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著者の来歴ならではの生々しい経験に基づく記述も多く、納得感が高まる。 総論
2022/03/26 19:00
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投稿者:matsuzaka - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者がファクトをできるだけたくさん引用して、日本を取り巻く今の時代を分析しようと試みた書。
著者の来歴ならではの生々しい経験に基づく記述も多く、納得感が高まる。
総論や正論を無責任に論じるのではなく、あくまで現実に即した提言は、考え方として参考になる。
国政、外交は個人が行えることではないのでいかんともしがたいけれど、国や世界の動く方向を見通す材料として、本書は役立ちそう。
地政学的なアプローチやバランス感を感じた。
特に、韓国や台湾で起きることが日本でも5年後くらいに起きる、という見立ては興味深かった。
個別事象は別文献で追加で勉強するにしても、
全体感をとらえるには良書と思う。
もちろん、本書だけでなく、いくつかの見方の書をバランスよく読むことが重要と思うけど、その中の1冊としては、あまり押し出しも強くなく極論でもないので、読みやすいし、中間くらいのポジションに置いておきやすいのでは。
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言葉ができて現地の人と話せる作者の本は迫力があるな。あまり期待せずに読んだら、意外に面白かったし、発見もいくつかあった。
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■中国側から見れば米中新冷戦は7つの段階で進んでいく。
①貿易、⓶技術、③人権、④金融、⑤疫病、⑥外交、⑦軍事
■建国の父毛沢東主席を崇拝してやまない習近平主席が説くのは毛主席が日中戦争のさなかの1938年に唱えた「持久戦論」。アジア最強を誇った日本軍に勝つには戦略防衛・反抗準備・戦略犯行という3段階で長期戦に持ち込んで迎え撃つしかないというのが毛主席の考えであった。
■中国には「時間は中国に味方する」という発想がある。
■20世紀後半を通じて行われた東西冷戦は社会主義陣営を率いたソ連が崩壊して幕を閉じた。同様に21世紀の米中新冷戦も社会主義の中国が敗北して終わるに違いないとの観測が日本では主流に見受けられるが果たして本当にそうだろうか。
①現在の中国式の社会主義は1949年に中華人民共和国という社会主義国が誕生して始まった制度ではあるが実際には2000年以上にわたって中国で連綿と続いてきた皇帝制度の延長である。中国伝統の肯定制度を換骨奪還させただけであり「習近平皇帝」が14億の民を統治するシステムであり一朝一夕に崩壊するものであはない。
⓶全盛期のソ連の社会主義と比べて中国式の社会主義は時代に恵まれている。
(以下、5つの順風)
・東西冷戦終結直後の1992年に鄧小平が「社会主義市場経済」という経済の分野だけを市場化させるユニークなシステムを採用したこと。国民が中国共産党の政治体制に抵抗しない見返りに金持ちになる自由を与えた
・2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟しグローバリズムの波に乗って貿易を伸ばしたこと
・2008年の世界的金融危機(リーマンショック)の際5か年計画を実行する長期安定政権の強みを見せつけ世界経済復活のけん引役を果たした
・2010年代半ばの習近平政権下で中国はAI時代に突入したがAIと社会主義との親和性が抜群である
・2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症で中国は社会主義の強みである「スピードと強制力」でウイルスを抑え込んだ。OECDが発表した世界の経済見通しによれば「コロナ世界恐慌」ともいえる状況下で「中国の独り勝ち」
③アメリカの資本主義もまた岐路に立たされている。
■中国ではコロナ化の影響で国内に「爆買い」が起こりアリババが実施したダブルイレブンの消費者デーでは4982億元(約7.9兆円)の売り上げがあった。これは楽天の2年分の流通総額よりも多い額。
■習政権の軍事増強は尋常でないレベルであり軍事予算でアメリカの3分の1。日本の4倍規模。
■習指導部の「2027年の建軍100周年奮闘目標」が何を意味しているか分からないが、もしかしたら2027年までに台湾統一を果たすということではないか。
■「土俵を変える」という手法は中国の常套手段。
・自動車産業ではいつまでたってもガソリン車で日米欧に追いつけないため「環境対策として2035年以降、中国っ国内のガソリン車(ハイブリッド車を除く)の生産を禁止する」と発表した。中国が得意とする電気自動車を世界の自動車産業の主流に変えようという狙い
・国際金融の分野でもいつまでたってもWB(世界銀行)やADB(アジア開発銀行)の牙城を崩せないため2016年初���にAIIB(アジアインフラ投資銀行)を創設した
■毛沢東主席の「持久戦論」は中国共産党幹部たちの必読書になっている。
■中国には「庚子の大禍」(かのえねのたいか)
・1840年のアヘン戦争が起こり「屈辱の100年」(半植民地化)が始まる
・1900年の義和団の乱がもとで新王朝が崩壊
・1960年は大飢饉が起こり前後の3年で最大5000万人が餓死
・2020年はコロナと洪水
■中国製ワクチンの多くが「不活性化ワクチン」。欧米の主流は「mRNAワクチン」でウイルスが突然変異した場合ワクチンを対応させていくスピードに差が出る。
・欧米のワクチンは先進国向けで中国のワクチンは発展途上国向け
■2007年には年間売上高3兆円突破を誇らしく発表したのがシャープの頂点で、それから先の9年間は見るも無残な転落の歴史であった。わずか10年もたたずして倒産の危機に陥った理由はシャープが深刻な「日本病」に罹ったから。
・20世紀の日本人には独創的な人たちが数多いて世界を驚愕させる発明を次々とやりのけたが、創業者たちが次々と鬼籍に入り日本の製造業の経営者は有名大学を出たエリート社員たちに代わっていった。エリート社員たちにとっては新製品の発明よりも自分の出世の方が大事である。順調に出世の階段を上がっていくのに発明はむしろ邪魔になる。なぜなら発明には失敗がつきものだから。そのリスクを最小限にするには何もしないこと。要はエリート社員たちがリスクと責任を回避し液晶以外の分野を放棄してしまった
・「日本病」にかかった企業の場合社長にのし上がる人物も最も高い業績を挙げた社員ではなく最もマイナス点が少なかった社員である。なぜなら社内出世のメカニズムが加点方式ではなく減点方式だから。そのための経営方針も自ずとリスク回避が第一となり攻めの経営ではなく守りの経営となる
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目次と感想
1.米中7つの戦争
経済・軍事の覇権をめぐり、台湾が主戦場となる可能性が高いという指摘は、先の日米首脳会談でも明らかとなった。
2.コロナ対応とアジア比較
過去の感染症に学び防御力を高めた台湾・韓国と比べると、日本のコロナ対応の稚拙さが浮き彫りに。全体主義でビッグデータを集権的に管理できる中国はコロナ下にも強い。
3.韓国と台湾、日本の5年後
従来は日本が台湾、韓国を経済・文化的にリードしてきたが、現状では逆転現象が起きている。
4.日本は中国とどう付き合うか
覇権国として影響力を強める中国に対しては、米国を中心とする西側包囲網の構築が最大の防御になりそう。
●まとめ
取材経験豊富な記者が書くレポートを読み、もっと詳しく世界の政治の流れを勉強したいと思いました。
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日本は中国とどう向き合うか、と言う古くて新しいテーマを考える必要がある。それはその通り。しかし、米中どちらに着くかわざと不明確、不鮮明にすると言う戦略はないと思う。日米軍事同盟を結んでいるので日本は米につかざるを得ない。安全保障は経済に優先する。
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面白かった。
もはや日本は大国ではないので米中どちらにつくか、戦略的に曖昧にする。
もし尖閣諸島の衝突で日中10人ずつ犠牲が出たらという話が痛烈。中国人は鼓舞し、日本は狼狽え政権が崩壊する。戦争は嫌だけど、想定と準備はしないといけないのかな。
もっと台湾・韓国に注目しよう。台湾・韓国は政治・文化・社会などのトレンドが日本の5年先をいく。台湾のコロナ対策はかっこよすぎだった。
日本より小規模な先進国はたくさんある。縮小すれど「幸福な日本」になれる。
幸福な日本の定義となり方について詳しく知りたい、小規模な先進国についてもっと調べたいと思った。
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中国で学び働き要人とも往来がある筆者の視点から、米・中・日の関係や問題を非常に分かりやすく率直に書いた一冊。
客観的に東アジアの国々の状況がわかります。
日本政府に対して持っているモヤモヤとした不満をはっきり書き出しており、読んでいて情けなくなると同時にスッキリしました。
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【琉球大学附属図書館OPACリンク】
https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC04984056
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米中新冷戦の勃発、そしてコロナ禍からアフター・コロナの時代へ。周囲の環境が激変する中、日本はどう生き抜くのか?わが国が抱える課題を指摘し、なすべきことを説く書籍。
2021年1月、米国でバイデン新政権が誕生した。一方、中国は、米大統領選直前の2020 年10月に「5中全会」という中国共産党の重要会議を開催。習政権の長期政権化や軍事強化などの目標を記した「第14次5カ年計画および2035年長期目標」を決議し、習近平の「超一強体制」を確立した。
2018年以降、米中は「新冷戦」といわれる対立の時代を迎えている。
それは、①貿易、②技術、③人権、④金融、⑤疫病、⑥外交、⑦軍事、の7つの分野にわたる全面的な対立。
台湾統一を目指す中国にとり、尖閣諸島は「台湾の一部」で奪取の対象。
中国が尖閣に侵攻した場合、日本は米軍による防衛を期待すべきではない。無人島のために中国との核戦争のリスクを高めたくない米国は、軍の投入を躊躇するだろう。
コロナ対応において、日本政府の危機管理能力の低さが露わになった。
中でも、近隣諸国を仰天させたのが、経済担当の大臣がコロナ担当大臣に任命されたことだ。中国や台湾、韓国では、「感染症のプロ」が責任者となっている。
コロナ対策では、「コロナ封じ込め」と「経済復興」の矛盾が生じる。東アジアの各国・地域は、最初はコロナ封じ込めを優先し、効果が出た段階で経済復興に舵を切り替えた。一方、日本の政策は曖昧で、右往左往していた。
日本は戦後76年間、平和を保ってきた。それは誇るべきことだが、「平和ボケ」も進んだ。コロナ対策に見られるように、危機管理能力という観点からも、日本の将来が危ぶまれる。
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日本はこのままでよいのか?大国に挟まれた我が国がとるべき最適解とは何か?
目を背けずに現実を認識せよ。
本当に「無知」という事こそ恐ろしい事はない。
特に国のトップが勉強不足、認識不足だったとしたら、国民は当然不幸になってしまう。
だからと言って、国民自身が勉強しなくてよい訳ではない。
国民も正しく勉強し、正しく現状を認識し、そしてその時その時で、最適解を常に更新していく。
戦後の日本は奇跡的に平和に過ごすことができ、更に経済発展まで出来た。
平成の30年間は経済発展こそ厳しい状況だったが、少なくとも平和な時代は享受できた。
さてこれからの時代、日本にとっては非常に厳しい時代がやってくる。
今を生きている人たちは、平和ではない状況を体験したことがないのだ。
本当の意味の厳しい時代を何一つ知らない。
その状況でこれからの時代、我々はどこまで対応出来て、我慢が出来るのだろうか。
我々日本人の底力が試される時代に突入していると言えるだろう。
中国がどういう一手を出してくるか。
大方の予想はついているが、果たしていつ?どういう順序で?
ここは常にシミュレーションをして、対策を練っておくしかない。
決して無策ではいけない。
さらにいうと、その時点の周辺国の状況がどうなるのか?
その点についても同時に対策を考えなばならない。
北朝鮮は?韓国は?そしてロシアは?
台湾有事は確実に起こる。
台湾と尖閣諸島は、中国側の理屈では一体だ。
「台湾と尖閣が中国に獲られてもいいんじゃない?」ということを言う日本人も少なからずいる。
きちんと認識しているのだろうか。取られた後に中国がどう出てくるかまで分かっていて答えているだろうか。
アメリカ軍が日本の防衛のために命を投げ出すと思っているのだろうか?
自分の国は自分で守らないと、誰も守ってはくれないとなぜ気付かないのか。
今すぐにでも日本の防衛力を高めていかないと、本当に国家消滅の可能性だってあり得ない話ではなくなるのだ。
勉強不足、認識不足は本当に恐ろしい。
隣国が恐ろしいのではなく、本当に恐ろしいのは平和に慣れすぎた無知な日本国民なのかもしれない。
やはりまずは正しく現実を見るべきだ。
(2022/5/11)
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中国.台湾情勢に精通した著者による、中国米国関係の今後を占う著作です。著者の広い人脈からの情報により、幅広い視点で解説されています。また今後日本が取るべき対応も主張され、大変意義深く感じました。大国に巻き込まれていくことは止む得ないものでありますが、その中で日本人として必要な行動をする必要性を感じました。
日本人として一人一人が、想いを持ち行動することが大事ですね。