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(2011.04.26読了)(2011.04.20借入)
「週刊ブックレビュー」で紹介された本です。この番組を見なかったら手に取ることのなかった本だと思います。
ホームレスの方が飼っている犬や猫とかかわっている獣医さんが著者です。ウサギとかもいるようです。扱いに困った方が、ホームレスの方のところに犬や猫や兎を置いて行ってしまうことがあるようで、自分が食べるだけでも大変だろうに、犬や猫の分まで食べ物を確保しないといけないなんて。まあ、それが生きて行く張り合いになったりするのでしょうけど。ホームレスの方が、生活保護を申請して、認められても、犬や猫がいっしょだと、アパートを貸してくれないとか、生活保護をもらっている人は、犬や猫を飼うことは認められないとか、いろいろあるようです。
生活保護をもらってなくても、ペットを飼うことが許されていない、アパートやマンションはたくさんありまりますけど。
生活の張り合いのためにペットを飼うのはいいとして、どんどん増やすのは、大変なことになるので、不妊手術は必須になります。著者の獣医さんは、不妊手術に関しては、仲間に頼んでやってもらっているようですが、病気の治療に関しては自分でやっているようです。獣医さんとは言いながら、ペットの相手をすれば済む話ではないので、ペットの飼い主とのかかわりもありますので、飼い主やホームレスの方々の支援者の方々との交流についても書いてあります。
ホームレスの方々は望んでホームレスになっているわけではなく、ペットたちもできれば、飼い主たちといい関係を築いて暮らして生きて行きたいでしょう。
その辺のことを考えるための本です。
●動物愛護(7頁)
私は浪人生だったが、大学受験をやめて、あっという間に動物保護にかかわる活動に飛びこんでいた。国内外の実験動物や畜産動物のひどい扱いの写真や映像にショックを受け、その現状を知らせようと、バイトをしながらミニコミを自費出版したりパネルを作ったりした。物心ついたころから自分の仲間で先生だと思っていた動物たちが、こんな目にあっているのが許せないと単純に思ったからだ。
●隅田川花火大会(37頁)
はなちゃんをはじめ、隅田川の野宿仲間とお付き合いするようになり、花火大会には、少し苦手意識を持つようになった。「隅田川花火大会」は、お江戸の夏の風物詩。東京だけでなく全国的に有名な花火大会である。でもこの花火大会のときに、隅田川テラスにテントを張るはなちゃんや野宿仲間たちは、数日間のテント撤去を余儀なくされる。その間どこで暮らせばいいのだろう。そしてテントや荷物は移動するのは、とても労力のいることで、高齢化が進む野宿のおじさんたちには重労働だ。ちょっと隅田川花火大会が恨めしくなったりもする。
●ヘンリー・ソロー(84頁)
ヘンリー・ソローは19世紀の思想家で作家だが、街を離れ、たった一人で森の中の小屋で自給自足の暮らしを二年以上続けていた。その時の暮らしを綴ったのが、『森の生活』だ。この本を高校時代に読んで、思索的で質素な、そしてどこか頑固な生きざまに心を打たれたのを思い出す。その後ソローが生涯定職につかず、さらに奴隷制度やメキシコ戦争に抗議して投獄もされていた人物であることを知った。
●実験動物(141頁)
私は、獣医学生時代、何とか実験動物を殺さずに学習できないかと暗中模索していた経験がある。卒業論文も「教育現場における動物実験代替法の導入について」書き、学会で発表するかたわら、同じ思いを抱く獣医学生たちに呼びかけた。「実験動物を殺さなくても、世界中の獣医学生や医学生が、学び、卒業し、獣医師や医師になっています」と。
●人間にも(147頁)
「動物に起こる虐待はその後必ず人間にも起こる」と言われる。確かに近年、野宿仲間をターゲットにした襲撃がさまざまな形で起きている。
●人生の三つの坂(163頁)
「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして、『まさか!』である」
●生活保護と動物(166頁)
「生活保護制度の中で動物を飼ってはいけない、という文言はありません」
厚生労働省の生活保護課の担当者がはっきり言い切った。
「生活できる範囲内であれば動物を飼うことは禁止事項ではないです」
担当者はそういった。
●生活保護と動物(167頁)
福祉事務所に電話した。
「生活保護では、動物を飼うことは許されないというのは本当ですか?」
「はい、そうです。動物は、贅沢物と見なされますから」と職員はテキパキと答えた。
●知らないこと(176頁)
「社会における多くの悲劇は、知らないことから起こる」という言葉を聞いたことがある。この「知らないこと」には、「知識が足りなかった」「相手を理解できなかった」「自分自身を知らなかった」など、いろいろな意味が含まれているのだと思う。
●動物福祉における五つの自由(194頁)
五つの自由
1.飢え、乾き、栄養不良からの自由(健康を保つために、十分な餌と新鮮な水が与えられること)
2.恐怖と絶望からの自由(精神的な苦悩を最大限に避ける状況が確保されること)
3.不快感からの自由(気温や休息場所に配慮し、適切な住環境が提供されること)
4.痛み、傷害、病気からの自由(怪我や疾病の予防・診察・治療が的確に行われ、苦痛を排除されること)
5.正常行動への自由(種の特性に基づく通常行動が発現できるような十分な空間や適切な刺激が提供されること)
(2011年5月4日・記)
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ホームレスの人達をこの本では、野宿者と呼ぶ。野宿者達はよくペットを飼っている。自分の食べ物が手に入るか判らない状態でも、ペットの餌は確保しようとする。それは自分を支えるのにペットが必要だからだ。これがわからないと、生活保護受給者がペットを飼うのはいけないことになる。私としては、生活保護も野宿者も肯定する気はない。只自分がそのような状態になった時、支援の輪があることは大事だとは思う。支援者達のご苦労には、頭が下がります。
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この作者の生き方、尊敬する。
本を読んでというよりも、
この作者を思って、取り巻く人たちに想像をめぐらせて涙が出る。
あと、メモしておかなかったのが悔やまれるのだけど
ウサギについての文章。
「ウサギとは、おとなしく繊細なか弱い動物と思われがちだけど
本当は好奇心旺盛で大きなパワーをもった、やんちゃな私たちの兄弟だ」
というような記述があり通勤途中に目頭が熱くなった。
図書館で借りた本なのでもう一度この本を手にすることがあるかどうかわからない。
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野宿者のペットを診る獣医師という視点に興味を持って読んだ。この人の考え方や活動にケチを付けるつもりはない。だけど本として読んだときに、著者と対象である野宿者やそのペットとの距離感が近過ぎると感じた。実際の関係が親密なのはよくわかる。突き放して書くということではなく、もうちょっと客観的な視点が欲しかった気がする。これは読み手である私の問題であって、私がうまく本の中に入り込めなくて勝手に疎外感を感じただけかもしれない。あるいは、著者は本の中で人や動物を少しでも傷つける恐れがある文章を書けなかったのかもしれない。それほどやさしく共感力の強い人だから、こういう活動ができるのでは?、とも思う。
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シンパシー。
野宿仲間が過酷な生活の中で小さな命はかけがえのない家族なのだ。明日自分の命もわからない。そんな中で、そばにいる動物たちは確かで信じられる尊い存在。