紙の本
性差を扱った重厚ファンタジー
2023/06/30 08:39
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:S910 - この投稿者のレビュー一覧を見る
男が女を犯せぬ国があるという。
衝撃の冒頭一文から始まる物語は、星卜によって「出産経験のある辺境王族の娘を皇后に」と選ばれた主人公が、息子を人質に一族皆殺しにされた。
皇帝候補達の閨を巡り、子を孕めば皇后に、そうでなければ処刑という待遇。
わたしを虐げた者を必ず殺す。
触れるだけで男を殺せるというカミを宿した女チユギと出会い、自身も力を得て反逆を誓った娘ワリが、男たちに道具して扱われながらも世界を知っていく話。
めちゃくちゃ面白くて続きが気になって一気に駆け抜けてしまった。
やや哲学的な重厚ファンタジーだった。
男女差別、身分差別、社会構造なんかの問題提起や考え方がいろいろ出てきて哲学的な部分もあって、ちょっと理解が大変なところもあったけど、独自のファンタジー世界観で説得力を持たせて描かれていた。
夜を終わらせる対価に星と月を掻き集める。地上の煌めく金銀を奪い、夜の腹を切り裂いて、明日という嬰児をひきずりだす。
この表現がすごく良かった。
読んだ人ならわかるだろうキーワードが絶妙に盛り込まれていて読み返しても感慨深い一文だわ。
紙の本
女と男の生きづらさかな
2023/04/05 10:27
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファンタジーだが、人間が統べる国が残虐な統治の歴史を繰り返し行わない理由は、ゆるぎない理性を持ちえない性のためだろうか。支配されているのに、それに気づかない民の存在が、歴史の悲劇を繰り返すのだろう。男が女を殴らず、罵らず、見下さず、対等に思うことは、なんら名誉なことではないというのか。作者の大きな想いに押しつぶされそうな物語だった。
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辺境の小さな国の王女として生まれ、幸せな結婚をし、息子を授かった環璃。だが、その幸せな暮らしは突如終わりを迎え、広大な大陸を統べる燦帝国の次期皇帝を選ぶ「皇后星」に選ばれ、環璃の国は滅ぼされてしまう。
産まれたばかりの息子は人質に取られ、旦那さんは殺されて、次期皇帝候補の子供を妊娠する為だけに大陸を渡り歩かなくてはならない過酷な旅。そんな中、男に触れただけで塵となる力を持つチユギと出会う事で環璃の運命は大きく変わって行く…
中々ヘビーな展開で、どんよりした気分でしたが、希望を捨てない環璃の強い意識が格好良かったです。
息子も殺されてはいないかヒヤヒヤでしたが、最後まで生き延びていてくれたのは救いでした。
神と共存した環璃の長い年月の先に、また次の物語があるんですよね。次はどんな人に繋がれるのか知りたいです。
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長い!
環璃の理不尽な運命を描くには、大事なんだろうと思うけど長いなぁ。
女性であるために、決められた運命にどう抗い、受け入れるかに尽きるんだと思った。
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女性として生まれたことの苦しみと力を手にしたときの葛藤、全てを変えようなんて思っていない、ただ誰にも侵されず自分が自分として生きていきたい、誰にも搾取されたくない、支配されたくない、それだけがなんと難しいことか。
世界に翻弄されながらも、力強く生きようとしている彼女に心を揺さぶられる。
どんな形の世界、社会が平和と呼ぶのか、男にとって都合のいい世界、女にとって都合のいい世界、どちらでもないそんな世界はあるのかな。
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ファンタジーテイストは得意ではないので、読み進めるのに集中を欠くことはあったが、現代の世の中に照らして考えさせられることも多々あった。
理不尽と無力感、ほんの一時爽快感のはざまで揺れ動いた。
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ファンタジーかしら、などと軽い気持ちで読み始めたら歴史大河エンターテイメントで尚かつジェンダー問題を深く突き詰めて考えさせられる本でした。
かといって、立ち上がれ女性たちよ、という内容でもなく長きに渡る人類史、カミとヒトと獣のこれまでとこれからとも。
獣のような男達が一瞬で消え失せる場面に快い胸の高鳴りを感じたのは私だけではないでしょう。
母となり狂う性と呼ばれる女の身で、子どもの事を我が命よりも守りたいと思う女の多いのには納得。
ある意味、歴史書としての楽しみ方も出来たし。ゆっくりこの本を読む時間、大切でした。
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世界観は東洋の後宮に近いけれど、読んだ感想としてはSFのような感じ。
とても面白かった。
女が女であることをここまで突きつめた作品もないと思う。
虐げられ、奪われ、無力であることを強要される。
それでも、それを強いた男の子供を孕んでしか生きられない。
「なんのために生まれたのかわからないまま死ぬくらいなら、なにかに成ってから死ぬ」
選択についての考え方や支配についての思想が深い。
心理学でもあるし歴史書としての面白みもある。
チユギとワリの関係性が最後まで美しい。
純粋な心の通じ合いを感じました。
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この作品の伝えたいことってなんなんだろうなぁ。最初のうちはついていけたが最後の方、わからなくなってしまった。
物語としては結構面白かったのだけど
2023.7.10
111
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高殿円さんが好きなので、作者読み。
キノの旅をもっとグロくしたようなファンタジー小説。旅をしている理由はもっとえぐいけど。
たぶんこの作者さんはこういう小説が本当に書きたいのだろうけれど、読み手は選ぶかな、という感じです。
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濃厚な味わいのファンタジー。帝国の次の帝を産むことを義務づけられ、諸国を巡る女が、子宮に神(菌)を宿すことによって最強の戦士となった女と出会い隠された世界の秘密に迫っていく。圧倒されるスケールのラストが素晴らしい。
高殿さんの作品は初めて。たまたま読んだ、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年4月号に掲載されたインタビュー記事が良かったです。「ここまで振り切った、ある意味では野蛮なラストシーンにしてしまって本当にいいのだろうか?という迷いはありました。でも考えてみればこれまで私たちはずっと、『最後は女が男を許し、包み込む物語』をたくさん読まされてきたじゃないですか? 最後の最後は、我々女性が折れなきゃいけなかった。そういう誰かにとって都合のいい物語は、もういらない時代になった気がしませんか? ここで私が世間からの批判を恐れて〝いい子ちゃん〟な結末を選んでも仕方がない。それよりは歴史の中で忘れられ、見捨てられてきたであろう物語を今、私が世に出そう。そう思えました」
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一般名詞も含めてカタカナ造語のルビが振られた単語が多く、その割に一部はそのままの読み方なので統一感がなく、始終ふんわり読む結果に。
(藩王はジョグルだけど帝はみかど、みたいな)
その中で情報提供もやや不親切なところがあるので完全に消化不良ですが、再び振り返りたいとは思えないのでしばらく積んでおきます。
書き出しや帯の文句だけを信じてファンタジーだと思って購入すると肩透かし気味かも。
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ファンタジーに苦手意思があるが、この世界の雰囲気は好みですっと入り込むことができた。面白い部分(果てや各藩の描写)も多かったけど、冗長。説明的な台詞が多くまどろっこしく感じた。
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面白いけど「女は奪われ虐げられる性」を強調しすぎててなんだかなー。
でも百合ですよね。
主人公と息子が結局再会せずに遠くから見守るのが良かった。