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紙の本
ディケンズはどこで泣きだしたのか?
2017/01/24 16:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ: - この投稿者のレビュー一覧を見る
白状するが、私は有名なコリンズの『白衣の女』『月長石』も読んだことがない。
あまりにも有名すぎて読んだ気になって作家と言えばいいのだろうか。
まあ、そんな言い訳は置いておいて、短編集が出たというので手に取ってみたところ、
たいへん後口の良い作品があったので、思わず何度も読み返してしまった。
特に最初の『アン・ロッドウェイの日記』
かのディケンズが汽車の中で読んでいて泣きだしたという物語だ。
推理小説なので内容については多くを明かせないが、
悲惨な最期を遂げた友人の為に、
お針子の女性が心を砕いて謎を解き明かして行くというもの。
短いながらも、ヴィクトリア朝の時代の貧しさや、人々の堅苦しさが描かれ、
その中で主人公の優しさが人々の心を打つ感じがとても心に残る。
この作品はさらに、再読の時に、ディケンズがどこで泣きだしたのだろうと、
推理できる楽しみがある。
私は、57ページあたり
「金銭問題にかけては、事務的に扱うのに慣れているもので」
なんてドライに言う見知らぬ紳士が、感情を昂ぶらせていくあたりが、
号泣ポイントだと思うのだがどうだろう?
この他にも、全部で5編のこの短編集は、全てがハッピー・エンドではないけれど、
女性たちの姿がこの時代にしては主体的なところが、
爽やかな印象を抱く元なのかもしれない。
『ミス・モリスと旅の人』は意外な始まりと最後の落ちが楽しい作品なのだが、
主な魅力は、働く女性である主人公の主体性にあるのかもしれない。
もし、この短編集を読んで不覚にも涙がこぼれたら、
ディケンズと同じ感性と思えるところも楽しいから、
ぜひ電車の中で、開いてみて欲しい。
私は家の中で読んでしまったので、今となっては、その事ばかりが残念なのだ。
紙の本
市井のミステリーと恋愛
2023/08/14 17:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
市井の人々を主人公にした短編五編。親友の死の謎を負う女性。船内の赤ん坊取り違えで涙の人生を送る男性。思いがけない事実を知り苦悩する巡査。仄かな恋に巡り逢う家庭教師。劇中劇の主人公のように数奇な恋と陰謀に巻き込まれる男性。
ミステリー仕立ての『アン・ロッドウェイの日記』『巡査と料理番』『ミスター・レペルと家政婦長』が特に面白かった。親友の死の真相に迫っていくアン・ロッドウェイは、女性探偵の先駆けだという。死の床にある元巡査の告解で始まるミステリーは、ほろ苦い読後感を残す。ミスター・レペルと友人ロスシーは、『アーマデイル』に登場する二人のアーマデイルを思わせた。
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