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人面町四丁目(角川ホラー文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3 1件

電子書籍

人面町四丁目

著者 北野勇作

大災害に被災し、行き場を失った男が遺体安置所で出会った不思議な女――。いっしょに来る? その言葉に導かれ、女の故郷人面町で、いつしかともに暮らし始めた男が出会うこの世のものとは思えぬ異形のものたち。そして、曖昧な記憶の糸をたぐりよせ、男がたどりついた、哀しくも酷いあの日の事実とは!? 日常のすぐそばで、ひたひたと迫る恐怖を描く逸品。

人面町四丁目

583 (税込)

人面町四丁目

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紙の本人面町四丁目

2004/07/28 00:03

奇妙な魅力に溢れた作品世界の源泉とは

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:花月 - この投稿者のレビュー一覧を見る

前作がかなり猟奇色が強かったので、タイトルを見て、今回も?と読む前は少し構え気味だった。
しかし、実際、読み始めると予想外にホラー色が薄く、いつもの北野ワールドを堪能することができ一安心であった。

北野ワールドに接するたびに感じるのは、作品全体に漂うどこか懐かしい感覚である。
この感覚は、北野勇作の他の作品の解説などでも取り上げられたりしているが、何故そういう風に感じるのか少し客観的に考えてみた。

描かれる静謐な風景、登場人物の淡々とした語り口や諦観などによって、作品から受ける印象が、どことなく廃墟に似たものとなっている。その廃墟のイメージが一種の懐かしさを感じさせているのではないか。しかし、それだけが理由ではないように思える。
あらためて、主人公の行動パターンを追ってみることにしよう。作中、主人公は、町中を歩き回っているうちにいつの間にか見知らぬ場所や奇妙な場所に行き当たる。ところが、主人公はそのことに大きな疑問も感じずそこで事件を経験し、また元の街に帰ってくる。このパターンは、よくよく考えてみると夢の構造に似ていることに気づかされる。
その上、いつもの見知った街の普段は曲がらぬ角や路地に入り込み異世界を垣間見るのは、夢だけではなく下校時の寄り道などで子供時代に誰しもが体験した事でもあろう。

こんな風に読者に夢や子供時代の既視感を与えることが、北野ワールドに「どこか懐かしい」といった印象を抱かせる大きな理由なのではないだろうか。

今回の作品には、北野ワールドおなじみのキャラクターもさりげなく出てきたりするので、以前からの北野ファンにはうれしいお土産となっている。
猛暑の夏にふと立ち止まって、ちょっとした奇妙な懐かしさを味わってみるものまた一興であろう。

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