紙の本
昭和の香がする
2020/12/27 09:58
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投稿者:yukiちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直言って、牧野修は好きじゃないので、今作もあまり期待はしないで入った。
結果は、圧倒的な昭和感に酔いしれた。
面白かった。
ストーリーの荒唐無稽なところも、主人公が昭和の「テレビ少年冒険シリーズ」風のSFドラマ仕立てなところも、ピーター・パンやティンカー・ベルがやさぐれててるところも、文句なしに楽しめた。
小学生の時に、大阪万博を見に行った身からすれば、あの時代の熱に浮かされたような浮揚感を懐かしく思い出させてくれて、まことに感謝に絶えない。
要所要所に、パロディや本歌取りがあったのも楽しかった。
太陽の塔のイメージは「20世紀少年」のあれですよね。マツコやサイババっぽい登場人物も出てくるし、「祐子と弥生」が出てきたときは、思わず「母さん~」と唄っちゃいましたし。
71年の「ウイラード」なんて映画、憶えてる人少ないだろうな。ましてや、続編の「ベン」なんて。
ジャンルとしては何になるんだろう?
まあ、そんな枠を飛び越えて、昭和のおじさんたちには必読の書といえましょう。
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時は1969年、大阪万博を翌年に控えて国全体が浮き足立っているような雰囲気の中、中学生のシト、サドル、未明は、あるテレビ番組をきっかけに「子供こそが真の人間である」こと、「オトナ人間」が大人に憑依して子供に攻撃を仕掛けていることに気づいてしまう。子供ゆえの社会的な無力さに悩みつつ、子供らしい無鉄砲さと子供しか使えない特殊能力「Q波」を武器に、「オトナ人間」の侵略を阻止すべく全力で闘う3人。決戦の場は、1970年大阪万博「太陽の塔」だった・・・!
時は流れ、2037年。都市全体を仮想空間のレイヤーで覆い、個々人の存在も社会法規も”ヴァーチャル”と化した大阪において、2度目の万博が計画される。年老いて年齢的には「大人」になったシトとサドルは、再び闘いの場に登場することになる・・・
・・・と、あらすじをまとめてみても何がなんだかよくわからないのですが、実際にそういう話なのだから仕方ない(笑)
大雑把にジャンル分けすれば「侵略SF」ということになると思いますが、侵略する側のメリットとか、侵略される側が守らねばならないものとか、そうした「作品世界を理屈づけするために必要なロジック」が、この作品にはありません。子供こそが人間?幽体離脱するとQ波を発することができて、大人はQ波をくらうと失神する?チトラカードを使うと時間を操れる?コドモ軍の超弩級戦艦が時空を超えて航行する?・・・はぁ???ってな感じでヽ( ´ー`)ノワイドスクリーン・バロックを読み慣れたSF者であっても相当面くらうんじゃないかと思われる、かなり破茶滅茶でカオスな世界観です。
が、そんなぶっ飛んだ世界の中で動き回る子供たちには、不思議と存在感と説得力があるのですね。自分が子供だった頃を振り返ると、恥ずかしさと冷や汗と共に思い出す、くだらない遊び、つまらない思い込み、役に立たない正義感、そうしたものにわけもなくのめり込み夢中になる、あの濃密過ぎた日々。あの、人生の中では本当に一瞬に過ぎない、バカバカしい子供時代の熱気とエネルギーを、SFというフォーマットを活かして可視化したのがこの作品なのかな、と鴨は感じました。
登場人物は主役の二人も含めてどいつもこいつも極端で思い込みが激しく、感情移入することができないのですが、でも突き放すこともできない不思議な温かみがあります。子供の側に寄り添ったストーリー展開でありつつも、ラストシーンには突き放した現実的な価値観も垣間見えます。100%現実逃避した「バカ話」の一歩手前で踏みとどまるこのバランス感覚は、牧野修作品ならではですね。
牧野修作品の特徴である、絢爛華麗で鮮烈なヴィジュアルイメージを残す幻惑的な文体は、この作品でも顕著。2037年の設定で描かれる「幻想の大阪」は、ぜひ映像化して欲しいぐらい。個人的には、松露夫人を映像化したらどんなふうに描かれるのか、ぜひ見てみたいですね!コッテコテにゴシックなファッションで颯爽と登場して欲しいなー。
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SF、なのかな?
世界がつまらなくなるのはオトナ人間に憑依された所為、という中々面白い発想。粘土遊びが面白くなくなる大人なんかにならなくて良いってヒデヨシが言ってたなぁ…なんて思い出しました。が、現実はそうも言ってられないよねぇ。とオトナ人間は思ってしまう訳で。
子供の何がつらいって社会に出られない事だと思う。
まぁ子供だから仕方ないんだけど。オカネも稼げないし、一人で社会活動を営めない。そういう大人社会をぶっ潰そうぜ、なら好きな展開だったかも。破壊と暴力では解決しないよな。
という訳で明確な敵が出てきた辺りでちょっとダレてしまいました。自由行動には責任が伴うってエノキさんのセリフにそうだよな、と頷いてしまったので私には合わなかったんだろうなぁ、うん。
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大人たちが何者かに憑依されてオトナ人間になっていることに気づいた子どもたち。オトナ対こどもの戦いの舞台は1970年の大阪万博。そして2037年。大きく変化した世界で再び大阪万博が開かれる。前半のノスタルジーあふれる万博の風景とうってかわって、後半は、不思議なキャラクターがあふれる幻想的な世界。オトナになってしまった身からすると、大人世界も悪くないとは思うんだけどなぁ。