紙の本
『明日へつながる5つの物語』
2021/10/30 19:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
岡山三十二万石、明君の誉れ高い父池田光政を継いだ綱政
洪水、飢饉、財政逼迫が続き滅びの様相を示す藩政に悩む
──「烏城の空 父と子と」
町に一軒しかないコンビニの駐車場で親友の亜由美と話す愛莉
中学卒業前から一年ほど付き合っている美真が宇宙人ではないかと打ち明ける
──「カレシの卒業」
高校のころ有望な長距離ランナーだったが走るのをやめてしまった悠斗
親友でありライバルであり恋敵でもあった湊から13年ぶりに連絡がある
──「フィニッシュ・ゲートから」
など、物語の名手が紡ぐ“人として優しく前向きな気持ち”になれる5つの短編を文庫オリジナルで、2021年10月刊
《先の見えない時代だからこそ、こんなふうにそっと寄り添ってくれる物語が、誰かの灯火になるのではないのだろうか。》──近藤史恵「解説」より
あさのあつこ 作家デビュー30周年記念
執筆年も初出媒体もまったく異なる短編を一つのテーマでアンソロジーに編んだのは編集の妙
中年・熟年男性なら「この手に抱きしめて」に思わず涙腺がゆるむはず
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【収録作品】この手に抱きしめて/烏城の空/カレシの卒業/フィニッシュ・ゲートから/桃の花は
企業や地方のPR用の作品だからか、比較的あっさりめの短編集。
「この手に抱きしめて」製薬会社のCMとの連動小説。癌の告知を受けた父親と結婚を控えた娘という、いかにもな物語。
「烏城の空」岡山市の『岡山繁茂の語り/吉備の風に吹かれて』という短編集から「父と子と」「石工たちの空」の2編を掲載。
「カレシの卒業」SF恋愛もの。岡山弁が心地よく、カレシの意外な正体を知り、狼狽するカノジョがかわいい。
「フィニッシュ・ゲートから」アシックスの期間限定キャンペーンのために書かれたアスリートものの一作。親友の二人それぞれの挫折とそこから這い上がる姿が描かれる。
「桃の花は」バンダイの入浴剤付き小説。桃畑と幼い頃の記憶。三十女を思いこみから解き放った年下の恋人、という物語はもはやファンタジー(苦笑)。
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そうか、父上も迷っておられたのだ。悩み、戸惑い、己を見失い、苦悩していた。今のわしと同じように、だ。
その迷いを悩みを戸惑いを越えて、国主の役目を全うした、全うできた。それは…
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紐解いたのは、「岡山藩物語」が収録してあると聞いたから。岡山市が自治体PR誌としてつくった6篇の短編集なのだが、未取得だった。此処には2篇載っている。古代がテーマのあと4篇が不掲載だったのは残念だったけど、これも読み応えあった。
この短編集全部、時代や地域の周辺で頑張っている者たちに焦点を当てている。池田綱政なんて、名君で父親の池田光政と比べると知られていないし、地元では名臣・津田永忠こそ知られているけど全国的には無名である。ましてや、国宝・閑谷学校のあの見事な石の壁を築いた石工なんて、誰も知らない。後楽園の造営、備前平野の広大な沖新田の干拓を支えた高い技術の基に、大阪で孤児になった藤吉の頑張りがあった事も読んだあとなら信じられる。幸島稲荷神社のひょうたん石は全く知らなかった。今度行ってみよう。
あとの数篇も、企業や自治体とのコラボ企画である。あさのあつこは、私は長編作家として位置付けていた。有名になった「バッテリー」にしても、天才投手の物語として描けば1-2巻で終わる内容だ。それが全7巻になったのは、ひとつ一つの気持ちを丁寧に汲み取っていった結果であるし、あさのあつこさんはそういう書き方しか出来ないのだと思っていた。本巻も、出来事よりも、主人公たちの気持ちを描いている。それでもスパッと終わらせて、後味が良い作品ばかりだった。
いっとき、あさのあつこコンプリートを目指して、あまりもの「多作」ぶりに諦めたことがあった。また少し読み始めようかな、と思わせた文庫オリジナルであった。
shifu0523さんのレビューで文庫の発行を知った。
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最初、「バッテリー」のようなアスリートを目指す小説は、運動音痴の私に、縁が乏しく、余り読む機会のない物であった。
作者 あさのあつこ氏の「弥勒」シリーズ、「おいち不思議物語り」シリーズ、「燦」シリーズ女性作家の時代小説傑作篇などの時代小説を読み出してから、のめり込んでしまった作家さんである。
人の情愛の深さが、細々と、そしてヒシヒシと、読み手に伝えてくれる作者である。
この本は、5つの物語り。
「この手に抱きしめて」
父親と結婚する娘。
少し確執があったの親子なのだが、父親の前立腺がんが、見つかり、父親が、自分の花嫁姿を見たい為に式にこだわった事が理解出来た娘。
この話の中でも、お金持ちの伯父の家が、羨ましく思った若き日の父親が、家庭の環境の中では、人に言えない問題も抱えている事が、サラリっと書かれている。
其の後は、
「烏城の空」
「カレシの卒業」
「フィニッシュ・ゲートから」
「桃の花は」
烏城の空は、やはり、作者が岡山出身だからかな?
我が母の祖先も広島藩代々奥家老で、48代も続いていたというけど、慎ましく、そして、烏城彫などを趣味にしていた。
やはり、家財を売り、庶民に尽くしたと、聞いているのだが、・・・
この本でも、津田永忠が、大坂から招聘した石工集団の藤吉など、名を残さずに、その卓越した技術を残しているのみである。
林真理子氏の「西郷どん」をよんだが、西郷隆盛の長子 菊次郎は、台湾の知事にもなり、そして京都の市長迄なった方だが、その京都の住まいがどこであったもわからないままであると知った。
後世へ残るものを、自分の名でなく、次世代ヘ続くものを残していく様を良しと、している潔さが、伺われる。
幸島稲荷神社のひょうたん石は、何処にあるのか、、、調べて行ってみたいと、思った。
SFのような話と淡い恋愛ものの「カレシの卒業」も、おばあちゃんの連れ合いが、未来からの人とは・・・・面白い設定である。
「フィニッシュ・ゲートから」のアスリートの話。
どちらも、走る事に全力を尽くすが、持っている力量が、差をつけて、優位に居ると、自然と上から目線になってしまう。
しかし、友情の深さは、何年経っても変わらない力を持っているのだと、・・・・。
なぜか、嬉しくなるような友情の深さを感じさせる。
石原慎太郎氏が、先日亡くなられたが、東京マラソンを作り、各府県が、マラソンに力を入れ出し、盛り上げてくれる一役をかってくれた方だと、・・・冥福をお祈りしたい。
「桃の花は」
年下の男性との恋愛。
家庭環境の違いが、あるのかと、・・・思っていたのだけど、共通の物、桃の花。
2人の幸せを祈りたい気持ちになってしまった。
1粒で、2度美味しい!というコマーシャルが、あったけど、1冊で、5度楽しい物語に会ったと思わせる本であった。
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息子が少年野球をやっている頃に(たしか息子も)読んだ「バッテリー」「ラスト・イニング」以来の あさのあつこ さんです。
バッテリーは6巻にわたる長編で、次の展開がどうなるかワクワクして読んだ記憶があるが、本短編集は物語に入り込めないうちに終わってしまい物足りなさを感じた。
表紙に5匹のネコが描かれている理由も、明日へつながることも見つからなかった。
困った、レビューに書くことがない。
フィニッシュ・ゲートの"東京マラソン"の話での、「残り七キロあたりで、どうにも脚が動かなくなる。」というセリフ。
私も一度フルマラソンに挑戦しようと決意し、勝田マラソンを走ったことがある。
35キロ地点手前の直線が坂道になっていて、上り切ったと安心したとたんに腰に痛みが来た。
脚も呼吸もまだ大丈夫だというのに、ランナーには有名な35キロの壁をまさに体験することになり、残り7キロがきつかったことを思い出した。
"東京マラソン"も走ってみたかったが、もはや走れる自信は微塵もない。
ならば、寄り道しながらコースを歩いてみようかと思ったのが、この作品を読んでの"明日へつながる?"収穫か。
スタート地点付近だけでも、新宿ゴールデン街、東京おもちゃ美術館、新宿歴史博物館などがあるし。
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あさのあつこさんの短編集。
病と闘う中年男性の娘たちや家族との対話を描いた「この手に抱きしめて」、石工の成長を描いた時代小説「烏城の空」、いきなりカレシの驚くような告白から始まるSF小説「カレシの卒業」、東京マラソンに出場する旧友に寄り添うスポーツ小説「フィニッシュゲートから」、短いけど切なさとドキドキが詰まった恋愛物語「桃の花は」の5編からなる。
時代小説、SFなど、いろんなジャンルの物語が詰まっているものの、どの登場人物たちも人間らしくて、共感も持てる。
私は、「フィニッシュゲートから」が好きかな。
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❇︎
この手に抱きしめて
烏城の空
カレシの卒業
フィニッシュ・ゲートから
桃の花は
優しくて温かい全5話
タイトル『明日へつながる5つの物語』
きっと優しいお話なんだろう、と思い
図書館で目について手に取りました。
表紙の5匹の猫たち、
凛々しい顔、好奇心み満ちた顔、
目標を見据えたような顔、無邪気な顔、
伸びやかな様子、どの猫が物語の象徴か
想像してもう一度読むのも楽しそうです。
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この手に抱きしめて
烏城の空
カレシの卒業
フィニッシュ・ゲートから
桃の花は
5つの物語の中で、私は『桃の花は』が好きだったかなー。那留と美枝が愛しくて、もうちょっと読みたかった。
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心が疲れた夜に、暖かい飲み物と一緒に、読むのにいい本。
まるで違った5人の主人公の物語。6人目は読んでいるあなたかな。
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心温まる短編5編。「烏賊の空」は時代小説。江戸時代・岡山藩の池田綱政と津田永忠による民の声を聴くことからの藩政改革の始まり。残り4つは現代物だが、「カレシの卒業」はファンタジー。「フィニッシュゲートから」は陸上長距離走に力を入れた2人の高校生・悠斗・湊と女生徒・絵梨の3人の青春時代を懐かしく甘酸っぱい気持ちで蘇らされるスポーツ青春小説。「この手に抱きしめて」は娘を嫁に出す父親の心の切なさを「桃の花は」は心に傷を持った男女が桃の花の下で親の愛を思い出すという人情もの。5編とも全く異なる小説だが、どれもホッコリする物語。