紙の本
『砂の女』をより深く味わうのに絶好の一冊
2022/06/27 17:23
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投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書のおかげで、『砂の女』の含意や構造を実によく理解できました。
本書と並行しての読み直しで、昔読んだ時とは違い、この作品の傑出した価値をこの歳になってようやく理解。
読書の醍醐味、ここに極まるという感じです。好著です。
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『砂の女』のシンプルな構造の中に、これほどの示唆があったのか…。労働に縛られつつも、労働を心の拠り所とする人間。この不器用さを愛せる者になりたい。
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Eテレの番組をみて
1, 定着と流動のはざまで
2,揺らぐアイデンティティ
3,人が順応を受け入れるとき
4,自由のまやかしを見破れ
自由と不自由って?
砂のすり鉢の中は不自由なの?自由なの?社会は自由なの?不自由なの?
自由であり不自由なんだろうなぁ
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原テキストは読めていないものの、遡って読みたいと思わせるに足る、達意の文章だった。「漂流」と「定着」の二項対立を定立させることで終わるのではなく、その対立を超えたところまでの言及に成功している。
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読んだのは…高校生くらいだったと思います。その時の記憶を掘り返して読み、番組を見ましたが…かなり深い読み方になっていてとても面白かったです!ヤマザキマリさんの説明もわかりやすかったと思います!!
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ヤマザキマリさん漫画家の枠に留まらずこんな書評も書けるの凄いな、と単純に感心してしまった。テレビでの話も専門家みたいに上手いし。
原作は読んだことがないけど、きっとなんの予備知識もなしに読んだら、この本が何故評価されているのか私にはいまひとつピンと来なかったことだろう。
「自由」とは「枠」とは「自我」とは、といった様々なテーマが、話を通して問いかけられているんですね。寓話性の高い話って読む側に少なからず知識と考える力が必要だし教訓くさそうなのは苦手意識があるけど、この解説がなかなか面白かったので、原作はこれから読もうと思う。
自己に拘らない生き方はある意味で凄く強い、というようなことが書かれてあって、そこが強く頭に残った。
女性には食虫植物みたいにネバネバした(うろ覚え)大なり小なり現実に適応していく強かさがあるっていうのは、どうなんだろう?
ヤマザキさんは疑い無く強い女性だけど、そういう面をほぼ持ち合わせていない女性も存在すると思うけどな、男性に比べてってことですかね。
女性は力では男性にかなわないし、精神的に強くないとやっていけないよな...自分にもこの「砂の女」のような強かさがちゃんと備わっていることを願う。
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WHYヤマザキマリが購入したキッカケ。104頁の記述を読めただけでも買ったかいはあったと思う。砂の女も別途読むつもり。
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テルマエ・ロマエのヤマザキマリによる安部公房『砂の女』の解説。
ヤマザキさんのことは有名なマンガを通して名前しか知らなかったけど、こんな文章・解説が書ける方なのかと驚いた。文明と原始(昆虫)の対立や、観念的な男性と現実的な女性、普遍的な理念を重視する男性と村の掟を重視する女性、村の野卑な要望とそれに対抗する女、男が徐々に観念を相対化して村の論理に融合していく姿など、砂の女という作品に織り込まれた複数の視座を上手に浮かび上げてくれている。
視点の複数性というか批評性はさすが安部公房という感じで、満州からの引き上げ者で共産党で活動し60年安保という時代を過ごしているといういまの我々からは少し想像し難い経験にも裏打ちされているのではないかと思う。とはいえ、下手に時事問題に収束させずに一段昇華させているところに安部公房が現代でも読める理由なんだとは思う。
ヤマザキマリさんも最後に言っている通り、歳を経て読むとまた違った印象になるのだろうから、改めて『砂の女』、そして他の安部公房の作品を読んでみようと思った。
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「安部公房『砂の女』」ヤマザキマリ著、NHK出版、2022.06.01
105p ¥600 C9493 (2022.07.22読了)(2022.06.01購入)
『砂の女』がこんなに深い読み方ができる本とは知りませんでした。
「砂漠の思想」「カンガルー・ノート」が積読です。いずれ読んでみましょう。
【目次】
【はじめに】実存の意味を突き詰める「寓話」
第1回 「定着」と「流動」のはざまで
第2回 揺らぐアイデンティティー
第3回 人が「順応」を受け入れるとき
第4回 「自由」のまやかしを見破れ!
☆関連図書(既読)
「壁」安部公房著、新潮文庫、1969.05.20
「けものたちは故郷をめざす」安部公房著、新潮文庫、1970.05.25
「飢餓同盟」安部公房著、新潮文庫、1970.09.25
「第四間氷期」安部公房著、新潮文庫、1970.11.10
「反劇的人間」安部公房・キーン著、中公新書、1973.05.25
「榎本武揚」安部公房著、中公文庫、1973.06.10
「水中都市・デンドロカカリヤ」安部公房著、新潮文庫、1973.07.30
「人間そっくり」安部公房著、ハヤカワ文庫、1974.10.15
「内なる辺境」安部公房著、中公文庫、1975.07.10
「砂の女」安部公房著、新潮文庫、1981.02.25
「箱男」安部公房著、新潮文庫、1982.10.25
「方舟さくら丸」安部公房著、新潮社、1984.11.15
「テルマエ・ロマエ(Ⅰ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2009.12.08
「テルマエ・ロマエ(Ⅱ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2010.10.05
「テルマエ・ロマエ(Ⅲ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2011.05.07
「テルマエ・ロマエ(Ⅳ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2012.01.05
「テルマエ・ロマエ(Ⅴ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2012.10.05
「テルマエ・ロマエ(Ⅵ)」ヤマザキマリ著、エンターブレイン、2013.07.04
「国境のない生き方」ヤマザキマリ著、小学館新書、2015.04.06
「for ティーンズ」ヤマザキマリ・瀬名秀明・若松英輔・木ノ下裕一著、NHK出版、2018.08.01
「ナショナリズム」大沢真幸・島田雅彦・中島岳志・ヤマザキマリ著、NHK出版、2020.09.30
「時をつぐむ旅人 萩尾望都」小谷真理・ヤマザキマリ・中条省平・夢枕獏著、NHK出版、2021.06.30
「果てしなき 石ノ森章太郎」ヤマザキマリ・名越康文・夏目房之介・宇野常寛著、NHK出版、2021.08.25
(アマゾンより)
逃げるか、とどまるか。極限状況で「自由」を求める人間の葛藤を描いた現代の寓話
砂丘へ昆虫採集に来た男が、女がひとり棲む穴底の家に囚われてしまう。
退屈な日常から逃げ出そうとした男が、今度は蟻地獄のような砂の世界から抜け出そうともがく……。
教養を盾に部落の人間を啓蒙しようとする男の驕りと、生活のため繁殖のために男を引き留めようとする女の業。
その対比と、しだいに砂穴での暮らしに順応してゆく男の変化をリアルに、飄々と、ときにアイロニカルなユーモアを交えて描写する人間観察の傑作。
画学生時代から安部作品を愛読してきた漫画家のヤマザキマリ氏が、「自由」や「希望」の多義性に注目しながら解説する。
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人は何か決まった「壁」のなかで生きているほうがむしろ楽で、自由の大海原にひとりで放り出されると、どうしていいかわからなくなる。
→第一高等学校生徒の自殺事件である華厳滝投身事件(1903年)を思い出した。何でもなれる自由は、とても過酷なことでもある。
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じっくりと読んでしまいました。
本当の自由とは何なのか?飛び立つのは自由なのか?巣ごもることは自由ではないのか?
自由とは砂そのものなのか?
砂は与えられた条件、環境なのか?
自由になるということはどういう事なのか?
不自由の中での住みごこちの良い場所。その場所が自由なのか?
砂は自由であり、自由に囲まれた場所そのものが自由なのか?
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ヤマザキマリさんの解釈とはいえ、久々に文学に触れた。解釈でも安部公房の筆力についてもヤマザキマリさんからのエネルギーが伝わり、魅力的に紹介されていた。砂の女を読みたいと思う。