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なまづま
著者 堀井拓馬
激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。日本中に蔓延するその生物を研究している私は、それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって……。選考委員絶賛、若き鬼才の誕生!
なまづま
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紙の本なまづま
2011/11/20 16:26
狂気のラブストーリー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
粘液を引きずりながら、酸味の強い、
吐き気を催す臭いを発散させ
青白い姿で街を徘徊するヌメリヒトモドキ。
3つの穴があるだけの姿から人間の姿に進化し、
しかも人間の記憶や感情を学習し
人間に近づいていきます。
そんなヌメリヒトモドキの研究者である「私」は
2年前に妻を亡くし、その喪失感から立ち直れません。
世間との唯一の窓口的存在だった彼女がいなくなり
人とのつきあいもほとんどなくなり
ただ会社と家を往復するだけの毎日を送っています。
ヌメリヒトモドキが、ある特定の人間の唾液や
髪の毛を摂取し続けると、その人間になることがわかり
「私」は妻に似たヌメリヒトモドキを作り始めます。
ホラーなのですが、話の主筋は語り手の妻への恋愛感情。
愛するが故に常識を逸脱します。
耐えがたい異臭と容易に落ちない粘液をものともせず
妻に似たヌメリヒトモドキと同棲するに至ります。
しかし、妻のクローン化は無理であり
不死のヌメリヒトモドキの存在が大きくなりすぎてしまう。
よくできた狂気のラブストーリーで
異常な妻への執着がしっかりと核となり
「私」の行動がリアルで説得力があります。
また「人に似た生物」というよくあるパターンも
ヌメリヒトモドキの設定がしっかりと組み立てられています。
カンナミ研究員や山崎さんといった脇役も
話の広がりをちょうどよく広げ、集結します。