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D-ブリッジ・テープ(角川ホラー文庫)
  • みんなの評価 5つ星のうち 4 4件

電子書籍

D-ブリッジ・テープ

著者 沙藤一樹

近未来。ゴミに溢れた巨大な橋のたもとで、少年の死体と一本のカセットテープが発見された。いま、再開発計画に予算を落とそうと、会議室に集まる人々の前でそのテープが再生されようとしていた。耳障りな雑音に続いて、犬に似た息づかいと少年の声。会議室で大人たちの空虚な会話が続くなか、テープには彼の凄絶な告白が……! 第4回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した幻の名作が、ついに電子書籍で刊行!

D-ブリッジ・テープ

税込 462 4pt

D-ブリッジ・テープ

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評価内訳

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紙の本D−ブリッジ・テープ

2001/12/12 00:43

現代社会を映した童話

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mikako - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ゴミの山と化し、D−ブリッジと呼ばれるようになった横浜ベイブリッジ。幼くしてゴミと一緒にここに捨てられ、ここで数年生き、そして死んでいった少年が死の前に残したカセットテープ。容量60分のこのテープが小綺麗な会議室で再生されます。
 腐った肉塊、どす黒い血の色、蠢く虫など、想像したくないような少年の現実が次々と目の前に出されて辛いです。なのにこの小説はとても無垢で美しいと感じさせます。この世で一番汚い世界で、涙が出るほど悲しい話で、それでもなお読み終わった後イメージするのは、降るような星空の下のキラキラした小さな小さな世界でした。
 会議室の様子とテープの少年の言葉が箇条書きのような文章で綴られています。会議室の冷たさは強調され、次々と重ねられる少年の言葉の悲痛さが迫ってきます。読むのにはさほど時間がかかりませんが、その内容はずんと心にのしかかります。

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紙の本D−ブリッジ・テープ

2002/04/25 10:55

悪夢

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:真  - この投稿者のレビュー一覧を見る

本能に訴えてくるような怖さを持つ、ホラー小説。20分ぐらいで読める短い話。

ゴミの山のなかで、必死に生きようとする少年。その少年の独白で、ストーリーは展開される。ゴミのなかには当然食べるものなどなく、その辺にいる虫や動物たちを殺して、その肉を食うという生活をおくる少年。かなり気持ち悪いシーンの連続。しかし現実感が希薄なので、どこか夢を見ているような印象を受ける。夢というより悪夢かな。

無意識を直撃するような話ですね。どこが怖いのかよくわからないというか、理屈で割り切れない怖さというか。この感覚は読んだ人でないとわからないと思います。一度お試しあれ。

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紙の本D−ブリッジ・テープ

2001/05/28 10:39

私たちは少年の叫びを聞かなければならない

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:真泰 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 不法投棄のゴミに溢れた近未来の横浜ベイブリッジ。そこで一本のカセットテープを大事そうに抱えた少年の死体が発見された。親にゴミと一緒に捨てられ、ゴミしかない場で生き、そして死んでいった少年。再開発計画の会議が行われようとしていた室内に、その少年が残した遺言とも取れるテープが再生された。その内容は凄然たるものだった。

 とても重要な現代の問題を真正面からぶつけてきた作品だと思います。グロテスクなシーンが多く、怖さも気持ち悪さもありましたが、それよりも辛さと息苦しさを強く感じました。少年の「生きたい」という気持ちが嫌という程に伝わってきて涙が溢れてきます。また、ゴミの中で生きることに必死な少年と、綺麗な部屋の中でうんざりとテープを聞く会議の出席者たちの、あまりに正反対すぎる境遇や光景が印象的でした。そして読後も少年の声がいつまでも耳に残りました。
 ホラーとしてというより、小説全般の一作品としてとにかく素晴らしかったです。こんなに少ないページ数ながら、内容は濃厚で、きっちりと纏め上げらています。近未来の日本を舞台に書かれてますが、いつかはこんな事態になるのではないかという不安は募るばかりです。

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紙の本D−ブリッジ・テープ

2002/07/17 16:13

現代社会への問題提起

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:scarecrow - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ゴミの山に埋もれた横浜D‐ブリッジで、少年の死体が発見された。その傍らには、一本のカセットテープ。D‐ブリッジ・テープと名付けられたそれは再生され、そして彼は語り始める。ネンと呼ばれた片足の少年と、盲目の少女エリハの物語を。「あんた…俺の声を聞いている,あんた…言いたいことが,ある。たくさん…あるんだ」。
 誰もがゴミを捨てに来るのに,誰も寄りつかないゴミ捨て場。父親からゴミのように捨てられた少年は,ゴミの中に住んでいます。ほぼ全編,テープから語られるその少年のモノローグから構成されている。少年は語ります。すべての人間に見捨てられ,凄絶な生き方をせざるを得なかったみずからの人生を,つたない言葉で…。
 しかし本作品の不気味さは,そういった語られる内容にあるのではなく,そのモノローグを聞く人々を設定したことにあるように思う。テープを前にして,なんの感慨もなく,共感もなく,同情もなく,ただただテープを聴く10人の男女。そこには嘲りさえも含まれているかもしれない。自分たちで「ゴミ捨て場」を作りだし,それが生じさせた悲劇に関心を寄せることなく,「不必要」のもとに切り捨てる「大人たち」の姿…。
 この現代社会を象徴する「無関心」と「冷酷さ」こそが,この作品で描かれている真の「怖さ」なのではないでしょうか。短編でありながら単なるホラーの域を越えた非常に奥深い作品のように思います。
 

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