4年)~1939(昭和14年)が20代、1945年が36歳である。軍歌をたくさん作曲しているが、その時代を生きた者としては、「その時代にいたから」というしかないのではないか。ほとんどすべてが新聞社やNHKなどからの依頼だ。
曲は身近にあったのに、名前を知らななかったのはどうしてなのかなあ。服部良一などは歌とともに名前もよく知っていいたが。
ドラマでは弟がちょっと父にないがしろにされているようで、このあとどうなるのかなあ。本では5歳下の弟がいたとあり、戦争中は弟は福島市で所帯を持っていたとあったが。
2020.3.20発行
2020.4.25購入
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朝ドラが始まるとそれにちなんだ本を読むのが習慣になっている。今回は古関裕而ということで、奥さんの金子さんが豊橋出身ということもあり、興味をもって見ている。古関の本はいくつかあったが、このほど辻田さんの本が出たのでこれを読むことにした。辻田さんは軍歌やレコードに関する本も書いていて、きっと他の本とは違いがあるだろうと思ったからである。辻田さんの本書はまずよみやすい。スラスラと最後まで読ませる筆力がある。古関の人生は、ヨーロッパの作曲コンクールに応募したのが一つのエポックで、戦中戦後と続く。古関はこのコンクールで二等になり、ヨーロッパ留学というおまけまでついていたのだが、実際には行かなかった。いや、行けなかった。それがなぜかは別にその謎を追いかけた本がある。行ったらどうなっただろう。しかし、古関は行かなくても昭和を通し5000曲もの歌をつくった。しかも、かれの特徴は歌謡曲から軍歌、校歌、社歌等々幅広くつくっていることである。それも、苦もなくつくる。これはかれの中に曲のイメージがつぎつぎと湧いてくるのだろうが、凡人にはとても想像できないことである。
その古関はヨーロッパに行かなかったあと、コロンビアに入社し、そこで曲がつくれなかったスランプ時代はあったものの、つぎつぎと曲を生み出した。辻田さんは、それらがどのくらい売れ、どのくらいの印税になったかというデータを探し出したことである。これはとてもわかりやすいし、当時売れるということがどの程度の量を超えるかまで示したことである。
ぼくが驚くのは古関が、ぼくにもわかる軍歌をつぎつぎと作りだしたことである。なんだあの曲も古関だったのかというものが少なくない。当時は作家も大陸や南方へ送られ、戦意発揚の作品を書いたのだから不思議ではないが、そこには国や軍を疑うという発想がまるでない。そんなものなのだろう。もっとも彼のつくる軍歌は短調が中心で、いさましさの中に哀愁もただよわせる。それが長く歌い続けられた理由だろう。ぼくも軍歌はもの悲しいと思う。そして、戦争が終わると今度はラジオドラマを中心に活躍する。「とんがり帽子」の歌はぼくの耳にも残っている。『長崎の鐘』はときおりカラオケでも歌う。さらに、「君の名は」といっても昔のそれだが、その主題歌を始め、ザ・ピーナッツが歌ったモスラの歌もかれだった。そして最後はオリンピックマーチ。かれはまさに昭和の歌の歴史を代表する作曲家である。一つ不満を言えば、本書では金子のことがあまり出てこないことである。戦後株に夢中になった時代があったとかあるが、それ以上のことは語られていない。これは本書が『古関裕而の昭和史』である以上仕方のないことか。
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「東京オリンピックマーチ」
高校野球甲子園の「栄冠は君に輝く」
プロ野球球団阪神タイガースの「六甲おろし」
映画ゴジラの「モスラの歌」
NHKのお昼の定番曲「ひるのいこい」
そのぐらいしか 知らなかった
ただ それだけでも
十二分に天才作曲家だと思う
本書では
それらの歌の背景を実に丁寧に
語られると同時に その時代が語られる
戦争前~戦時中~戦争後を
作曲という表現で生き抜かれた
古関裕而さんを
興味深いエピソードとともに
語られていく
歌は世につれ
世は歌につられ
まさに そのままの
昭和史の一冊です
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ラジオ番組アフターシックスジャンクションで特集されて購入したものの、積読状態でしたが、かろうじて朝ドラ完結前に読了しました。
彼の楽曲は、戦前も戦後も日本大衆の世論を掴んできたため、彼の人生を語ることは、日本大衆世論のフォレストガンプ的な歴史物語となる。
クラッシックへの憧れや軍歌の制作に従事したことへの後悔は、朝ドラでも描かれていましたが、この本では、時代の波に上手く乗れたこと、彼自身がノンポリであったこと、また妻の金子が株にのめり込んでいく様など、なかなか描かれないエピソードや著者の人物描写も面白い。
レコード製造枚数からレコードの売上枚数を割り出し、その数字の凄さを説明されてたりと、独自の数字根拠が掲載されているのも魅力だし、僕のようなCD 世代ではわかりにくいレコードの説明もとてもわかりやすかった。
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朝ドラ「エール」が面白かったので昭和歌謡に興味がわいたのもあって購入。時代に合う音楽、ヒット曲とはどういう要因でできるのか、などの話を戦前・戦中・戦後を通じて描かれていて面白い。特に当時の社会情勢と関連付けて論じているところは読み応えあった
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朝ドラ「エール」を観て興味を持った。
昭和の時代ほぼすべてにかけて活躍した作曲家。
戦前のヒット曲からはじまり、戦時中の軍歌、戦後の「長崎の歌」などが生まれた秘話。戦後が駆け足だったかな。
奥さんが株に夢中だったとか、ドラマには描かれていなかったので、面白かった。
ドラマに描かれているとおり、人柄も素晴らしかったことが分かった。