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みんな誰かを殺したい(角川書店単行本)
  • みんなの評価 5つ星のうち 3.5 3件

電子書籍

みんな誰かを殺したい

著者 射逆裕二

峠で殺された小太りの中年男。そして、その殺人事件を目撃した男。緻密なプロットが交錯し、物語の糸は思いも寄らぬ方向に収斂していく──。第24回横溝正史ミステリ大賞優秀賞+テレビ東京賞、W受賞の超本格ミステリ。

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みんなのレビュー3件

みんなの評価3.5

評価内訳

  • 星 5 (0件)
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紙の本みんな誰かを殺したい

2004/07/27 18:16

これは駅伝じゃない。完走させなくては!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:luke - この投稿者のレビュー一覧を見る

 山梨県、東京との県境奥多摩山中で殺人事件が目撃されるところから物語は始まります。一見、無防備な殺人事件ですが、実は周到に計画された殺人事件でした。時は1ヶ月半前に遡り…。とまぁ、これくらいしか粗筋を書けないくらい、ある意味で密度の濃いストーリーとも言えます。賛否両論有ったようですが、本書は横溝正史ミステリー大賞優秀賞作品です。

 たぶんですが、ミステリーを書かれる時にトリックは出来上がっていても、頭を悩ますのは動機じゃないでしょうか。簡単に浮かぶのが財産(金)、痴情(女)、名誉(権力)で、その裏返しの復習。出尽くしちゃってますものね。だから味付けをするわけですが、これが問題だ。途中犯人がでバレちゃまずいし、どんでん返しも必要だ、となると動機を持つ容疑者を有る程度の数を用意しないとまずくなってしまう。「殺したい人いる?」と聞けば、この世の中だから賛同者もいない訳じゃないけれど、実のところ多くは「死んでしまえ」程度のレベルじゃないでしょうか。「殺したい」となると相当に個人的な話になって何人も居るはどうでしょうか。…となるから、一人じゃ動機からすぐにバレてしまうので本書の「大きいように見せかけた小さな罠」もあるのです。

 動機が現実的で必然性があるほど加害者に肩入れをしてしまいます。捕まるなよ…みたいな。別な言い方をすればストーリーに感情移入しやすいって事でしょうか。「みんな誰かを殺したい」から想像出来るとおり複数の殺したい(動機)が出てくるのですが、ストーリーはつながっているものの、大きく分けると前半と後半で別なものになってしまい、肩入れを替えなくてはならなくなりました。途中の解決はずるい。この気持の切り替えは慌ててしまいます。「小さいように見せかけた大きな罠」は大好きなラストですが、本物の「大きな罠」にする為にも、時間差を無くし伴走してゴールを迎えなくっちゃ。

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紙の本みんな誰かを殺したい

2004/08/08 21:41

なんていうんですか、みんな良い小説に出会いたいんでしょうけど、けっきょく世の中犯罪者ばかりってのはね、逆に絵空事になっちゃうわけで

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

第24回横溝正史賞優秀作である。寄藤文平の装丁があまりに心地よいので、てっきり青春ユーモアミステリだとばかり思っていたら、結構、現代そのものといった陰惨で夢も希望もないような中味なので、逆に驚いてしまい、いったいどうなるどうなるで終わった最後に初めてタイトルの意味が分かった次第。ということで、サワリだけの紹介。

事件は5月12日に起きた。木の幹に取り付いているキツツキを見ながら別れた妻の水江のことを思っていた相馬文彦の目の前で、男が撲殺された。呆然と現場を見ていた文彦に気付いた犯人は、それでも被害者にトドメをさして、車に乗って現場を立ち去った。事件の間、犯人は顔を隠すことすらしてはいなかった。

そして、現場を立ち去る犯人と、途中ですれ違ったのが、町村寄子。誰もが思わず振り返りたくなるような美女でありながら、そして、いい性格でありながら、幼い時に父を失ったせいか、何故か年上の男に弱く騙され続けてきた幸薄き女性である。犯人とすれ違った彼女は、その先で相馬に頼まれ、彼が警察に電話をする間、現場を見守ることになる。そして。

でだ、直木賞や芥川賞とちがってありがたいことに、この本には四人の選考委員の横溝正史賞の選評が載っているのだ。委員は、今回で役を降りることになる内田康夫、現代本格ミステリの代表的作家の綾辻行人、文学派ミステリから北村薫、伝奇小説の書き手坂東眞砂子の各氏である。

で、何だかだで票が割れたらしい。特に大賞については、内田は残りの三人と全くことなる評価をしている。そのなかで、平均的に評価されたのが、射逆のこの作品。ただし、大賞ではなく優秀作というところがミソである。正直、読み終わって納得するのである。そうか、そうだったのか。

でも、それだけである。上手いなあ、とか、凄いなあとか、そういう言葉は少しも似合わないのである。むしろ、私などはハラハラドキドキでロマンチックな展開に酔い痴れていただけに、あんまり丸く話を描くことに気を取られると、結局は何か作り物めいちゃうよね、救いもないし。

私たちって、こんな殺伐とした世界には住んでないし。逆に、自分たちは酷い世の中に生きている、戦争で負けたことが民族のトラウマになっている、なんてそんなことばかり考えているから陰惨な事件が減らないんだ、むしろ小さな幸せで満足できるようになれば、もっと世界の見え方だって、良くなるだろうに、などと根拠もなく甘いことを考えてしまうのだ。

ま、そのわりには政治家、官僚に対しては不満たらたらの私ではあるけれど。ということで、結論。よく出来たお話ではあります。でも、震えませんでした。分野は違うけど、乙一くん、嶽本野ばらくん、勿論、伊坂幸太郎さんにも及びません。このままでは器用な作家で終わります。次作に期待ということで、はい。薔薇色の感想でした、ね、牛クン。

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紙の本みんな誰かを殺したい

2004/06/04 22:21

先の読めないローリングミステリー(『本の旅人』04年06月号書評より/前編)

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:香山二三郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 イラクが凄いことになっている。
 パレスチナも凄いことになっている。
 どう凄いのかといえば、前者ではアメリカの力ずくの占領体制に抵抗してあちこちでテロや襲撃事件が起き(日本人もそれに巻き込まれたことは記憶に新しいところ)、後者では強硬な姿勢を取り続けるイスラエルのシャロン政権に対し、これまたパレスチナ戦士や住民の自爆テロが頻発するなど、戦時下以上に危険で混乱した状態に陥っているのだ。
 庶民の側からすれば、身近にいつも死が転がっている。
 そして自分もいつその仲間に加わるかわからない。
 それにつけても、平和な国、ニッポン。日常、命の危険に晒されることなど滅多にないこの国の民にとって、イラク、パレスチナの今は想像を絶する生活環境といえよう。
 もし例外があるとするなら、それは紙の世界の中でのこと。
 どこにもあるような日常風景が剣呑なものに一変する−−本書はまさしくそんな一冊で、五月のある日、山梨と東京の県境の峠で車を止めて休んでいた男、清里で食器店を営む相馬文彦が殺人事件を目撃する場面から物語は始まる。
 近年血腥い事件が多いとお嘆きの人もいるだろうが、庶民が重犯罪に直面するケースはあまりない。かくいう筆者も、幸いなことに、五十年弱の人生、三十年にわたる東京生活の中でヤバい目にあったことはいちどもない。が、冒頭の殺人現場に遭遇するもうひとりの主人公町村寄子はその直前まである人間を殺そうとしていた。いや、そればかりか、意外な人物との出会いまで経験することになる。
 そりゃまあ、人生いろいろ、悪夢のような偶然が重なることもないとはいいません。この著者はしかし、偶然の重なりで片づけたりはしない。登場人物を意図的に、次々と重犯罪に巻き込んでいくのである。
 続いて出てくる塙研一は深夜、街角で出会い頭にぶつかった禿頭の中年男に、こともあろうに、事故で死なせてしまったという愛人の死体を見せられ、そこで出会ったことを忘れて欲しいと泣きつかれる。フツーなら男を説き伏せて警察に自首させるか、脅迫しにかかるかするだろう。だが塙という男は、何を考えたか、二百万円と引き換えに女の死を偽装することを申し出るのである。
 三組目の登場人物、藪中淳也は出てくるなりゴルフ場でひとりの男を射殺する。彼は自分が勤める不動産会社の社長夫人と不倫関係にあり、それを不審に思った社長に雇われたという探偵にふたりでいる現場を押さえられたあげく、思いも寄らない申し出を受けることになったのだった。
 かくして本書に登場する人々誰もが忌まわしい殺人事件に巻き込まれたり自ら関わることになるのだが、それにしても出てくる人、出てくる人、皆が殺人事件に絡んでいるなんて信じられますか。各々の事件それ自体もどこかでリンクしているとなればなおさらだが、アナタがミステリー読みなら、現実との乖離にいちいち目くじら立てたりはしないだろう。

→後編はこちら

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