プラトンの知られざる代表作
2025/01/31 23:36
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投稿者:キェルケゴ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の価値観からはプラトンの主著とは言えないが、中世のプラトニズムにとっては、このティマイオスが最重要テキストだったらしい。
宇宙などの自然科学の内容が、縦横無尽に書き綴られている。対話編は一部分だけなので、読みやすいともいえる。
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「ティマイオス」は前に現代書館のやつで読んで正直全然頭に入ってこず、読み直す気力もわかない…と言う感じだったのだけど、これはちゃんと話の内容が分かって嬉しかった。
デミウルゴスによるイデアを模した宇宙の生成と、神々による宇宙を模した人間の生成を見て、そして三角形の組み合わせで作られる土・水・空気・火による物体の成り立ちの話をし、物体としての人間の体の構造をつぶさに見ていく。
ちょっと分かりづらいと感じたところでは註でざっくり内容をまとめてくれていたり、文章で分かりづらい三角形や多面体の話なども註に図を出してくれていたりしてとても親切。解説の「必然」の話もとても参考になった。「ティマイオス」二冊目でも買ってよかったと思える。また必要のある時に読み返していきたい。
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図書館の新刊コーナーで目に入り、
あれ、これってこないだ何かのPodcastで言ってた本じゃない?…と、思い借りて帰った。
それにしてもついにプラトンを読むのに、そんな軽い動機で、しかも「ティマイオス」なんていうどちらかと言えば現在日本ではマイナーとされる作品から入って大丈夫なんだろうか。
もっと有名な…、「国家」とか、「ソクラテスの弁明」とかの方から読んだ方がいいんじゃないだろうか…。
まあ、ある意味ではこの心配は当たった。この「ティマイオス」が、「国家」の延長で書かれたプラトン後期の作品だということは前提知識があったが、思った以上に骨のある文章だったので、図書館で借りられる延長期間いっぱいを使ってなんとか読み切るという苦労を背負った。
宇宙の始まりから人間の構造がどうなっているのか…などなど、古代ギリシア哲学のど真ん中であり、それ以降のキリスト教世界にも多大な影響を与えたであろう本著。有名なラファエロの「アテネの学童」でプラトンが持っている本がこの作品であるというところからも、マイナーな著作ではないらしい。
日本で文庫化されたのが初めてだそうで、確かその話題をPodcastで聴いたのが最初だったな。
正直言うと内容はほとんど意味がわからない。いま聖書通読チャレンジ中の私にとっては、レビ記、民数記以上に目が滑る文章の連続で、一応読み切ったもののたぶん読み返したらまた同じように目を滑らせては時間を消費する自信しかない。
だけど、宇宙を作った神や、いわゆるイデア論からくる、この世の中の全てはイデアをお手本にした模倣であるという説、理性を尊びそれを信奉する論などは、ユダヤ教、キリスト教世界にどんぴしゃで通じてくるんだな、と思うとめちゃくちゃ面白かった。
あと、ギリシア神話に詳しくないんだが、あのゼウスも洪水起こしてた説とか、アトランティスの話とか、わからないなりに所々目を惹く内容もあって、もうちょっとちゃんとわかりたいな、と心から思った。
次は「国家」かなぁ…。
古代ギリシア哲学、分かりやすく解説してくれるYouTubeとかあればいいと思うけど、やはり原液で摂取してこその面白みがあるんだろう。
今はまだわからなくても、そのうち伏線回収できるように、またいろいろ読んでみよう。
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中世哲学研究でよく語られるデミウルゴスによる創造神話を、あるいは納富信留氏の『プラトン 理想国の現在』を読んでポリテイアに匹敵する壮大な哲学論を期待してティマイオスを読もうとする読者は、ひょっとしたら肩透かしを食らってしまうかもしれない。むしろそこで語られるのはポリテイアで語られたような壮大な哲学理論ではなく、プラトンやアリストテレスが共通して持っていたであろう目的論的世界観に基づく人間論であるからである。それもいま私たちが人間論という言葉で受け留めるものではなく、人間という存在が如何なる特色を持っているのかという探求を通した、いわば生理学に近いそれであるからである。
とはいえ本書の解説でも触れられているように中世ヨーロッパでプラトンの著作として知られていたのは圧倒的にティマイオスであり、私たちが今親しんでいるプラトン著作の全体像を享受しうるようになったのはそれより時代が下ってからのことである。ラファエロの有名な絵画「アテナイの学堂」の中心にはプラトンとアリストテレスが立っており、プラトンはティマイオスを片手に天上を指し、アリストテレスはエティカ(倫理学)を片手に手を広げている。この絵でもティマイオスがプラトン思想を代表しているように、プラトン著作全体が広く受け入れられるようになるにはステファヌス版の刊行、あるいはフィチーノのラテン語訳の普及を待たなければならなかったのである。
先に納富信留氏のプラトン論に言及したように、ティマイオスはポリテイアと密接に結びつき、その冒頭はポリテイアの要約から始まっている。出だしでポリテイアの内容に沿ってあるべき人間の生き方を確かめたのちに語られていく人間論は、私たちの日頃親しみのある言葉遣いを容易に飛び越えていく。解説で印象的に指摘されているように、アナンケー(必然)という言葉はテュケー(偶然)をさえ含み込む。必然という言葉に法則的なそれを読み込んでいる私たちの言葉を揺さぶり、私たちの言語観をさえ揺さぶる力をこの著作は備えているのである。一見奇異な四元素や多面体に託された性質も、その内容を仔細に検討していくと、むしろ彼らが知っていた自然科学は私たちが想像するよりもはるかに柔軟で、本質的であったのではないだろうかと思われる節があり、中には解剖などの知見を含んでいると思われる記述さえ見いだされるのである。
ティマイオスは今まで熱心な読者にとっての必読書として留まってきたように思う。しかし本書の刊行によってプラトンその人と中世哲学の理解に欠かせない重要文献として私たちの共通の書となる端緒がようやく与えられたのではないだろうか。本書の刊行を心から喜びたい。