電子書籍
香りの表現が豊か
2020/07/12 22:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hoyoyo - この投稿者のレビュー一覧を見る
知人の感想文がキッカケで興味を持って読んだのだけど、今読むべき本だった。アロマやハーブが好きな事もあり、世界観からテーマからキーワードまで、私の状況とリンクしていて驚いた。文字で書かれているのに、朔さんの屋敷の香りが読書中の私の部屋にまで漂って来て結界を張るような気がした。ハーブを多用した料理や日用品など、繊細な言葉が五感に訴える。香りと記憶は深い所で結びついている。芳香も心も形が無いが、心を小説で描けるのなら、香りと小説も相性が良いのかも知れない。懐かしい香りを嗅いだようなカタルシスを感じた。続編希望。
紙の本
淡く切なく心に落ちる
2020/11/02 08:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
のっけから圧倒的に漂うミステリアスな香りに眩暈がするほど静穏な世界観。傷を閉じ込めた主人公と傷ごと纏う調香師が緩やかに進める歩を、優しく包む周りの人柄にもとても惹かれた。ハーブを扱った料理が沢山出てくるのも大きな魅力。とても好きな空気感で淡く切ない作品が好きな方にはとくにもってこい
紙の本
香りに包まれる
2020/05/16 19:52
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きな後悔と罪悪感を抱えた女性が天才的な調香師の家政婦となり、彼自身や身近な人たち、顧客と関わることで人生が動き出します。
一香の変化は朔さんの心の変化にもつながります。
職場のお屋敷が素敵なんです。庭に花々が咲き、ハーブや野菜が育てられてる。
一香が朔さんのリクエストで作る料理やお菓子、お茶も香り高くて興味深い。
静かなんだけどドキドキするお話です。
電子書籍
永遠の匂い
2020/05/03 18:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
絶対音感があるように、絶対臭覚もあるのではと思うような内容。
主人公が、アルバイトする屋敷の主は、朔という儚く繊細なイメージがある男性。そこで起こる数々の匂いにまつわる事件が、主人公の心に封じ込めてきた過去を蒸し返す結果に。いつかは向き合わないとわかっているけど、恐さが先に来る気持ちはわかる気がする。
この話は、続編も期待します。
紙の本
香りの豊かさとおそろしさ
2022/02/26 14:57
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投稿者:白月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
香りはもちろん、ハーブやフルーツなどの豊かさを感じ、自分の周りにも彩りが増えたように感じました。
嗅覚で世界を見る朔さんの物語を読むと、普段視覚にばかり頼って世界を見ている自分の日常が不思議な気までしてきました。
安易ですが、自分も朔さんに作ってもらった香りをまとって過ごしてみたいと思いました。
紙の本
ちょっと癖になりそう
2023/06/29 23:51
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投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
繊細で丁寧で静謐で清浄な美しい世界に、
突然どろりとした不浄の異物が流れ込んでくる感覚が
ちょっと癖になりそうな小説でした。
朔が用意するレシピがいつも素晴らしく
斬新で洗練されてて美味しそうなので、
そちらも作者様ならではのお楽しみです。
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
全体的に、明るい雰囲気ではなく暗かったので、じっくりと時間をかけて読むことができる作品で孤独を感じました。
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静謐で澄んだ空間には繊細な香りがある。「嗅覚が人より敏感かも」という千早さんにしか書けない香りを楽しめる一冊。
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なんか不思議な感じだった。
リアリティは全くないんだけど、読んでるとその空間が浄化されるというか、香りをまとう気がする。
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青を帯びたグレイな世界、眩しい光。
香りで呼び覚まされる記憶は、良いも悪いも絶対に忘れられず逃れられない。
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この先の朔と一香も気になる…と言うか、朔さんの作る香り、それに纏わる依頼人や新城、一香、源さん(源さんと朔の出会いとか興味あり) 達の話をもっと読みたいと感じた。続編希望。
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読んでいてシンプルな気持ちになる本だった。
本の題名そのままの清らかさがありました。
読んでいて、香りとか色とか、目に浮かぶものが綺麗でした。
雨の日の夜とかにさらっと読める感じの一冊でした。
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小説すばるの中でもとても好きだったお話。単行本が出たら絶対買おうと決めていた。
文字でしか見えないのに香り立つかのような表現と綺麗な文章だった。とても読みやすい。あと読んでいるとお腹が空く…華美ではないのになんて贅沢な食事なんだ。
短絡的だけどこのお話に影響されてアロマデフューザーを買ってしまった…朔さんの作るような香りは体験できないだろうけど。
タイトルを変えるとは思ってなかったので、単行本発売をずっと待ってて「朔の香り」が全然引っかからないのはそういうことか…としばらくしてから知った。
連載中の内容と結構変わるもんですね。このお話がすごく好きだったので連載当時の内容を割と隅から隅まで覚えていて、会話のちょっとしたところも変わっているのが新鮮だった。
一香がそう呼ぶせいか、どうしても朔さんにはさん付けして呼びたくなる。朔さんと一香の間に新城がいて良いバランスを取っているように感じた。
棚に並んでいる香料瓶のようになりたいという一香の気持ち、とてもエモい。(語彙力…)
誰かの一番になりたいという真っ直ぐな気持ちではなく、一香らしい控えめな、でも願望の強さが滲むところが好き。
本当のことを友達にも肉親にさえも言えない一香が、全く違うところで関係を結んだ相手にそんな気持ちを抱くのは何故か共感できてしまうし、羨ましいとも思う。
一香視点で話が進んでいくので、朔さんの気持ちの方も知りたいところ。
自分を恐れる時の匂いなんて分かってしまったら傷つくどころの話じゃない。だからそれが来る前に突き放すというのも間違っている気もするけど、朔さんが初めて不器用に見えた。そんな経験がないのだから不器用で当然だ。
執着と愛着の違い、朔さんは線を超えてしまうのを恐れているが時間の問題ではないかな。あとは一香がこの先、朔さんとどう付き合っていくか。
でも一香が嘘をついたところで朔さんは許してしまうんじゃないかと思う。許す前に追求やら尋問やらしそうな人ではあるが、既に一香は朔にとって特別な人になったのだから、自分が気づかないうちに僅かでも変化していくんじゃないだろうか。相手に好意を抱くというのはそういうことじゃないかな。
タイトルは朔と一香の二人を表しているような前のタイトルの方が好きだったんだけど、恋愛色をだいぶ薄めたせいか(連載中もそんな色はほぼ皆無だったが)こちらの方が今のお話には合っているような気もする。
結末が恋として終わらなくても全然いいと思うのだけど、朔からほのかな恋の香りがするような終わり方がとても良かった。というか4章のラストで、薔薇色の空を眺める二人の会話がとても素敵で、この時点でもしかして?という気がしないでもない。
「あなたがいなくなってから紅茶の味が違う。香りは変わらないのに」
こんな素敵な告白ある?ってくらい胸が締め付けられた。友人としてでもきっと良い関係を築けるだろうな。
短編集とかの番外編で続きを読みたい。今度「魚神」読んでみます。
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タイトル、表紙、帯コメントなど雰囲気につられて…読みたいと思った作品。
あらすじを読んだ時、『一香』って男性かと思ったら女性でちょっと出鼻を…(いっこうと読むのかと勝手に想像して)。
『さつき』とのやりとりでようやく腑に落ちた。
『朔』の印象はあまり変わらなかったけど、見ているもの、見えるものが特殊なことや本文の説明から盲目なのかと思ったが、違った。
序盤は、淡々と仕事をこなしていく独特の雰囲気が妖しさも相まってとても好きだったが、途中から人間味を帯びたように一香と関わり始めてから、何となく納得がいかなくなった。
先入観が抜けずに終わってしまったからかも知れないが、男女ではなく男同士(友情など)で見たかったのかもしれない。
疑問として残ったのは、朔のことを"紺色の声"と表したところ。
何故そうだったのか知りたかった。
確認したら本文で色について説明されていたけど、なんとなく違う気がした。
彼の色は、名前や容姿から白と黒のイメージを抱いた。
"動"というより"静"が似合う。
透明ではない。
一香の色は、判別つけにくいが間をとって灰色かな。
だから、どちらかにしか傾かない朔にしてみれば、不思議な、自分には分からない感覚を知る為の術が彼女だった…のか?
うーん、やっぱり納得のいく最後ではないかも。
難しい…。
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装丁にぞくぞくする。美しく怪しく読み手を誘う。
ある香りをかいで、忘れていた何かがふと胸の奥に湧き上がってくることがある。
記憶という言葉では言い表せない、「何か」であったり、つかめそうでつかめない、「何か」であったり。
顧客の希望通りの香りを作り出す調香師小川朔。名前も素敵だ。「朔」。
人よりもはるかに多くの匂いをかぎ分けてしまう、人よりも深く匂いに気付いてしまう、そして匂いで人の秘密にも気づいてしまう、そんな才能(といっていいのかどうか)を持つ朔と出会うことで再生していく一香。
ヒトよりも多くの刺激を受け取ってしまうということは、ヒトよりも敏感であるということで、ヒトと世界の見え方が違うということで、それはもう考えただけで生きづらい人生だろうと思う。
朔に寄り添うようにそれでいて一定の距離を保つ幼馴染の新城。二人は聖と邪のような、静と動のような、プラスとマイナスのような、混じり合っているようでけっして溶け合わない、不思議な関係。
そこに現れたお手伝い兼助手の一香。
誰にも言えない、自分でも認めたくない秘密を抱えて死んだように生きていた一香が加わり、一本の線が角のある三角形になり、不思議な安定感を持ち始める。それはとても心地よい場になるはずだったのに…
千早さんの小説には甘さと切なさとトゲがある。そして言葉から色と匂いが沸き立つ。今作は特にそう。
しかし、なぜに人はこんなにも「香り」に惹かれるのか。「香り」の魅力に酔いしれるべし。