電子書籍
さすがのスピード感
2023/01/19 10:44
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投稿者:evocamino - この投稿者のレビュー一覧を見る
「夜光虫」の加倉昭彦が舞台をイタリアへ移し、サッカー賭博に絡む八百長事件の裏で動く中、また新たなトラブルに巻き込まれていく。
とは言っても、「夜光虫」からの登場人物はほぼ出てこないため単独の作品としても十分楽しめる。
以前に比べるとドス黒い描写が減った部分は賛否両論あるかと思うが、たたみかけるような展開で一気に読ませていくスピード感はさすが。
しかし馳さんの小説は毎回食べ物の描写や、今回で言うとシングルモルトのくだりなど、味覚も刺激してくれる点になぜか嬉しくなる。
紙の本
闇に落ちた男の生き様を描いた、シンプルイズベストって感じの作品。
2021/08/30 08:29
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
闇に落ちた男の生き様を描いた、シンプルイズベストって感じの作品。少数の登場人物を除くと、ただ殺されるために登場してくる人物の多いこと多いこと。しかも、ラストでも更に殺しまくると決意して消えていくんだからエーーッて感じだが、“暗手”とか“悪霊”と呼ばれる主人公の過去や心の葛藤が繰り返し絵が描くことでその辺の違和感が何となく相殺されてくるから不思議。全体の虚無的・暴力的イメージに反し、主人公の心理描写は流石、991:『雪炎』や1001:『神(カムイ)の涙』を著した作家の作品と思わせてくれる。人間誰にでも潜む暴力的潜在感を刺激されるようでちょっと怖い作品でもある。とは言え、直球勝負といった感じのシンプルな筋書は読んでいて本当に面白い。
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題名の『暗手』(あんしゅ)とは、本作の主要視点人物である「裏の世界」に生きる男の“通名”である。作中、「暗手」には一部に「アンショウ」という中国語を思わせる読み仮名が在る。
「暗手」は日本人の元プロ野球選手で、台湾のプロ野球に流れた時に“八百長”に関わってしまう。それが契機で殺人を重ねてしまった経過が在り、台湾から欧州へ流れ着き、顔も変え、変名を使い分けて暮らしている。そして中国系のグループによる、サッカー賭博を巡る八百長の工作等、「殺し以外は何でも」と様々な裏仕事をしていて、「暗手」という通名になる。現在はイタリアのミラノに在る。
物語はミラノ辺りを主な舞台として展開する。
「暗手」は、“セリエA”に昇格したミラノ近郊のチームが迎えた日本人のゴールキーパーの大森を“八百長”に巻き込む工作を請け負った。
「暗手」は「ミラノで貿易を営む日本人事業家の高中」と名乗って大森に接近し、大森を絡め取ろうと工作を重ねる。そうした中「棄てた」筈である過去を強く意識させる出逢いが生じてしまう。
「暗手」が負っている過去と、立ち向かわなければならなくなった状況、そして繰り広げられる死闘…一寸夢中になる。
本作は『夜光虫』という過去の作品の続篇であることを巻末の解説で知った。全然知らずに本作を読んだが、何ら問題はない。「日本人の元プロ野球選手で、台湾のプロ野球に流れた時…」という経過が『夜光虫』では綴られているのだと想像するが…本作は独立した作品として十二分に愉しい!休日に一気に読了してしまった…
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あの女を手に入れろ、とささやく頭の中のもうひとりの自分自身。これもまた「夜光虫」でおなじみのシークエンス。最高だ。
どんどん逃げ場がなくなり愛するものからも憎悪の目で追い詰められる暗手に、感情移入しつつ、最後のページまであっという間に読んでしまった。
まさに馳ワールド、素晴らしい。
やはり馳先生はノワールですよ、ノワール。
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いゃ〜。あの馳君のノワール小説やんか。
今後も原点復帰してくんないかなぁ。
映画化もしてや。頼むわ。
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刮目せよ!
これこそが馳星周だ。
暴力と嘘に塗れただけのノワール小説ではない。
嘘に嘘を重ねて築き上げた人間関係、愛を求める男と女の恋情。
心を深く抉られる。
決して気持ちの良い読後感では無いが、それがかえって気持ちを揺さぶる。
デビュー当時のような作品だが、流石に年月を重ねて表現も重さを増した。
久しぶりにヒリヒリする作品だった。
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2020.12.13.読了
あまりに評価が高いので思わず手を出してしまった。
おもしろかったという感想はない。
ハードボイルド極み。
好き好きが分かれる作品。
大森綾は加倉(高中)にせまった時、「あなたが人殺しでも構わない」と言った。ここでいう人殺しとは人道に外れた人という意味だと思うが自分のこととなるとスッカリ忘れて呪詛を垂れていたのが笑えた。あんなにお色気ムンムン(死語?)でせまっておいて勝手なババアだ。
加倉があまりに不死身過ぎて不自然。
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久しぶりの馳星周。堪能した。ノワール。
魅力的な悪、というかクズ。
この作者の作品は殺伐として残虐だけど、どことなく美しさを感じる。
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「暗手」馳星周さん
1.購読動機
2021年に出会えた作家さんのお一人。
レビュー評価が気になり読了。
2.主人公の暗い影
味覚なし、食事は毎日同じもの、酒は基本飲まない、飲むのは炭酸水。
彼の職業はサッカー賭博の仕込み。
主戦場はヨーロッパである。
日本人である彼が、偽名かつ整形までしてヨーロッパにいる理由とは?
3.裏の世界へ、、、
彼が味覚を失ったのは、唯一愛した女性を自身の過ちで苦しめてしまったから。
具体的には、女性を愛したがゆえ、彼女の旦那をあやめてしまったこと。
彼は、その事件をきっかけにあやめる仕事からは足をあらい、賭博ビジネスに足を踏み入れる。
4.愛が戸惑いを誘う。
決して光が当たらない賭博ビジネス。
その日常を送る中で、一人の女性に出会う。
光があたるシャバに戻りたいのか?いなか?
揺れる気持ちと格闘する彼には、犯罪者であると同時に、人間の性が見える。
この類いの小説は初めてであった。血の気が多い、銃あり、ナイフあり、なんでもあり。
一方で、愛を捨てたが、愛を拾いたく苦悩する主人公に哀愁を感じる物語でもある。
どこかの酒場で1人グラスを傾けながら読む小説のような、、、
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細かい評価は3.6ってところで、四捨五入して4.0にしました。馳星周さんの作品を読むのは2020年に直木賞を受賞した「少年と犬」以来。「少年と犬」は自分の中では結構好きだったので、そういう意味では安心して読めました。
だけど「少年と犬」とは全く違った作品の雰囲気にびっくり。裏社会を舞台にしたかなりダークな作品に仕上がっていました…サッカー賭博での八百長なども全く知らない世界だったので、社会の深淵を覗き込んだような思いがしました。
特に魅力的だったのは、主人公「暗手」が巧みに大森に八百長をさせるように罠に嵌めていく場面。
馳さんは昔そっちの人だったの、、?と疑ってしまうほど迫力満点です。
ただ、アクション映画などを好んで見ない私からすると銃撃戦のシーンや、馬兵との戦いのシーンなどはイマイチ刺さらなかったかなぁ……
マフィア映画が好きな男性などからしたら、この作品は刺さりまくりだと思います。
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また同じように女で狂って殺しまくってしかも最後ばれて中指立てられるのにめちゃくちゃおもしろい。
感情とか打算とか駆け引きとかイタリアのうまそうな飯とかを織り交ぜながら書き出す疾走感、不夜城のような没入感がある。これだよこれこれ。これが馳星周
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台湾プロ野球で八百長に手を染め、罪から逃れるために殺しを重ねた加倉は、逃れ着いたイタリアで殺し以外なら仕事を選ばない何でも屋「暗手」として生きていた。馳星周、原点回帰にして究極のクライムノベル!(e-honより)
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馳星周、サッカーという点から手にした小説。
過去野球選手として輝かしい経歴を持っていた男の裏社会での暗躍物語。