西洋諸国で生じている事
2025/03/08 15:11
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はソ連崩壊を予測した著名な人口学者。題名を見ただけでドッキとさせられる。
自由と民主主義の象徴であるアメリカとヨーロッパで起きている事を公開されているデーターから導き出している。特に盟主であるアメリカで生じている産業構造、出生率・乳児の死亡率そしてプロテスタントの崩壊から現在進行中のウクライナでの戦争ではウクライナはロシアに敗北すると。プロテスタントの崩壊は、日本人には少々分かりにくいが一番の問題とも思われる。拝金主義が道徳面を排除している西洋。このままどこに向かうのか?西洋の一員として日本はどのような位置に立つべきかを大いに考えさせられる。ウクライナでの戦いがトッドの予測が外れることを願う。
トランプ政権の現状認識はトッドと一緒?
2025/03/06 09:25
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投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
トランプ政権の現状認識はトッドと一緒?なのかも、とちょっと思った。もしかしたら、ヨーロッパへの認識やロシアへの向き合い方、アメリカ国内での製造業の復活へのこだわり?とかは、この本の問題意識や現状認識と同じだからかも。でも、この本によれば、エンジニアの数、教育への意識とかに手をつけなければ、アメリカの問題は改善はされない気がします。
切り口は鋭いが・・・
2025/01/15 18:06
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
トッドの本は、いつも新たな視点を提供してくれる。戦争に勝利するのはロシアであり、西洋は敗北する(している)という指摘には、うなずける部分がある。
が、半分引いてしまう。西洋側にいる?日本にとって不都合な指摘だからではない。どこか西洋男性のマンプレ臭を感じてしまうのだ。
本書もそうである。
欧米的、あるいは米国的考え方は、世界のスタンダードではないのだと言うことは良く分かるのだが、その批判が、ある一面をとらえたレッテル貼りに近いものであったり、独善的であったりする印象を受ける。フェミニズムに対する事実誤認も見受けられる。
一般読者に受けているようだが、専門家(研究者)界隈はどう見ているのだろう。
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【米国と欧州は自滅した。
日本が強いられる「選択」は?】和平は可能でも戦争はすぐには終わらない。だが、確定しているのは、ウクライナの敗北だ。日本は敗北する「西洋」の一部なのか。
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西洋の敗北のフランス語版が発売された時から日本語翻訳版が出版されるのをずっと待ち侘びていました。本日通販で購入し、明日届く予定です。混沌とした世界情勢の中、これからの日本はどうなっていくのか。どのようにして生き残っていけばよいのか。トッド先生の見解が恐ろしくもあり楽しみでもあります。文藝春秋社さまのサイトで試し読みできます。大野舞先生、いつも翻訳ありがとうございます。
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序盤はウクライナ戦争について、日本のニュースからはなかなか知る事のできない背景や原因を解説してくれていて、今までと違った視点を得られたのは良かったと思います。
特にイデオロギーだけでなく各国の伝統的な家族構造など人類学的な見方も面白かったです。
本書の主題としてプロテスタンティズムの崩壊と言う表現がたびたび出てきますが、要するに先進国の多くの人々の倫理観がなくなったと言う事と書かれています。
個人的に欧米人が倫理的と思った事はありませんし、本書では人種差別していた時代を含めてとありますので価値観と言った方が良いかもしれません。
そもそも西洋的に倫理的な物事が他の社会にとって倫理的でないだけなのかもしれません。
社会を支えている価値観の欠如と考えたらとなんとなくしっくり来ました。
倫理的と言えば、日本人はルールを守り勤勉で倫理的のように見えますが、日本人は実利的なだけで倫理的ではないのに、実利を取った結果として倫理的に見えているだけと思いますので、もちろん我々も倫理的である方が良いとは思いますが、それ以上にそれぞれの社会の考えや家族構造などに合ったシステムを考える事が大事な気がしました。
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国家はなぜ衰退するのか→自由の命運→技術革新と不平等の1000年史→Nexux→WAR3つの戦争を読んできて、今この本を読了。
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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO85980400Q5A110C2MY6000/
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本書は、西洋諸国が直面している地政学的、経済的、文化的な危機について論じたものである。筆者であるエマニュエル・トッド氏は、近代国家の構成要素として、「一つの文化」、「一つの共通言語」、「都市に集中する中流階級」の3つを挙げる。すなわち、都市に集まった中流階級者達が、一定の言語や文化に裏打ちされた「集合意識」に基づいて行動することで「国家」が成立するわけだ。ここでいう「集合意識」とは、ハラリの「サピエンス全史」風に言えば「虚構」であり、吉本隆明風に言えば、「共同幻想」である。さらにトッド氏は、近代国家の3つの構成要素の背景にはプロテスタンティズムの思想があったと指摘する。ここまでは、19世紀にマックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中ですでに指摘していることだが、それに加えてトッド氏は、近年見られる西洋諸国の衰退が「プロテスタンティズムの崩壊」に起因すると主張する。アメリカで広がるアファーマティブ・アクションを例に挙げた第8章の議論が印象的だった。プロテスタンティズムが暗黙裡に前提としてきた「不平等性」と、今日広まりつつある「多様性」のような平等思考は相矛盾する思想であり、そうした矛盾を抱えるアメリカにトッド氏は、「思想面における危険な"空虚さ(=ニヒリズム)"と強迫観念として残存している金と権力」を見るという。
このように、「プロテスタンティズムの崩壊」という切り口で世界を見るトッド氏の視点は面白かった。ただし、私自身が社会科学の文献を多く読むためかもしれないが、トッド氏の文章は主張の割合が多く根拠に乏しい側面があるように感じた。また、第9章ではGDPに代表されるような数値上のアメリカ経済と実態経済のギャップを明らかにしているが、やや感情的に議論しすぎていて、論理的とはいえない内容に思えた。
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この著者は常に冷静に世界情勢を分析しており、この本は現代の日本人にとって必読の書だと思う。というのも日本においてウクライナ戦争は、プーチンが狂った独裁者が時代錯誤の侵略行為を行なったものとして扱われており、ロシアは世界中の多くの国が経済封鎖に協力するので、遠からず破滅することになると思われている。
しかし実は世界で孤立しているのは、アメリカ中心のいわゆる西洋であり、その他の世界はロシアを支持する勢力が多数派となっているため、経済制裁は効果をあげていないのだ。そして2023年のイスラエル・ハマス間での戦闘再開によるハザ地区での住民虐殺に対するヨルダン決議案「即時かつ持続的な人道的休戦」に対しアメリカが拒否権を発動したことは、多くの国をロシア側に追いやったのだ。
なにしろこの案に反対したのは、イスラエル、アメリカとトンガやマーシャル諸島、ミクロネシア諸島等14カ国のみで、120カ国は賛成し、日本やイギリス等の西欧諸国45カ国が棄権したのだ。
我々日本人は、見たくないものは見ない、都合の悪いことは話してはいけないという言霊信仰に囚われてしまっている。だから米国の敗北や日本の財政の破綻やロシアとドイツの接近などは信じたくないため、話してはいけないことなのだ。しかし戦前の大本営発表ではないが、不吉なことは話さなけれな実現しないということではないのだ。特に世界情勢は日本人からの発信にだけに頼っていては間違うのだと思う。
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この本は日本の報道が行わない。ロシアの行動に対する考えを表しています。その他にもロシアやヨーロッパ、アメリカの文化的背景から昨今の状態を分析するなど、新しい視点を与えてくれます。日本に関する記述は8章以降によく出てきますが、その中でも文化的背景として家長制の存在が挙げられており、現在話題になっている戸籍の問題などが、すでに2023年の時点で述べられていたことが分かります。
加えて、その他ロシアに対して様々な国が好意的である背景や、日本に対するアメリカの見方などが何に基づいているのかなどに触れており、今後の地政学を検討する上でも非常に参考になります。
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プロテスタンティズムの崩壊が西洋で蔓延し、人々の教育欲や勤労欲を溶かした結果として、西洋は国としての体を維持できなくなっている、という視点が興味深かった。
勿論、その影響は日本にも現れているわけで、それを排除したければ、第一次産業や第二次産業を底上げすべきで、個人的にできることは家庭菜園をしっかり育て上げることだな、と思った。
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これは重たい一冊。ロシアによるウクライナ侵攻がなぜ起こったか。アメリカの迷走はどこからきているのか。なぜ世界はロシアを支持あるいは友好的な態度を取るのかなどについて解説してくれている。トッドはこれまでの「西洋的価値観」がプロテスタンティズムから生まれているとし、これが行きすぎて崩壊したことが、「西洋」の崩壊につながっているとする。プロテスタンティズムの特徴の一つである「勤労(と蓄財)」が格差を生み出すのだが、ある程度は当然としつつも、それが行き過ぎた結果、人口の0.1%の超々富裕層が生まれ、権力を持ち、経済だけでなく政治も牛耳る世界が出現する。その超々富裕層は、プロテスタンティズムなどが有している道徳的な感情が希薄で身内贔屓の意思決定を行うようになり、階層間の対立が深まる。これが欧米での左右の対立を生んでいるという。なるほど。このような状況で国のリーダーが決まるわけで、賢者が選ばれるというより、長期的視野や戦略、人権意識等に欠けたとしても、下層に落ちそうになっている自分たちの利益を守ってくれるものを選ぶようになりがちである。なるほど。ロシアのウクライナ侵攻は、このような西側のリーダーによる判断ミスが発端とも言える。ロシアにとってウクライナのNATO加盟は死活問題であるが、欧米や残りの世界にとっては重要な問題ではない。今ロシアが占領しているクリミアを含むウクライナ東部と南部は元々親ロシア派地域であり(前回の大統領選で親ロシア派への投票が80%近い地域)、西部の親EU派(右派)から差別的待遇を受けているわけである。もともと侵攻の差し迫った意図はなかったにも関わらず、ウクライナのNATO加盟を進めたがために、いらぬ刺激を送って侵攻に踏み切らせてしまったとすれば、確かに戦略の過ちと言えなくもない(もちろん、侵攻を正当化するものでは絶対にないが)。かつてG8に参加していた頃のプーチンはそこまで悪党には見えなかった(北方領土は返してほしい)が、アメリカの帝国化の野望に対抗する準備をさせてしまったのは、どちらが間違ったのか。その他の世界がなぜロシア贔屓かについて、考えてみれば、西洋は、イスラエルの侵攻やイラク戦争を支持するなどのダブスタを、何度となく繰り返してきた。そりゃ信頼失うわけだわ。アメリカは同盟国であるドイツの首相の携帯電話を盗聴するなど、傍若無人な振る舞いがすぎた。今度も理不尽な要求を各国に押し付けている。同じ価値観を共有する仲間という言葉が空疎に聞こえる。ロシアは今のところ、アメリカに攻め込む気配はなく、アメリカからすると遠いウクライナの領土が少しくらいぶんどられても痛くも痒くもない。トランプとプーチンが気が合うのは、上位0.1%のオリガルヒに支えられているリーダー同士で分かり合えるからだろう。こう考えると、和平交渉の進め方の違いが理解しやすい。今後どうなるのかを考えていると、ちょうど「100分で名著」で社会分業論をやっていて、130年前の社会学が、現代に置き換えても当てはまるので二重の驚き。これが参考になるかもしれないが、戦争を止めるのは難しい。
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実によく世界情勢が分析されている本だった。そして読まないとただ時代に流されるだけの人となっていたと思うと恐ろしい。
ニヒリズムは身近な問題にも落とし込め、理解が容易いからこそ危うさも理解できる。ニヒリズムの先にあるものは何だろうか。もはや虚構の先など何も無いのだろうが。
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2024年度に読んだ本の中で、個人的に最高の読書体験となった。
まず、驚くべきことは、日本語版が刊行された2024年11月の時点で、世界15カ国以上(12月末で21カ国)で翻訳されているこの本(現代最高の知性のひとりであるエマニュエル・トッドの最新作!)が、なんと英語にだけは翻訳されていない、という事実である。
英米圏に籠絡されている現代社会の本質を抉るこの本を、読ませたくない人々がいるということだけでも、この本が日本語で読めることの幸せを噛みしめたい。
この本から学んだことはたくさんありすぎて書ききれない。
ディープステートのことをシャローステートと皮肉ったり、アメリカを知性もモラルも欠いた学歴だけの半インテリギャングが外交と軍事を司り、モノでなくドルだけを生産する国と喝破したり、目が覚めるような言説に溢れている。
この本の前に、ミアシャイマーの「リベラリズムという妄想」を読んで感銘を受けた私にとって、最も突き刺さったのは、ミアシャイマーが議論の前提にしていた「国民国家」が、もはや西側諸国には存在していないという驚くべき洞察である。
この本は、近いうちに、もう一度精読をする必要があると感じている。