紙の本
日本の課題に対する統計学からの回答
2020/04/29 19:16
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投稿者:もちお - この投稿者のレビュー一覧を見る
統計家を自認する著者が統計から読み取れる日本の課題のうち、少子高齢化、貧困問題、経済成長に対して、解決策を探る本。少子高齢化は端的にいうと少産小死が進行し、90年くらいから実行した対策が失敗したことの結果である。貧困問題は社会保障が最適解。経済成長は一人当たり生産性を上げることで人口減の影響を受けず、1次産業への補助は生産性向上に寄与せずと色々と面白い事実が分かる。社会保障の中でも日本の財政支出の多くを占める医療についても、どうして医療費が増加し続けているのか、どうしたら削減できるのか、そして、削減する流れに抵抗しているのは誰かが世間の理解と一致しているのではないかと思うが、そのパーツは必読ですね。
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あらゆる権威やロジックを吹き飛ばして正解を導く「統計学」。「ビッグデータ」が重宝される風潮もあり、その影響は強まる一方だ。そうした中で統計学ブームの火付け役が少子高齢化や貧困などの難問に立ち向かう!出生率アップに必ず効く施策とは?
間もなく亡くなると分かっている人にどこまで医療費をかけるべき?
上海レベルの学力で税収爆増?
この本は東京大学政策ビジョン研究センターの研究成果をまとめたもので、喫緊の課題の通説・俗説を統計学的にくつがえす、その切れ味は抜群。『統計学が最強の学問である』の第三弾が今秋刊行と、再び見込まれる統計学ブームのなか、話題になること間違いなしの一冊です!
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ちょっとしたデータからでも,うまく道具を使えば様々なことが見えてくる.その例を提示する.が,残念ながら日本が没落している真の原因は,統計学を使いこなせていないからではなく,統計学に限らず様々な道具を用いて素材たるデータを料理して何らかの知見を獲得し,それを現システムにフィードバックして,よりよい世界にしたい,というそもそものモチベーションがないことです.大衆は頭を使いたがらず,結果だけを享受し文句だけは一人前に言う.
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「未来」を変えるられるのは「今」だけ
公債費分の4割の歳出削減=医療年金といった社会保障+公共事業をゼロにする
過去の例では社会保障を削減すると大量の人がなくなる ロシア、ギリシャ
日本が世界最高の高齢化率 出生率の低下、つまり少子化
育児にかかる経済的負担の軽減(子育て世代向けの大幅な減税給付)、公的保育サービスの拡充は改善の余地あり 少子化対策
財政問題の大きな原因の一つが高齢化 無駄な公共事業よりも多くの税金が年金医療介護という高齢化に費やされている
貧困対策 歴史に学ぶと
貧困者への救済を行わなければ、生活できない国民は治安を脅かし、その社会コストはしばしば社会保障費よりも高くついた
列島処遇の原則にもとづき刑務所のような施設をつくっても、貧困者に逃げられてまた治安が脅かされるし、管理コストが何倍も高くついた
生活に必要なお金と賃金の差額を税金から扶助すると、企業側の濫用(低賃金化)を招き、労働生産性が下がり、増税によって貧困者がむしろ増加した
病気や失業という貧困に転ずるリスクを防ぎ、貴重な国の労働力として活用しようというのが社会保険の考えかた
幼児教育はお買い得な投資 鍵になるのはIQよりも非認知能力
プログラムを受けた参加者は、6歳時点でのIQが高く、19歳時点での留年や中退を経験のリスクが低い、27歳時点で自分の家をもっている確率が高く、生活保護受給経験率が低い。さらに40歳時点で逮捕歴が少なく、所得も有職率も貯蓄率も高かった
そもそもの原因である非認知能力を、幼少期教育というきわめて低コストで堅実な投資で鍛えておいたほうがはるかに賢明ではなかろうか
貧困者が生まれてしまうとその解消のためには大きなコストがかかる。そこで必要なのが貧困となる原因へのアプローチ
医療費の内訳
過半数は65歳以上 1/3は75歳以上
1954年 2000億円 H25 40兆円 200倍
インフレや経済成長を加味して、国民所得に占める割合で考える時3倍以上に増えている
90-2000まで後期高齢者の医療費は倍、人口は3割増えた 一人あたりにかかる医療費が増えたと想定される
一橋大小塩ら 1980-2010 37%が高齢化 45%が一人あたりの医療費の増大による
高齢者医療費 23兆のうち2兆が終末期
医療技術評価 health technology assessment 医療のコスパ
1990 カナダ、オーストラリア
1999 イギリス NICE 国立医療技術評価機構
2008 韓国 その後アジア
イギリス 徹底的に無駄を省いた上での医療費無料化
2012 中医協 費用対効果評価専門部会 当事者(医師)が入っているので進んでいない
終末期のケアを医療の場から介護の場に変えてもコスト減につながっていないことが推測される
高齢者の歯をきちんと治療して、転倒予防を行って、友人と会わせたり、会合に参加させたり、さらには仕事や家事に従事させることで、介護状態に陥ることをある程度予防できると考えることができるであろ��
介護が必要となるまでの期間を後ろ倒しにできたとしても、男性ならば9年ほど、あるいは女性ならば12年ほど、同じだけの介護が結局は必要になる
仕事をしている人は、要介護になるリスクが低減する上、介護が必要になるまでの期間を先延ばしすることでコストではなく生産が上がる。5年分長く働いてもらって税金と保険料を納めてもらい、しかも本人が高い幸福度を示してくれたのであれば、誰も損をしない話でないだろうか
安倍内閣の日本再興戦略において医療技術評価の本格導入は進もうとしている
高齢者の就労率を上げる
働く高齢者の方が、健康で幸福度が高いだけでなく、介護を必要とするリスクが低い。彼らが生み出す税金や経済効果が、医療費などのコストを上回るようであれば、それこそが社会保障財源適正化に向けての大きな一歩になることが予想される
ランダム化比較試験による検証をすすめよう
人口減少するから経済成長しないという考え方は、様々な実証データによって否定されている
単純な人口増はむしろ経済成長の阻害因子
経済成長ににおいて重要なのは人的資本 すなわち教育と研究開発
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現役の統計学者である筆者が現在日本が抱えている社会問題を統計データをもとに論じようというもの
テーマは主に少子化、社会保障、高齢者の医療、経済成長
主にデータや論文などをもとに以下のようなことがかかれている。
財政緊縮などによる経済不安は精神疾患などを誘発し、それにより自殺が激増するなど人命が失われる可能性が高い。
犯罪のリスクやそれを管理するコストを考えると、生活保護などの社会保障が最も費用対効果がいい。
日本が高齢化している原因の大きな理由は老人が長生きするようになったことよりは乳児死亡率の低下。
少子化の原因は女性の社会進出というよりは、保育サービスが不足しているから。
幼児教育により、非認知能力(学力以外の計画性や粘り強さなどの力)を向上させることはのちのちまで影響が大きい。
高齢者に雇用機会を提供することはお互い(高齢者にも社会にとっても)にメリットが大きい。
医療費のコスト削減として医療の技術評価を導入すべき
経済成長では教育投資がもっとも費用対効果が大きい
日本は公教育に対する投資割合が低く、その分、私的な教育投資の割合が高い
内容がそこそこ専門的なわりには新書ということもあってか、素人でもそれほど負担なく読める。
個人的印象論だけでなく歴史的事実や学術論文(あるいはそれに相当するレベルのもの)を根拠としているため、説得力はある。
学術的なものの見方の入門という点では非常にいいかも。
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・少子高齢化の本質は高齢化ではなく少子化である。
・社会福祉は必ずしも弱者救済の為ではなく治安維持が目的。その恩恵は社会全体が享受できる。歴史に学ばない人は、政策の結果についての想像力が乏しい。
・最も効率的な政策は、原因を直接叩くこと。幼児教育は最も費用対効果の高いお買い得な政策。
・終末期医療にかけられる費用には限界があり、経済効用を考慮していくらまで負担しても良いのかコンセンサスを得ることが重要。
・経済成長と人口増加に相関はなく、教育とR&Dに投資することで十分に成長は可能。
などなど、データに基づき論理的に論を組み立てていて非情に説得力がある。
ここから推定できるのは、今話題のベーシックインカムは期待通りの結末にはなりそうもないということ。ほとんどの労働者の賃金は最低賃金に張り付くし、旧ソ連のように労働生産性も下がる。
思うに、与党政治家も官僚もこの程度の事は十分に理解しているのではないか。ただ低賃金で働く底辺労働者がいなければ資本家にとって困るから、国力が下がろうとも敢えて公平な分配や教育への投資を妨げていると考えるのは穿ちすぎだろうか。官僚、政治家、資本家など特権階級だけが世代を超えて富を受け継ぐ社会を目指しているように見える。
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文字通り、統計をベースとして日本を救うことに対する提言集。
統計学そのものというよりも、統計を元にした日本の現状に対する提言という感じ。
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著者は、現在は「統計家」を名乗るが、元来は医療経済分野の研究者であり、少子高齢化が急速に進む日本において、社会保障費のうち、医療費の使い方が「非効率」であることに警鐘を鳴らす。
表題は「統計学」を冠しているが特に統計学的に新しい分析があるわけではない。各省などの公表データを、よく読んで簡単な分析さえすれば、誰にでも理解できる簡単な主張が並んでいる。もっともその「分析」をすること自体が難しいのだが。
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【由来】
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【期待したもの】
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※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
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【ノート】
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【目次】
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<少子高齢化>
子育て支援を含む家族政策費はGDP比1.25%で、イギリスの3分の1、ドイツやフランスの半分。高齢者向けの社会保障(年金、医療、介護)に対して25兆円が使われているのに対して、少子化対策には2兆円しか使われていない。
年金の運用は、今の現役世代が支払ったお金や税金を高齢者に支払うという賦課方式をとっているため、少子化対策を進めることが年金運用を破綻させない対策にもなる。
OECDが2005年に発表したレポートがあげている4つの少子化対策のうち、育児にかかる経済的負担の軽減と、公的保育サービスの拡充の2つは改善の余地がある。日本における標準的な世帯収入に占める児童給付の割合は2%ほどで、3~18%を占める他のOECD諸国の中で最低水準。保育所に在所している2歳以下の児童は22%で、OECDで最も恵まれた水準である50%の半分程度。
<社会保障>
生活保護などの社会保障制度は、これまでの歴史の結果として定着している。生活保護受給者の年間支給額は180万円だが、受刑者1人当たりの収容費用は300万円。
幼児教育は、その費用に対する社会的なメリットの方が高く、収益率は6~17%と推計されている。教育による効果が高いのは、長期的な計画を遂行したり、感情を制御して他人と協働するといった非認知能力。
高齢者の就業状態で比較すると、就業者の方が無職よりも幸福度が高く、前期高齢者における死亡率も4割以上低い。
<医療>
高齢者にかかる医療費のうち、2兆円以上が1年以内に失われた命のために使われている。
<経済成長>
各国の国際テストの成績と経済成長率は相関が高い。しかし、日本の政府支出に占める公的教育費はOECD諸国では最低レベル。教育費のうち、就学前は57%、高等教育では68%を家計が負担している。
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データにもとづいて議論しようよと言っている本。高齢化、国の借金、経済成長などの社会問題に対して定性的な印象だけで議論して破滅の道をたどるのではなく、定量的な統計データにもとづいて議論し解決を探ろうとしている。
人は社会という巨大な複雑さを自らの限られた知見からしか見ることができない。はたしてどれだけの人がその社会を正しく理解しよりよい未来に向けて行動できているのだろうかと思った。
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「統計学が日本を救う」という表題だが、少子高齢化などについて、データをもとに論じる本という方が正確。
ただ、データに基づいているので、著者の論旨には説得力がある。
政治家はこの本を一度読むべきだと思う。
今すぐやらねばならないことがたくさんあり、そして、この本を読むと、その道筋ははっきりしていることがよくわかる。