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これは面白かった!というか、実に好み。ホラー寄りの奇妙な味、というのかな。柔らかいのだけれど。
読んでいて、なんか読んだことあるなーと思い、カシュニッツはいくつか読んでるんだと思うんだけど、もっと読みたくなった。でも家を探したが河出の『ドイツ怪談集』しか見当たらなかった。特に『いいですよ、わたしの天使』は絶対読んだことあるーと思うんだが、なんのアンソロジーに収められいるのか。訳者あとがきでは既役について素っ気なく、なんのアンソロジーに入っているのかわからない。
特によかったのは『白熊』『ジェニファーの夢』『船の話』『幽霊』『ルピナス』『長距離電話』『四月』『いいですよ、わたしの天使』…あれ?ほとんどではないか。
他のももっと読みたい。
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カシュニッツ
カシュニッツが描くのは、市井の人間の平凡な生活にどこからともなくひっそりと忍び込む魔の顕現である。だがそれは外部から不意に訪れたように見えて、実は我々と同居していたことに後になって気付かされるのである。
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表紙が気になって図書館で衝動借りしたのですが、実に「コーヒー片手に晴れた5月の日曜日の午後3時、カフェのテラス席で読みたくなる」ような短編集でした。
星新一のような不思議なお話や、
小洒落たイケてる短編、
悲しいヒューマンストーリーから
ちょっぴり不気味な怪談、
皮肉なブラックユーモア、
哲学的な話まで
色々あるものの、どの短編も同じ世界観を共有していている気がします。
どこかシニカルで、文学的。
いくつか話のオチがよく分からないものがあって少し困惑しちゃいましたが、総じて評価すると、読む価値ありです。
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15編で読みやすいが、短い割に一編がブラウニーみたいに心にずっしりくるし、一編ごとに自分の位置が分からなくなる不安感が漂う。
読了後に訳者解説みたら、また違う視点で面白く読めると思う。
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戦後ドイツを代表する女性作家の傑作選。全15作。
ふわっとしていて、灰色で、どこか不安になるお話のあつまり。「長距離電話」が好き。わかりやすかった。怖かったのは「いいですよ、わたしの天使」→
もう、死ぬほど怖い。ホラーじゃないんだけど、なんか、怖い。こんなのおかしいよ!って叫びたくなる。読み直したらまた怖かった……。
「ルピナス」は切ない。切なすぎる。「白熊」や「精霊トゥンシュ」「その昔、N市では」あたりは日本の昔話にありそう。
「いいですよ、わたしの天使」はコロナ陽性が出てまぁまぁしんどいタイミングで読んで、だいぶんやられた(笑)怖かったよー。でもある意味1番印象残ったわ。たぶん忘れない……。
全体的には、とても上質な短編集って感じ。面白かったです。
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短編集15編
不可解な,忍び寄る不安,不条理といった精神を軋ませるような世界が広がる.
「白熊」「船の話」表題作が良かった.少しわかりにくかったけれど「四月」も面白い.
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カシュニッツは1901年に生まれて1974年に亡くなった作家で、これまでも何冊か翻訳が出ていたらしいが、全く知らなかった。
読んでみると、暗くて不安に満ちていて、うっすらとした恐怖を感じるという全体のトーンは共通しているが、内容はバラエティーに富んでいて、こんな面白い作家、どうして今まで話題にならなかったのだろうかと思った。
「いいですよ、わたしの天使」「船の話」なんかは岸本佐知子の「居心地の悪い部屋」に入っていてもおかしくない。
「白熊」「幽霊」「精霊トゥンシュ」は、古典的な幽霊小説の風格があるし、「長距離電話」「ルピナス」は構成の巧みさが際立つ。
「ジェニファーの夢」「ロック鳥」「人間という謎」の人間心理の恐ろしさを描いたものもいい。
「その昔、N市では」は本のタイトルになるだけあって、読みやすく面白い。外国人労働者や奴隷制、AIなどの寓意も読み取れて、現代の問題として考えることもできる。40年くらい前に書かれたとは思えない。ゴーレムやフランケンシュタインも思い出した。
酒寄さん選りすぐりのせいか、どれもいい作品でハズレがない。
私が特に好きなのは「船の話」「ルピナス」「四月」「見知らぬ土地」。特に戦後すぐ、フランス空軍の兵士との束の間の交流を描いた「見知らぬ土地」がいい。あそこにあんな風にサン=テグジュペリが出てくるとは。すごい。
カシュニッツはドイツ生まれでドイツ国内、ローマを転々として暮らしたとあるが、主人公もドイツ人とは限らず、舞台もスイス、イタリア、イギリスなどで、ちょっと前に読んだグァダルーペ・ネッテルみたいだなとも思った。
是非とも第二弾を出して欲しい。
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カシュニッツは今回初めて読んだけど、面白かった!
人間心理の闇、奇妙な味、といったような短編集。
日常が少しずつずれていく感じや、夢と混ざり合っていくような感じの塩梅がちょうど良かった。
あまりにも突飛だったり、幻想的すぎる話だと個人的には楽しめないことがあるので…。
迷信かと思いきや否定もしきれない『精霊トゥンシュ』。
間違った船に乗ってしまい、奇妙なことが起き続けていることを知らせる手紙が届く『船の話』。
隠れて生きたユダヤ人女性の人生を描いた『ルピナス』。
若い夫婦に追いやられていく老女の『いいですよ、わたしの天使』。
そして、SFホラーぽさもある表題作の『その昔、N市では』。
どれも面白かった。
『ルピナス』と『いいですよ、わたしの天使』は、リアルに苦しくなる展開と終わり方だったけど作品としては特に好きかもしれない。
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『「それから?」 夫はきつい口調でたずねた。「白熊がなにをするか知ってるくせに。首を左右に振るのよ。いつまでも右に左に」「きみみたいにな」「わたしみたいに?」女はおどろいてそうたずね、闇の中でいまいわれたとおり首を左右に振った。「きみはだれかを待っていた」夫がいった』―『白熊』
初めて読む作家、マリー・ルイーゼ・カシュニッツの短篇集。最初の幾つかの短篇を読むかぎり、これまで読んだ欧州の怪奇譚の雰囲気と似ている語り口で、初めてのような気がしない。例えば最近読んだものだとアラン・ノエル・ラティマ・マンビーの「アラバスターの手」とか、シルヴィア・プラスの「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」などが思い浮かぶ。更に言うなら、もう少し前に読んだゾラン・ジヴコヴィッチの「12人の蒐集家/ティーショップ」なんかにも似ている印象を受ける。要は、あちらの世界とこちらの世界が何やら薄暗いところを通して繋がってしまう話とか、人間がいつの間にか獣のような邪悪な存在になってしまって悪さをするとか悪魔が出て来るような話。それが西欧的な世界観に由来するものかどうかは不明だけれども、似たような話を極端に単純化して要約してみると、本邦の番町皿屋敷のように個人的な恨みや怨恨を持って張本人の前に現れるというような話は案外少なくて、何だか人智を越えた存在にふっと誘われ(あるいは、さらわれ)そうになる展開というのに彼の地の人は関心があるのかなとも思ったり。そう書いてみて気付いたけれど、小泉八雲の「怪談」なんかもどちらかといえばそういう話が多いような気がするのは、やはり西欧の人の関心の為せる業なのかも知れない、などと思考が脱線する。
『その昔、大都会であるN市の黄金時代が終わった。メイドやウェイターや売り子や車掌や道路清掃人や郵便配達人や墓掘人の黄金時代が。雇い主に奉仕すること、スープを給仕すること、商品をだしたり、包装したりすること、子どもの体を洗うこと、老人に付き添うこと、瀕死の患者の介護をすること。たとえ高給がもらえても、だれひとりそういう仕事につこうとしなくなったのだ。オフィスでは数十万人のビジネスマンがデスクワークをしているというのに、路上はきたないまま。食堂は店じまいし、郵便は配達されなくなり、車掌、切符売りを必要とする公共交通機関は運行を停止した。新聞各紙がこの憂慮すべき状況を打破するべくさまざまな提案をしたが、どれも不発に終わった』―『その昔、N市では』
ところが後半に入ると、ぐっと現代的な要素が色濃くにじみ出た作品が多くなる。その構成については翻訳家と出版社の仕掛けという側面があるにせよ、半世紀以上前の作品に現在の社会的な問題を見い出してしまうというのは、作品が根源的な人の業を描いているからに違いない。例えば表題作でもある「その昔、N市では」を読みながら、感染症に喘ぐ都市が抱えている問題、例えばいわゆる「エッセンシャルワーカー」の問題や、貧富の格差の問題などを想起しないでいることは難しい。そこまで大きな社会問題のようなテーマを扱っている作品はこの短篇集では他に「ルピナス」位だけれど、人間の性悪(これを、しょうわる、と読むか、せいあく、と読むかで意味も少し変わるような気がする)な部分(あるいはそれを人間性というのかも知れないけれど)が強調されて描かれたディストピア的世界観がこの作家の根底にあるようにも思える。それはひょっとするとナチス政権下の第二次大戦を経験した作家ならではの思いなのか、と想像しながら読み終える。
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文章は理知的。怪異譚もクラシカルな趣きで端正。しかし登場人物の心は揺らぎ、不安定な危うさを秘めている。
すっと読み通せるが、収められた各短編には読み流すことを許さない、しっかりとした手応えがある。
表題作は、外国人労働者への依存と無理解、エッセンシャルワーカーの仕事に価値をおかない世界に対する批評が想起される寓話。
『見知らぬ土地』では、“人間性という壊れやすい幻想がささいなことで消し飛ぶ”様が描かれる。戦後ドイツの連合国による占領地域にて、敵国の軍人と居合わせることによる緊張がサン=テグジュペリの名前を出すことによって緩和されていく。しかし、その交流は脆く、苦い思いが残る。ヒューマニズムを否定した作品ではない。見知らぬ人、見知らぬ土地が与える不安が題材である。
『白熊』で交わされる夫婦の会話に込められた緊迫感にも引き込まれる。明かされるラストで妻が抱える衝撃。
しかし、〈僕の白熊〉という可愛い渾名に込められた皮肉は、幸せそうな夫婦の足下に深い亀裂が潜んでいたことをジリジリとあぶり出して、怖い。
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15編収められた短編集。作品の配列にとてもこだわったと訳者あとがきにあります。怪異・ユーモア・性が入り混じった作風。ドイツという国が重ねてきた歴史の影の部分も時折見え隠れします。女性の心理描写がきめ細やかで、多くの作品では自惚れや恋心や恐れの果てに死や老いへと主人公は突き進んでいくのですが、少年から性的な欲望を向けられ怯えていた少女が、やがてその欲望の美しさも感じ取るようになるまでの僅かな時間を描いた『長い影』が一番好みでした。最後に収められた『人間という謎』で、読者の我々も作者との旅からいったん解き放たれます。
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【収録作品】白熊/ジェニファーの夢/精霊トゥンシュ/船の話/ロック鳥/幽霊/六月半ばの真昼どき/ルピナス/長い影/長距離電話/その昔、N市では/四月/見知らぬ土地/いいですよ、わたしの天使/人間という謎
Web東京創元社マガジン「深緑野分のにちにち読書」第九回 http://www.webmysteries.jp/archives/31047905.html#chapter2
奇妙な味の短編集。わかるようなわからないような……
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あ、たぶんこれ私好きだなと思った一目惚れ装丁。
不可思議はそんなに遠いことではなく、実は身近にあるんじゃないかと思わせる短編集でゾクゾクした。
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アメトーーク本屋で読書芸人(2023)ヒコロヒーさんおすすめ本。現実からいつの間にか違う世界に入り込んでしまったような。感情の上げ下げはあまりないものの、じわっとくる闇。他の作品も読みたい。
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読書芸人で見て興味を持ったので図書館で借りて読んだ。
不気味なお話や謎のまま終わるお話などの短編15編。
全部全く違う方向性のストーリーばかりで面白かった。
一番好きなのは『幽霊』、後は『長距離電話』や『四月』も好き。
最後の『人間という謎』も、古畑任三郎で何度も出てきた「赤い洗面器の女」みたいな尻切れとんぼな感じが1つだけじゃなくて何度も続いて、もやもやとわくわくがリピートされて面白かったし終わり方も素敵だった。
翻訳された酒寄進一さんのあとがきも良かった。
翻訳だけではなく、たくさんの短編の中から厳選した15編であること、編集者の方主導で決まった配列について、などなど。
他の作品も読んでみたくなりました。