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滅亡の日を憂いでいる彼女の日常に溢れる幸福と悲哀… カシュニッツ作品集第二弾 #ある晴れたXデイに
■きっと読みたくなるレビュー
ドイツ生まれで、戦後1940-60年代に小説や脚本を手掛けたカシュニッツの短編集です。ミステリーではありませんが、人間の深い部分を描いた作品集とのことで、気になっていた一冊です。
どの作品も何かしらの背景を抱えつつ、人間は家族関係を切り取って表現している。幻想的な世界観ではあるものの、心情描写は芯を突いた深い部分を感じることができる作品ばかり。いくつかお気に入りの作品をご紹介します。
●雪解け
夫婦の物語。夫が自宅に帰ると、妻は外を警戒している様子で…
人生を共に歩んできた二人から漏れ出す会話。贖罪よりも失望の念が痛々しい。短いお話なのに永遠にも感じてしまうのは何故だろうか。
●太った子
自宅で子供たちに本を貸していた作家の物語、ある日太った女の子が本を借りに来て…
人間の静かな醜さが光る作品。読んでるといやな気分になるんだけど、自分自身も変わらないと気づかされる。作品全体から感じられる得体のしれない怖さが好き。
●火中の足
痛みや感情が人とは違った女性の物語、日記形式で綴られる。
本作もやたら現実的で辛い気持ちになる。周りの人の優しさが徐々に痛くなってきて、読み終わると虚しさが広がる。彼女には幸せになって欲しい。
●幸せでいっぱい
行方不明になっている子を探す女性の物語。夫からは既に亡くなっていると諭されるが。
人を思いやる幸せな話、そして丁寧な語り口でひたむきな主人公。でも、怖い。
●作家
書けなくなった作家とその妻の物語、彼は転職しようとするが…
人生を共に生きている夫婦という関係性を温かく描いていて幸せに包まれる。色んな苦労があるけど、お互いに支え合って暮らしているのが伝わってきました。
●脱走兵
戦争で逃げ出した兵隊とその妻の物語。絶望と旅立ちの狭間を描いた作品で、愛がヒシヒシと感じられる。
●地滑り
街を巡りながら住むか決めかねていた夫婦の物語。
何かをきっかけに、これまでの夫婦関係や人生を振り返ることってあるよなぁ。人生が終わりに近づいたとき、こんな風に思う日がくるのかしら。
●ある晴れたXデイに
主婦の手記、滅亡の日を憂いでいる彼女の日常を描いた作品。
疫病や戦争を憂う気持ちが伝わってくる。たとえどんな日であっても、いつもの一日と同じく過ごすことが家族にとって一番の幸せですよね。
■ぜっさん推しポイント
人生を長く生きていると、辛いことや悲しいこともある。それでも人は生きていかねばならない。そのためには、愛する人と手を取り合いながら、希望を見つけていくのではないでしょうか。
そんな人々の素直さと静かさを描いたバラエティに富んだ作品群。素敵な時間をいただけたことに感謝したいです。
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歪な家族、日常に忍び込む幻想…
「太った子」は嫌な気配のする女の子と接していくうち、ある事件に遭遇する話。どうなるのだろうと緊張しながら読みました。この作品が1番のお気に入りです。他も面白さと幻想を感じることができる短編集です。
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以前読んだ『その昔、N市では』のほうが好みの話が多かったかもしれない。
好きだったのは、
「太った子」
「火中の足」
「幸せでいっぱい」
かな。
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「ある晴れたXデイに」
今日はこの世の終わりだ、と直感した妻。夫にも子供たちにも家にいるように言うがいつも通り出て行ってしまう。が、夜は家に帰ってきた。この世の終わりはこういう平穏から始まるのだ、とでも達観する妻、ということかと読み解いたのだが、そうなのかな? よくわからない。
XとはUの代用、ドイツ語でウンターガング(滅亡)のこと。と最初にある。
「チューリップ男」
サーカス団の消滅。
「雪解け」
養子を迎えた夫婦。お互いなじめなかった。
雪解け1960
ポップとミンゲル1960
太った子1951
火中の足1964
財産目録1966
幸せでいっぱい(遺稿1960から1964のあいだ)
作家1965
脱走兵1960
いつかあるとき1964
地滑り1949
トロワ・サパンへの執着1960
チューリップ男1966
ある晴れたXデイに1963
結婚式の客 1946
旅立ち1950
訳者、酒寄進一氏によるオリジナル短編選集第2弾。
装画:村上卓 銅版画「嫉妬 ーどくー」2020製作
2024.4.26初版 図書館
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ドイツの女性作家、カシュニッツの第二短編集。
一作目は幻想、不条理がメインの短編が多かったが、今作は主人公たちの異常なほど不安になる気持ち、執着する気持ちが軸となる作品が目立つ。
死んだ養子が戻ってくるかと不安に怯える「雪解け」、行方不明の男の子を見つけることに執心する「幸せでいっぱい」、滅亡する世界を減少し異常なほど怯える「ある晴れたXデイに」。
わかりやすいホラーは少ない作家。でも、どの作品も時折、読んでいて息苦しくなる。一気に読むというより、少しずつ、堪能する短編集だと思う。良作。
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ふと目に入りジャケ買い。
雪解け(思い込みから始まる日常の恐怖)
火中の足(突然始まる身体の異変、ラストが静かすぎて悲しい)
幸せでいっぱい(こわいのよ)
ある晴れたXデイに(今日世界がおわるとして…ほんまにおわるんや⁈)
いつかあるとき
(死んだ女性の絵画作品を見て、自分との共通点を感じて彼女に惹かれていく男性。このまま気が狂うのかと思ったら良い終わり)
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日常という薄氷がひび割れ、暗い水に沈んでいくような、人間心理の歪さ、奇妙さを描く短編集。「ティンパニの一撃」により様相が一変する様や、不条理さ、語りの上手さなどはサキやビアスを思わせるところもあるが、カシュニッツは登場人物達の歪みや孤独を自己のものとして内面化しきって書いているような印象を受けた。文章自体は抑制されたものだけれど、共感のまなざしを感じる。短編としての完成度の高さも素晴らしかったけど、そこがとても好ましかった。そういう意味では、作品のタイプは違うけれども同時代人のエリザベス・ボウエンも少し思い出す。どの作品もそれぞれよかったけど、特に好きなのは「雪解け」、「脱走兵」、「いつかあるとき」。
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前作の方が全体的に好みではあったけど、それでも好きだなって感じの作品もいくつか。
3冊目が出ても買うと思う。